今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2018年3月号 No.677

行事予定

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 第14回定期総会

【日時・内容】2018年4月1日(日)
◆13:00~14:00 定期総会(内容:活動報告、事業計画、決算、予算、2018年度役員案の承認、質疑応答他)
◆15:00~16:00 ミニコンサート
【会場】横浜平和と労働会館2階 音楽センターホール
【参加費】総会:無料(会員限定)、コンサート:会員500円、一般700円

※総会議案書を同封しますので、ご一読の上、総会出欠席や委任について必ずご回答ください。
(同封のFAX用紙・ハガキをご利用ください。Eメールでの回答も受け付けます。)
総会成立のため、皆様のご協力をお願い申し上げます。



総会記念ミニコンサート

第1部 みなとみらいマトリョミン教室アンサンブル「MMM+」

みなとみらいマトリョミン教室アンサンブル「MMM+」  総会後の定番コンサート。ロシアの民芸品マトリョーシカと世界最古の電子楽器テルミンが合体したユニークな楽器「マトリョミン」の音色を、アンサンブルでお楽しみください。ポップス、クラシック、ジャズなど幅広いジャンルの曲を演奏します。

第2部 旧ソ連戦時歌謡アンサンブル「パリャーノチカ」

旧ソ連戦時歌謡アンサンブル「パリャーノチカ」  パリャーノチカ(Поляночка)とは、森の中の木漏れ日が当たる小さな野原のこと。 ロシアの歌は広大な草原(ポーレ=Поле)の香りを持っていますが、ロシアの歌を愛する小さな日本のグループはせめて小さな原っぱくらいの香りを伝えたいと命名されたものです。 日本でも広く愛されるロシアの歌を原曲のよさを生かして歌唱しようと、2008年より活動開始しました。 「カチューシャ」「ともしび」をはじめとする旧ソ連から日本へ伝わった歌の多くは、第二次世界大戦中に民衆や兵士たちに愛され唄われた「愛国歌曲」です。 有名な歌から知られざる名曲まで、当時のスタイルを再現したロシア語での「歴史再現演奏」で味わってみましょう。


お申し込みは機関紙3月号に同封の総会出欠ハガキ・FAX、またはEメールにて協会事務局へ。

お申し込み・お問い合わせ:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp

横浜ハリストス正教会 復活大祭(パスハ)見学

 横浜ハリストス正教会での見学も今回で4年目。地元横浜の正教会でのパスハを一緒に見学しませんか。正教会内部はミニ博物館・ミニ美術館とも言えるほど、華麗で荘厳なもので、イコンなども間近に見ることができます。ロシアの芸術に触れる大変良い機会です。また、ロシアと日本の相互理解のためにも、ロシア文化の根底に流れるロシア正教の儀式見学は意義のあるものです。春の訪れをパスハとともに感じてみませんか。

日時:2018年4月8日(日)9:00~13:00
集合場所・時間:横浜市営地下鉄三ッ沢下町(出口2、地上)8:30
場所:横浜ハリストス正教会(神奈川区松ヶ丘27-11)
持ち物:頭に被るスカーフ(女性のみ)

ゴールデンウィークの締めくくりはこれで決まり!5/6開催
『蛙になったお姫さま』DVD鑑賞会

『蛙になったお姫さま』DVD  今年も楽しいゴールデンウィークがやってきます。5/5はこどもの日。それにちなんで、大人も子供も楽しめるロシアのアニメを鑑賞しましょう。

 かつて、旧ソ連では児童の情操教育を目的として、子供のために味わい深い多くのアニメが作成されました。その歴史は革命後の1920年代から始まるのです。21世紀の現在は日本もアニメ大国としての地位を確立していますが、その歴史は旧ソ連には及びません。アメリカのディズニーよりも多くのアニメを作成していたとも言われています。

 今回は、その中から民話からヒントを得て作成された『蛙になったお姫さま』を鑑賞します。蛙の姿に変えられてしまった姫を救うために、王子が助けに行く物語です。子供の夢をかきたてる天空を舞台とした、アニメならではの映像のすばらしさをぜひご覧ください。大人もこの日だけは、子供の心に戻ってアニメの世界を楽しみましょう。ゴールデンウィークの締めくくりは、楽しいロシアアニメで。

日時:2018年5月6日(日)14:00~
会場:横浜平和と労働会館5F
参加費:500円(黒パン・飲み物代)

活動報告

「シベリヤ物語」DVD鑑賞会報告

 2月25日(日)、今年最初のDVD鑑賞会が開催されました。初参加者や非会員が多く参加されたのは、大変うれしいことでした。この日は12人の参加者を迎えました。

 「インターネットでこの鑑賞会があるのを知りました。私はシベリヤのノボシビルスク出身です」とシベリヤのお菓子(クッキー)を持参されて、参加したのはブラーダさん。普段の黒パン以外にも、おいしいお菓子が並びました。また、長く「うたごえ運動」に携わってこられた吉永さんは、本当に感慨深く鑑賞されていました。時折、映画の中の歌を口ずさんでおられました。旭川出身で、学生時代に「うたごえ運動」をされていた入江さんは映画のいろいろな場面で大きくうなずきながら見ておられました。

 当時のシベリヤの寒さなどのシーン(分厚い外套を二枚重ねているシーン)や、ロシア歌謡で有名な「トロイカ」が疾走するシーンなどは、かつてごらんになられた方も「ああ、そうだ」とうなっておられました。日本の「うたごえ運動」の中で、うたごえ喫茶は大変な盛況でした。その原点である『シベリヤ物語』は、今も見る人の心をつかんで離しません。皆さん、満足しておられました。

 終了後、ブラーダさんは「ソ連賛美が強いと思います。また、流刑地であったシベリヤの悪いイメージを払拭するように、主人公がモスクワを離れてシベリヤへ行くのはどうかなと思いました」と現代ロシア人の率直な感想を述べておられました。入江さんも、「かつて上映されたのは完全版ではない。今日見た完全版について、もっと知りたい」ということを言っておられました。70年という歴史の変化とその重みを感じました。

 今年最初の鑑賞会、幸先のよいスタートとなりました。

(関戸)

教室案内

横浜ロシア語教室 第128期生徒募集中!

 4月16日(月)より順次開講いたします。「入門」(木曜夜=織田桂子先生、土曜昼=フョードロヴァ・スヴェトラーナ先生)「現代文学講読」(木曜昼=竪山洋子先生)「ロシア人とのコミュニケーション術」(土曜夕=トマルキン・ピョートル)を新規開講予定です。奮ってお申し込みください。

 トマルキン先生は第106期(2007年秋~2008年春)以来、当教室には久々の登壇となります。ご専門を生かした本講座の前に関連する内容での体験講座も行いますので、ぜひご検討ください。

 初級~上級、会話、日本案内、個人レッスンも生徒募集中。

 料金や時間割などの詳細は同封のチラシまたは教室ホームページをごらんください。見学は3クラス・各30分まで無料です。

 受講お申し込み・お問い合わせは教室事務局まで。


ロシア語体験講座 3月24日(土)開講

 新学期に先立ち、新講座担当講師による体験講座を行います。ロシア語に興味をお持ちの方、4月からの受講の参考にしたい方、是非ご参加ください!
 詳しくはリンク先のページをごらんください。

11:00~「初めてのロシア語」(講師:フョードロヴァ・スヴェトラーナ)
13:00~「ロシア人とうまく付き合うために知っておきたいこと」(講師:トマルキン・ピョートル)

【各講座共通】
会場:横浜平和と労働会館 5階教室
受講料:神奈川県日本ユーラシア協会会員 無料、一般 1,000円(税込)
定員:各14名(先着順)
お申し込み締切:3月22日(木)

横浜ロシア語教室 学習動画シリーズ「おもてなしのロシア語」完成祝賀会

 2月17日(土)18:30から、横浜ロシア語教室が企画・制作した学習動画シリーズ「おもてなしのロシア語」完成祝賀会がありました。

 作成に協力いただいた講師の慰労も兼ねて、テーブルには持ち寄りや自作の料理が並びました。正直言って、参加費1000円でこれだけ満足できるとは。

 この日は顧問の柴田順吉氏の85歳の誕生日でもありました。そして、次の日は竪山先生の誕生日。お二人の誕生日もお祝いしました。

 最初に、その柴田顧問の話から。協会創立以来、ロシア語教室はどんな厳しい状況の中でも、一期たりとも休講せず続いてきたこと。協会の歴史などもかいつまんでお話しいただきました。

 この企画運営を最初から手がけた野口先生の熱い思いも話していただきました。

 乾杯は講師であり、出演者でもあるオリガ先生にお願いしました。その後は、楽しい歓談や撮影の苦労話などに花が咲きました。

 そして、「おもてなしのロシア語」の収録の全上映。出演した講師には一言ずつ語っていただきました。

 「落ち着いた顔をしていたが、実際は緊張しまくりでした」と、どの先生方も同じような感想を言っておられたのが、印象深かったです。いろいろな大変さや苦労が感じられました。

 残念だったのは、監修を務めた徳永晴美先生が欠席だったことです。おいでいただいたなら、きっと楽しいこぼれ話を聞くことができたでしょう。

 「おもてなしのロシア語」は、区切りがつきましたが、今後も新たな企画で多くのロシア語学習者を増やしていきたいものです。

(関戸)

【動画視聴方法】
YouTube「神奈川県日本ユーラシア協会」チャンネルから
下のリンクをクリックすると直接見られます。また、横浜ロシア語教室HP、協会HP、Facebookからもリンクしています。

【シリーズ内容】
No.1 アルファベット
No.2 挨拶
No.3 出迎える
No.4 知り合いになる
No.5 許可を得る
No.6 店での買い物
No.7 道を教える
No.8 駅で案内する
No.9 レストランで

ロシア民族楽器 「バラライカ」「ドムラ」教室

 レッスン内容は奏法の基本から音楽理論や高度な内容まで。毎月土曜日に開講しています。初心者の方も、以前習っていて中断された方も歓迎します。

今後のレッスン日程:3月17日、4月7日、5月12日

生徒募集クラス:
17:00~17:45ドムラ中級
18:00~18:45バラライカ初級

講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
会員受講料(1回45分×6回分):3~5名クラス:24,000円、2名クラス:36,000円、1名クラス:54,000円


みなとみらいマトリョミン教室 アンサンブル/グループレッスン

日程:毎月1回、土曜日開講
2017年度後期残り日程:3月17日
2018年度前期日程:4月21日、5月19日、6月16日、7月21日、8月18日、9月15日

◆グループレッスン:Aクラス 13:00~14:00
◆アンサンブルクラス(90分)14:10~15:40

講師:檜垣 紀子
会場:横浜平和と労働会館2階
神奈川音楽センターホール(※3月17日は3階会議室)


組織・財政

組織状況

(2018年2月28日現在)

 2018年度は219名からスタートしましたが、2月も219名と変わりませんでした。新たに入門クラスに編入した人が会員となりましたが、昨夏大阪に引っ越されたロシア語のシプコーワ先生が「お約束の退会」となったので、増減0名です。

(木佐森)

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2018/2/28
単位:円
摘 要本年度収入前年同期収入対前年同期増減
一般会計215,448234,766-19,318
教育事業940,092654,400285,692
一般事業481,264287,150194,114
合 計1,636,8041,176,316460,488
前年同期(単位:円)2017/2/28
摘 要本年度支出前年度支出対前年同期増減
一般会計1,194,624819,350375,274
教育事業701,670630,00071,670
一般事業309,709194,459115,250
支出合計2,206,0031,643,809562,194
当期剰余金-569,199-467,493-101,706
合 計1,636,8041,176,316460,488

 一般会計事業支出が2月単独で91万8,891円(昨年34万7,705円)で突出していますが、これは消費税35万、県民税7万、市民税2万、計44万円を納付したことに因るものです。昨年は同税金は3月に支出しています。消費税35万は高いですね、税率が10%に値上がりすると思うとお先真っ暗になります。
 収入は、一般事業(物販・イベント)が対前年比152%、一般会計事業(会費)が135%、教育事業が152%と好調な滑り出しとなっています。

(木佐森)

お勧め商品

ユーラシアスポーツVol.14 432円 (送料・税込)

ユーラシアスポーツVol.14  写真満載、当協会機関紙別冊「ユーラシアスポーツ」の最新号が刊行されました。

 フィギュアスケートの特集ページでは、先の平昌五輪で活躍した選手たちが沢山紹介されています。今シーズン前半の振り返りにもぜひご活用ください。

 また、昨年末の体操競技大会の模様や日本男子強化合宿でのリオ五輪代表選手のインタビューも収録しています。

 会員の方には1冊無料で同封します。2冊目以降は協会事務所またはオンラインショップ「うにべるま~ぐ」でお買い求めください。

文化・芸能

芸 能

Русская Десятка ロシア・トップ10

Russia Airplay Chart TOP10  IOCの制裁下でもしっかり結果を出して金銀銅メダルGET、お祭りムードのロシアから、2018年2月第3週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中3曲が新曲!

 9位に、スラーヴァの新譜«Однажды ты»(或る日君は)がランクイン。2017年12月に«Заметает зима»と同時リリースしました。6位に、 ノボシビルスク出身のラッパー・エルジェイの新譜«Минимал»(最小)がランクイン。「サヨナラボーイ」というニックネームを持つ彼の今後の活躍を注視しましょう。

 4位に、昨年12月15日にリリースしたブーゾワの新譜«WIFI»(ワイファイ)が入りました。ブーゾワは音楽キャリアはほぼ無かったけど、テレビショー«Дом-2»で4年間トップ人気だった参加者。後にトークや女優業などにも参戦し芸域を広げました。昨年は11本も新譜を出して各音楽の祭典で「新人賞」にもノミネートされました。

 エルジェイ&フェデュクの«Розовое вино»(ロゼワイン)が首位から3位に転落、代わりに先月3位だったブリトーの«Штрихи»(バーコード)が首位に躍進。おめでとうございまーす!:-)

※記事全文はブログでごらんください。

【画像引用元】 Ольга Бузова→Okras
Элджей→Okras
Слава →http://www.womanhit.ru/

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2018年2月12~18日/MOPA)

演劇・映画

岩松了プロデュースVol.3
「三人姉妹は本当にモスクワに行きたがっているのか」

2月3日 於:下北沢・駅前劇場

「三人姉妹は本当にモスクワに行きたがっているのか」

 モスクワへの望郷つきぬ「三人姉妹」。土地に縛られる農奴でもない彼らがなぜ帰れないのか。内心は帰りたくないのではないのかと思ったことがある。私と同じことを考えたのかどうかはともかく、モスクワに帰れない(帰らない)「三人姉妹」をネタにオリジナル演劇が制作された。作・演出は岩松了氏、若手俳優とのコラボレーション第3作目という。

 物語は舞台「三人姉妹」の稽古をする劇団のとある一夜。“駅から遠い”川べりのけいこ場に、出演者が三々五々集まってくる。次女マーシャ役が未定だ。井端(すべての役者は本人として登場)は長女オリガ役に決まっているが、仕事一筋で恋愛要素のないこの役に不満で、マーシャを演じたくてたまらない。三女イリーナ役の片山や兄嫁ナターシャ役の小野も役作りと称してほかの役者とつるんでいる。

 そこに事件が起きる。恋敵との決闘で死ぬイリーナの婚約者、トゥーゼンバフ役の坂東が降板するという。現実に物語を合わせるため、トゥーゼンバフは決闘の場から逃亡することになった。また、軍人プロトポーポフがマーシャと恋仲に陥ったことで、オリジナルには出てこない役が作られ、稽古場近くに住む有閑マダムやメイドがけいこに乱入。「三人姉妹」のキモについて議論するうち、「役者って何?」という哲学論に発展し、けいこは進まない。肝心の演出家すら「家庭の事情」で姿を見せず、そうこうしているうちに、夜が明け始発電車が通り過ぎる。線路を走る電車の響きが、ラストシーンの「軍楽隊の楽しそうな音楽」にオーバーラップしていく。

 筆者は未見だが、岩松了作『「三人姉妹」を追放されしトゥーゼンバフの物語』という作品があり、今回もそのモチーフが取り入れられている。印象としては三人の姉妹たちより「三人姉妹」を降板したトゥーゼンバフのエピソードが強すぎて、「三人姉妹」の印象が薄い。役者が登場人物になりきったり現実に戻ったりという振幅の中で話が進み、全体として役者が出たり入ったりのドタバタな感じだ。ウクレレを弾き語る椎名が乾いた味わいを出し、観客に達観した視点を提供している。演奏楽器がバラライカであればなお深みがあったかもしれないが。

(文:滝沢 三佐子/撮影:橋本 一郎)

劇団夢現舎アトリエ公演「タバコの害について」(チェーホフ作)ほか1篇

2月16日 於:新高円寺アクターズ・スタヂオ内 行灯(アンドン)PUBろびっち

「タバコの害について」

 2年ぶりの再演だが、“ほか1篇”が曲者である。タイトルはズバリ「たばこの害について」。劇団のオリジナル作品である。一人芝居「タバコの害について」のパロディかと思っていたら、なんとプロローグだった。

 チェーホフの「タバコの~」は、学校経営者の男が「タバコの害について」という題目で講演するのだが、次第に彼の恐妻ぶりや家庭事情を暴露する話へと転換していく。劇団オリジナル作品「たばこの~」は、彼に講演依頼が来て「タバコの~」の原稿を執筆するまでの話。チェーホフの作品には出てこなかった恐妻が登場する。

 彼の妻は美人でしっかりしているが本当に恐ろしい。こんな妻を持ったら「何もかも放り出して、一目散に逃げてしまいたい」という気持ちがよくわかる。逃げたい、逃げられないの無限ループに落ち込んだ男が書き上げた講演原稿。幕間を挟んでいよいよ公演の幕が開く。

 初演では和服を着ていた男が、今回は浮世絵をバックに燕尾服。大いなるギャップに笑う。さらに自虐ネタを披露する芸人のようなにやけた表情で、「タバコの害~」(実は妻の害)を語る。語りの中で何度も白熱するが、一瞬で我に返るさまも可笑しい。

 アルコールやつまみも提供され、観客はほろ酔い気分で観劇できる。照明・音響担当がさりげなく劇中に口をはさむのも面白いが、少し遠慮している感じだ。せっかく自由なアトリエ劇なので、もっと闖入してもよかったのではと思う。

※朗報:本公演は4/20(金)~4/24(火)に追加公演予定。ユーラシア協会会員はリピート割引が適用され、初見3000円(1ドリンクつき)のところを2000円(1ドリンクつき)で鑑賞できます。

(文:滝沢 三佐子/写真提供:劇団夢現舎)

映画情報

「ロシアン・カルト2018」
とき:3月3日~16日
ところ:新宿 K’s Cinema
内容:カルト的人気を誇るロシア映画10本を上映。

「ソクーロフを発見する」
とき:3月17日~4月13日
ところ:渋谷 シアターイメージフォーラム
内容:ソクーロフのフィルモグラフィー14本をトークショー付で上映。

ユーラシア通信

春を迎える祭り「マースレニッツァ」ロシア大使館で開催される

マースレニッツァ  日本では寒い日が続いている2月17日(土)、春を迎えるスラブの古いお祭り「マースレニッツァ」(バター祭りの意。パスハの56日前から1週間開催、2018年は2月12日~18日)が在日ロシア起業家交流会議の主催により、ロシア大使館で開催されました。同会議会長のブーラフさんは、「当初はそんなに多くの人が来るとは予想していなかったが、400人以上の人が集まり、大賑わいになりました」と嬉しそうでした。

 在日ロシア人起業家が、それぞれ自分のショップを出し、ヒマワリ油やチョコレート、ロシア民族衣装、アクセサリーなどのお店が並びました。

 舞台は本場のマースレニッツァのお祭りの筋書きに沿って進行し、メドベージ(熊)もマーシェンカも出てきました。

 さて、肝心のブリヌイ(※)は…。
 ※マースレニッツァ(バター祭り)に欠かせないパンケーキ。丸い形が太陽を象徴すると言われる。正教徒は祭りの後、復活大祭まで(大斎の間)肉・魚・卵・乳製品の食を慎む。

 神奈川県協会からは9名が参加しました。参加者の感想をご紹介します。


マースレニッツァ  2度目の大使館でしたが会場は前回と違う建物で、内装を鑑賞しつつ開始を待ちました。可愛い衣装の子供の参加も多く、出し物が「一週間のマースレニッツァ」に沿って披露されました。司会進行の大張り切りに場も盛り上がり、楽しい午後でした。今回もやはり感じたのはロシア女性の気質、すなわち、愛想のオンオフの幅がもの凄いこと。小心の私はビクビクものでした。また、紙皿に、「誰かと分けるの?」という程の山盛りのブリヌイとスメタナを載せているのも彼女たち。ロシア大好きだけれど、遠くにありて想うものなのかも、いやいや、それでは交流はできんぞと、幾杯ものウォッカに妙に冷静になった私は思いました。

(前田)


 マースレニッツァは恥ずかしながら殆ど耳にしたことがない単語だったので、ちょっと興味があり、ロシア大使館に足を運んでみた。ロシア大使館にビザ申請に行ったことは何度もあったが、実際に大使館の中に入るのは初めてだった。外の重々しい警備をくぐり抜けると実に和やかなムードで、いろいろなものが売られていて、踊りや歌が披露されて、とても楽しかった。この夜は「おもてなしのロシア語」祝賀会もあって充実した1日を送ることが出来たと思う。

(内藤)


 ロシア大使館には見学会などで何回か行きましたが、今回はその会場があふれんばかり。およそ400人が集まっての盛大な催しでした。歌と踊りはすばらしく会場から万雷の拍手。紙面ではうまく伝えられないのが残念です。これで、おいしいものが食べられればいう事なしだったのですが……。飲み物を手にして、食事テーブルへ行ってみると、もうほとんど取りつくされて何も食べられませんでした。周囲の人が気の毒に思って、「じゃあ、これ食べて」とおすそ分けに預かっただけでした。春の力を表す、太陽を模った「ブリヌイ」だけは食べられましたが。目と耳はすばらしい歌と踊りで大満足でしたが、口は寂しいばかり。それだけは残念でした。

(関戸)


 初めてマースレニッツァというお祭りを知り、参加させて頂きました。どんなお祭りなのだろうかと、ワクワクして大使館に向かいました。いざお祭りが始まると、私はロシア人なるものを身をもって体感致しました。お祭りに対する熱をはじめ、なにより演劇や歌といった表現に対する心持ちに驚かされました。自らを表現することに喜びを見出しているように思えたからです。また、表現を観賞する側の真摯な態度にも驚かされました。こういったお祭りを大切にする文化が、ロシアを芸術の国として成熟させたものだと感じるばかりでした。

(斉藤)

シベリア追憶の旅(7)たとえ遠い展望であっても

◆ 日本バラック

シベリア  その家は村はずれにあった。日本人墓地へと続く道沿いにある古い建物。ある日、その家の板塀の前で近所の女性と立ち話をしている老婆を車窓から見かけた。夏でもプラトークで頭を包んでいる老婆。その傍で犬が2匹走り回っている。その風景が映画の中のシーンのように記憶に残っていた。

 別の日に、現場監督のアレクセイさんが、村人たちが日本バラックと呼んでいる家があると教えてくれた。後ろを向いて話をしていた私はその家を見逃した。明日は村を発つという現場作業最終日の帰り道で、私は日本バラックをもう一度教えてとアレクセイさんに頼んだ。彼は、その家の老夫婦と知り合いだから、家の写真を撮れるように頼んでみようと言ってくれた。車が止まった場所はあの老婆の家の前だった。その日も老婆が塀の前にいた。犬と一緒に。アレクセイさんが老婆に近づき、何か言うと老婆はこちらを向いて頷き、塀の中に入って行った。アレクセイさんに呼ばれ、私たちも塀の中に入る。繋がれている数匹の犬が一斉に吠え始めた。おじいさんと一緒に外に出てきたおばあさんが、「ほらあのアリョーシャよ。子供の頃よく遊びに来ていた子よ。」といいながらアレクセイさんに近寄った。お爺さんは「おぅ、おぅ、あのアリョーシャか」と言って、アレクセイさんの右手を両手でしっかり握り、嬉しそうに笑った。私たち日本人に過度な関心も好奇心も示さず、淡々と接して話す年老いた夫婦の穏やかな雰囲気、その二人に敬意をこめて接するアレクセイさんの神妙な姿。今にも倒壊しそうな家屋を背景にこの3人が織りなす風景もまた私の記憶に留まっている。

シベリア  おじいさんは、この家は、戦後の日本人捕虜たちが建てた数棟の長屋の一棟の、そのまた一部であると説明して、裏庭から写真を撮るようにと勧めてくれた。皆でお礼を言いながら裏庭にまわる。ロシアの寒冷地の丸太づくりの家。日本バラックと呼ばれているその家は今にも崩れそうで痛々しかった。だが、南方の戦場跡で遺骨収集をしたことのある古参の団員は、しっかりした造りの家だと感心していた。日本人捕虜たちが、シベリアの冬を乗り切るために自分たちで建てた家。しかし、建物があっても、それだけでは極寒は凌げない。戦後の厳しい条件の中で、ここで生き延びるのはさぞや大変であったろう。厳しい環境の中で200人以上の日本人がこの地に斃れ、埋葬され、70年たってやっと故郷に帰れることになったのだと、改めて遺骨収集事業の意味をかみしめる。

◆ シベリアの翁と媼

シベリア  アレクセイさんはおじいさんとおばあさんと話している。おばあさんが、屋根が壊れて雨漏りがひどいが、自分たちにはもう修理もできないので、村役場が援助してくれないものかと話している。アレクセイさんは村役場と交渉してみると約束していた。この話をする際も老夫婦に接する彼の態度は丁重で優しかった。この地で多難な人生を生きぬき、今は雨漏りのするこの老朽家屋で無欲無心に、穏やかに毎日を暮らしいるこの老夫婦は、回りから敬愛されているようだ。私にもこの老夫婦がシベリアの翁と媼に思え、深い親近感を覚えた。お茶でも飲みながら話をしたかった。このシベリアの村でどんな人生を過ごされたのか、ソ連時代と今のロシアをどう思っておられるのか、今の二人の達観した域にどうやってたどり着かれたのかを聞きたかった。でも通訳には自由に使える時間はない。家の写真を撮り終えたら、お礼を言って帰るしかなかった。

◆ セコハン時代

 今まで私が訪れたロシア人宅では部屋の窓辺に冬でも鉢植えの花が置いてあった。スミレの花が多かった。スミレといっても日本の春に咲く可憐なスミレとはかなり違う。アフリカスミレとかで花も葉も肉厚でかなりの存在感がある。この学校でも、正面玄関横の窓棚に大きめのスミレの鉢が置いてあった。地味な青い花が咲いていた。手入れが良いようで、葉も茂り、花の数も多く、それなりに見栄えがしていた。その窓の横では時々、17歳位の娘さんが椅子に座り静かに本を読んでいた。玄関番でもしているのであろうか。校庭では3匹の犬がうろついている。危なくないかと校長先生に聞いたら、3匹は学校で飼ってる犬なので大丈夫とのこと。ヤギも時々校庭を散歩していた。校庭の隅の草を食べに来ているのであろう。これらすべてが織りなす長閑な田舎の学校の雰囲気に浸っていると心が和んだ。

 その後、宿舎へと向かう車の中で、私の思いはアレクシエーヴィチの作品「セカンドハンドの時代」に飛んだ。「セコハン時代」と自分で呼び名を付けたこの作品を私が読み終えたのは、作者がノーベル賞を受賞する一年前だった。500ページのロシア語の本を夢中になって読んだ。次々と繰り広げられる語り部たちの人生。背景の時代や社会、事件も知っていることばかり。語り部たちの痛々しい人生と苦悩が心に響く。読み進むにつれ、庶民の生き方は単純に善(受難者)と悪(迫害者)の図式に当てはまるものではないことが分かってくる。そして、ソ連時代に大半を占めていた協力者たち(соучастникиサウチャースニキ)が激動の中で味わったやりきれない思いも伝わってくる。ソビエト政権を信じ、協力していた人たちを示すсоучастникиはこの作品のキーワードの一つ。文字通りに訳すれば「共に参加する人」。作家のノーベル賞受賞後に出版された日本語訳本では「共犯者」になっている。辞書にこの訳語もあるので誤訳とは言えないし、とやかく言うつもりは毛頭ない。しかし…。犯罪に加わった人なら「共犯者」だろうが、この作品の中の「ともに参加した人たち」は、ソ連政権を正しいと信じ疑わなかった大半の普通の人たちである。

 人は誰でも時代と社会の制約の中で生きていると思う。その制約の中では多くの人は無意識に協力者になってしまう。ソ連で学んでいた頃、私はソ連が全面的に正しいとは思っていなかった。権力の怖さ、数多くの犠牲者がいたことも歴史の事実として知っていた。当時のソ連社会の矛盾も気になっていた。だが私は、それらの矛盾はいずれ解決され、真の公正な時代が来ると信じ、ソ連を容認していた。今でもソ連のすべてが悪かったとは思っていない。だから、広い意味ではやはり私も協力者であったと思っている。そして、ノモンハンで命を懸けてソ連と戦った父も、敗戦後捕虜としてシベリアで強制労働をさせられた叔父も、戦争の犠牲者であったが、侵略された側から見れば日本軍国主義の協力者であったはずだ。確かにどこでもいつでも、使い古された構図が繰り返されている。セカンドハンドの時代、それは今のロシアと過去のソ連だけのことではない。

 だが、多くのことが繰り返されながらも時代は先に進んでいるはず。アレクシエーヴィチは、巻末の対談での「ソ連の70年をどう評価するか、共産主義とは、社会主義とは何だったのか。達成できない気高い理想なのか?」という質問に答えて、「今のところ、それは達成できない理想。人類は公正な社会への途上にあるけど、それは遠い展望。」と述べている。そう、たとえ遠い展望であるにしても、人々は理想の社会を求めて生きていると私も思いたい。

 「セカンドハンドの時代」の1ページのみの終章「凡人の但し書き」で、農婦が「社会は変わっても自分の村での生活は何も変わらない」と語る。なぜ作家がこの農婦の短い語りでこの大作を終えているのか、今何となく分かるような気がする。「ライラックの花束を作ってあげましょう」と言うこの老いた農婦とシベリアの日本バラックに住む穏やかな老夫婦の姿が私の中で重なってきた。(おわり)

(野口)

素敵な習慣 ~オランダ・卒業生のリュックと国旗~

 新年度が始まるまで僅かの時間が残ったこの時期の日本では、いつもより忙しくしている人や組織がとても多い。特に様々なことで頭、体、そして心に多大な重荷を負っているのは初めての受験を迎える生徒達だ。

 若い受験生にとって、この時期は周りが全て敵に見える程ハードなサバイバル期間で、その集中や緊張は五輪選手並みと言っても過言ではない。また卒業試験を迎える若者は、来る社会人生活への希望や期待と過敏な正しい選択との狭間で悩まされている。

 数年か数十年が経ってみれば、あのときそこまで神経を張り詰めなくてもよかったのにと思い返す人も少なくないだろうが、勉学の分野を越えて自分の世界の様々なところに刺激を奔らせた当時のドラマを忘れることはない。

 そのためか、これから受験に苛まされる若者は(若くない者も)、既に同じ経験をした年長の人々に軽く見られがちだ。試験内容が変わっても(昔に比べて難易度を増した場合も、その逆もあるが)、年長者にとっては自分の方がはるかに厳しい経験をしたかのように思えているのだ。

 上述は競争が激化する日本やアジア諸国の社会の現実だが、西洋では想像しにくい話だ。長年に渡ってゆとりある社会を目指した政策を実施し続けてきた西欧では、良きにつけ悪しきにつけ、それ相応の影響が出現している。

 日本人の認識から大きくかけ離れたこの「欧州ゆとり」は、特にオランダがその先駆けであり、幼稚園児から老人にまで深く根付いている。

 かつて17世紀オランダは、豊かな高い技術力で知られ、日本を含む世界の学者達がそれを熱心に研究し取り入れようとしたが、緒方洪庵が熱心に勉学に励んだ蘭学を誇るかつてのオランダはとうの昔に終焉を迎えており、現在では周りの発展と進歩を取り入れようとせず、その他の欧州諸国と共に穏やかに衰退の道を歩んでいる。

 とはいえ、教育制度まで麻痺状態に陥っているこのオランダでも、熱心に勉強しようとしている人がいることは勿論で、その生徒にとっても受験は人生における重要な出来事だ。

オランダ  ポイント数で高等学校卒業又は希望大学への推薦入学が決まる場合もあるが、それに関わりなく、学校を卒業すると窓から学校のリュックサックと国旗を一緒に吊るし出す卒業生が増えている。

 十年程前から小さな規模で始まったこの行為は、年々人気を増して、現在は全国規模での習慣になっている。当初は高得点で合格してそのまま大学等へ進む者が自らの勝利を誇示するふうに行うことが多かったようだが、次第に学校の点数に関わらず、合格者も不合格者も、ただとにかく学校が終わったということをリュックと国旗で祝うようになった。親しんだ場所に別れを告げる感慨深さ、うんざりしながら過ごした場所にやっと「あばよ」ができたすっきり感など、様々で複雑な感情が絡み合った修了証だ。

オランダ  町が満開の花や緑に覆われている夏の初め、あちらこちらに国旗とリュックが堂々とぶら下がり、まるで世界大会でオランダチームが勝利したかのような雰囲気が漂う。でもそれは、チームの勝ちではなく、それぞれの思いと気持ちを込めた一人一人のユニークなランドマークの表示なのだ。その先にはまた新しい未知の世界があるが、そこに踏み出す前に今まで走った長い道を振り返り、独特な形で敬意を表すこの新しい習慣は、古くからオランダのイメージに結びついている風車やチューリップ祭りと同様に、自然に見え、魅力的だ。

(ジャブライロフ/オランダ在住)

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