今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2017年4月号 No.666

行事予定

春の訪れをパスハとともに
~横浜ハリストス正教会復活大祭見学~

横浜ハリストス正教会復活大祭  横浜ハリストス正教会での見学も今回で3年目となります。東京のニコライ堂まで行かずとも、地元横浜の正教会でのパスハ(復活大祭)を一緒に見学しませんか。入場・見学は以下の案内の時間内ならば自由にできます。正教会内部はミニ博物館・ミニ美術館とも言えるほど、華麗で荘厳なものです。イコンなども間近に見ることができます。ロシアの芸術に触れる大変良い機会です。

 また、私たち日本国民は好むと好まざるとに関わらず、仏教の仕来たりの中で日常生活を過ごしています。同じようにロシアをはじめとしたユーラシア諸国民もロシア正教の仕来たりの中で暮らしています。相互理解のためにも意義ある見学です。春の訪れをパスハとともに感じませんか。

横浜ハリストス正教会復活大祭 日時:2017年4月16日(日)9:00~13:00
集合場所・時間:横浜市営地下鉄三ッ沢下町(出口2、地上)8:30
場所:横浜ハリストス正教会(神奈川区松ヶ丘27-11)
持ち物:スカーフ(女性のみ)
※儀式は起立して行います。体調にはご留意ください。

4/16(日)第1回現代ロシア映画鑑賞会『続・運命の皮肉』

『続・運命の皮肉』  定期的に開かれている「ロシア映画鑑賞会」に姉妹編ができました。日本未公開、または上映機会が少ないマニアックな作品を主に鑑賞。そのため字幕がないものもありますが、詳しい解説をつける予定なのでご安心を!今回は時期はずれながら、ロシアの大晦日定番ラブコメ「運命の皮肉」(1975)の続編、「続・運命の皮肉」(Ирония судьбы.Продолжение / 2008)を鑑賞します。

とき:4月16日(日)14時から(上映時間は113分)
ところ:横浜平和と労働会館5階 当協会教室
資料代:500円
※資料作成のため、できるだけ事前にお申込ください。

内容:「運命の皮肉」で運命的な出会いを遂げたジェーニャとナージャ。皮肉なことに二人は結ばれず、もとの鞘に戻って結婚、息子と娘を持つ親となった。しかしナージャは離婚。ジェーニャもナージャを想い続けていた。二人の子どもがまたまた運命的な出会いをするが、その結末はいかに。出演=コンスタンチン・ハベンスキー(「ナイト・ウォッチ」)、 エリザヴェタ・ボヤルスカヤ(マールイ・ドラマ劇場「たくらみと恋」で2月に来日)、バルバラ・ブリリスカ(ナージャ役)、アンドレイ・ミャフコフ(ジェーニャ役)など往年の配役が登場。

~「こどもの日」にちなんで ~
5月14日『雪の女王』『鉛の兵隊』DVD上映会開催!

雪の女王  今年も楽しいゴールデンウィークがやってきます。その「こどもの日」にちなんで、ロシアアニメを楽しみましょう。

 かつて、旧ソ連はアニメ制作では世界的な権威でした。それは、「アニメーションは児童の情操教育に大変有意義である」との国家的認識があったからです。そのため、ディズニーよりも多くのアニメを制作していたと言われています。

 その数ある作品の中で、今回は「雪の女王」を上映します。ある仲良しの少年少女がいました。ふとした時に、少年は「雪の女王」を怒らせてしまいました。そして、罰として「雪の女王」の宮殿に連れ去られてしまうのです。残った少女は、会いたい一心で少年を探しに出かけます。その旅の途中で、様々な出来事が……。

 この後は実際に映画でお楽しみください。同時上映でアンデルセンの珠玉の名作「鉛の兵隊」も楽しみましょう。同じ作品でも旧ソ連ではどのような描かれ方をしているか。興味津々です。

『雪の女王』 原題:Снежная королева 監督:レフ・アタマーノフ/脚本:G・グレブネル、レフ・アタマーノフ、ニコライ・エルドマン/原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン/音楽:アルテミー・アイヴァジャン/製作会社:サユースムリトフィルム/1957年 ソ連作品

同時上映『鉛の兵隊』 原作:H.C.アンデルセン「鉛の兵隊」/監督:レフ・ミリチン/脚本:A. アフーンドフ/音楽:Y. フランケリ/撮影:M.ドゥルヤン/制作:サユースムリトフィルム/1970年 ソ連作品

(関戸)

日時:2017年5月14日(日)14:00~
会場:横浜平和と労働会館5F教室
参加費:300円(黒パン・お茶代)
お申し込み・お問い合わせ先:神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp

活動報告

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 第13回定期総会 開催される

 NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会第13回定期総会は、3月5日(日)午後1時より、平労会館2階音楽ホールで開かれた。司会の桜井氏による開会宣言の後、総会議長に関戸真哉氏を選出。引き続いて総会役員の選出が行われ、資格審査委員に吉原れい氏、総会書記に滝沢三佐子氏が選出され、承認された。

 まず木佐森会長より挨拶。7月8日に全国協会は創立60周年の祝賀会を行うことなどの告知を行った。また、昨年、プーチン大統領の来日により、日本とロシア並びに中央アジア各国との交流が盛んになることが期待される。神奈川は、ロシア語教室が盛り上がっており、活動の中心になっている、と挨拶した。

 続いて、資格審査委員より、12時現在、会員219名のところ、10名の出席、118通の委任状を確認し、協会規約に基づき、総会が成立していることが宣言された。また、ユーラスツアーズ坂田恒衛会長より来賓あいさつ。

 経過報告案及び方針案については、各項目ごとの担当からそれぞれ活動経過と方針の報告が行われた。

 会計報告案及び予算案については、野口担当の代わりに木佐森会長が報告。貯蔵品の額が、送付した会計報告と1324円違っていたので訂正する旨、また5階教室を改装するために「教室維持改善基金」を設けること提案した。続く会計監査報告についても、金子監事が欠席のため、木佐森会長が代読した。

 質疑を経て、2016年度活動報告案及び2017年度方針案、2016年度会計報告及び2017年度予算案が承認された。定款変更についても、送付案どおり変更が承認され、2017年度役員についても原案(別添)のとおり承認を得て、第13回定期総会は終了した。

(中垣内 隆彦=なかがいと・たかひこ)

◆ 新役員中垣内さんの就任あいさつ
「関戸真哉氏にご推薦いただき、理事をさせていただくことになりました。13年11月の入会で、まだまだ不慣れですが、よろしくお願いいたします。大学の頃より、ロシア極東に強い関心を抱き、サハリンや千島列島、カムチャトカなど、あるいはハバロフスク、ウラジオストクの情報を集めることを趣味としております。」

ピアノとマトリョミン ロシアの文化を心ゆくまで

川西宏明さん  総会終了後は恒例のジョイント企画。昨年に引き続き、川西宏明さんのピアノとマトリョミンアンサンブル。

 日本の唱歌・童謡のメドレーで始まりました。「夏の思い出」「夏は来ぬ」はふと歌詞が口をついて出ました。「赤とんぼ」の調べでは涙がにじみました。また、川西さん作曲の「雲」の優雅さ、「ハナミズキ」の力強いリズムに感銘しました。そして、お待ちかねのロシア民謡。おなじみの「ともしび」から始まり、「遥か彼方」。いずれも戦争の中で、愛する人を送り出した悲しみを示した曲です。締めくくりは「通りは吹雪が吹いている」。吹雪の中を歩く少女を追う若者が叫んだ言葉をそのまま歌詞にした曲です。切ない調べですが、心に響く曲でした。アンコールにも応えてくださり、拍手の中で演奏を終えました。

総会コンサート 総会コンサート

マトリョミンアンサンブル  続いては、行事の時には必ず出演するマトリョミンアンサンブル。「翼をください」から始まり、ヨールカ祭で今井イリーナ先生が披露したダンスの曲「恋のバカンス」。「アメージンググレース」の後は「百万本のバラ」と「モスクワ郊外の夕べ」。いずれも歌としての曲ですが、マトリョミンで演奏するとあたかもハミングのように聞こえるのです。途中、マトリョミン初見の方のために体験レッスンも。そして、最後の曲が「また会う日まで」。イントロをマトリョミンで演奏したときには、会場から「おおっ」という歓声が。

 このマトリョミン教室は講師の檜垣さんが産休に入るため、春の教室はなく秋からの再開となります。まさに「また会う日まで」しばしのお休みとなります。

総会コンサート 総会コンサート

 総会の後のひと時、ロシアの文化に触れ、心を豊かにしたコンサートとなりました。

(文・関戸/写真・桜井)

三渓園夜桜鑑賞会 寒さにブルブル、でもきれい!

三渓園夜桜鑑賞会 三渓園夜桜鑑賞会
三渓園夜桜鑑賞会 三渓園夜桜鑑賞会

 4月になったというのに、まるで真冬の寒さ。そんな中で1日(土)に横浜市中区三渓園で昨年に引き続き、夜桜鑑賞会が開催されました。

 昼間は雨もあったので、道はぬかるんでいましたが元気いっぱいの19人の参加者は園内を歩き、桜を楽しみました。ユーラシア諸国からの参加者も4人。参加者の半数以上が初めて三渓園に足を運んだとのこと。三渓園は、日本文化を一度に体験できる場所です。京都まで行かずとも、日本の建築美や造園の妙、茶道などを味わうことができます。そのことを感じながらの夜桜鑑賞でした。園内の東屋での一人一言。東屋のことをロシア語では「キオスク」と言います。英語教師だった安根さんはそのことにびっくり。安根さんの自宅はこの三渓園から徒歩で2~3分のところなのですが、「近すぎて、逆に来なかった」とのこと。地元の柴田顧問の説明を聞きながらの園内散策。途中の茶店では温かい飲食物を口にして、ほっと一息。

 寒かったのが残念ですが、その寒さを吹き飛ばすような元気いっぱいの参加者で楽しく過ごした鑑賞会でした。

三渓園夜桜鑑賞会 三渓園夜桜鑑賞会
※数日後の4月5日、好天に恵まれ、桜は満開になりました。

(文・関戸/写真・高木=4月1日、柴田=4月5日)

教室案内

受講者参加型のアクティブな体験講座でした
「初めてのロシア語」「道案内のロシア語」報告

 4月からのロシア語教室第126期に向けて、3月18日(土)に「初めてのロシア語」と「道案内のロシア語」の二つ、体験講座が行われました。

初めてのロシア語  午前11時より、126期から入門クラスを担当されるフョードロヴァ・スヴェトラーナ先生によって入門者向けの体験講座が行われました。受講者数は7名で大きい教室での授業になりました。スヴェトラーナ先生は外国人向けロシア語教授法をモスクワで学ばれています。体験講座のために手作り教材を用意され、またそれぞれの受講者の側まで近づいてロシア語で自己紹介をされていました。受講者は前に出てロシア語で自分の名前を白板に書いていました。また、手作りカードに書かれた都市名などのロシア語を読んでは、地図上でその場所を示したりしながらアクティブに楽しく学ばれていました。

初めてのロシア語  午後1時からは「日本案内のロシア語」初級体験講座として「道案内のロシア語」の授業が行われました。途中からの参加者を含めて6名でした。講師は野口福美で、いつもと違ったレイアウトの教室で、参加者は座るだけで無く立ち動きながら附箋を用いて語彙を整理し、間違いをチェックしました。またパワーポイントで会話表現を覚えた後で一緒にプレイし、その後に順番にネイティブ・ゲストと会話を実践しました。最後に今日の授業内容のプリントが手渡されました。

(文・野口/写真・木佐森)

ロシア民族楽器 「バラライカ」「ドムラ」教室

レッスン予定日:2017年度前期(2017年4月~2017年9月)
前半:4月8日、4月22日、5月6日、5月20日、6月3日、6月17日
生徒募集クラス:
17:00~17:45ドムラ中級
18:00~18:45バラライカ初級

講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
会員受講料(1回45分×6回分):3~5名クラス:24,000円、2名クラス:36,000円、1名クラス:54,000円


組織・財政

組織状況

(2017年3月31日現在)

 今年度年初会員数 221名、入会者累計9名、退会者累計14名。3月末会員数216名。
 ロシア語体験講座が実施され、2017年前期のロシア語教室の受講受付も始まり、新規入会者が6名となりました。しかしロシア語教室を中断するとともに退会する人が9名もあり、会員数は2月末から3名減の累計216名に留まっています。

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2017/3/31
単位:円
摘 要本年度収入前年同期収入対前年同期増減
一般会計592,100526,59965,501
教育事業2,550,3802,253,058297,322
一般事業480,958679,167-198,209
合 計3,623,4383,458,824164,614
前年同期(単位:円)2016/3/31
摘 要本年度支出前年度支出対前年同期増減
一般会計1,716,9842,057,848-340,864
教育事業928,280751,305176,975
一般事業364,131418,042-53,911
支出合計3,009,3953,227,195-217,800
当期剰余金614,043231,629382,414
合 計3,623,4383,458,824164,614

貸借対照表 (2017/3/31)
科 目本年3月末残高前年同期残高対前年同期増減
流動資産9,293,1477,378,6131,914,534
固定資産9,604,7759,604,7750
資産合計18,897,92216,983,3881,914,534
流動負債0122-122
固定負債000
負債合計0122-122
純資産18,897,92216,983,2661,914,656

 会費の納入も順調で、ロシア語の受講料も予定どおりですが、物販事業が低迷しています。神奈川県協会の特色ある商品を獲得することが求められています。
 貸借対照表の流動資産も昨年に比べ190万円上乗せされており、5階ロシア語教室のリニューアルが実施できます。

(木佐森)

お勧め商品

イースターエッグ用彩色フィルム
7枚組252円、6枚組216円、バラ売り1枚36円 (税込)

イースターエッグ用彩色フィルム 復活祭に欠かせないイースターエッグの彩色が簡単にできる絵付きフィルム。ゆで卵にかぶせて熱湯に漬ければ出来上がります。日本語の使い方説明付き。
今年は4月16日がロシア正教のパスハ(復活大祭)です。ロシアの文化を手軽に体験してみませんか?
※色柄は様々です。協会事務所のみでの販売になります。

【アウトレット品】花柄バレッタ 700円 (税込)

花柄バレッタ サイズ:約10cm×4cm
材質:本体・木、留め金・金属
製造:ロシア
※この他様々な色柄を取り揃えています。
手描きの花々が美しく浮かび上がるバレッタ。髪や服とのコーディネイトを考えながら、様々な使い方をお楽しみください。
※表面に細かい傷がありますが、ご了承の上お買い求めください。

文化・芸能

芸 能

Русская Десятка ロシア・トップ10

Russia Airplay Chart TOP10  気温も天気も一進一退のロシアから、3月第4週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。吹き荒ぶ春の嵐、10曲中6曲も新曲でした!先月からYOUTUBEチャートとラジオチャートを合わせた結果をお送りしています。

 2016年4月にYOUTUBE上で1stシングル「Intro」リリース後、1ヶ月以内にミリオン視聴率達成。でもメディアへの露出を頑なに拒み、フォトセッションにも参加せず、アノニマスな雰囲気が売りのウクライナ発3人組グリブィが初登場第1位になりました!おめでとうございまーす!:-)

画像引用元
グリブィ gl5.ru
ヴレーミャ・イ・ステクロー http://www.aif.ua/
ブリトー http://playlistik.ru/
ヨールカ https://www.rusdialog.ru/
ロボダ peoples.ru
エゴール・クリード peoples.ru
モリー peoples.ru

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2017年3月20~26日/MOPA)

演劇・映画

無名塾稽古場公演「かもめ」

(2月19日 於:用賀・仲代劇堂)

「かもめ」  俳優・仲代達矢氏が主催する劇団「無名塾」の塾生による稽古場公演。しかもチェーホフ劇は初挑戦だという。会場は世田谷の住宅街の中にある仲代達也の自宅を改造したもので、レンガの門構えとどっしりとした木造の玄関が観客を出迎える。「かもめ」の舞台装置の始まりを感じさせるような重厚な雰囲気だ。

 有名な女優を母に持つトレープレフ(コースチャ)の薄弱さ、可憐で世間知らずなニーナ、実らぬ恋に身を焦がすマーシャなどは、戯曲のイメージどおりなのだが、コースチャの母のアルカージナや彼女の恋人でニーナを「破滅」させる作家のトリゴーリンなどは、演技が淡白なのかあまり強い印象を残さなかったのが残念だ。この二人は、「有名」なのにケチだったり女たらしだったりと人間らしい欠点が満載なのだが、そういう矛盾で笑うことができなかった。

 一方、心情を表象する演出は目を見張るものがあった。2階桟敷を利用し、高い天井からたくさんの本をぶら下げたステージ。ニーナがトリゴーリンに心を奪われてから、この本が天井から一気に落下する。二人の絆が一瞬にして切れたような演出だ。また、「本」はトリゴーリンの著作、アルカージナの台本、コースチャの執筆物などさまざまなシンボルに対応する。ラストシーンでコースチャが気に入らない原稿を破りすてる。紙屑と化す原稿は本と一体となる。

 昨年1年間で5回違う劇団による「かもめ」を観たが、その中で一番正統的なリアリズム作品だったように思う。

(文・滝沢 三佐子/撮影:小嶋 雅人)

劇団銅鑼創立45周年記念公演
「彼の町 みんなが知ってるチェーホフ みんなが知らないチェーホフ」

(3月5日 於:六本木 俳優劇場)

「彼の町」  農奴あがりのチェーホフ一家はタガンローグで雑貨商を営んでいたが、父が商売を失敗し夜逃げするはめに。長男次男もいまひとつウダツが上がらない。一家を支えたのは三男のアントンだった。モスクワ大学の医学部に入学したアントンは、生活費稼ぎのために短編を雑誌・新聞に投稿。滑稽小説は言わずもがな、シリアスもの、ナンセンスものまでなんでもござれ、7年間で約400編書きまくったそうだ(生涯のトータル短編数は約1000)。やがて作家のグリゴリーヴィッチに「才能を浪費するな」と戒められ、アントンは腰を落ち着けて書くことになる。

 「彼の町」は、劇団がこれから公演をしようとする演目を書きまくり短編の中から7編選び、アントン自身と彼を演じる劇団員、アントンの書いた短編の登場人物が三つ巴となって折りなす複雑な構成。故郷を出たい気持ちや望郷の念など、アントンの生きた時代に役者たちがそれぞれの思いを馳せる。

 劇中劇の作品は発表年順ということだが、「芸術家の妻」「ひどい目に遭った」の辛口ユーモア、絶妙なオチがすばらしい「どっちがいいか」、「牡蠣」の貧しい市民への共感、「接吻」のシュールさなど、活字とは違った味わいがある。ただ、「ねむい」は子守への搾取が狂気を生む怖い作品なので、もう少し子守少女の内面を表現してほしかった。「せつない」は劇団元代表にして齢90歳の鈴木瑞穂氏が辻そり御者の親父を演じ、亡くなった息子のことを誰も聞いてくれない侘しさを好演。バラエティ豊かなチェーホフの世界が広がった。

(文・滝沢 三佐子/撮影:宮川 舞子)

映画「ハードコア」

(イリヤ・ナイシュラー監督作品、2016年 ロシア・アメリカ)

「ハードコア」  全編主人公の視点のみで撮影され、FPS(ファースト・パーソン・シューター)さながらの臨場感。もともとはイリヤ・ナイシュラー率いるパンクバンド「バイティング・エルボーズ」の革新的で大胆不敵なミュージックビデオ「Bad Motherfucker」から始まったものである。このビデオは口コミで話題となり、世界中で1.2億回以上再生された。ファンから長編映画化が期待されクラウドファンディングによってヘンリーというサイボーグの視点からすべてが語られる『ハードコア』が誕生した。妻であり、絶命したヘンリーの身体をサイボーグ化し蘇生させた一流の研究者である美女・エステルが、エイカンという奇妙な能力を使うヤツに誘拐されてしまう。道先案内人は変幻自在のジミー。観客はヘンリーと一体となって、愛する人を取り戻すためこの“クレイジーな世界”に突入する。ロシアのぶっとんだフィーリングにアメリカ的エンターテイメントの要素をプラスした究極のアクション映画だ。エイカン役に、「ヴァンパイア・アカデミー」(2014)「フライト・クルー」(2016)のダニーラ・コズロフスキーも出演している。4月1日より神奈川では横浜ブルク13、イオンシネマ港北ニュータウン、川崎チネチッタ等で公開。

(文・滝沢 三佐子/写真・(C) 2016 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.)

ユーラシア映画情報

パペットアニメーション2本立て
「ちえりとチェリー」(中村誠監督作品)
「チェブラーシカ 動物園へ行く」
4月29日より5月5日まで
15:10~16:25
ジャック&ベティにて上映

ユーラシア通信

マリーナ・ルザエヴァさんの料理教室「リビーナ」に参加

料理教室  3月25日に川崎市国際交流センターで開催された料理教室「リビーナ」に参加しました。講師は以前当協会でもロシア語の教鞭を取っていたマリーナ・ルザエヴァさん。現在は、ウラジオストクのインターナショナル学校の副校長をしていますが、毎年この時期に来日し、かねてから主催していた料理教室を単発で行っています。

 マリーナさんから知らせを受けたかつてのサークル仲間に、新たな参加者2名を加えた9名が久しぶりのロシア料理に取り組みました。メニューはきゅうりピクルスのサラダ、豆のスープ、キエフ風カツレツ、きゅうりピクルスの漬け汁菓子。中でも目新しかったのはピクルスの漬け汁を使ったピロークです。変な味の生地が、焼くとあら不思議。とてもおいしいピロークに変身。2種類のピクルス汁を使って膨れ具合や味を食べ比べました。キエフ風カツレツはミンチを使った”怠け者向けバージョン”。このほか、ロシア直輸入のクワスの試飲や燻製ニシンなども試食して、1年ぶりの再会を楽しみました。

(滝沢)

ウラジオストク・マリインスキー沿海州劇場 5月の演目

ウラジオストク・マリインスキー沿海州劇場 5月の演目

「極東ロシアの発展は極東に任せてほしい」
ロシア極東・バイカル地域経済セミナーin東京

3月8日(水)如水会館(東京・竹橋)

ロシア極東・バイカル地域経済セミナー  「ロシア極東・バイカル地域経済セミナーin東京」がROTOBO(ロシアNIS貿易会)の主催で、3月8日(水)に東京竹橋の如水会館で開催されました。講師は、ロシアを代表するエコノミストの一人であるパーヴェル・ミナキル氏とバイカル地域の経済専門家のイルクーツク研究センターのナターリヤ・スィソエヴァ氏のお二人。出席者は50名程度でした。

 ミナキル氏は「ロシア極東の経済:現状と展望」をテーマにして、極東の人口は、1991年と比べ1.8%減少し、(ロシア全土では3.1%の減)極東ロシアとの貿易相手は日本(27.8%)中国(24.5%)韓国(24.4%)で77%を占め、EU諸国とは9.4%に過ぎず、極東ロシアの発展には、日本、中国、韓国の北東アジア諸国との繋がりがカギであると講演し、結論としては、極東ロシアの課題は極東だけの問題ではなくロシア全体の課題と同じでもあり、良薬はなく、極東地域の自主性を尊重し、モスクワはあまり介入しない方がよい、としました。

 質問で、「プーチン大統領は極東ロシアについてどの程度理解しているのか」の問いに答えて、「プーチン大統領が言っていることは、周りのスタッフが言っていることであり、大統領は、そのまとめ役」だとし、また、取り巻きのスタッフについて「連邦専門家と言われる人々は、極東に来たことがなく19世紀の本を読んでいるだけだ」と苦言。例として「1ha無償供与政策」について、「これは1861年に、すでに実施されており、1891年までに90万人が移住している。」と述べた。

 続くスィソエヴァ氏は「イルクーツク及びバイカル地域の経済の現状と発展」について、イルクーツク州の人口240万人の80%がイルクーツク市などの南部に集中していること、ブリヤートでは、航空機産業や金属加工、機械製造業が盛んなことなどを報告しました。また、バイカル湖近郊のコビスエガス田からウラジオストクまでのガスパイプライン(シベリアの力)は中国及びウラジオから海外への輸出用であるが、プーチン大統領に陳情し、イルクーツク市までのパイプラインを設置させたと述べました。

(木佐森)

日ロの経済関係は一貫して低調
浜野道博氏講演会「ロシアから見た日ロ経済関係の展望」 

3月10日(金)日本機械振興会館

浜野道博氏講演会  外務省外郭の独立非営利法人貿易経済交流発展のための日本センター所長の浜野道博氏(ユーラシア協会全国理事)をモスクワから迎えて「ロシアから見た日ロ経済関係の展望」の講演会が、3月10日(金)、東京タワー下の日本機械振興会館で開催されました。主催は日本機械輸出組合と日本ユーラシア協会(経済交流委員会)の共催です。出席者は20名程度でした。

 浜野氏によると、同日本センターは2000年に日ロ両政府の合意により日本が運営資金を出すことで設立され、同センターが入っている建物は、モスクワ大学の一角にあり、日本が10億円の資金で建ててロシアに寄贈したもので、その1階を同センターで使用し、スタッフは日本人を含め68人とのことです。

 浜野氏の講演は、日ロ外交160年及び榎本武揚から土光敏夫までの経済交流を中心に、日ロの経済関係は一貫して低調であり、日本の対外取引の1.6%、ロシアも3.4%に留まっていること、それは日ロ戦争―シベリア出兵―ソ連参戦の歴史的背景だけでなく、地勢的要因(ロシアの中心は欧露部にあり、モスクワ市とモスクワ州で全人口の27.6%を占める)も加味していることなどと続き、またロシア経済の現状は「大型ベンツが時速10キロで走っている」ようなもので、資源依存経済からの脱却が無策であること。今が4回目の経済危機にあり、国民階層の格差が大きく、狭隘な国内市場(人口、熟練度、起業、金融制度)を脱し切れないままで、ロシア経済の急激な成長は望めないことなどが話されました。しかし、日本センターでは毎年ロシアビジネスマンを200人以上日本に招待して日本の企業を訪問するなどの交流しているとともに、ロシア各地でビジネスセミナーを開催していることを報告されました。司会は協会経済交流員会委員長の柴田洋二氏が務めました。

(木佐森)

2017年度ロシア政府奨学金・短期留学生募集要項

日本ユーラシア協会本部 2017年3月30日

 ロシア連邦交流庁在日代表部より2017年度の外国人留学生の短期招待受け入れについて連絡がありました。
 希望者を募集いたしますので、下記の要項に従ってお申込下さい。

1.開催概要
主催:ロシア連邦文部科学省、ロシア連邦交流庁
実施目的:将来日ロ両国の幅広い分野で架け橋となって活躍する、すぐれた人材を育成することを目的とする。
派遣期間:2017年8月28日(月)~9月27日(水)を予定
(受け入れ校の事情・参加人数により、若干日程の前後があり得ます。)
派遣先:ロシア連邦・モスクワ市
A.S.プーシキン記念国立ロシア語大学
(受け入れ校の事情・参加人数により、モスクワ市内の他大学となる場合もありますので、予めご了承ください。)
宿泊先:大学学生寮(男女別に、1部屋2~4名程度で利用)

2.プログラム内容
・現地にてロシア語能力テストを行い、その結果に基づきクラス分けを行い授業開始。
・授業は、平日(月~金)午前中を中心に行われる。水・土・日休み。
・大学側で、市内史跡等およびロシア諸都市(サンクトペテルブルグ、スズダリ等)への遠足旅行を企画する場合があります。(参加料は、実費を自己負担)

3.費用
①授業料は、ロシア連邦文部科学省が負担。
②日本出発前 手配はユーラスツアーズが一括して行う
・成田・モスクワ間の往復国際航空運賃
・ビザ代行手数料
・空港・学生寮間の往復送迎車代
③現地にて各自負担
・学生寮費(全期間で合計約5000円程度)
・食費、個人的な出費

【応募資格】
1)日本ユーラシア協会会員(会員へのサービスとして実施するものです。)
2)日本国籍を有する健康な人
3)学歴(応募時) ロシア語初級文法を修了した30歳未満の学生(社会人による応募は例外措置とします)

【留意事項】
★選考の最終決定はロシア側が行うものであり、応募することで留学が約束されるわけではありません。さらに実際の渡航手続きは ロシア側からの招待状到着後になるため必ずしも上記予定出発を保証するものではないことを予めご了承下さい。諸々難点はありますが、日本ユーラシア協会は応募者の希望にかなう留学実現のために最大限の努力をいたします。

【応募書類】
*応募書類は、メール添付PDFファイルにて協会まで送信して下さい。
(希望者には、事前に以下①②記入用Wordファイルを協会各支部からメール送付します。PDF形式で保存し、送信してください)
①ロシア政府奨学金留学生申込書(協会保管用)(添付資料:和文)
②留学申請書(添付資料:Application form /カラー写真貼付、英文または露文記入)
  記入欄:1、2、6(パスポート記載本籍地)~9、11~20、26~29、33(必要なら)、署名日と直筆署名
③パスポートのコピー(カラーコピー、有効期限:2019年2月28日まであるもの。) /PDFスキャンデータ
④英文による最終学歴証明書(卒業証明または在学証明)/ PDFスキャンデータ
⑤英文による成績証明書/ PDFスキャンデータ

【応募手続き】
1.所定書類をそろえ、申込み金1万円をそえて日本ユーラシア協会に提出して下さい。
2.応募書類受付締切:2017年4月28日(金)(協会本部に必着/厳守)

【書類提出先】
NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会事務局 ※4月26日(水)必着
E-mail: eurask2@hotmail.co.jp

【書類最終提出先及びお問合せ先】
(各支部でまとめて提出)
日本ユーラシア協会
ロシア語委員会「招待留学」担当
〒156-0052 東京都世田谷区経堂1-11-2
TEL: 03-3429-8231
E-mail: info@jp-euras.org

投稿歓迎!

 「日本とユーラシア」神奈川県版は会員みんなで作る機関紙です。もっと面白くしたい方、新しい企画を思いついた方、協会や機関紙について感想や意見のある方は、読むだけでなくぜひ投稿してください。

 ユーラシア関連ネタなら文章でも写真でも絵でも、ジャンルを問わず何でもOK。

 ただし全てボランティアで、自分のオリジナル、または権利者の許可を得たもの、著作権法に触れないものをお願いします。ペンネームや注意事項があればそれも忘れずに。

 文章は1記事800字以内が目安で、長ければ編集・分割して掲載する場合もあります。

 原稿はメールやFAXや郵便で下記へ送ってください。締切は毎月末で、翌月15日頃に発行されます。投稿をお待ちしています!

(機関紙編集部)

歴史・社会