今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2015年10月号 No.648

行事予定

DVD上映会『戦艦ポチョムキン』

戦艦ポチョムキン  6月に企画した上映会ですが、不手際で実施できませんでした。そのため、今回再度の企画をしました。ぜひ、ご参加ください。

 期日は11月8日(日)です。この前日の11月7日(ユリウス暦=ロシア暦10月25日)は、1917年にレーニン率いるボルシェビキによる社会主義革命が起こった日です。ポチョムキンの反乱は日露戦争下。11月革命(ロシア暦では10月革命)は第一次世界大戦下。ともに戦争の中での革命でした。戦争という過酷な状況、全世界からの干渉・妨害の中、きわめて困難な国家建設を強いられたのが旧ソ連なのです。ちなみにこの革命に干渉・妨害したシベリヤ出兵で、最大の兵力を送り、最も長く駐留したのが日本だったのです。

 ポチョムキンの反乱の背景は以前の記事に掲載してあります。今回は社会主義革命の視点での上映会にしたいと思います。

【映画情報】 1925年/ソ連/74分/モノクロ/サイレント作品(ロシア語)/監督: セルゲイ・エイゼンシュテイン/出演: アレクサンドル・アントーノフ、 グレゴリー・アレクサンドロフ、 ウラジーミル・バルスキー他/音楽:ニコライ・クリューコフ/撮影:エドゥアルド・ティッセ/製作会社:ゴスキノ第一工場

【日時】 2015年11月8日(日)午後2時~
【会場】 横浜平和と労働会館5階
【参加費】 300円(黒パン・紅茶代)
【お申し込み】
NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
eurask2@hotmail.co.jp

DVD上映会案内 ノモンハンを知っていますか?
『戦争と人間』第三部完結編

 戦後70年の締めくくり、今年最後の上映会は五味川純平原作「戦争と人間」第三部完結編を鑑賞します。

 第一部から第三部までを上映すると、およそ10時間にも及ぶため、今回は第三部完結編のみを上映します。この第三部完結篇の圧巻は、ノモンハン事件の正確かつ精密な戦闘シーンが描写されていることです。ノモンハン、この聞きなれない言葉をご存知でしょうか。これは高校の日本史教科書では、欄外の説明にほんの一行にも満たない記載があるだけです。1938年の張鼓峰事件と併記され、「1939年ノモンハンにて日ソ両軍の武力衝突があった」とあるだけです。

 しかし、このノモンハンは「擬似太平洋戦争」とも言える、日本陸軍が初めて体験した近代戦であったのです。近代科学兵器に対する精神主義が見事に描かれています。未見の方のために詳述はできませんが、「天皇陛下から賜ったこの38式歩兵銃を何と心得ているか」「(弾が)当たらないのは軍人精神が入ってないからだ」「チャンコロ(中国人に対する蔑称)みたいな負け犬根性は許さんぞ」などのセリフがあります。精神力で相手に勝てるのなら何も技術と生産力を軍備にそそぐ必要はありません。

 そして、軍人の恐ろしさも垣間見えます。このノモンハン事件は関東軍の独断専行で行われました。東京で陸軍首脳がこのことを議題にした際、当時の陸軍大臣板垣征四郎は一言「一個師団ぐらい、どうだっていいじゃないか。関東軍の好きなようにやらせろ」と言うのです。一個師団と言うのはおよそ2万人の兵員数です。2万人の命を「どうだっていい」ですませるのでしょうか。そのために、この地獄の戦場に送られた兵士は、その家族はどうなるのでしょうか。このノモンハンを映像化した作品は、『戦争と人間』以外にはありません。その意味では大変貴重な映像でもあります。是非、この機会にご覧ください。

【日時】 2015年12月23日(水・祝)午後2時~
【会場】 横浜平和と労働会館5階
【参加費】 無料
【お申し込み】
NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
eurask2@hotmail.co.jp

教室案内

横浜ロシア語教室 第123期 10月開講

 123期の授業は10月14日(水)より順次開講予定。

 新規には、初めてロシア語を学ぶ方のための「入門」クラスを土曜午前(織田桂子先生担当)に、ロシア語通訳界の大御所・徳永晴美先生の本格的ロシア語ゼミ「徳永ゼミ 講読からアクティヴコミュニケーションへ、テキストからディスカッションへ」を水曜夜に開講します。

 また、既存クラスへの編入も可能です。詳しくは教室ホームページをごらんください。

 見学3クラス・各30分以内まで無料。受講お申し込み・お問い合わせは教室事務局まで。


第123期ロシア語体験講座報告 (1)「わくわくロシア語体験」

わくわくロシア語体験 わくわくロシア語体験

 9月26日の体験講座を迎えるにあたり、大先輩の野口先生、織田先生のアドバイスを受け、私はアルファベットを説明することになりました。

 当日は30分間のコーナーを担当させて頂きましたが、生徒さん達の12の瞳をわが身に受けとめるだけの肝が据わっておらず、ベテランの織田先生の落ち着いた説得力あるお話しぶりと比べると私のパフォーマンスは穴だらけで反省ばかりです。

 まず、もっと生徒さんを巻きこんでどんどん発話を促すことが必要であったと思います。

 難しい発音にぶつかると生徒さんの顔は曇るようでしたが、「できる!」、あるいは「知らなかったけどできた!」と言うときには瞳が輝いていました。

 そして、アルファベットソングを歌ったのですが、それよりも、「え!こんな歌もロシア語の歌になっているんだ」というようなグローバルソングを選び、この歌が歌えるようになりたいなと思ってもらう戦法をとったら良かったかもしれません。

 いかに耳慣れないロシア語に親近感、そして「謎のベールを剥いでみたい」という好奇心を持ってもらえるかが「ちょっとだけ覗いてみようかな」と言う人の受講を決めていただくカギであろうと体験講座が終わってから感じた次第です。

 ロシア語は目的がないと習わない言語である、はじめから習うぞと思っている人しか来ないとステレオタイプ的思いこみが私自身あると思います。

 興味を持って勉強したくなる言語にするには、ロシア語は難しいと思ってたけど、そうでもなさそうだぞという方向からと、難しいけどなんだか面白そうだぞという方向の2方向からの生徒さんへのアプローチが必要だと強く感じました。

(竪山 洋子/横浜ロシア語教室講師)

第123期ロシア語体験講座報告 (2)「徳永ゼミ」

徳永ゼミ体験

徳永ゼミ体験  10月開講の近づく9月26日に『徳永ゼミ体験講座』が行われました。

 案内によると『徳永ゼミ』は「中級レベルの学習を終えている」「受講希望人数が多い場合は体験講座が選考の場を兼ねる」とのことで、とても緊張しました。

 この時点で他とは違う何かを感じていたのですが、講座が始まって間もなくそれは間違いではないとわかりました。

 ゼミのタイトルどおり「話すこと」に重点が置かれています。「話すこと」の大切さは、当協会での徳永先生の講座(2014年に行われました)でも触れられていたことをご記憶の方もいると思います。

 事前に届いたテキストのテーマは、正直苦手な分野。

 訳すだけでも多くの時間をとられそうです。準備なしで授業に出られるかというと、それは厳しい。

 しかし、懐かしいこの感じ。ロシアで勉強していた頃の緊張感とワクワク感を久しぶりに思い出しました。

 先生と参加した皆さんのやりとりとテンポの速さに戸惑いつつも、楽しさも見つけることが出来ました。

 私にとっては、しばらくお休み状態だったロシア語を本気で学びたいという気持ちにさせてくれた1時間30分でした。

(文・杉山/写真・桜井)

徳永ゼミ体験 徳永ゼミ体験

第2回 ロシア語講師のためのミニシンポジウム
「ロシア語教室での直接教授法」

ミニシンポジウム  10月3日(土)14時より、「第2回ロシア語講師のためのミニシンポジウム」が行われました。

 外国人対象ロシア語教授法を専攻した日本でも数少ない存在であるタチヤーナ・シプコーワ先生が「ロシア語教室での直接教授法」をテーマに発表し、123期より当教室でゼミを開講することになった徳永晴美先生からもロシア語でびっしり書かれた資料と折々のコメントをいただきました。

 シプコーワ先生は、直接法、間接法、折衷法、速習法といった様々な教授法について紹介、その後自らが実践している直接法について、美しく聞き取りやすい発音のロシア語で、言葉が溢れ出て止まない様子で説明しました。

 生徒の目的によって適切な教授法は異なりますが、その言語のみで教える「直接法」は、教師が外国語を話せない・多国籍の生徒が1クラスに集まっている・生徒がすぐに会話を身につける必要がある・訳せない表現を直に体得する等の場合に適しています。授業では話すことと聞くことに重点を置き、読み書きは宿題として行います。生徒がわからない言葉は訳す代わりに易しいロシア語に言い換えて説明します。文法や文学の解説にはやや不向きで、コミュニケーション中心の授業は日本人に多い内向的な生徒にとって難しい点もあるようですが、身の周りの物事や絵カードや動画などの視覚教材を豊富に用いて理解の助けにし、例えば文法なら「自分の職業」を紹介し合う中で名詞の性を、「今週したこと」で完了体を、「時間(何時に何をした)」で過去形を…と、日常生活と関連付けて習得させます。

 シプコーワ先生は1つの授業に4~5時間かけて準備をするそうですが、教師の仕事は授業の15%ほどで、残りの85%は生徒の仕事だということです。

 参加者は横浜ロシア語教室や大学や他の語学学校で教えているロシア語教師、徳永先生の教え子、当協会役員など、ロシア語教授法に関心のある12名。発表の中やその後の懇談会で、教師の方々の実体験、教科書や教授法の問題点、習う側からの印象、授業の時間配分(「計画なきものは授業ではない」シプコーワ先生談)など、様々な興味深い話が伺えました。ロシア語教科書数冊の編纂に当たったある先生の「現代のロシアで一般的に使われている表現を入れようとすると、それを否定して古めかしい表現に変えさせようとする古い先生方がいて、抵抗するのが大変だった」というエピソードに対して、徳永先生が「教師は自分が習った時の教え方を繰り返す傾向がある。もしかしたら今教室で使われているのは100年前の教え方かもしれない。教師は教授法を常に勉強し続け、更新していかなければならない」と仰っていました。

 言葉を生業とする先生方の話は尽きないようでしたが、瞬く間に終了時刻が来てしまいました。第3回の開催も望まれます。

ロシア民族楽器 「バラライカ」「ドムラ」教室

 毎月2回、土曜日に開講します。魅力的なロシアのメロディーを、ご自分の手で体感してみませんか?初めての方でも歓迎、楽器レンタルもご相談に応じます。

2015年度後期(前半)10/3, 10/31, 11/7, 11/21, 12/5, 12/19

生徒募集クラス
17:00~17:45 ドムラ初級
18:00~18:45 バラライカ初級

講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
会員受講料(1回45分×6回分):3~5名クラス:24,000円、2名クラス:36,000円、1名クラス:54,000円


みなとみらいマトリョミン教室

 マトリョミンは他のどんな楽器とも違う、触らないで弾くという不思議な奏法がとても面白い楽器です。
 ワンフレーズ弾くぐらいなら触れたその日からでもOK。
 可愛さ、不思議さ、ロシアっぽさなどもさることながら、楽器としてのポテンシャルも非常に高く、弾く人の内面を如実に映し出します。
 会社や友人同士の集まりに持って行くと、話題性もパフォーマンス性も抜群で、注目の的です。
 一度、教室に遊びにいらっしゃいませんか。見学、体験も大歓迎です。

日程:毎月1回、土曜日開講

2015年度後期予定:10/24, 11/21, 12/19, 1/16, 2/20, 3/19

※レッスン日に見学随時可能です。発表会、協会行事等で演奏の機会もあります。是非お気軽にご参加ください!

◆アンサンブルクラス(90分)  13:00~14:30 (満席)
◆グループレッスン
 Aクラス 14:45~15:45 (満席)
 Bクラス 15:55~16:55 (空席1)

入学金:3,000円(継続の方、休学1年以内の方、当協会会員は免除)
受講料:アンサンブル3,600円×6回=21,600円、グループレッスン3,085円×6回=18,510円
会場:横浜平和と労働会館2階 神奈川音楽センター 音楽ホール
講師:平野 麻里(マトリョミン演奏家、指導者)

組織・財政

組織状況

(2015年9月30日現在)

 今年度年初会員数219名、入会者累計26名、退会者累計41名、9月末会員数204名。総会で決定した拡大目標年間70名の純増に対し現状は逆に15名の純減。前号でこのまま続けば200人割れは時間の問題と指摘しましたが残念なことにその方向に推移しています。理事会でこの問題を議題として取り上げ原因と対策を真剣に討論する必要があります。

(柴田)

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2015/9/26
単位:円
摘 要本年度収入前年同期収入対前年同期増減
一般会計1,308,7931,640,666-331,873
教育事業6,715,9707,507,889-791,919
一般事業1,594,5682,225,214-630,646
合 計9,619,33111,373,769-1,754,438
前年同期(単位:円)2014/9/26
摘 要本年度支出前年度支出対前年同期増減
一般会計5,082,2546,612,318-1,530,064
教育事業2,527,5742,730,179-202,605
一般事業1,594,5682,225,214-630,646
支出合計9,619,33111,373,776-1,754,445
当期剰余金1,105,434530,520574,914
合 計9,619,33111,373,769-1,754,438

貸借対照表 (2015/9/26)
科 目本年9月末残高前年同期残高対前年同期増減
流動資産6,780,7826,038,542742,240
固定資産9,604,7759,604,7750
資産合計16,385,55715,643,317742,240
流動負債2,1229,159-7,037
固定負債000
負債合計2,1229,159-7,037
純資産16,383,43515,634,158749,277

 財政は協会活動を反映し一般会計、一般事業ともマイナスとなっています。教育事業は健闘、協会財政の大黒柱となっています。

(柴田)

お勧め商品

2016年ロシアカレンダー (2) ロシア料理 1,080円(税込)

2016年ロシアカレンダー ロシアの御馳走12種類が楽しめる2016年カレンダー。
レシピはついていませんが、眺めているだけでも満腹になりそうです。
ロシア式テーブルセッティングの参考にもどうぞ。

材質:紙
サイズ:縦33.5cm×横23cm
制作・出版:メードヌイ・フサードニク社(ロシア・サンクトペテルブルグ)
※メール便発送不可

2016年ロシアカレンダー (3)ソ連のポスター 1,080円(税込)

2016年ロシアカレンダー ソ連時代の有名ポスターを12種類集めた2016年カレンダー。
「君 義勇軍に志願したか?」などは見たことがある方も多いのでは。
絵を見ながらアジテーションの文言を読み解いてみてください。

材質:紙
サイズ:縦33.5cm×横23cm
制作・出版:メードヌイ・フサードニク社(ロシア・サンクトペテルブルグ)
※メール便発送不可

バラライカ・プリマ弦セット(カーボン) 1,944円 (税込)

バラライカ・プリマ弦セット ソリストレベルのプロフェッショナル奏者向けに作られた、バラライカ・プリマ(ソプラノ音域)用の弦3本セット。
カーボン製のミ弦は、従来のナイロン製の弦に比べて、直径が細いにもかかわらず張力が強く、より明るい音色で響きます。

第1弦:ラ弦(スチール製、太さ0.30mm、張力8.3kg)、
第2弦:ミ弦(カーボン製、太さ0.86mm、張力8.0kg)、
第3弦:ミ弦(カーボン製、太さ0.86mm、張力8.0kg)各1本
張力:24.3kg
製造:ガスパジン・ムジカント社(ロシア・モスクワ)
※単品ならメール便発送可能

ジョージア(グルジア)ワインあります

ジョージア(グルジア)ワイン 現在計4種類を協会事務所1階で販売中。
銘柄と価格は次の通りです。
● ツィナンダリ(白・辛口 1,400円)
● アラヴェルジ(白・やや辛口 1,200円)
● アラヴェルジ(赤・やや辛口 1,200円)
● アラザニ(赤・甘口 1,200円)
※取り扱う銘柄は随時変更される場合があります。売り切れの際はご容赦ください。
※現在発送は承っておりません。当面は店頭販売のみとさせていただきます。

文化・芸能

ユーラシア音楽芸能情報

Русская Десятка ロシア・トップ10

ロシア・トップ10  ななかまどの木々が赤に黄色に燃ゆるロシアから、9月第3週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中3曲が新曲。2曲がTOP10に返り咲き!

 9位に、エンマ・エムの«Штрихкоды»(バーコード)が入りました。PVは未来的(?)作品。人々は大量の監視艇によって腕に刻まれたバーコードで識別される監視社会。監視艇の捜査から逃れながらも、謎のバーコード「M」を至る所に貼付していく、謎の女性を演じています。8位に、ダイネコの新曲«Жить вдвоём»(二人で暮らす)。3位に、露芸能界の貴公子、ラザレフの新曲«Это всё она»(全て彼女の仕業)。1位は、5staFamilyからスピンオフした女性Voカラウロワの«Ты не такой»(君はそんなんじゃない)です。先月は初登場3位にランクインしましたが、可愛らしくコケティッシュな歌声で手強いIOWAを10位に蹴落として首位奪取。おめでとうございまーす!:-)

(チャート詳細と全文はこちらから)

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2015年9月14~20日/MOPA)

画像(c)instagram, pravdapfo.ru, vk.com/emmaem

映画・演劇

映画「草原の実験」

(原題:Испытание アレクサンドル・コット監督作品 2014年)

「草原の実験」

 「ザ・トライブ」に続き、またしても「台詞のない映画」が大傑作だ。「草原」「実験」というキーワードから、おのずと内容は予想できるものだが、ラストシーンの衝撃は宣伝文句以上だ。昨年の東京国際映画祭で最優秀芸術貢献賞などを受賞した作品で、この機会にユーラシア関係者にもぜひ観ていただきたい1本。

「草原の実験」 「草原の実験」

 父と二人でステップの一軒家に暮らす少女ジーマ。時代や場所は明示されないが、おそらくソ連時代のカザフ共和国。毎日トラックで仕事に向かう父を送りだし、壁に貼られた世界地図を眺めながら父の帰りを待つ。彼女に恋するカイシンは、彼女を馬で家に送ることに幸せを感じている。そこに青い目の少年マクシムの出現により、彼らはジーマをめぐる三角関係となる。ある日、父親の体調が急変、男たちがやってきて家じゅうをガイガーカウンターで捜索し始める。父親は病院に送られるが、退院してきた日に静かに息を引き取る。一人で埋葬を余儀なくされるジーマ。旅に出ようとした彼女の行く手にあったのは鉄条網と広大な草原だった。

「草原の実験」  旅をあきらめた彼女を待っていたものはカイシン一家の求婚。しかし彼女は拒否する。やがてカイシンとの決闘でふらふらになったマクシムが転がり込み、二人は不思議な平穏を取り戻すが、そこに「衝撃」の事態が発生する。いらないものを一切排除した映像が美しく、そこにタルコフスキーのDNAを感じる人もいるだろう。しかし、核戦争の予感と恐怖を表現したタルコフスキーとの違いは、コット監督が旧ソ連での実話をもとにしたという点である。カザフスタン以外にも中国の新疆ウイグル自治区がこうした核兵器の実験場とされ、似たような話を聞いているだけに、父の仕事は何だったのかなどさまざまな疑問がわく。衝撃のあともじわじわ効く作品だ。

(文:滝沢 三佐子/写真(c)Igor Tolstunov’s Film Production Company)


催し物情報

映画『ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏』

「ボリショイ・バビロン」 2015年9月19日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開
配給:東北新社
監督・撮影:ニック・リード/製作・共同監督:マーク・フランチェッティ
製作総指揮:サイモン・チン(アカデミー賞受賞『マン・オン・ワイヤー』『シュガーマン奇跡に愛された男』)、マクシーム・ポズドローフキン
出演:マリーヤ・アレクサンドロワ、アナスタシア・メーシコワ、マリーヤ・アラシュ、セルゲイ・フィーリン、ウラジーミル・ウーリン、ボリス・アキーモフほか
原題:BOLSHOI BABYLON/2015/イギリス/ロシア語・英語/87分/日本語字幕:古田由紀子/字幕監修:赤尾雄人/配給:東北新社/Presented by クラシカ・ジャパン/宣伝: セテラ・インターナショナル

ヴェルトグラード・トリオ 当協会でチケット取扱中!

メンバー:ユーリー・ストゥパーク(バラライカ)、アレクセイ・ステパーノフ(ギター)、アレクセイ・パルフョーノフ(バリトン)

● 世田谷公演 2015年10月21日(水)18:30~20:30/烏山区民会館(東京都世田谷区南烏山6-2-19)/一般2,500円、会員2,000円、学生2,000円/主催:ヴェルトグラード世田谷公演実行委員会(日本ユーラシア協会世田谷支部080-6744-1917、日本ユーラシア協会調布狛江支部090-3507-9008)

● すみだ公演 11月2日(月)19:00~21:00/すみだトリフォニーホール小ホール/お問い合わせ: ヴェルトグラード・トリオすみだ公演実行委員会 03-3429-8231/料金:一般3,000円、会員・学生2,500円

ユーラシア通信

タジキスタン旅行記 第2回「民族衣装が普段着」


タジキスタン

 前回は「とにかく暑い」という話題に終始してしまった旅行記を続けるにあたって、今度は名所の紹介でも書くべきか…と思ったのですが、残念なことに、少なくともドゥシャンベとその近郊に関しては、「世界一大きな国旗」「中央アジア最大の図書館」というような、そこにしかないものもあるにはあるのですが、あまり印象に残らなかったのが正直なところでした。

タジキスタン  タジキスタンに旅して、暑さを除いて最も印象に残ったのは、そこに住む人たちの姿でした。街に出てみて驚いたのは、女性の大半が民族衣装を着ていたこと。タジキスタンの女性の民族衣装は、「アトラス」と呼ばれる足元までの長さがあるワンピースに、スカーフ、ズボンを組み合わせたものが一般的で、色も模様もこれといった決まりがあるわけではなく、赤、青、黄、緑、水玉、豹柄…あらゆる色と模様が使われています。鮮やかな衣装の女性たちが集まっているのを見て、最初は何かのお祭りかと思ったのですが、あちこち歩いているうちに、それが普段着だということが分かってきました。

タジキスタン  同様の民族衣装はウズベキスタンにもありますが、現地在住の友人によると、ウズベキスタンでは民族衣装を着用しているのは主に年配の女性で、若い女性は洋服派が多いとのこと。それに対してタジキスタンでは、小さな女の子からおばあさんまで、幅広い年代の女性が民族衣装を着ています。山奥の村ならいざしらず、首都のどまんなかでこんな光景が見られるのは、中央アジアでもタジキスタンだけでしょう。

 ところで、他方の男性はというと、こちらは洋服派がほとんどでした。ただし年配者については、トゥッピと呼ばれる角形の民族帽をかぶり、仙人のようにひげを伸ばした人をよく見かけました。僕も一つおみやげに買ったのですが、どうも似合いません。民族帽は相応の「年の功」があってこそ映えるのかもしれません。

(桜井)

賢治祭に思う 2015・9・21

 毎年9月21日は岩手県花巻市で『賢治祭』が開催されます。今年はシルバーウィークが幸いしました。関戸も連休を利用して参加しました。

 賢治祭の参加以外にも、花巻市内の賢治ゆかりの場所へあちこちと足を運びました。その際、思わず足を止めて、注視した文学碑がありました。「世界が全体幸福にならない限り個人の幸福はあり得ない」。宮沢賢治の心を一言で表しています。

 宮沢賢治は声を大にして戦争反対を訴えたことはありません。しかし、その作品の中にはあちこちに命を大切にすること、平和を愛することが盛り込まれています。『烏の北斗七星』では、「ああ、マジエル様、どうか憎(にく)むことのできない敵を殺さないでいいように早くこの世界がなりますように、そのためならば、わたくしのからだなどは、何べん引き裂かれてもかまいません。」と平和への願いを訴えています。その宮沢賢治が死去した年(1933年)に小林多喜二が虐殺されたのです。さらに付け加えると神奈川県連の柴田会長が生まれたのも同じ年です。

 賢治祭に参加し、改めて感じたのは宮沢賢治とロシアの関係です。賢治は1923年7月31日から8月12日にかけて、北海道経由で当時の樺太(現サハリン)を旅行しています。直接の目的は樺太の王子製紙に勤務している盛岡高等農林学校時代の先輩を訪ねて、当時勤務していた稗貫(ひえぬき)農学校(現岩手県立花巻農業高校)の教え子の就職を依頼することでした。研究者の間では、それは名目であり、実際は前年死去した妹トシの魂が北へ誘ったというのが定説になっています。北へ。北海道を超えて、命の危険さえある樺太へ。この旅行のことは作品『春と修羅』の「オホーツク挽歌」に詳しく記されています。

 賢治とロシアの関わりに気づき、賢治の平和への思いを強く感じた賢治祭となりました。関戸も教師宮沢賢治を目標にして教壇に立っていきたいです。

(関戸)

賢治祭余録 2015・9・22

 賢治祭の翌日、せっかくの機会なのでNHK朝ドラの『あまちゃん』の舞台となった岩手県久慈へ。万葉集の中にも「北限の海女」と言われることが記載されています。小袖海岸の海女センターでは素潜りの実演もありました。

 その帰り際、国道281号線を走っていると『三船久蔵記念館』の看板が。「おっ、これは」と思い、車を止めて中に入りました。近代柔道の創始者で講道館十段の実力者。伝説の「空気投げ」で有名な柔道家です。その出生から、オリンピックに柔道が採用されるまでのことがよくわかりました。

 そして、意外に思ったのは柔道十段だけでなく、何と将棋でも三段、書道でも五段の腕前であることでした。名人・達人と言われているだけに、その道一筋とばかり思っていたのですが。「動の中に静あり、静の中に動あり」という言葉が掲げられていました。柔道のように激しい動きをするスポーツだからこそ、心と精神を小さな盤面や和紙の中に集中させることが大事だというのです。一枚の鏡のように、柔道をする自分を将棋や書道の中に見出し、盤面や和紙に集中して向かう自分を畳の上で現すというのです。一つのことしか知らない、できないというのは本当の意味の名人・達人にはなれないということを感じました。

 これは、そのまま私たちの友好運動につながるのではないでしょうか。ユーラシア協会は旧ソ連を構成していた国・地域の人々との友好を目的としています。「ロシア」だけではなく、「ウクライナ」とも仲良くしていかなければいけません。そのためには歴史的事実を認識しなければいけません。一つのことしか知らないと判断を誤ります。誤りに気付くのは他のことをきちんと知っているからです。70年前の悲劇は「日本よい国清い国、世界に一つの神の国」と、もの心ついた時から叩き込み、「日本より強い国などない」と盲信させた結果です。

 「物指しは一つではなく、多くあれば正しく測れる」ということを気づかせてくれた記念館見学でした。

(関戸)

「安全保障法制法案」(通称:安保法案または戦争法案)の成立に思う

会長 柴田 順吉

 近年、「国防」予算の不足に悩む米国からの強い要請によって、この法律は昨年のオバマ・安倍会談、米軍・自衛隊幹部会談での約束通り強行採決されました(野党は議事録に採決の記録が無いので無効と主張)。これによって、法案審議の過程で明らかにされたように、安倍総理は自分の判断で(閣議>電話持ち回り、国会>事後承認が可能なので)事実上、地球上のどこでも、いつでも日本が米軍の戦争の後方支援(兵站)を出来るようにしました。兵站は米軍の教科書にも書かれている通りそれ自体が最も危険な戦闘行為です。

 戦後、米国はアイゼンハウアー元大統領が追想録に記したように、朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン戦争、湾岸戦争、イラク戦争など大義なき戦争を軍産複合体の要求に基づいて続けてきました。そして今、シリアでは米国が反政府勢力を支援して空爆を含む広範な軍事援助を行ない、ロシアがアサド大統領の現政府を支援して同様な援助を行なっています。双方はI・Sに対する軍事作戦を大義名分にしていますが、本質は現政権を打倒しようとする米国とアサド政権を擁護するロシアとの代理戦争になっています。

 本来ならばシリアの事はシリア国民に任せるべきことなのです(民族自決)。

 シリアでは米国の軍用機とロシアの軍用機が空中戦を演ずる現実的可能性が生じています。この事は米ロ両国が公然と認めています。不幸にしてここで軍事衝突が偶発し日本が米国から兵站を依頼された場合、安倍総理は断れるでしょうか?答えはNO! です。日本政府は戦後一貫して米国の行ったすべての戦争を支持し、協力してきました。イラク戦争のように米国自身が誤りを認めているような戦争でさえ日本政府は未だに頑として非を認めていないのです。

 シリア内戦で米国政府の要請により日本が米軍の兵站に参加した場合、それはロシア側から見れば実質的に第二次ロ日戦争の勃発を意味します。結末がどのようなことに成るかは賢明なる読者のご想像にお任せします。

 私達の協会は2,000万人を超す犠牲者を出した前大戦の教訓から戦後一貫して国際紛争は話し合いで解決することを主張してきました。政府が軍需産業の利益を代弁して戦争する事を許さないようにするには当事国の国民同士の広汎な相互理解と親善が決定的に重要です。

 戦前のほとんどの日本国民は厳重な言論統制の下、日本についても、外国及び外国人に就いても正しい理解を持つことが出来ませんでした。私達80歳世代は子供の頃から学校で「神国日本」、「鬼畜米英」、「赤鬼ロシア」と教えられてきました。こうした「教育」が戦争を許す結果となったのです。

 今はどうでしょう? 米国の「保護」下にある日本では新聞もテレビもラジオもアメリカ化されています。日本には米国の文化、情報が満ち溢れていますが一衣帯水のロシア、朝鮮半島、中国の正しい情報は僅かしか入ってきていません。私の孫は私がハバロフスク旅行に誘ったら「ロシア、殺し屋、おそロシア」だから嫌だと言いました。私は、今は戦前の天皇制政府に代わって、米・日両政府による日本人の洗脳が行われていると感じます。憲法で禁止されている教育への政府の干渉も教科書の検定、採択と言う形で公然と行われています。

 今こそ、私達は戦争の温床を無くすため、草の根の交流を通じて日本国民とユーラシア諸国民との相互理解と親善のために最善の努力を尽くすべき時です。協会の諸活動を、創意工夫を凝らし、発展させ、活動の原動力となる会員を増やしてゆきましょう。

「ユーラシアスポーツ」 第6号刊行、全国から注文殺到!

ユーラシアスポーツ第6号  身近にあるスポーツから国際競技会まで幅広くカバーする「ユーラシアスポーツ」第6号が刊行されました。 表紙は体操日本代表の白井健三選手。アジア選手権では得意の床で金メダル獲得。10月下旬の世界選手権でも活躍が期待されます。

 会員の皆様には機関紙10月号に1冊無料で同封いたします(2冊目以降は有料、1部324円)。ぜひごらんください。

 日本選手を中心とする体操大特集となった最新号の内容は以下の通りです。
【体操】第54回NHK杯(P2-3)
【体操】第69回全日本体操種目別選手権(P4-5)
【フィギュアスケート】ドリームオンアイス2015(P6)
【サンボ】第41回全日本サンボ選手権プーチン杯(P7)
【フィギュアスケート】フレンズオンアイス2015 (P8)
【新体操】第24回全日本クラブ選手権(P8)
【体操】男子日本代表強化合宿(P9)
【体操】全日本ジュニア体操競技選手権(P9)
【体操】第6回アジア体操競技選手権(P10-15)
B5版、オールカラー、全16ページ。

 9月末、当協会通販サイト「うにべるま~ぐ」で販売を開始したところ、ブログやツイッターで知った全国の体操ファンから注文が殺到。 10月23日から行われる世界体操選手権を前に、現在一般向け専門誌のない体操競技を特集するとあってご期待いただけたようです。 日頃1~2名のスタッフで運営している協会事務局では前代未聞の事態に大わらわ、嬉しい悲鳴となりました。

【ご注文を検討中の一般の方々へ】
 ユーラシアスポーツご注文ページからどなたでもご注文いただけます。
 メール便での配送をお選びの場合は送料無料ですが、銀行振込か郵便振替でのご入金確認後の発送となります。
 なるべく早く読みたい方は、お振込後すぐにEメールtorgovlya_a@hotmail.comかFAX 045-201-3714まで振込明細書を送っていただければ少し早めに発送できますので、よろしくお願いいたします。

Eurasia Gallery

第17回 大河アムール・ハバロフスク市民交流の旅 (撮影・藤井)

サマーキャンプ「オケアン」
ハバロフスク郊外の児童サマーキャンプ「オケアン」にて

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(機関紙編集部)

歴史・社会

日露領土問題の歴史(28)

F.D.ルーズベルト(Wikipediaより)  ソ連の対日参戦を正義と見るか? 不正義と見るか?意見は分かれています。

 ソ連対日参戦はソ連自身の発案ではなく、ヤルタ協定により米国、英国、中国の要請によって行われました。戦後、国連安保理常任理事国はこれら4カ国とフランスが務めていました。5常任理事国のうち4カ国までもが、ソ連の対日参戦要請に一体となっていますから、現実的問題として戦後政治でソ連対日参戦を不正義とする日本政府の考えが国際的に受け入れられる余地はないのです。

 ソ連対日参戦と千島・樺太のソ連領への編入は戦争の早期終息、米軍の損害減少を望む米大統領ルーズベルトの提案によるものですが、不思議なことに日本政府が米大統領のこの提案を不当と非難するのは聞いたことが有りません。 日本の対中、対露領土問題に関して米国は常に「No comment」です。

 ソ連の対日参戦をどう考えるべきかという事は中国東北部(満州)・南樺太・千島でそれぞれ異なります。 ソ連対日参戦の大部分は中国東北部であるため、ソ連対日参戦を大まかに評価するならば、中国の認識に従って、参戦ソ連軍は「正義の解放者」と言う事に成ります。しかし、この認識は、南樺太・千島には当てはまりません。 

 北方領土(あるいは千島・南樺太)の領有は日本とロシアと、どちらが正義か?

 千島や樺太にはもともとアイヌの人たちなどが住んでいました。北からはロシアが、南からは日本が侵入し支配しました。北から侵入するのと、南から侵入するのとでは、どちらが正義かといったところで、全く無意味です。

 和田春樹氏は次のように述べています。

『クリル諸島とサハリンというアイヌの土地に攻め込んだロシアと日本は支配したところを自らの領土としようとして、互いに争いあった。第二次大戦後はソ連がサハリンもクリル諸島もすべてをわがものとしてしまったのに対して、日本はそれではあんまりではないか、すこしは日本によこしなさいと言っている。理屈はいろいろつけているが、赤裸々に言えば、そういうことである。だから、争いがあっても、本質的対立にはならない。』 (http://www.wadaharuki.com/ )

続く

写真はF.D.ルーズベルト(Wikipediaより)

(柴田)