今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2018年2月号 No.676

行事予定

旧ソ連音楽映画の名作・歌声喫茶発祥の契機
「シベリヤ物語」DVD上映会 2月25日開催

 2018年は『シベリヤ物語』が日本で上映されてから70年の節目の年です。制作は1947年ですが、日本公開は翌年の1948年でした。まだ日本中に戦争の傷が残り、東京も横浜も焼け跡だらけの頃です。

 映画は戦後の復興をイメージさせるものでした。ピアニストを志していた青年が、独ソ戦でピアニストにとって命である手を負傷し音楽への夢をあきらめながらも、再起するまでを描いた音楽映画の最高峰といわれる作品です。日本のうたごえ運動の中で、「うたごえ喫茶」は大変重要な位置を占めています。多くの人々が一つの場所で歌い、聞き、笑ったり、涙したりといううたごえ運動のルーツがうたごえ喫茶なのです。日本にそのうたごえ喫茶をもたらすきっかけとなったのが、今回上映される「シベリヤ物語」なのです。日本初公開当時、反ソ的であると削除されたシーン約13分を完全復元しての上映となります。

 映画をご覧になった方なら誰でも記憶している「バイカル湖のほとり」、それは冒頭とバイカル湖上の二つのシーンです。これを見て、聞くだけでも価値あるものです。もし、よろしかったら「バイカル湖のほとり」を参加者みんなで歌ってからの鑑賞にしたいと思います。うたごえ運動に携わった方々のご参加を心からお待ちしております。

 音楽映画の最高峰であり、日本におけるうたごえ喫茶の発祥ともなった「シベリヤ物語」鑑賞会に是非おいでください。

(関戸)

日時:2018年2月25日(日)14時~
会場:横浜平和と労働会館5F教室
参加費:500円(黒パン・お茶代)

お申し込み・お問い合わせ:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 第14回定期総会

【日時・内容】2018年4月1日(日)
◆13:00~14:00 定期総会(内容:活動報告、事業計画、決算、予算、2017年度役員案の承認、質疑応答他)
◆15:00~16:00 コンサート
【会場】横浜平和と労働会館2階 音楽センターホール
【参加費】総会:無料(会員限定)
※詳細は次号でお知らせします。

横浜ハリストス正教会 復活大祭(パスハ)見学

日時:2018年4月8日(日)9:00~13:00
集合場所・時間:横浜市営地下鉄三ッ沢下町(出口2、地上)8:30
場所:横浜ハリストス正教会(神奈川区松ヶ丘27-11)
持ち物:頭に被るスカーフ(女性のみ)

活動報告

大盛況だった新年会「ヨールカ祭2018」

ヨールカ祭

 1月21日(日)、会場の横浜市従会館は在日ロシア人家族50人(子ども36人)以上、総計180人以上の人出でごった返しました。今年のヨールカ祭には、在日ロシア・ウクライナ・ベラルーシなど女性7名、男性3名の歌踊アンサンブル「スラヴャーニェ」(スラブ人)と連携して計画したので、それぞれのコミュニティーなどから誘い合って参加する様子が見られました。

 スラヴャーニェはカリンカのダンス、ウクライナのコミックダンスなど8曲を、横浜ロシア語教室の4クラスと交互に演じました。語学クラスは、イリーナ先生3クラス合同による振付「恋のバカンス」、竪山先生クラスによるロシア語劇「おもてなしのロシア語」、タラルイキナ先生クラスのロシア語劇「わらしべ長者」と続き、最後は小林先生クラスによるギター伴奏「カチューシャ」で会場は熱気であふれました。

 その前に、スラヴャーニェによるジェットマロースとスネグローチカの「子どもプログラム」です。プレゼントをもらったり、みんなで踊ったり、飛んだり跳ねたり“子どもたちの世界”になりました。

 さらに、マトリョミン教室のアンサンブル「MMM+」によるマトリョミン演奏、日本のうたメドレー、モスクワ郊外の夕べ、ドレミの歌など5曲。川西宏明氏のピアノ演奏は川西氏本人の編曲「ともしび」、「通りは吹雪が吹いている」など4曲、会場からのアンコールに応えて「菫の花咲く頃」(川西編曲)など、盛りだくさんになりました。

 例年好評の料理は、外套を着たニシン、ボルシチ、シャシリクなど。前日の20日に、それぞれ150人分を15人で作り上げました。

(木佐森)



 横浜国際フェスタでの出会いで始まった神奈川県日本ユーラシア協会の「ヨールカ祭」への参加感想文。メンバーの皆が最初に覚えた思いです。エ!日本人がヨールカ祭 どうして?でも当日会場に行ってビックリしました。ちゃんとヨールカ祭の会場になっているじゃありませんか。会場ではちゃんとしたロシア料理が何種類もありみなとても美味しかった。会場内はロシア人家族が沢山いて皆さんの顔を拝見すると、親も子供もとっても期待一杯の顔顔顔。私たちもついつい時間を忘れダンスしました。特にヨールカ祭に向け3歳の子供と一緒のダンスを一生懸命練習し会場で多くの拍手を頂きとても嬉しかったです。楽しく、思い出深い、心和らぐひと時を過ごせメンバー一同感謝しております。これを機会に又いろいろ一緒にイベントをよろしくお願い申し上げます。

(Slavyane 加藤)


ヨールカ祭 ヨールカ祭
ヨールカ祭 ヨールカ祭
ヨールカ祭 ヨールカ祭

写真:ジャニケーエワ、木佐森、中垣内(順不同)

教室案内

ロシア民族楽器 「バラライカ」「ドムラ」教室

レッスン予定日:2017年度後期 (2017年10月~2018年3月)
後半:1月6日、1月20日、2月3日、2月10日、3月3日、3月17日

生徒募集クラス:
17:00~17:45ドムラ中級
18:00~18:45バラライカ初級

講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
会員受講料(1回45分×6回分):3~5名クラス:24,000円、2名クラス:36,000円、1名クラス:54,000円


みなとみらいマトリョミン教室 アンサンブル/グループレッスン

日程:毎月1回、土曜日開講
2017年度後期日程:2017年10月21日、11月18日、12月16日、2018年1月20日、2月17日、3月17日

◆グループレッスン:
Aクラス 13:00~14:00
Bクラス 14:10~15:10
◆アンサンブルクラス(90分):15:20~16:50(空席についてはお問い合わせ下さい)

講師:檜垣 紀子
会場:横浜平和と労働会館2階
神奈川音楽センターホール(※3月17日は3階会議室)


横浜ロシア語教室 第127期生徒募集中!

 入門・初級・中級・上級・会話・日本案内の各クラス生徒募集中。中途編入も可能です。見学は3クラス・各30分まで無料です。詳細は教室ホームページをごらんください。

 受講お申し込み・お問い合わせは教室事務局まで。

※受講生の皆様へ
 今期の授業は2月~3月に全17回または15回で順次終了いたします。来期は4月16日(月)より順次開講しますが、受講を継続されるかどうか事務局までお知らせください。詳細は授業時に配布する用紙をご参照ください。


横浜ロシア語教室 学習動画シリーズ「おもてなしのロシア語」完成祝賀会 2月17日(土)開催!

 神奈川県日本ユーラシア協会横浜ロシア語教室の講師・スタッフがボランティアで全力を挙げてシナリオを書き、撮影、出演、編集してきたロシア語学習動画シリーズ「おもてなしのロシア語」は、好評をいただく中で、最終の第9課まで配信することができました。

 諸先生方、スタッフの皆様の1年半にわたるご尽力に心から感謝し、下記の日時に完成祝賀会を開催いたします。

 各課の特徴、何を伝えたかったかなど担当の諸先生の工夫についてのお話は、これからの皆様の視聴をもっと面白くし、ロシア語習得に必ずやお役に立てることでしょう。

 多くの方たちとご一緒に美味しいザクースカをいただきながら、美酒を飲むことを楽しみにしています!

日時:2018年2月17日(土)18:30-20:00
会場:横浜平和と労働会館5階 横浜ロシア語教室
参加費:1,000円
お申し込み締切:2月15日(木)
※講師・会員・受講生限定、定員24名

参加お申し込み・お問い合わせ先:
NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-Mail yokohama@rosiago.org

【視聴方法】
YouTube「神奈川県日本ユーラシア協会」チャンネルから
下のリンクをクリックすると直接見られます。また、横浜ロシア語教室HP、協会HP、Facebookからもリンクしています。

【シリーズ内容】
No.1 アルファベット
No.2 挨拶
No.3 出迎える
No.4 知り合いになる
No.5 許可を得る
No.6 店での買い物
No.7 道を教える
No.8 駅で案内する
No.9 レストランで

組織・財政

組織状況

(2018年1月31日現在)

 2018年度の出発会員数は219名です。12月までに、10%増の240名を目指すのですが、困難さが突き刺さってきます。

 みなさまのお力添えを得て、一歩でも目標に近づいていきたいと思います。

(木佐森)

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2018/1/31
単位:円
摘 要本年度収入前年同期収入対前年同期増減
一般会計141,148180,050-38,902
教育事業180,022157,40022,622
一般事業370,428214,468155,960
合 計691,598551,918139,680
前年同期(単位:円)2017/1/31
摘 要本年度支出前年度支出対前年同期増減
一般会計275,733471,645-195,912
教育事業301,580289,84811,732
一般事業281,710160,754120,956
支出合計859,023922,247-63,224
当期剰余金-167,425-370,329202,904
合 計691,598551,918139,680

 年度当初なので、単月の動きになります。
 会費(一般会計)の納入が遅れているようです。
 一般事業(物販・イベント)の収入が昨年に比べ15万円も増えたのは、1月21日のヨールカ祭の有料入場者数が増えたことに因ります。
 支出では、事務局員への賃金払いが遅れたので、昨年より少なくなっており、一般事業の支出増は、ヨールカ祭に向けて「ボルシチの素」や「モルドバのジャム」を多めに仕入れたためです。
 2018年もよろしくお願いいたします。

(木佐森)

お勧め商品

モルドバ産ジャム4種 各648円(税込)

モルドバ産ジャム4種  ウクライナとルーマニアの間に位置する国、モルドバで作られたジャム。
 ブラックカラント(黒すぐり)、アプリコット、プルーン、ラズベリーの4種が入荷しました。
 果実とてん菜糖だけで作った無農薬、無添加のナチュラルな美味しさを是非あなたの食卓へ。
 ヨーグルトやパンに添えて、また紅茶のお供に、肉料理のつけ合わせに、色々とお楽しみいただけます。

文化・芸能

芸 能

Русская Десятка ロシア・トップ10

Russia Airplay Chart TOP10  日本と同様、記録的な寒波に見舞われたロシアから、2018年1月第3週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中1曲が新曲、1曲がカムバック!

 6位に、ロボダの新曲«Парень»(青年)がランクイン。PVを制作した監督でありプロデューサーでもあるクラピヴィナ女史は「ロボダは女性のための境界が存在しない女性。周りの現実を自在に変える。若く美しい『青年』が現れたときも、彼を目くるめく世界に連れ去るの。全ての人が、そのような情熱の世界で生き残れるわけではありません。これが生き残りゲームの条件です。」とIntermedia誌に語っています。

 エルジェイ&フェデュクの«Розовое вино»(ロゼワイン)が4ヶ月連続首位。おめでとうございまーす!:-)

※記事全文はブログでごらんください。

画像引用元
Loboda→http://www.peoples.ru/

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2018年1月15~21日/MOPA)

演劇・映画

演劇ユニットnoyR(ノイル). Vol.6「ニーナ会議―かもめより―」

12月28日 於:横浜 WAKABACHO WHARF(若葉町ウォーフ)

ニーナ会議―かもめより―

 「かもめ」のヒロイン、ニーナ。彼女が4人も舞台にいる。ひとりがトレープレフの戯曲を演じる一方で、「読みにくい」「生きた人間がいない」「まったく面白くない」などそれぞれにケチをつけながら、化粧をしたりお菓子を食べたり。学校の部室で気になる男子生徒の品定めや将来に対する期待や不安を語り合っているという雰囲気だろうか。ニーナたちは一人ひとりの個性がある。あけすけでちょっとおばさんみたいなニーナ、クールに振舞っているが実は純情なニーナ、無邪気だが鋭いところを突くニーナ…。

ニーナ会議―かもめより―

 そのうち、定職にも就かず家に引きこもっているトレープレフを「ニート」と言い切り、相思相愛なはずの彼をコケにする。実は人気作家トリゴーリンへの想いが止められないのだ。しかし、トリゴーリンは、トレープレフの母・アルカージナの愛人。もちろん、オリジナルのニーナ本人はまじめな少女だ。だからニーナの分身たちの本音には心底笑える。

ニーナ会議―かもめより―

 4人のダンスシーンを挟んで、場面は一転してシリアスに急変。

 作家となったトレープレフの前に現れた女優ニーナはひとり。分身たちはオリジナルと一体となっている。ここからは私たちがよく知るニーナだ。名声への渇望やさまざまな制約から自由になった彼女がそこにいた。“生きる選択をしたニーナは考えることをやめない”のだと劇団は語る。4人のニーナは互いに意見を主張しながらも、「解決」は望まない。一人で悩みのドツボにはまったトレープレフは、自殺という形で己を解決してしまった。これは男女の違いであろうか。生きることは「解決」を望まないことだ。ニーナはおしゃべりで発散しながら、生きることに執着した。

 群像劇であるチェーホフの戯曲では、登場人物たちは思っていることと口にすることが正反対であることがしばしばだ。noyRプロジェクトは過去にマーシャから見た「かもめ」を作ったのだそうだ。チェーホフの登場人物に本音を語らせるなんて、なんと大胆な。そして女の子たちのおしゃべりを第三者から見ると、なんとあっけらかんとして楽しいものだろう。想像力が刺激された自由な一幕劇だった。

(文:滝沢 三佐子/撮影:伊藤 華織)

ロシア語劇団コンツェルト 第47回公演「戦争は女の顔をしていない」

12月28日 於:早稲田大学学生会館

戦争は女の顔をしていない

 ノーベル文学賞作家、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの作品を舞台化。原作はさまざまな戦争に参加した膨大な女性の聞き取りという形なので、舞台脚本は一種のダイジェスト版といえる。しかし、記録文学的な作品をもとに、一から台本を作り上げることは、学生主体の劇団からすればかなりハードルの高い挑戦といえるのではないだろうか。もちろん、劇団員の中には来日したアレクシエーヴィチと実際に会い、大きな刺激を受けていることも関係していると思う。まさに舞台化の「旬」を迎えての上演といえる。

 登場する人物は、女子狙撃兵、洗濯部長、戦地妻、ドイツ兵、男性軍人など多岐に渡る。原作を読んでいても印象的だった彼らがピックアップされていることはうれしい。

 前線へと気がはやる女の子とたちは、上官に入隊を拒否される。それでも無理やり潜り込むが、軍隊の規律についていくことが難しい。身支度するにも時間がかかる。出征時にトランクいっぱいのお菓子を持ち込む。二人の上官に敬礼するときに両手で敬礼してしまう。だが狙撃をさせればぴか一、洗濯という後方支援であっても手柄をきちんと表彰してもらうよう主張する。兵士となった女の子たちは、戦場の中で大人になるが、戦いになじんだわけではない。補給が途絶えた部隊で野生の子馬を殺されねばならなくなったとき泣いた狙撃兵。負傷者を救出する場面は象徴的な小道具をうまく使った迫真の演技だった。残念だったのは、原作後半に多く収録されているパルチザンや地下活動家の証言がなかったこと。軍隊に所属せず、表立って戦わなかった彼女たちこそ、真の英雄であり被害者だろう。

戦争は女の顔をしていない

 もうひとつの大きな戦いは、筆者と当局との検閲戦争だ。舞台では、「検閲済み」という言葉が無数に映し出される。少し冗長だったがロシア語セリフと字幕を同時に解決する優れた表現だった。物語性のない原作において、ラストシーンを作り上げることは難しかっただろう。もし再演する機会があれば、この作品はもっと熟成するのではないかと考えた。

(滝沢)

桜美林大学パフォーミングアーツレッスンズ(OPAL)「三人姉妹」

12月24日 於:桜美林大学内 PRUNUS HALL

 学生演劇と侮るなかれ。OPALの舞台は、まず舞台づくりに驚嘆する。役者が歩いてくる花道の延長上に造られたステージは、華やかな宴の卓である。その奥には壁に彫り込まれた卓と時計があり、小道具の一つ一つが精緻なたたずまいを見せる。一言でいえば、ゴシックな雰囲気といえようか。

 しかし姉妹たちの演技はややヒステリックに終始した。長女で教師のオルガは、神経の休まるところがないほど始終がなりたて、次女マーシャも夫への怒りを露わにする。三女のイリーナでさえ、モスクワへ帰ることが難しくなる現実を前に、次第に感情がひきつるようになっていく。兄嫁ナターシャが若干おとなしく思えるほど、三人姉妹の激昂ぶりはすさまじく、クライマックスでは大道具の「壁」がステージ上に大落下。

 かつての瀟洒なリビングは、空襲でも受けたかのように廃墟然としてラストシーンを迎える。登場する男性たちの影がこんなに薄かった「三人姉妹」も珍しい。それほど姉妹たちのパワーが満ちていた。モスクワへの慕情ではなく、運命への怒りのような舞台だった。

(滝沢)

映画情報「ライカ/ЛАЙКА」

(監督:今関あきよし 2016 日本)

ライカ/ЛАЙКА  「カリーナの林檎 ~チェルノブイリの森~」、「クレヴァニ、愛のトンネル」と、ベラルーシ、ウクライナを舞台とした作品を撮ってきた今関あきよし監督が、ついにモスクワでオールロケ。しかも、同性愛に対して公的に不寛容なロシアで、レズビアンの愛を描くという問題作である。このためロシアでは上映禁止なんだそうだが、お騒がせデュオ「タトゥー」の記憶が残る日本で観ると、むしろ懐かしいとさえ感じる。

ライカ/ЛАЙКА  心にトラウマを残し、地球に帰還できなかった宇宙犬ライカを自分と重ねあわせる日本の語学留学生ライカと、女優をめざし孤軍奮闘するユーリャ。強く結ばれた彼女たちだったが、ある青年の登場で微妙に歯車が狂い始める。

 2月17日(土)より 新宿ケイズシネマほか全国順次公開!

(C) 2016 "LAIKA" Film Partners

ユーラシア通信

ムルマンスク便り

祭典«Праздник дружбы»で「正調ソーラン節」を披露

 2014年4月に州立NPO法人「ムルマンスクの中の日本」を設立して、早4年が経とうとしています。最初は8名在籍でしたが、現在では16名になり、活動も徐々に多くなってきました。

祭典«Праздник дружбы»で「東京音頭」を披露  毎年1月末に開催される«Праздник дружбы»には欠かさず出場し、日本文化をアピール。去年は浴衣を着た女性会員達と「東京音頭」(写真右)を、今年は日本語生徒も集めて賑やかに「正調ソーラン節」(写真上)を披露しました。ロシア人であることを一時忘れ日本代表となり踊ったし、衣装も自分達で一緒に作ったし、日本好きの皆の喜びと興奮は一入でした。

 更にムルマンスク市だけでなく州内の各都市も巡業します。これまでにオレネゴルスク市、モンチェゴルスク市を巡りました。ムルマンスク市から南端のカンダラクシャ市まで300kmもあるので、移動が大変です。

祭典«メモリアルサイトのプレゼンテーション  また2012年末カンダラクシャ市郊外を自転車で走行中交通事故に遭い亡くなられた冒険家渡辺大剛さんのメモリアルサイトの露訳にも着手、2015年から昨年夏にかけて会員と翻訳し、昨年晩秋にプレゼンテーションを開催しました(写真左)。亡くなられて5年になるのに多くの人が会場を訪れ耳を傾けて、故サイクリストの思い出を共有しました。

 今年2018年は「ロシアにおける日本年」。ロシア各地でイベントが開催されていますが、ムルマンスク州でも他都市に負けず劣らず、会員と力を合わせて日本文化を広めて行きたいです。

文:福島/ロシア連邦ムルマンスク市在住
写真:(上から)Boiko N., Zasuhina O., Hibiny.com

シベリア追憶の旅(6)フーシェンガ村にて

◆ 異国の丘

 ヒローク地区行政府庁舎(郡役所)に着いたのは4時過ぎであった。庁舎前広場でバスから降りる。大きな階段の上では行政長はじめ数人が、やっと無事についたかと安堵した表情で迎えてくれている。表敬訪問は簡単に済んだが、その他にも帰路の宿舎や書類手続きの打ち合わせをしなければならず、ヒロークから最終目的地へ出発したのは6時過ぎ。左に小高い山を、右に森を見ながらフーシェンガ村へと向かう。シベリアの丘や山を見る時いつも思い出すのが、あの有名な歌、「異国の丘」である。父やシベリア抑留から生還した叔父が歌っていたこの歌のメロディーと歌詞は子供心にも響くものがあった。だが、その風景を思い浮かべることはできなかった。異国の丘とはこういう眺めのことで、叔父はこのような風景を思い出しながら歌っていたのかも知れないと思ったのは、17年ほど前に遺族墓参団の通訳としてチタ州(ザバイカリエ地方)で墓地巡礼をした時。ある丘の上の墓地から見た風景であった。夏の曇天の下で草地だけの寒々とした丘陵がどこまでも続いていた。シベリア鉄道やバスの窓から丘を見る時いつもあの時の風景が脳裏に浮ぶ。だが、今回のフーシェンガ村近辺の丘や山は、あの草地だけの丘陵とは違っている。樹木が多いのだ。遠くまで森が広がっている。この地で日本人捕虜たちが強制されたのは伐採労働であったろうと推察した。

◆ ヒローク郡第17学校

シベリア  フーシェンガ村の学校に着いたのは7時頃。日没が遅い夏のシベリアでもさすがに夕暮れがこの村を包み始めていた。私たちの団の宿舎はヒローク地区第17学校。バスから荷物を下ろすのを若い団員たちと屈強なサーシャ、ミーシャ、パーシャに任せて、すぐに団長と校長先生の打ち合わせの通訳に入る。部屋、ベッド、掃除、洗濯、シャワーの段取り、そして毎日の食事について、費用も含めて、最初に決めなければならない。すべてをこの学校のお世話にならねばならないのだ。事細やかな打ち合わせになったが、校長先生は最後までにこやかだった。すべてを大きく包み込みながら、要点はしっかり押さえる校長先生のおかげで交渉は問題なく進み、時間はそれほどかからなかった。    

 その後、作業監督のアレクセイさんとの打ち合わせを終えて食堂に行く。団員の皆さんはもう夕食を終え、お茶を飲みながら明日からの作業についての団長連絡を待っていた。サーシャたちはもうイルクーツクに出発していた。「よろしく伝えてくれ」と言い残して。お別れができなかったのは残念であったが、イルクーツクまではまだ遠い道のり。夜を徹してバスを走らせなければならない彼らの無事を願う。

 寒い国にもかかわらず、ロシアの学校はなぜかいくつかの校舎に分かれていることが多い。第17学校にも本校舎の他に二つの校舎があった。二つの別棟は本校舎前の校庭を挟んで並んでいた。本校舎の中にある食堂まで、冬はコートを着て帽子を被って行くしかない。私には不便に思えるが、何らかの利点や理由があるのだろう。二棟の右側の建物が私たちの宿舎となった。私達二人の女性に割り与えられたのは広い教室。下級生用の教室なのか、机は小さく、椅子は低い。机と椅子はすでに隅に寄せられ、ベッドが二つ置いてあった。子供用のベッドだが、私達には丁度良い大きさである。

 ロシアの多くの学校と同じく、ここでも1年生から11年生までがこの一つの学校で学んでいるようである。私たちの宿舎となった校舎の外壁に数人の卒業生が大きく描かれていた。優等生たちなのだろう。私たちが滞在した8月は生徒たちの姿は校舎に無かった。6月末に卒業生を送りだし、その後は夏休みで、9月1日に入学式と始業式が行われる。学校の規模から見て、生徒の数は多くないようである。フーシェンガ村の人口は1900人位とのこと。子供の数に相応した学校の規模と思える。

◆ 鉢植えスミレとヤギ

 途中でトイレがきれいだからとあるドライブ・インのレストランに案内された。しゃれた木造のレストランはパンも料理も種類が多く、コーヒーも美味しかった。値段は、土地の人たちにとっては高めと思われた。どういう人たちが利用しているのであろうかと見渡してみたが、客は私達だけであった。入り口近くでサーシャ、ミーシャ、パーシャが大皿の美味しいそうな肉料理をしっかりと食べていた。このレストランのオーナーとは顔なじみで、いつも利用していると言う。そうか、この三人は自分で稼ぎ出し、好きなようにお金を使っているのかもしれない。この若き働き者たちの事業がこれからも好調に続き、3人の仲が壊れることが無いようにと願う。働き者といえば、力強く生きている男性たちには中央ロシアのタンボフ州でも会ったことがある。

◆ 森の人たち

 今まで私が訪れたロシア人宅では部屋の窓辺に冬でも鉢植えの花が置いてあった。スミレの花が多かった。スミレといっても日本の春に咲く可憐なスミレとはかなり違う。アフリカスミレとかで花も葉も肉厚でかなりの存在感がある。この学校でも、正面玄関横の窓棚に大きめのスミレの鉢が置いてあった。地味な青い花が咲いていた。手入れが良いようで、葉も茂り、花の数も多く、それなりに見栄えがしていた。その窓の横では時々、17歳位の娘さんが椅子に座り静かに本を読んでいた。玄関番でもしているのであろうか。校庭では3匹の犬がうろついている。危なくないかと校長先生に聞いたら、3匹は学校で飼ってる犬なので大丈夫とのこと。ヤギも時々校庭を散歩していた。校庭の隅の草を食べに来ているのであろう。これらすべてが織りなす長閑な田舎の学校の雰囲気に浸っていると心が和んだ。

 ある日の夕方、ヤギが正面階段を上り、玄関から校舎に入って行くのが見えた。校庭にいた私は、ヤギは玄関番の女性にすぐに追い出されるであろうと思っていたが、ヤギが出てくる気配は無い。しばらくして校長先生の大きな怒鳴り声が聞こえたと思ったら、ヤギが飛び出し、一目散に逃げ去った。何事かと思い、中に入ってみたら、スミレの花が食い散らされていた。「ヤギが食べたの?」と聞いたら、校長先生はそうだと頷き、「あのヤギ、今度の入学式のお祝の時に食べてやる!」と言って笑った。これは本気かも知れないと思いながら私も笑った。

◆ シベリアの女性たち

 シベリアの女性たちは男性に負けずに良く働く。郡や村の行政長をはじめ今度の仕事中に出会った働く女性は多かったが、その中で特に印象に残っているのは3人。校長先生と学校食堂のコックの女性、そして現場監督のアレクセイさんの奥さんである。ロシア人男性たちは、「家では、夫は頭で妻は首。頭は首の向く方を向くしかない」と言っては苦笑いする。陽気で、気さくで、付き合いやすい校長先生は、私の好きなロシア人女性のタイプだ。彼女の家庭の実際は知らないが、彼女もきっと、しっかりと家の舵取りをしているのではないかと思う。

 校長先生とは違って、コックの女性は無口で笑うところを見たことが無かった。だが、私はこのタイプのロシア人女性は仕事ができ、頼りになることを知っている。何も親しげに話さずとも頼んだことは気持ちよく実行してくれる。日本人の口に合ったものを毎日3回作るのは苦労であったろう。シベリアの食材はそんなに豊富ではない。毎回出されるジャガイモ料理。「一年分のジャガイモをここで食べた」と言いながらも、団員の皆さんがそのジャガイモ料理を毎回完食できたのは、彼女の料理工夫があったからなのだ。

 アレクセイさんの奥さんは、すべての作業を終了し、支払いをする際に夫と共に現れた。すべての計算と金額の確認を彼女が行った。購入品の立替代も、毎日の作業員数の確認も間違えなかった。何よりも暗算が速かった。ソビエト時代はお釣りもろくに確認しないおおらかなロシア人たちであったが、今は誰もがお金の計算をシビアにするのかも知れないと私は感じ入った。彼らは結婚してから雑貨と食料品の小さな店を開店したという。この村で最初のコンビニだそうである。このような頼もしい女性達と共に暮らし、彼女たちの首が動く方を向いている限り、男性たちはこの厳しい自然のシベリアでこれからも、安心して暖かい部屋で美味しいものを食べて行けるだろう。

(野口)

ロシアの経済的中国従属関係は続く

ロシア・中央アジアと東アジア~経済とエネルギーをめぐる地政学  「ロシア・中央アジアと東アジア~経済とエネルギーをめぐる地政学」をテーマにした講演会が1月30日(火)東京中央区の東京証券会館で、ROTOBO(ロシアNIS貿易会)主催で行われました。

 講師は、ロシアからモスクワカーネギーセンター主任研究員のアレクサンドル・ガブエフ氏とカザフスタンからカザフスタンリスクアセスメントのドシム・サトパエフ氏の2人。ガブエフ氏は「ロシアと東アジアの政治・経済関係」として、ロシアへの投資は14年の「経済制裁」により減少しているが、中国との貿易額については850億ドルとV字回復していること。韓国との関係が深くなっており、17年の韓国のロシアへの投資額は4億ドルと日本の2億ドルを上回っていることなどを報告しました。そして最後に「ロシアは経済的に中国に従属している関係は今後も続く」としました。

 サトパエフ氏は「中央アジア地域と東アジア:中国のソフトパワー」として、中央アジア諸国全体の貿易に占める中国の比率が高くなっていること。タジキスタンとイランの関係が悪化していることの影響。中国は、中央アジア諸国を貫くパイプライン(トルクメニスタンを起点とし、ウズベクとカザフを通って、新疆ウイグル自治区まで)による天然ガスを長期的輸入契約を結んでおり、カザフでは石油の25%が中国の企業によって採掘されていること。日本の影は薄く、例えばウズベクの貿易相手国は1位ロシア、2位中国、韓国は5位、日本は12位に過ぎないなどと報告しました。

(木佐森)

文化交流は平和の礎 2017年ロシア文化フェスティバルクロージング

2017年ロシア文化フェスティバルクロージング  17年1月4日からの「ロマノフ王朝展」を皮切りに、日本各地で、サンクト・マールイ・ドラマ劇場、モスクワフィル、ボリショイサーカス、サンクト・ミハイロフスキー劇場、サンクト・マリインスキー劇場、ロシア国立交響楽団その他など多彩な演奏、公演、展示を行ってきた「ロシア文化フェステバル2017 in JAPAN」のクロージングパーティーが年末の12月27日、渋谷のオーチャードホールブッフェで開かれました。

 主催者を代表して、ロシア側からM・Eシュヴィトコイロシア連邦大統領文化特別代理、日本側から高村正彦日露友好議連会長が、「文化交流は平和の礎、来年(18年)の“ロシア文化年”、“日本文化年”を一層盛り上げよう」と相互にあいさつを交わしました。ブッフェでのパーティーでは、日本側組織委員会副委員長の栗原小巻さんが代表して「相互交流が相互理解を生み、世界平和を造る」と18年のロシア文化フェスティバルの開催を熱い熱意で訴えました。

 このクロージングパーティーの前に、サンクトアカデミーバレエ団によるバレエ「白鳥の湖」がオーチャードホールで演じられました。サンクトでは、マリインスキー劇場、ミハイロフスキー劇場に続き3番目のバレエ団になります。芸術監督にアンドリアン・ファジェーエフ氏が就任し、同日クロージングパーティーでも挨拶がありましたが、若手の監督でもあり、3番目のバレエ団からの脱却を期待したいと思いました。

(木佐森)

文学紹介「ラチとらいおん」

文・絵 マレーク・ベロニカ 訳 徳永 康元 福音館書店 1,100円+税

 初版は1961年刊行のハンガリーの名著。作家マレーク・ベロニカは人形劇作家。ラチは世界一弱虫と自分で思いこんでいる男の子。そんな勝手な思いこみをしている子に、ある日、小さいライオンがやってきた。元気を出せ、君は弱くはないんだ、夢を持てば夢は叶い、それには少しばかりの努力と勇気と忍耐が必要なだけというシンプルな生き様の根本を、この素朴な絵本では語られている。

 小さなライオンは体操を教え、日々の試練を課していく。元気を出そう、君は弱くはない。ハンガリーには穴のあいた旗がはためく日がある。収容所を廃止しかけ、一党独裁を緩めた首相ナジ・イムレ(1896~1958)の処刑が3年前に執行されたのだ。このハンガリー動乱は、人々の心に無数の傷を残した。しかし、人々はそんな時、人形劇や、子供達への未来に続く楽しげな語りかけで、心の太陽を失うことはなかったのである。生きる時、勇気を持つことを忘るまい。それは人生で輝きをもって、君たちの心に残るものだ。そんな出会いも、誰しもあることを忘れまい。4才から読める世界的に愛されている絵本は、複雑な政治状況下、そっと生まれた珠玉の一品であった。

(中出)

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