今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2017年7月号 No.669

行事予定

第19回 大河アムール・ハバロフスク市民交流の旅 ウラジオストク訪問付
※8/1~8/6に日程変更

大河アムール・ハバロフスク市民交流の旅  今年も恒例のハバロフスク旅行を8月に開催します。今回はウラジオストクも訪問し3泊、シベリア鉄道でハバロフスクに移動するコースになります。
 観光だけでなく、ホームステイ、ダーチャ生活体験、児童サマーキャンプ訪問など市民との交流を深める、当協会ならではの旅程を是非お楽しみください。

日程:2017年8月1日(火)~6日(日)
※都合により1週間繰り上がりました
成田空港発着5泊6日
ホームステイコース130,000円
ダーチャコース140,000円
航空券(別途)65,070円~83,070円

 旅程等の詳細はチラシ画像をクリックしてPDFファイルをごらんください。お問い合わせ・お申し込みは平日・土曜12時~17時、当協会事務局まで。お申し込み最終締切は7月18日(火)です。

戦争と平和を考える 8・15企画 『カティンの森』DVD上映会

カティンの森  今年も「8・15」がやってきます。毎年、この日を迎える前後に戦争と平和を考える作品を上映してきました。今回は、『カティンの森』を選びました。『カティンの森』事件をご存知でしょうか。

 第二次世界大戦中の1943年、ソ連国内グニェズドヴォ近郊のカティンの森でポーランド軍将校約2万2千人がソ連軍に射殺された事件です。最初にこの事件を発表したのはソ連軍と戦っていたドイツ軍でした。ところが、そのラジオ放送を聞くやソ連軍はドイツ軍の仕業であると報道したのです。そして、その証拠として将校の死体に残っていたのはドイツ軍の拳銃弾であると発表したのです。国際赤十字も調査に乗り出しましたが、激戦の中、詳細な調査は困難でした。こうして、真相は不明のまま戦後約60年以上も過ぎてから、2007年にポーランド政府が4月13日をカティンの森事件被害者追悼の日であると決議したのです。そして、翌年ロシアのプーチン首相はポーランドのトゥスク首相と会談し、事件が「スターリンの犯罪」であると言うことで一致して、真相が明らかになったのです。このカティンの森で命を落としたポーランド軍将校の一人が、この映画の監督であるアンジェイ・ワイダ監督の実父なのです。

 この事件は当初から、ソ連軍の虐殺ではないかと疑われていました。将校の死体にはドイツ軍の拳銃弾が撃ち込まれていましたが、後ろ手に縛られたそのロープの結び方が「ロシア結び」であったというのです。隠蔽するために、苦心してドイツ軍の拳銃と弾丸を多数集めましたが、その捕虜を縛るのは普段のとおりの結び方だったのです。偽装や隠蔽は、必ず齟齬をきたすということでしょう。この事件により、第二次世界大戦終結後、独立国としてのポーランドを防衛する軍の幹部を全て失ったポーランド軍は命令指揮系統が確立できないことになりました。いわゆる「東側」の一国になるしかありませんでした。つまり、ポーランドはヒトラーに最初に攻撃され、次にスターリンの思惑に軍の柱を失うことになったのです。大国の政治によって、国を破壊され、占領されたのです。

 アンジェイ・ワイダ監督は映像によって、このソ連の蛮行を糾弾しているのです。父の無念を息子が晴らしたことになるのでしょうか。

 日本ユーラシア協会の友好相手の旧ソ連の汚点とも言える、この歴史的事実を映像を通じて、考える上映会にしたいと思います。

(関戸)

日時:8月20日(日)14:00~
会場:横浜平和と労働会館5F 当協会教室
参加費:300円(黒パン・お茶代)

活動報告

「カザフスタンを知る会」大盛況のうちに終了

 6月25日(日)のカザフスタン・デーは、参加者が39名(一般12名、会員27名)と大盛況でした。

カザフスタンを知る会 カザフスタンを知る会

 第1部の「カザフスタン料理を作る会」(10:30~12:30)には小学生2名を含む28名が参加。4班に分かれてベシュバルマク(カザフ風肉うどん)、マンティ(蒸し餃子)、キュウリのピリ辛サラダを作りました。テーブルを回って指導してくださったキルギスのグルムカンさんに感謝。カザフ料理は肉がメイン、麺は添え物と理解し、ベシュバルマク用にラム肉6kg、マンティ用にミンチを2kg購入したものの、皆さんに食べて貰えるかどうか心配でした。でも参加者の皆さんからはどの料理も美味しいとの評価をいただきました。また、ツイッターに「面白かった、美味しかった」と写真入りの紹介もありました。準備は大変でしたが、5階の教室でこの楽しい料理会を成功裏に終えられたのは参加者全員の協力があったからこそと感謝しています。

カザフスタンを知る会 カザフスタンを知る会

 第2部「カザフスタンを知る会」(14:00~15:00)は、キリル・エルモシキン氏のカザフスタンについてのプレゼンテーション。会場は未知の国について詳しく知りたいと望む熱心な参加者で満員でした。講師のキリルさんは、自国に関するデータや美しい自然の写真をテレビ画面に映し出し、また動画でアルマティやアスタナの様子を見せながら上手な日本語で説明されました。質問は講演の内容についての確認や若いカザフ人の交際の仕方まで多岐にわたりましたが、その一つ一つにキリルさんは丁寧に答えていました。今回参加された皆様はきっとカザフスタンという国に行ってみたくなられたはず。

 一方、セミパラチンスクについて聞けなかったことを残念に思われた方もいらしたようです。今度、別の視点から中央アジア諸国の実情を深く学ぶ機会を得たいところです。

(野口)

カザフスタンを知る会 カザフスタンを知る会

 講演会の後は、第3部の楽しい懇親会。料理教室で作った料理をアレンジしての別料理も並び、乾杯を待つばかり。ドリンクの準備が間に合わないので、キリル講師の奥様が作ってくださったカザフスタンの揚げパン「バウルサク」を持ち、乾杯ならぬ「乾パン」となりました。その後は、歓談・会食を楽しみました。

 今回の懇親会では、ロシアの歌をロシア語と日本語で歌うことができました。通訳・翻訳家の安達さんが歌い、ヨールカ祭でおなじみの佐野さんが伴奏してくださいました。「カチューシャ」「赤いサラファン」はもとより、「モスクワ郊外の夕べ」も。一人一言の発言もあり、会員外の初参加者の顔も多く、楽しく盛大な懇親会となりました。今後も、ユーラシア諸国のさまざまな国を知る会を重ねていきたいものです。

(関戸)

教室案内

横浜ロシア語教室 第126期生徒募集中!

 入門・初級・中級・上級・会話・日本案内の各クラス生徒募集中。中途編入も可能です。見学は3クラス・各30分まで無料です。詳細は教室ホームページをごらんください。

 受講お申し込み・お問い合わせは教室事務局まで。


ロシア語能力検定3級対策講座 9月開講!

 過去に出題された模擬問題を解きながら、文法知識を整理していきます。詳細は教室ホームページに追って掲載します。
【日時】9月9日(土)、16日(土)、23日(土)、30日(土)14:00~15:30、15:45~17:15(各日2コマ 計4日間)
【講師】小林淳子(横浜ロシア語教室講師、通訳案内士)
【受講料】1回当たり会員6,600円/一般7,600円

学習動画シリーズ「おもてなしのロシア語」No.3 配信開始!

 神奈川県日本ユーラシア協会横浜ロシア語教室の講師・スタッフの企画・制作・出演による「おもてなしのロシア語」、シリーズNo.1に続き、No.2が公開されました。No.2のテーマは「挨拶」でした。すべての会話は挨拶から始まります。ロシア語で挨拶ができたら、第一関門は突破ですね。

 シリーズNo.3のテーマは「出迎える」です。この回は3つのシーンを設定し、初めて日本を訪れるロシアの方を、空港で、我が家で出迎えています。「ようこそおいでくださいました」「お会いできて嬉しいです」というお出迎えの常套句だけでなく、「お茶にしますか?それともコーヒー?」「おくつろぎくださいね」と、お客様を心からもてなす温かい言葉をいくつもご紹介しています。我が家でだけでなく、どこにあっても、ロシアの方をおもてなしできる素敵なフレーズをどんどん使いこなしてくださいね。シリーズNo.2同様にネイティブの先生の発音練習、メモして覚えられる静止画像で会話全体の確認もできます。

 2020年の東京オリンピックでは、ロシア語での会話の花が咲き、私達のおもてなしの心をお土産にされるロシア語圏の方がたくさん現れることは間違いなし!おもてなしのロシア語動画シリーズでお会いいたしましょう!

脚本・出演:竪山 洋子、オリガ・タラルイキナ、タチヤーナ・シプコーワ(横浜ロシア語教室講師)
撮影:田中 豊造
編集:竪山 洋子
監修:徳永 晴美
制作:NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 横浜ロシア語教室

【視聴方法】 インターネットでYouTubeにアクセス
→「おもてなしのロシア語」または「神奈川県日本ユーラシア協会」で検索
※上の埋め込み画像をクリックすると直接見られます。また、横浜ロシア語教室HP、協会HP、Facebookからもリンクしています。

【シリーズ内容】
No.1 アルファベット
No.2 挨拶
No.3 出迎える
No.4 知り合いになる
No.5 許可を得る
No.6 店での買い物
No.7 通りで尋ねる
No.8 駅で尋ねる
No.9 レストランで

シリーズNo.4以下も鋭意制作中!

おもてなしのロシア語No.4  No.4のテーマは「知り合いになる」。新年パーティー「ヨールカ祭」を舞台に、自己紹介や相手への質問等、コミュニケーションの言葉を紹介します。詳細は次号にて。どうぞご期待ください!


神奈川県日本ユーラシア協会のYouTubeチャンネルも併せてごらんください。
以前行われたロシア語公開講座の一部や、当協会講師でもある北川翔先生が出演するバラライカコンサートの模様もお楽しみいただけます。

ロシア民族楽器 「バラライカ」「ドムラ」教室

レッスン予定日:2017年度前期(2017年4月~2017年9月)
前半:4月8日、4月22日、5月6日、5月20日、6月3日、6月17日
後半:7月1日、7月15日、8月5日、8月19日、9月2日、9月16日
生徒募集クラス:
17:00~17:45ドムラ中級
18:00~18:45バラライカ初級

講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
会員受講料(1回45分×6回分):3~5名クラス:24,000円、2名クラス:36,000円、1名クラス:54,000円


組織・財政

組織状況

(2017年6月30日現在)

 今年度年初会員数221名、入会者累計20名、退会者累計23名。6月の新規入会者は1名ですが、ロシア語教室以外の人です。また、経済的理由で一時休会すると来訪された方が1名、高齢のため退会の方が1名で、6月30日付の会員数は、5月時より1名減の218名です。

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2017/6/30
単位:円
摘 要本年度収入前年同期収入対前年同期増減
一般会計1,015,830945,90069,930
教育事業4,508,1033,975,168532,935
一般事業830,1761,050,512-220,336
合 計6,354,1095,971,580382,529
前年同期(単位:円)2016/6/30
摘 要本年度支出前年度支出対前年同期増減
一般会計3,401,6523,322,66578,987
教育事業1,934,2241,613,955320,269
一般事業635,130746,575-111,445
支出合計5,971,0065,683,195287,811
当期剰余金383,103288,38594,718
合 計6,354,1095,971,580382,529

貸借対照表 (2017/6/30)
科 目本年6月末残高前年同期残高対前年同期増減
流動資産6,667,3077,435,369-768,062
固定資産11,999,6759,604,7752,394,900
資産合計18,666,98217,040,1441,626,838
流動負債000
固定負債000
負債合計000
純資産18,666,98217,040,1441,626,838

 ロシアワイン(クバンワイン)などの新商品を仕入れたことにより、物販事業の売上が少し伸びました。これからも、目新しい商品を見つけていく努力が大切です。
 流動資産が昨年同時期と比べ768,062円少なくなり、固定資産が2,394,900円増えています。この2,394,900円は教室改装費です。正味財産は昨年同期と比べて1,626,838円増えています。この金額に768,062円を足すと改装費になります。

(木佐森)

お勧め商品

ロシア・ユーラシア食品新入荷!

ロシア・ユーラシア食品
(左)中央アジア風炊き込みご飯「プロフ」の素 400円
(右奥)ひまわりの種のお菓子「ハルヴァ」プレーン/アプリコット各540円
(右下)マトリョーシカ型チョコレート 特価320円

ロシア・ユーラシア食品
マトリョーシカ型チョコレートの中は空洞で、小さな木製マトリョーシカ人形が入っています。
※人形は入れ子にはなっておらず、開閉できません。
※きれいな箱入りなのでプレゼントにもお勧め!

ロシア・ユーラシア食品
ウクライナ産桃ジャム650円
ボルシチの素・アジカソース各500円
ロシア・クバンワイン「サペラヴィ」1,800円、「ルージュ ド タマーニュ」1,400円
ウクライナウォッカ「ネミロフ」デリカット1,300円、ハニーペッパー1,500円

※協会事務所で販売中!
商品の一部は通販サイト「うにべるま~ぐ」でも購入できます。
売り切れの際はご容赦ください。

文化・芸能

芸 能

Русская Десятка ロシア・トップ10

Russia Airplay Chart TOP10  ロシアから、6月第4週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中曲が新曲!

 9位にポヴァリーの新譜«Сердце - дом для любви»(心は愛の為の家)が初登場。エンマ・エムとマルヴィンのデュエット«Перемотай»(巻き直して)が7位に。5位にノチヌィエ・スナイペルイの«Разбуди меня»(私を起こして)。6月19日リリースのアグーチンの新曲«Самба»(サンバ)が3位に。世界的ヒット«MAMA LOVER»を引っさげ来日公演したSEREBROの新曲«Между нами любовь»(私達の間の愛)が2位にランクイン。

 2010年に誕生したウクライナ発のポップスデュオ、アルティック&アスティの«Неделимы»(私達は分けられない)が、2ヶ月連続第1位になりました!おめでとうございまーす!:-)

画像引用元
Serebro→http://www.all-stars.ru/
Леонид Агутин→http://www.peoples.ru/
Ночные Снайперы→http://www.peoples.ru/
Таисия Повалий→http://novosti-dny.ru/
Эмма М→http://hitplaneta.ru/
Миша Марвин→http://www.woman.ru/

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2017年6月19~25日/MOPA)

ユーロヴィジョン ロシア・ウクライナ問題再燃

 2018年大会はポルトガルでの開催となることは6月号でお伝えしたが、欧州放送連合(EBU)は、2017年に露代表サモイロヴァの出場を拒否したことで、ウクライナ国営テレビ・ラジオ放送協会に巨額の罰則金を課したことを、AFP通信が伝えた。

 EBUは以前、「大会を組織する上で大幅に遅延し、しかも露参加に関し協調に難色を示したことに対し、巨額の罰則金が課されるだろう」と警告した。そして「大会の注意を逸らさせ、欧州音楽祭典ブランドの評判に脅威を与えた」と同EBUは今回強調した。

 これに対しウクライナ国営テレビ・ラジオ放送協会の会長ズラフ・Aは「罰則金は20万ユーロに上るかもしれない。勿論反対だ。」とコメントした。

情報:https://ria.ru/world/20170629/1497539573.html
サモイロヴァの公式HP:http://www.jsvok.ru/

(MOPA)

イワヌシュキ・インターナショナルのメンバー病死

 90年代から活動している男性ヴォーカルユニット「イワヌシュキ・インターナショナル(Иванушки International)」の高音Voヤコヴレフ・オレグが、2017年6月29日に亡くなった。享年47歳。直接の死因は心臓停止。同日緊急入院した時の診断結果は肺水腫だった。また20年間喫煙していて、肝硬変も患っていたとされる。ヤコヴレフは同ユニットの初代高音Voソリン・イーゴリの転落死後に加入、14年間同ユニットで他Voキリル(メインVo)とアンドレイ(低音Vo)と共に活躍し、数々の大ヒット曲をリリースした。2012年からソロ活動も開始した。お別れの会は7月1日に実施され、告別式はせず、火葬される予定。

写真左から、キリル、アンドレイ、オレグ
イワヌシュキ・インターナショナル の公式HP:http://www.beznadega.ru/
使用画像:http://www.uznayvse.ru/

(MOPA)

演劇・映画

地人会新社 第7回公演「これはあなたのもの 1943―ウクライナ」

6月16日 於:新国立劇場小劇場

「これはあなたのもの 1943―ウクライナ」  ナチスの迫害を逃れるために屋根裏部屋で過ごし、密告により捕らえられて強制収容所で死亡したアンネ・フランク。幼少時、アンネと同じような生活を過ごしながら、幸運にも生きながらえ、長じて日本人化学者との共同研究でノーベル化学賞を今年受賞したロアルド・ホフマン。本作は戦後移住したアメリカでの生活とウクライナでの避難生活を織り交ぜながら、記憶と許しについて多くの示唆を与える作品である。

 医者のエミールは、かつてはポーランド・オーストリアの二重支配下にあり、現在はウクライナとなっている町に生まれた。戦後母・フリーダとアメリカに渡り、今では妻・タマールと二人の子どもと共に生活している。

「これはあなたのもの 1943―ウクライナ」  あるときエミールの娘が学校でホロコーストについての課題を持ち帰る。フリーダに話をせがむが語りたがらない。ナチスの行為に憤り、同胞のために死んだ夫のことを許せず、ナチスに協力したウクライナ人をののしり、匿ってくれたオレスコ一家のことも悪く言う。そこへオレスコ家の娘アーラがウクライナからやって来た。「あなたにお返ししたい」というアーラの手には、フリーダの指輪があった。フリーダは「これはあなたのもの。匿ってくれた恩は金や宝石ですべて清算した」と言って受け取らない。当時、多くのウクライナ人がナチスに協力し、ナチス以上にユダヤ人を残忍に扱った。一方で自らの危険を顧みず自分たちを匿ってくれたオレスコのようなウクライナ人もいた。大きな悪の中の一握りの善を前に、フリーダとエミールは過去と現在を行き来しながら、もつれた心のわだかまりを解きほぐしていく。

 著名な舞台俳優、ミュージカル女優がキャストをつとめる中で81歳のフリーダを演じる87歳の八千草薫に目を奪われる。ウクライナ人を口汚くののしりつつも、ユダヤ人としての誇りを守り通そうとする健気な老女。苦難を乗り越えて生きてきた女の信念を感じさせる演技だ。息子のエミールを演じた吉田栄作は、私のもつトレンディドラマのイメージを見事に覆す好演で、母のもつれた感情にやきもきする息子の易しさを感じた。プロローグを飾る神と天使の掛け合いも物語に善と悪の成りたちを楽しく想起させる。

 公演後、ホフマン氏本人、演出家の鵜山仁氏、本作を舞台化するために奔走した化学者であり翻訳者の川上慶子氏が登壇し、アフタートークが開催された。ポーランド・ウクライナ国境地域の複雑な情勢や人々の暮らしなどが写真と共に紹介され、日本ではあまり知られていない当時のユダヤ人の状況など興味深い話を聞くことができた。

(文・滝沢 三佐子/写真・劇団提供)

「パトリオット・デイ」

(ピーター・バーグ監督作品 2017・アメリカ)

「パトリオット・デイ」  「パトリオット・デイ」(愛国者の日)とは、米国全体が祝う独立記念日と異なり、「愛国者の日」とはなじみのない祝日だ。それもそのはず、マサチューセッツ州など東部3州で4月の第3月曜日に指定されている祝日なのだそうだ。その日に開催されるのは由緒あるボストン・マラソン。この映画は、2013年にそのマラソン終盤に起こった爆弾テロを忠実に再現し、犯人逮捕までの102時間を時系列で追った群像劇である。中心人物であるボストン警察巡査部長のトミー以外はすべて実在の人物だ。

 だれもが誇りをもって「パトリオット・デイ」を迎え、市民総出でマラソンランナーを応援に繰り出す日に起こった2発の連続爆発で、3人の死者と260人を越す負傷者が出た。凄惨な現場で繰り広げられるのは、地元警察とFBIの操作指揮争い。圧倒的な捜査力と情報網のFBIに対し、犯人特定への端緒をつけたのは地元巡査部長のトミーだった。かくして、犯人捕獲のため街は封鎖され、戦場さながらの銃撃戦が繰り広げられる。

 ここまでなら一般観客は市民がどうテロと立ち向かい、団結の精神と地元愛の力で困難を克服したことに感動するのだろうが、私の興味の対象はもっぱら犯人とされたチェチェン系アメリカ人のタメルラン・ツァルナレフとその弟ジョハルが本作でどう描かれているかだった。映画では彼らがイスラム教徒であること以外、チェチェンというバックグラウンドやテロの動機などは一切描かれない。壁にかかっているのはパキスタンっぽい国旗だし、フォーカスされるのは兄が妻や弟に対してとる威圧的な態度だ。弟は学友たちと屈託なく大麻を吸い、ごく一般的なアメリカ人として描かれることで、9.11以来続くイスラム嫌悪への気遣いが伺われる。また、街中に張り巡らされた監視カメラの驚くべき設置数や犯人逃走の過程でカージャックされた中国人の冷静かつ勇気ある行動は、日本ではほとんど報道されなかったことで注目に値する。

 最終的にこのテロは、アメリカにおけるいわゆる「ホームグロウンテロ」の典型となったわけだが、その後も一匹狼型のテロは散発しているのは周知のとおり。生き残った弟には死刑判決が下され現在控訴中で、事件は終わったわけではない。本作品が、事件発生後わずか4年で撮られたエンタメ映画ということはある意味正しいあり方なのかもしれない。

文・滝沢 三佐子
写真 (C)2017 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

ユーラシア通信

夏季カンパありがとうございます

 浅見庸様、玲子様から1万円の夏季カンパをいただきました。毎年、変わらずのご支援に心から感謝します。
 貴重なカンパは国際友好・平和のため有意義に使わせていただきます。

神奈川県日本ユーラシア協会会長
木佐森雅道

山下昭二先生を悼む

 ほぼ30年に亘って当会と当会付属の(有)カチューシャの会計監査をボランティアで務めて下さった税理士の山下さんが5月5日、90歳で天寿を全うし他界されました。

 亡くなられた日が先生の尊敬するKarl Marxの誕生日、端午の節句当日だったのも何かの因縁でしょうか…。

 いつも笑顔でとてもお優しい人柄でしたが会計監査に関しては原則的で極めて厳格でした。

 打ち合わせた時間に遅れたことは一度もなく、帳簿、通帳などにはすべて目を通し、ご自分で子細に亘って検算もされました。

 コンピューター時代になってもご愛用の算盤で計算されていたのが懐かしく思い出されます。

 当会の健全財政がこの様な地道なご努力によって支えられてきたことを忘れてはなりません。

 先生の御貢献に改めて深く感謝申し上げると共に、心からご冥福をお祈り申し上げます。

(柴田 順吉)

高校の吹奏楽コンサート「世界の旅」 当協会のロシア民族衣装で

フレッシュコンサート  静岡県立沼津商業高校吹奏楽部、第16回フレッシュコンサートが6月18日、駿東郡清水町地域交流センターにて行われ、新作・初演として– 吹奏楽で巡る『世界の旅』– を演奏致しました。

 イタリアのカンツォーネで始まり、フランスのシャンソン、スコットランドのショティッシュ、アルプス地方のアルプホルン...と進み行く中でロシア民謡『走れトロイカ』が歌われます。

フレッシュコンサート  各国の衣装をそれぞれ仕立てて演出したのですが、ロシア民謡で着る衣装がなかなか見つからず、迷走していたところ『神奈川県日本ユーラシア協会』さんが衣装をレンタルしてくださる事を知り、早速沼津から桜木町へと向かいました。

 その日に連絡したのにも関わらず快く衣装をお貸しくださり、ロシアの話も沢山聞くことができました。

 おかげさまでコンサートも無事満員、大盛況で幕を閉じる事が出来ました。

 急な対応誠にありがとうございました。

(沼商吹奏楽部 音楽監督 川口三郎)

銀座ロゴスキーでロシアンアーツ創立10周年パーティ開催

 毎年、ロシアのサーカスやバレエ、オーケストラ演奏など多彩な文化行事を日本で展開している(株)ロシアンアーツの創立10周年の記念祝賀会が6月8日(木)にロゴスキー銀座店でありました。午後5時から全店貸切で始まり、最初に元ロシア文化フェステバル日本委員会委員長の鳩山由紀夫氏が挨拶。続いて(株)ロシアンアーツ代表の長塚英雄氏が会社設立の経緯、ロシア文化フェスティバルは2006年に始まりましたが、単年度で終わらせずに継続させる意味で、1年後の2007年に同社を創立したこと、そして、21年度まで「ロシア文化フェスティバル」を続行する旨の覚書を日本側鳩山由紀夫氏、ロシア側ナルイシキン氏とで調印したことを報告されました。

 神奈川県協会は2007年に、同フェスティバルの一環として、タタールスタン舞踊アンサンブルの公演とモスクワ国立アカデミー合唱団の演奏を主宰して横浜で開演させました。

 祝賀会で出されたロゴスキーの料理は、渋谷店が無くなってしまったので、久しぶりに食しましたが、「日本のロシア料理の基準」の地位はゆるぎないように思えました。出されたワインはロシアのクラスノダール地方で醸造されたクバンワインで、ジョージア(グルジア)ワインに負けない品格のあるものでした。桜木町の協会事務所でも、この6月からクバンワインを扱うようになりましたので、事務所にお立ち寄りの際はお試しください。また、ロゴスキーのオリジナル壺焼き茸用カップを早いもの勝ちで差し上げていますので、お早目にお出でください。この祝賀会には、県協会から木佐森が出席しました。

(木佐森)

【会員限定】ボリショイサーカスに抽選でご招待!

 7月28日(金)~8月6日(日)まで横浜文化体育館で開催される「ボリショイサーカス」の特別招待券が、ロシア文化フェスティバル日本委員会から特別提供されました。会員の皆様を抽選によりご招待いたします。申込の締め切りは7月19日。20日抽選。当選者発表は「特別招待券」発送をもって代えさせていただきます。

 お申し込みは氏名、送り先住所、電話番号、希望日、希望枚数を明記の上、FAX 045-201-3714 またはEメール eurask2@hotmail.co.jp までお願いします。同日お一人2枚まで申し込み可。

開催日/開演時間/提供枚数
7月28日(金)/13:30/2枚
8月 1日(火)/13:30/7枚
8月 2日(水)/10:30/4枚
8月 3日(木)/10:30/2枚
8月 4日(金)/13:30/4枚
8月 5日(土)/16:30/2枚
8月 6日(日)/16:30/4枚

*「特別招待券」は「指定席入場券」と引き換えることが必要です。受付時間は開演1時間前から先着順ですので、早い方が有利です。

第2回マリインスキー国際極東音楽祭

 芸術の殿堂マリインスキー劇場がウラジオストクにオープンし、ロシアの劇場芸術を身近に楽しむことが出来るようになりました。
 2017年7月15日~8月13日に第2回マリインスキー国際極東音楽祭が行われます。日本人アーティストも参加します。

【演目】
バレエ:「せむしの仔馬」「シクリャローフとの芸術の夕べ」「ジゼル」「眠れる森の美女」「白鳥の湖」中国ナショナルバレエ団ガラコンサート 他
オペラ:「さまよえるオランダ人」「ドン・ジョヴァンニ」「フィガロの結婚」「シモン・ボッカネグラ」「マクベス」 他
コンサート:室内重奏、海軍の日に捧ぐコンサート、シャギムラトヴァリサイタル、ラフマニノフサイクル、シチェドリン・ベートーベン(ピアノ:辻井伸行)、オルフ「カルミナ・ブラーナ」他

お問い合わせ先:株式会社 BHB
TEL: 03-5850-1515
WEB: http://www.55world.com/
トップページ「各種情報」>「ウラジオストク・マリインスキー劇場2017」

本牧館の黒パン、販売継続決定!

本牧館のミッシュブロート  朗報です。前回の機関紙に「本牧館の黒パン、製造中止?」という記事を掲載しましたが、中止にはならず、週一回の販売が継続することになりました。

 6月7日(水)の午前中、関戸に電話があり、「これからは毎週土曜のみの販売となります」とのこと。協会の主要行事は土日に行っているので、土曜日に焼いたパンを取り置きしてもらえば、今後も行事の時には出すことができます。一時はどうなるかと心配しましたが、今後もおいしい黒パンは行事の際には必ずあります。本当によかったです。

(関戸)

中央アジア本場の土窯炭火焼パン「ノン」

土窯炭火焼パン「ノン」  埼玉県春日部市のパン屋「Novvoyxona SHER」では、ウズベク人ノン職人が現地と同じくタンディール(土窯)で炭火を使って焼いた本場の「ノン」が入手できます!
 日本在住中央アジア出身者に大人気。Facebook経由で通販もしており、ノンの他サムサやスコーンなども販売中のようです。添加物や保存料は一切使用していない、中央アジア本場の味を体験してみませんか?
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 ※写真はFacebookからお借りしました

「Novvoyxona SHER」
〒344-0041 埼玉県春日部市増富 564-7
TEL: 070-5544-8811
問い合わせ先:https://www.facebook.com/novvoyxona/

①【ノン】3枚1000円
②【サムサ】3つ1000円
③【スコーン】5つで1000円
送料:全国どこでも、何枚でも同じ料金757円(沖縄、一部離島を除く)

ご注文は以下の内容を記載の上、Facebookメッセージから送信。
【注文内容】
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【時間指定あれば】
※注文は商品の合計額2000円以上で。

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