今月の表紙:横浜ハリストス正教会/司祭グリゴリイ水野宏神父(2014年6月8日見学)

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2014年7月号 No.633

行事予定

8・15を考える 映画DVD上映会「炎628」

炎628
 今年も8月15日がやって来ます。

 戦争と平和について、毎年考える集いを開催してきましたが、今年は「炎628」上映会を行います。

 題名の意味が分かりますか?これは当時の白ロシア共和国(現ベラルーシ共和国)でナチスドイツ軍によって村民が皆殺しにされ、焼き尽くされた村の数なのです。第二次世界大戦中、最も多くの死者を出した国は旧ソ連です。その数は何と3000万人にも及ぶのです。そのほとんどが独ソ戦によるものです。

 戦後、アメリカでさえ「第二次世界大戦の勝利はソ連人民の犠牲より得られた」と分析しています。日本の死者は約300万人。日本の10倍にもなります。当時のソ連国民の4人に1人の割合で死者を出したのです。その事実の一端をこの映画で認識しましょう。

(関戸)

炎628
日時:2014年8月24日(日)14:00~
(上映時間2時間23分)
会場:横浜平和と労働会館5階教室
黒パン・お茶代:300円(上映は無料)
お申し込み・お問い合わせ:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax:045-201-3714
E-mail: eurask2@hotmail.co.jp
当日連絡先:080-6700-5301(関戸携帯)
※映画についての情報はチラシをごらんください。

第16回 大河アムール・ハバロフスク市民交流の旅

大河アムール・ハバロフスク市民交流の旅
 締切迫る!
 今回はウラジオストクも訪問し、一泊2日を堪能後、シベリア鉄道でハバロフスクへ移動します。チラシ(PDFファイル)をごらんの上、ぜひお申し込み下さい!

日程案:8月12日(火)~17日(日)
旅行代金:238,000円(5泊6日)
旅程案:1日目・シベリア航空でウラジオストク着(ホテル泊)/2日目・ウラジオストク見学と自由行動、シベリア鉄道でハバロフスクへ(車中泊)/3日目・ハバロフスク着、自由行動(市内観光などのオプショナルツアー)(ホテル泊)/4日目・自由行動(各種オプショナルツアー)、ロシア人家庭訪問・家庭泊またはダーチャ訪問・ダーチャ泊/5日目・児童サマーキャンプ「オケアン」訪問、さよならパーティー/6日目・シベリア航空で帰国

事前交流会:7月20日(日)午後2時 横浜平和と労働会館5階 当協会教室

活動報告

継続は力なり-「スパイ・ゾルゲ」上映会

 6月22日(日)、この日に因んだ映画「スパイ・ゾルゲ」DVD上映会の事前の申し込みは2~3人でしたからスタッフを入れても5~6人かなと思っていました。ところが、2Fの音楽センターでレッスンをしている外部のコーラスグループの飛び込みがあり、全部で9人の参加でした。

 73年前のこの日、独ソ戦が始まりました。この情報を正確にモスクワに伝えたスパイ・ゾルゲの活動を詳細に描写していました。新聞記者の肩書で日本に入国し、ドイツ大使館にも顔が利くゾルゲは極めて情報分析力に優れていました。「2・26事件」では、「武器は機関銃だけで大砲もない。正規軍が戦車を出せばすぐに鎮圧される」と見抜きました。東北を視察した際には凶作により、農村の疲弊を正確に分析しました。日本のことを客観的に理解したのは日本国民ではなく、ゾルゲだったのです。

 3時間の長い映画でしたが、その長さを感ずることなく映像に見入っていました。上映の後、柴田さんの戦争時代のことから直近の「集団的自衛権」まで、話題が弾みました。参加者の中では23歳の男性が「ネットで『横浜 ロシア』と検索したら、この上映会のことが出てきて、興味を持ったので来ました」と言っていました。おまけにその場で入会もしてくれたのです。

 ミニ上映会ですが、「継続は力なり」でこつこつと続けていけば仲間も増えるということを実感しました。

(関戸)

横浜ハリストス正教会見学

横浜ハリストス正教会
 6月8日(日)、横浜ハリストス正教会の見学会を行いました。日本にある正教会の聖堂といえば、東京・神田のニコライ堂や函館のハリストス正教会が有名ですが、実は横浜にも、正教会の聖堂(教会)があるのです。神奈川区松が丘、国道1号線から少し入った住宅街の丘の上にある特徴的な丸屋根を頂いた建物が、横浜ハリストス正教会の「生神女庇護聖堂」です。

横浜ハリストス正教会
 当日は梅雨らしいすっきりしない天気でしたが、21人もの参加者が集まり、グリゴリイ水野宏神父の案内で聖堂内を見学しました。

 横浜ハリストス正教会の歴史は今から130年以上前、1878年にまで遡ります。戸部町と花咲町に開かれた講義所に始まり、市内の幾つかの場所を移転したのち、1980年に現在の場所に聖堂が建設されたとのことです。

 聖堂内に入るとまず目に飛び込んでくるのは、壁面に飾られた数々のイコン(聖像画)。日本正教会は、ロシアから派遣された司祭、ニコライ・カサートキンが国内での布教活動に尽力したこともあってロシア正教会との関係が深く、横浜ハリストス正教会の聖堂にも、ロシアで描かれたイコンが多く飾られています。

横浜ハリストス正教会
 水野神父からは、正教の歴史やその名称の由来、聖堂の構造や十字架、イコンなどが持つ宗教的な意味を、分かりやすく説明していただきました。また、通常は扉で閉ざされていて見ることのできない奥の部分・至聖所も、特別に見せていただくことができました。

 見学参加者からは、「美しいイコンに感銘を受けた」「正教会についての理解が深まった」などの感想が聞かれました。

 神奈川県日本ユーラシア協会は、今年4月にもパスハ(復活祭)にちなんだイベントで、水野神父に祈祷を行っていただきましたが、今年の秋にも山手の外国人墓地にて、パニヒダ(永眠者のための祈祷を捧げる儀式)を実施する予定です。

横浜ハリストス正教会 横浜ハリストス正教会
横浜ハリストス正教会 横浜ハリストス正教会

(文・写真:桜井)

教室案内

徳永晴美氏特別講義!

ロシア語教室から皆様へのサプライズ!???
ロシア語通訳界の大御所・徳永晴美氏が教えてくれるロシア語習得のコツ。
これから勉強したい人からプロまで誰にでも役に立つ話のはず。
これは出席しなければ聞けない話です!

本人が名づけた演題は、
「ロシア語習得―もう一歩前へ進むコツ!???」

日時:9月13日(土)14:00~15:30
場所:横浜平和と労働会館4階会議室
参加費:一般1,500円、会員1,000円

※徳永晴美近著「実務のロシア語I,II」サインセール実施予定

6月1日、みんなで歌いました。ロシアのロマンスと民謡を!

ナターリア先生と一緒に歌う会
 この「歌う会」は川北ナターリア先生の提案で実施された初めての試みでした。おかげさまで参加者は全員で15名にもなりました。

 ナターリア先生と、ピアノを弾いてくださった馬場タチヤーナさんはロシアの民族衣装を着て、楽しい雰囲気を作ってくださいました。

 ロマンスの「夜は明るく」と民謡の「祖国」の二つの歌について先生はロシア語で解説され(通訳付き)、また自分で録音された有名な歌手の歌も聞かせて下さいました。タチヤーナさんの伴奏のもと、先生と皆さんは何回も一緒に楽しそうに歌われました。

 最後に皆様に記入していただいたアンケートでは、全員の方がまた参加したいとのご希望でした。アンケートの結果にナターリア先生も大喜び。無理のないところで、各シーズンに一度開催しようということになりました。

(野口)

「ナターリア先生と一緒に歌う会」次回予告

 日 時:8月3日、13:30~15:30
 場 所:横浜平和と労働会館 5階教室
 参加費:会員1,000円、一般1,500円

 歌は、あの有名な「行商人」と、「暁に彼女を起こさないでおくれ」という甘美な題名のロマンスです。
 先生は今、次はロシア語の発音と発声法に力を入れたいと鋭意準備中です。
 また、今回はお茶とお菓子をお出しする予定でいます。♪♪♪楽しみですね♪♪♪
 皆様、お申し込みはどうぞお早めに事務局へ!

横浜ロシア語教室 第120期生徒募集

 月曜~土曜、入門・初級・中級・上級・会話クラス開講中。3クラス・各30分まで見学無料。時間割・内容・料金(会員割引有)等の詳細はホームページをごらんください。


補習サークル「ロシア語寺子屋」

 授業を欠席した分や日頃の授業でわかりにくい箇所の補習の場としてご参加ください。皆さんの独習のお手伝いをします。土曜中級クラス他担当の野口福美先生がサポートに当たります。

 参加費は1回500円、参加資格は横浜ロシア語教室在籍中の生徒限定とさせていただきます。

 補習希望者は5日前までに氏名、クラス名、使用テキスト、補習希望内容をお知らせください。

● 今後の予定
7月27日(日)13:30~15:30
8月31日(日)13:30~15:30
9月28日(日)13:30~15:30

 実施予定日は協会の行事との兼ね合いなどで変更になる場合もありますので、ご了承のほどお願い申し上げます。次月の予定日は、教室の寺子屋掲示板、機関紙およびFacebookでお知らせいたしますので、ご確認ください。

ロシア民族楽器 「バラライカ」「ドムラ」教室

授業予定
(後半)7月12日(休講、後日振替)、7月19日、8月2日、8月23日、9月(2回、未定)

生徒募集クラス
17:00~17:45 ドムラ初級
18:00~18:45 バラライカ初級

講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
会員受講料(1回45分×6回分):3~5名クラス:24,000円、2名クラス:36,000円、1名クラス:54,000円


みなとみらいマトリョミン教室

 マトリョミンは他のどんな楽器とも違う、触らないで弾くという不思議な奏法がとても面白い楽器です。
 ワンフレーズ弾くぐらいなら触れたその日からでもOK。
 可愛さ、不思議さ、ロシアっぽさなどもさることながら、楽器としてのポテンシャルも非常に高く、弾く人の内面を如実に映し出します。
 会社や友人同士の集まりに持って行くと、話題性もパフォーマンス性も抜群で、注目の的です。
 一度、教室に遊びにいらっしゃいませんか。見学、体験も大歓迎です。

日程:毎月1回、土曜日開講

2014年度前期日程:4/6, 5/17, 6/21, 7/19, 8/16, 9/20
※レッスン日に見学随時可能です。発表会、協会行事等で演奏の機会もあります。是非お気軽にご参加ください!

◆アンサンブルクラス(90分)
13:00~14:30 (満席)
◆グループレッスン
Aクラス 14:45~15:45 (空席1)
Bクラス 15:55~16:55 (空席2)

入学金:3,000円(継続の方、休学1年以内の方、当協会会員は免除)
受講料:アンサンブル3,600円×6回=21,600円、グループレッスン3,085円×6回=18,510円
会場:横浜平和と労働会館2階 神奈川音楽センター 音楽ホール
講師:平野 麻里(マトリョミン演奏家、指導者)

組織・財政

組織状況

(2014年6月30日現在)

 今年度年初会員数243名、入会者累計30名、退会者累計40名、6月末会員数233名、年初比▼10名。12か月以上の長期滞納者整理の結果ですが、長期滞納者を出さないような組織的取り組みが大切です。10人の会員減は協会の活動力を低下させ、財政的にも@800/月×12か月10人=96,000円の減収にもつながります。

(柴田)

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2014/6/30
単位:円
摘 要本年度収入前年同期収入対前年同期増減
一般会計967,703977,418-9,715
教育事業4,332,0644,565,950-233,886
一般事業1,630,3802,095,103-464,723
合 計6,930,1477,638,471-708,324
前年同期(単位:円)2013/6/30
摘 要本年度支出前年度支出対前年同期増減
一般会計4,507,9393,799,039708,900
教育事業1,884,2832,092,210-207,927
一般事業1,091,1511,720,810-629,659
支出計7,483,3737,612,059-128,686
当期剰余金-553,22626,412-579,638
合 計6,930,1477,638,471-708,324

貸借対照表 (2014/6/30)
科 目本年6月末残高前年同期残高対前年同期増減
流動資産5,028,8254,383,960644,865
固定資産9,604,7759,604,7750
資産合計14,633,60013,988,735644,865
流動負債83,188083,188
固定負債000
負債合計83,188083,188
純資産14,550,41213,988,735561,677

 収入は総ての項目で前年度を下回った。
 一般会計は僅か乍ら減少した。ほぼ会員1人分の会費に相当する。
 教育事業収入の減少は生徒数の減少によるものである。
 事業収入は対前年度比464,723も減少したが、これは(1)昨年4月のハバロフスクからの旅行団受け入れカンパ153,000円が今年は無かったこと、(2)旅行代金が本年度からはすべて当会を経由せずユーラスツアーズに直接支払われようになったことなどのためである。因みに、前年同期の旅行代金は638,000であったから(1)+(2)=791,000円を差し引いた事業収入は1,304,103円となり、実質では本年度1,630,380の方が326,277円増収となる。
 支出は一般会計が大幅に増加したが、これは事務局員の新規採用に伴うもので謂わば先行投資的意味合いのものである。上半期の決算は553,226円の赤字となったが、目下、新しいWEB・SHOP、On-Line教室の立ち上げ、酒類通信販売免許の取得等、下半期における増収の基礎を築きつつあり、稼働し始める下半期に期待する。

お勧め商品

「実務のロシア語 I / II」一般2,160円 (税込)、会員2,000円

実務のロシア語
著者:徳永 晴美
発行:アーバンプロ出版センター
実務のロシア語 I:ISBN 978-4-89981-241-8 C1087
実務のロシア語 II:ISBN 978-4-89981-242-5 C1087

 著者は、ゴルバチョフをはじめ多数のロシア要人の通訳を務めた、ロシア語同時通訳界の大御所。元NHKロシア語講座講師。
 自らが駆使した実用ロシア語を体系的に整理し、ハンディーな2分冊に収めた本書には、大学でも留学先でも教わることのないロシア語―「日本人が実務で使うためのロシア語」―がぎっしり詰まっている。
 エスコートガイドからビジネスへ、交渉からスピーチ、ボーダレスコミュニケーションへ―地を這い飛翔するまでの『実務のロシア語』は、著者自身も汗をかきながら身につけていったもの。その貴重な知識・情報をおしげもなく公開する。

ウクライナチョコレート「オレンカ」 360円 (税込)

ウクライナチョコレート「オレンカ」
ウクライナ大統領ポロシェンコ氏がオーナーを務める有名チョコレートメーカー「ロシェン」の製品。
くせのない食べやすい味の板チョコレートです。

内容量:100g
原産国:ウクライナ(ロシェン社)
賞味期限:2014年11月9日
※20度以下の涼しい場所で保存してください。

文化・芸能

ユーラシア音楽芸能情報

Русская Десятка ロシア・トップ10

ロシア・トップ10
 ウクライナ情勢が緊迫している中、国際協調を取るか、一手打つかそれとも・・・・・なロシアから、6月第3週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中2曲が初登場、1曲が返り咲きです!

 10位にFANおまたせ、サヴィチェヴァの新曲Невеста。6位には、女の子から90年代ポップスFANまで幅広い層で大人気の才能溢れるユニット・ヴィンターシュの新曲Когда рядом тыが入りました。PVではロシアで人気のコメディアン、ミハイル・ガルスチャンと熱愛する微笑ましいストーリーです。

 第1位に輝いたのは、ヨールカ&ブリトーのデュエット曲Ты знаешь 。今街中で、音楽番組でたくさんかかっています。強敵ニューシャを競り落とし1位に。おめでとうございます!:-)

(チャート詳細と全文はこちらから)

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart、6月9~15日/MOPA)

クラシック音楽

マリヤ・マクサコワとモスクワ・マラジョージヌィ室内オーケストラを聴く

 安倍晋三の独裁者的大暴走で、戦争をする国に逆戻りしてしまいかねない日本、ウクライナ問題で大揺れのロシア、少数民族を抑圧している中国…。世界はどこへ向かおうとしているのでしょうか?

 そんな中で、マリヤ・マクサコワをソリストに迎えたヴァレーリー・ヴォロナ指揮のモスクワ・マラジョージヌィ室内オーケストラの横浜公演に足を運んだので、感想を述べてみたい。

 オケは18人の弦楽奏者からなっており、いずれも20代の若者で構成されているようである。見た目と同じで、彼ら(メンバーは女性のほうが多い!)は若者特有の外連味のない、ストレートで力強い演奏を聞かせてくれた。若さ故に、今は力任せ、といった演奏をしているが、10年後、20年後には経験を積んで、円熟味を増した豊かな音を奏でてくれることを期待したい。

 この指揮者は、ヴァイオリニスト出身とみえ、途中でボスコフスキーばりのヴァイオリンを弾きながらの指揮をしたが、柔らかく豊かな音は、伊達に年を重ねてきたのではないことを私たちに示してくれた。

 ソリストのマクサコワは若くて美人であるだけではなく、長身ですらっとした舞台映えのするプリマで、衣装からステージに登場した時は、ギリシャ劇に出てくるデルフォイのアポロ神殿で信託を告げる巫女に見えた。もちろん衣装は白ではなく、鮮やかな真紅ではあったが。

 ドニゼッティの後にはビゼーのカルメンを歌ってくれた。硬質で伸びのある声は聴きごたえがあったが、若さゆえか、カルメンの色気としたたかさが足りなかった。

 チャイコフスキーとアントン・ルビンシュタインの曲はお国ものだけあって安心して聞けた。初めて聴く曲もあったが、楽しませてくれた。

 彼らを、10年後くらいにもう一度聴いてみたい。そう思いながらホールを後にした。

(金子)

映画・演劇

劇評・東京ノーヴィ・レパートリーシアター「コーカサスの白墨の輪」

(ベルトルト・ブレヒト作、レオニード・アニシモフ演出)
6月7日 於:シアターχ(東京・両国)

コーカサスの白墨の輪
 日本演劇界でなかなか根付かないレパートリーシステム。ロシアから招いた演出家と共に、そのシステムを果敢に推し進めているのが、東京ノーヴィ・レパートリーシアターだ。月1回のペースで10ヵ月にわたり本作とドストエフスキーの「白痴」を上演してきたが、このほど幸運にもその千秋楽に立ち会うことができた。

 宮殿に仕える料理女・グルシェは婚約者・シモンが兵役についたため、都で彼を待つことになった。ある復活祭の夜、反乱軍が領主の宮殿を攻撃。領主は殺され、その妻は赤ん坊を置き去りにして逃亡した。グルシェは赤ん坊を見殺しにできず引き取り、ミハイルと名付ける。命の危険を冒しながら、グルシェは兄の住む町まで逃げ延びる。しかし兄は父なし子を連れたグルシェの体裁を気にし、「もうすぐ死ぬ金持ちの男」と結婚させた。婚礼と葬式が同時に行われたその日、戦争が終わり、シモンが戻ってきた。失望した彼はグルシェの元を去る。領主の妻もミハイルを連れ戻しにやってきて、グルシェは都へ連行された。

コーカサスの白墨の輪
 当時都は無政府状態で、胡散臭いアツダクという男が判事になっていた。ところが彼は大岡越前にも勝るとも劣らない名判決を下し、グルシェと領主の妻の子どもをめぐる争いも担当する。白墨で描かれた輪の中にミハイルを立たせ、彼の両手を引っ張らせるという審理試験を挙行。泣き叫ぶミハイルの声を聞いてグルシェは思わず手を放した。この結果を見たアツダクは、「子どもの母親はグルシェ」と判決を下す。「本当の母親は子どもが痛がることをしない」というのがその理由だった。かくして、グルシェはシモンとも和解し、子どもと三人で暮らしていくことになった。

 グルジアを舞台としているが、物語のベースは中国民話。登場人物はその性格に応じて日本の方言で会話する。グルシェとシモンは東北弁で素朴さを、領主の妻は九州弁で強情さを、アツダクは関西弁で抜け目なさを表現。また、義太夫のような語りを入れるアイディアは、この作品がダイアローグにも語り芸にもふさわしいことを印象づけた。舞台装置はシンプルながら、衣装の多彩さやデザインのおもしろさは他の劇団に見られない。大団円で踊られるレズギンカは、フィナーレにしては少しおとなしく、もっと弾けた感じがコーカサス的だったのではないかと思った。

(文・滝沢/写真・劇団提供)

ユーラシア通信

神奈川県版機関紙「日本とユーラシア」別冊
「ユーラシアスポーツ」第2号 近日発行予定!

アンナ・ポゴリラヤ
オールカラー16P 予価300円+税
内容:世界フィギュアスケート選手権、体操ワールドカップ、全日本体操個人総合、NHK杯体操、卓球荻村杯

写真は世界フィギュアスケート選手権女子シングル4位 アンナ・ポゴリラヤ選手(ロシア)

※第1号(既刊)は協会事務所、またはオンラインショップ「うにべるま~ぐ」でお求めいただけます。


投稿歓迎!

 ユーラシア関連記事、写真、本紙に関するご意見・ご感想など歓迎します。記事は1記事800字以内を目安にお願いします。紙面の都合により若干編集する場合、分割して掲載する場合がありますがご了承ください。ペンネームでの掲載・肩書をご希望の場合はお書き添えください。特に記載のない場合はフルネーム(WEB版では苗字のみ)で掲載させていただきます。締切は毎月末になります。投稿はEメール・郵便・FAXのいずれかで。宛先は下記の通りです。

(機関紙編集部)

催し物情報

キエフ・バレエ~華麗なるクラシックバレエハイライト~

とき:7月19日(土)13:30~
ところ:めぐろパーシモンホール 大ホール
演目:「白鳥の湖」第1幕第2場より、「くるみ割り人形」第2幕より、「海賊」より、「眠りの森の美女」より
料金:全席指定8,000円
問合せ:光藍社チケットセンター 050-3776-6148

チャイコフスキー3大バレエ・ハイライト

とき:8月2日(土)13:30
ところ:新宿文化センター 大ホール
料金:全席指定6500円
問合せ:光藍社チケットセンター 050-3776-6148

フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2014 読売日本交響楽団

指揮:ダレル・アン、「眠りの森の美女」よりワルツ、交響曲第6番「悲愴」ほか
とき:7月29日(火)15:00 ところ:ミューザ川崎シンフォニーホール
料金:S 4000円、A 3000円、B 2000円
問合せ:ミューザ川崎シンフォニーホール 044-520-0200

カワイサロンコンサートin表参道
有森博&長瀬賢弘 ピアノデュオシリーズ
ロシア秘選集Vol.2「縁」~ロシア5人組

とき:7月31日(木)19:00
ところ:カワイ表参道パウセ
演目:バラキレフ「ヴォルガにて」、ボロディン・キュイ・リャードフ・リムスキー=コルサコフ パラフレーズ集、ムソルグスキー「展覧会の絵」ほか
料金:一般3500円、学生2500円
問合せ:カワイ音楽振興会 03-5485-8511

戸田港祭り

とき:7月19日(土)12時30分より
ところ:沼津市 戸田 中央桟橋 等
内容:プチャーチン・ロード・パレード実施、ディアナ号慰霊祭(供養祭)宝泉寺、海上花火大会など
問合せ:戸田観光協会 0558-94-3115
URL:http://www.heda-kanko.com/

H. P. Liddell マトリョミンの小さな演奏会Vol.9 ~花とロマンス~

とき:8月31日(日)19:00開場 19:30開演
ところ:名曲喫茶ヴィオロン(阿佐ヶ谷駅徒歩5分)
チャージ:1,000円(コーヒー付)
問合せ:helen.liddell71@gmail.com

歴史・社会

日露領土問題の歴史(14)

日露領土問題の歴史
 18世紀のロシア帝国の版図拡大において、不可欠の手段となったのが地図である。1552年には、イワン雷帝がモスクワ公国の地図作成を開始、その後、かなり詳細な全国地図がロシアで作られたのは17世紀末の事であった。

 1745年9月13日、『サンクトペテルブルクの帝国科学アカデミーにより地理学的手法と最新の実地検分、観測に基づく、辺境地方を含む全ロシア帝国の全12葉の部分図と左の大帝国の全図とからなる『ロシア地図帳』が編纂、出版された。

 この地図では、ベーリング、シパンベルグ等の航海上の見聞を集大成し、初めてオホーツク海およびその周辺地域がほぼ正確に表示されていた。「日露領土問題の歴史(8)」で紹介したマルチン・ゲルリッツェン・フリースの地図とは比較にならない正確さである。ただし、この地図では未だ樺太南部・蝦夷地は欠落していた。

 1747年 修道司祭イオアサフは千島に渡り先住民布教に当り、1749年までにシムシュ島・パラムシル島のアイヌ208人をロシア正教に改宗させることに成功、18世紀には、中・北千島の多くのアイヌはロシア正教徒となった。(М. В. Осипова: МИССИОНЕРСКАЯ ДЕЯТЕЛЬНОСТЬ РУССКОЙ ПРАВОСЛАВНОЙ ЦЕРКВИ СРЕДИ АЙНОВ КУРИЛЬСКИХ ОСТРОВОВ)

(註)  幌筵島(ぱらむしるとう、ほろむしろとう)は、千島列島の北東部にある島。波羅茂知島(ぱらもしるとう)と表記されることもある。ロシア名はパラムシル島 (о.Парамушир)、英語表記はParamushir。<島の名前の由来>は、アイヌ語の「パラ・モシル(広い・島)」「ポロ・モシル(大きい・島)」から。千島アイヌは「ウレシパモシリ(人を多く育てた島)」とも呼んでいた。パラムシル島のアイヌは ロシア化されていた。

 占守島(しゅむしゅとう)は、千島列島北東端の島。ロシア名はシュム・シュ島(о.Шумшу)、英語表記はShumshu。サンフランシスコ条約締結以来、領有権の帰属は未確定であるが、ロシアの実効支配下にある。元禄御国絵図にある地名「しいもし」や鳥居龍蔵の記録にある「シュモチ」はこの島に当たるとされる。

 <島の名前の由来>は、アイヌ語の「シュム・ウシ(南西・<そこに>ある→南西に存在する、或いは南西に入る)」からとする説があるものの、この島の語源を「シー・モシリ(本島)」とし新知島の語源を「シュム・シリ(西島)」とする説や、占守島を「シュム・シュ(油・鍋)」とし新知島を「シュム・ウシ(南西にある、入る)」とする説もあり、山田秀三は「判断がつかない地名」としている。 ※(註)はウィキペディアより

~続く~

(柴田)