今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2018年7月号 No.681

行事予定

ハバロフスク旅行&サハリン旅行、8月開催


ハバロフスク旅行&サハリン旅行

 「第20回大河アムール・ハバロフスク市民交流の旅 ウラジオストク、ウスリースク訪問付き」を8月17日~22日に、「北辺の旧『日本』樺太・サハリンへの旅 文豪たちの足跡と北の『ひめゆり』を訪ねて」を8月11日~15日に開催します。

※ハバロフスク市民交流の旅は、航空料金の都合により日程が変更され、1日繰り下げとなりました。(2018.5.23追記)

 今回は初めて日露の文豪が訪れたサハリンへの旅を企画しました。旅程や料金等の詳細についてはチラシ画像をクリックしてPDFファイルでごらんください。。

 6月3日(日)午後2時より、横浜平和と労働会館5階教室にて旅行説明会を行います。興味をお持ちの方はぜひご参加ください。

お申し込み・お問い合わせ:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp

サハリン旅行開設特別企画『樺太1945年夏 氷雪の門』DVD鑑賞会

樺太1945年夏 氷雪の門  今年の夏の旅行は、新たにサハリンコースを開設しました。そのサハリンコースの事前交流会も兼ねて、日本ユーラシア協会の会員限定企画として『樺太1945年夏 氷雪の門』のDVD鑑賞会を行います。

 当時の樺太(現サハリン)の真岡(現ホルムスク)郵便局での女性交換手の悲劇を描いた映画です。1975年作製ですが、上映直前にソ連の政治的圧力によって、全国上映ができませんでした。映画の中に、白旗を掲げている日本軍の軍使(停戦や降伏の交渉のための人員)を見境なく射殺したり、避難している非戦闘員である一般市民を機銃掃射したり、武器も持たず丸腰の民間人を砲撃や銃撃で殺戮したりという衝撃的なシーンがあったからです。また、他にも3/10の東京大空襲で焼け出され、中立条約を結んでいるソ連なら安全だと、親戚を頼って樺太に避難した家族の姿が描かれています。わずか5か月後、空襲よりも悲惨なソ連軍の戦車に蹂躙されることになるのです。

 私たちの友好相手である旧ソ連の、行いを冷静に正確に映画化しています。また、女性交換手たちの悲劇は、叩き込まれた教育の恐ろしさをはっきりと示しています。21世紀の今、70年以上前の悲劇を繰り返すことがないように、歴史を考えましょう。

(関戸 真哉)

日時 2018年7月29日(日)13:00~
会場 横浜平和と労働会館5F教室
参加費 500円(黒パン・お茶代)

お申し込み・お問い合わせ:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp

現代ロシア映画鑑賞会「草原の実験」

草原の実験 草原 父と娘 2人の若者
つつましい暮らしに起こったあの出来事

1949.8.29 セミパラチンスク(旧カザフ共和国)でソ連初の核実験
1991.8.29 セミパラチンスク核実験場閉鎖
その間の核実験回数は450回以上に及ぶ

2014年・アレクサンドル・コット監督作品
第27回東京国際映画祭最優秀芸術貢献賞

出演:エレーナ・アン、ダニーラ・ラッソマーヒン、カリーム・パカチャコーフ、ナリンマン・ベクブラートフ‐アレシェフ

草原の実験 日時 2018年8月5日(日)14:00~
会場 横浜平和と労働会館5階教室
参加費 500円(茶菓子代)

お申し込み・お問い合わせ:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp

8・15企画『ひまわり』DVD鑑賞会

ひまわり  毎年「8・15」を迎えるにあたって、戦争と平和を考える鑑賞会を企画しています。今年は『ひまわり』(1970年作製、イタリア・フランス・旧ソ連合作)です。

 第二次世界大戦下のイタリア。精神異常を装い、徴兵を忌避した夫の虚偽が暴かれ、懲罰のため東部戦線に送られます。一年中、Tシャツ一枚で暮らせるイタリアから、真冬は零下数十度という寒波に襲われるソ連の雪原に連れて行かれたのです。イタリア兵にとってのソ連軍との戦いは、同時に雪と寒さの戦いでもありました。多くのイタリア兵が雪と寒さのために、戦う前に落伍していきます。マルチェロ・マストロヤンニ演ずる夫も、その落伍兵の一人でした。雪の中に埋もれているイタリア兵を助け出したのはソ連の女性でした。雪道を引きずり、家に運び込み、裸になって体を温めたのです。命が助かったのは幸福ですが、助かった故のソフィア・ローレン演ずる妻との別離という悲劇があったのでした……。

 冷戦下で、旧ソ連でのロケーションによる伊・仏・ソの合作映画です。また、その切ないテーマ音楽は映画音楽史上に残る名曲です。戦場で銃火を交えるだけが戦争ではありません。そして、戦争は戦争が終わった後も、なお悲劇を残すということを、この映画でしっかり確かめましょう。

(関戸 真哉)

日時 2018年8月19日(日)13:00~
会場 横浜平和と労働会館5F教室
参加費 500円(黒パン・お茶代)

お申し込み・お問い合わせ:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp

活動報告

6月17日(日)は3つの行事で大賑わいでした

 この日は、新会員・受講生歓迎初夏の親睦会の他に、横浜ロシア語案内実習と、勉強会「ワールドカップのロシア語」が行われ、多くの方にご参加いただき、大賑わいの活気に満ちた楽しい一日になりました。

1. ロシア語で横浜市内観光(10:45~13:00、15名参加)

ロシア語で横浜市内観光  水・木曜日の日本案内クラスで横浜案内のロシア語を勉強する中で、実習への希望が出ていました。そこでこの日にお招き予定の新しいネイティブ講師の皆さんを案内したら喜ばれるだろうと考え、午前中に実施致しました。

 少人数で考えていた実習も多くの方の関心を引き、15名の参加者数になりました。参加者の皆様は案内箇所でロシア語の説明を聞き、移動中は日本語やロシア語で和気あいあいと話をされていました。

 案内実習は中級クラス3人の受講生の方が積極的に取り組み、自分のロシア語で話し、ネイティブの先生たちに関心を持って聞いていただけるしっかりとした案内をすることができました。

 以下は実習を試みた方たちと先生方の感想です。

*授業のテキストがとても充実していたので、基本的にその語彙や表現を覚えこんで臨みました。また、インターネット等で該当する名所にまつわる歴史等を調べ、話す内容に付け加えるようにしました。今回実習して感じたことは、日頃の学習の大切さです。レッスンに対して一層努力していきたいですし、またこういう実習の機会があれば、挑戦してみたいと思います。(田中)

*授業で使っている横浜案内の教材がとても面白く、今回の企画がいい機会だと思い参加しました。10日ほど前に担当箇所を決め、練習したものの、最初はテキストから抜粋した内容をそのまま紹介するのが精一杯。しかし、直前まで野口先生が丁寧にご指導くださり、自然な言い方や言いやすい言い回しを教えてくださいました。また、当日は、たどたどしく説明する私の間違いをネイティブの先生方が親切に直してくださいました。先生方に深く感謝いたします。うまくできないながらも楽しい機会で、非常に勉強になったので、次の企画があればぜひまた参加したいと思います。(山成)

*桜木町駅-ランドマーク展望台を担当させていただきました。準備は、1)会話で構成されている日本案内クラスのテキストを、説明文に書き換え、2) 挨拶や補足を、野口先生監修の「日本案内 ロシア語ガイドテキスト」(絶版)、と協会で販売されている徳永先生の「実務のロシア語」を参考に書き出し、 野口先生に全文をチェックしていただきました。当日は、自分のテキストを読み上げるところが多く、稚拙ではありましたが初めてのガイド体験は大変楽しかったです。次回鎌倉編も楽しみです♪(大貫)

*今回は皆様の実習に参加させていただき、大変ありがとうございました。皆さまはしっかりと準備し、素晴らしい案内がおできになりました。(エレーナ・コンドラシキナ先生)

*案内してくれた人たちがとても上手に説明してくれたので、歴史や多くのことを知ることができ、面白く有益で、とても楽しかった。また何かあったら参加したい。(ラリーサ・ジェルーリ先生)

*展望台や以前散歩したことのある山下公園について詳しく知ることができ、とても面白く、楽しかったです。(ワレーリヤ・ヴァリナ先生)

2. 勉強会「ワールドカップのロシア語」(13:00~14:00、9名参加)

ワールドカップのロシア語  竪山先生の「サッカー用語の学習会、やるとしたら今でしょう!」の提案を受けて、急遽この日のプログラムに加えたこの学習会も多くの方の関心を引くことができ、9名の参加者が、竪山先生が用意された開幕式や試合の映像を見ながらサッカー用語を楽しく学ばれました。

 先ず、開会式のプーチンさんのスピーチを皆で聞きました。聞き取れている方いなかったようですが、雰囲気を味わうという意味で、プーチンさんの挨拶を聞きました。

 そして、サッカーのロシア語単語を皆で、発音しました。

 そして、スタジアムで応援しているという気持ちになって声を出せるように、応援の言葉をいくつか発音し、その後、先日のロシア対サウジアラビアの試合のダイジェストを見ました。どんなことを実況の方が言っているかをちょっとでも聞き取ってみようという試みです。予め、いくつかの単語を書き出しておきました。聞き取れる人は少なかったかと思いますが、それでも知っている言葉が聞き取れたらけっこう楽しかったと思います。

 そして、もう一度そのビデオをかけて、応援している気持ちで、応援の言葉を発音していきました。

 そのあとは、日本人ファンがロシア人ファンと知り合いになるということを想定した会話をしてみました。

 最後の締めは、ワールドカップ応援歌を、ロシア語で声高らかに歌って終わりました。
 らシア、スメレイ!
 らシア、ザベイ!
 らシア、ダヴァイ!
 ベイ、ベイ、ザビヴァイ!

(竪山洋子先生)

3. 新会員・新受講生歓迎 初夏の親睦会(14:00~17:00、23名参加)

初夏の親睦会  今回は、新受講生、会員の藤田さんの協力を得て、前日に近くの厨房を借りて料理の準備ができました。藤田さんの他に、ご都合で親睦会への出席ができないのに駆けつけて下さった会員の宮谷さん、またご夫妻の五十嵐さんとワレーリヤ先生にご参加いただき、とても楽しくピロシキやペリメニ、サラダなどのロシア料理の下準備を本格的にできました。皆様、本当にありがとうございました。

 当日は、料理を並べたテーブルを真ん中に置き、その両端で仕込んであったシャシリクやペリメニを仕上げ、でき立てを味わっていただきました。料理を置いたテーブルを中心に壁側に椅子を並べた立食式レイアウトも参加者が多くの人と交流できる場を作り出したようです。参加者の皆様は、藤田さん発案のロシアの夏の定番コールドスープ「オクローシカ」はじめ、また多くの方からの差し入れで盛り沢山になった料理をいただきながら盛り上がり、楽しく交流を深められていました。

 親睦会の最後に、楽しかった、美味しかった、良かったと多くの方から感想をいただきましたが、数日後にも、「藤田さんが作ってくれた中央アジアのパンのリピョーシカがとてもおいしかった。また違うクラスの人たちとたくさん話ができて楽しかった。」との感想を受講生で会員の板垣さんが寄せてくださいました。

(野口福美先生)

教室案内

夏休みのお知らせ

2018年8月6日(月)~18日(土)は神奈川県日本ユーラシア協会の夏休みとなります。
上記期間中、各種教室・協会事務所は原則として閉まりますので、ご用の方はその前後にお願いします。
休み中にいただいたお申し込み・お問い合わせやご注文等への対応は、休み明けに順次行いますがご了承ください。

横浜ロシア語教室 第128期生徒募集中!

 今期の授業が始まって3ヶ月経ちましたが、見学してみてレベルの合うクラスがあれば、学期途中からの入学も歓迎いたします。検討中の方は遠慮なくご連絡ください。

 中途入学者の受講料は残りの授業回数分のみお納めいただければ結構です。新学期は10月です。

 料金や時間割などの詳細は教室ホームページをごらんください。見学は3クラス・各30分まで無料です。

 受講お申し込み・お問い合わせは教室事務局まで。


横浜ロシア語教室 夏期集中講座 8月開講

1.時事・ニュースのロシア語(中級レベル)
日時:8月13日(月)~17日(金)15:00~16:30 全5回
講師:小林 淳子(横浜ロシア語教室講師)
受講料:会員16,500円、一般18,000円(教材費込み)
テーマ:政治、経済、社会・文化、自然・災害、スポーツ

2.実力アップ支援講座(その1=初級レベル、その2=中級レベル)
日時:
その1・8月11日(土)11:00~15:30 60分×3回
その2・8月13日(月)~17日(金)17:00~18:30 全5回
講師:野口 福美(横浜ロシア語教室講師)

※講座の詳細は教室ホームページに追って掲載します。

ロシア民族楽器 「バラライカ」「ドムラ」教室

 レッスン内容は奏法の基本から音楽理論や高度な内容まで。毎月土曜日に開講しています。初心者の方も、以前習っていて中断された方も歓迎します。

 今後の日程:7月14日、7月28日、8月11日、8月25日、9月1日、9月15日(予定は変更の場合あり)
生徒募集クラス:
17:00~17:45ドムラ中級
18:00~18:45バラライカ初級

講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
会員受講料(1回45分×6回分):3~5名クラス:24,000円、2名クラス:36,000円、1名クラス:54,000円


みなとみらいマトリョミン教室 アンサンブル/グループレッスン

日程:毎月1回、土曜日開講
2018年度前期日程:4月21日、5月19日、6月16日、7月21日、8月18日、9月15日

◆グループレッスン:Aクラス(現在休止中、受講生3名で開講可能)
◆アンサンブルクラス(90分)13:00~14:30

講師:檜垣 紀子
会場:横浜平和と労働会館2階
神奈川音楽センターホール


組織・財政

組織状況

(2018年5月31日現在)

 年初会員数219名 、6月末会員集229名、18年度入会者数累計30名、退会者数20名。

 5月末会員数は229名でしたが、6月に3名の方が新たに会員になられました。一方、ご逝去された方が1名、カンボジアへ移住する方が1名、ご本人からの退会連絡や滞納による退会処理など、計5名の方が退会となり、6月末現在の会員数は227名になりました。10月までは、ロシア語教室への受講による会員拡大は、あまり望めないので、さまざまなイベント等で市民交流人口を増やしていきましょう。

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2018/6/30
単位:円
摘 要本年度収入前年同期収入対前年同期増減
一般会計1,007,1461,038,074-30,928
教育事業5,695,3784,508,0031,187,375
一般事業1,017,421831,4468185,975
合 計7,719,9456,377,5231,342,422
前年同期(単位:円)2017/6/30
摘 要本年度支出前年度支出対前年同期増減
一般会計3,324,0053,411,857-87,852
教育事業2,259,8111,934,224197,115
一般事業743,166635,130108,036
支出合計6,326,9825,981,211345,771
当期剰余金1,392,963396,312996,651
合 計7,719,9456,377,5231,342,422

 春の新歓期間が終わり、収入も一段落してしまいました。6月当月だけを見ると、一般会計(会費など)、教育事業(ロシア語教室など)、一般事業(イベント・物販)とも、前年当月を下回っています。あっという間の梅雨、そして照り付ける太陽、夏本番に向かい、暑さに負けないようにして、各種イベントを充実していきましょう。

(木佐森)

文化・芸能

芸 能

Русская Десятка ロシア・トップ10

Russia Airplay Chart TOP10  サッカーワールドカップで連日沸き立っているロシアから、2018年6月第4週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中2曲が新曲、1曲がTOP10返り咲き!

 8位に、キエフ州出身の国民的歌手ポヴァリーの2018年最初の新曲«Ты в глаза мне посмотри»(瞳を見て)がランクインしました。PVはまだ出来上がっていませんが、愛する人がいない人生は必要ない、と切なく歌っています。

 ファーストシングル«Режиссер»(監督)が露ラジオ各局でヘビロテ、スマッシュヒットしたことでよく知られるグラードスィの、こちらも2018年最初の新曲«Она»(彼女)が5位に初登場。先月28日にオムスク市創設302年のセレモニー(1000万ルーブルもかけたそうな)に登場し大熱唱したとか。まだまだ人気は衰えません。

 露HIPHOPの2トップ・チマチーとエゴールをあれよあれよのうちに最下位に転落させ、第1位の座を奪取したのは、先月初登場5位にランクインしたジガン&カチェールのコンビ。おめでとうございまーす!:-)

※記事全文はブログでごらんください。

【画像引用元】
Градусы→http://www.peoples.ru/
Таисия Повалий→http://www.peoples.ru/

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2018年6月18~24日/MOPA)

演劇・映画

劇団スタジオライフ「アンナ・カレーニナ」

6月8日 於:東池袋 あうるすぽっと

「アンナ・カレーニナ」  言わずと知れたトルストイの名作「アンナ・カレーニナ」。男優が女性役も演じる歌舞伎的?(どちらかというと雰囲気は宝塚的)な劇団、スタジオライフが、イギリスの脚本家ジョー・クリフォードによる舞台化作品を本邦初上演した。

 ポスターのコピー「これはスキャンダルですわよ」が妙に目を引く。男性が女性を演じる倒錯した美学であることに加え、ストーリーの本筋は不倫劇であるため、妖しい演出になるのかなあと思って出かけて行ったが、想像以上に正統的な舞台でびっくり。しだいに追い込まれていくアンナの心理と、夢見るお嬢さんキティが現実に目覚め成長していくさまが鮮やかに対比されたわかりやすい作品だった。

「アンナ・カレーニナ」  一部ダブルキャストによる出演で、この日のアンナを演じたのは曽世海司。背が高くてあごのラインがややごつく、登場した瞬間は少しオネエ的な印象を持ったが、意外にも慎ましく外見と大違い。ただ、アンナが愛人ヴロンスキーの子どもを身ごもるエピソードや、溺愛する自分の息子への気持ちは省略され、アンナの揺れる気持ちに裏付けが乏しいような気がした。

 一方、彼女の夫カレーニンの冷淡さと実兄スティーヴァの軽薄さ、恋人ヴロンスキーとキティの夫となるリョービンの洗練と素朴が好対照となっていて、原作の小難しさを排除している。

「アンナ・カレーニナ」  社交界の紳士淑女などの端役も、同劇団での若手が複数の役柄を演じバラエティに富んでいて楽しい。この劇団の熱心なファンは、こうした若手から新たなひいき役者を見つけていくのだなと実感した。

 惜しむべきは主役アンナの衣装が全幕を通して赤のドレス1種類だったことと、司祭の十字の切り方が正教会とは異なっていたことだ。帝政ロシアの貴族社会という設定にもう少しリアリティを持たせてほしかった。

(文:滝沢 三佐子/写真・劇団提供)

ユーラシア映画情報

アレクサンドル・メドヴェトキン『新しいモスクワ』『幸福』上映会

とき:8月4日(土)14:00~
ところ・お問い合わせ:アテネ・フランセ文化センター4階(JR御茶ノ水・水道橋駅より徒歩7分)TEL 03-3291-4339
主催:KINØ、アテネ・フランセ文化センター
料金:一般1回券1500円、2回券2500円、学生/シニア1回券1300円
17:00よりシンポジウム、入場無料


国立映画アーカイブ開館記念 日本におけるロシア年2018 ロシア・ソビエト映画祭

とき:7月10日(火)~8月5日(日)
ところ: 国立映画アーカイブ本館 長瀬記念ホール OZU(2階)
定員:310名(各回入替制・全席自由席)
主催:国立映画アーカイブ、ロシア文化フェスティバル組織委員会
お問い合わせ・スケジュール等:国立映画アーカイブ ホームページ

音 楽

第2回 アルメニア音楽祭

6月2日 於:代官山 ヒルサイドプラザホール

 さる6月2日、アルメニア共和国大使館主催の第2回アルメニア音楽祭が代官山のヒルサイドプラザホールで開かれた。

 当夜のテーマは「アルメニアと日本の名手たち」。アルメニア人の2人のピアニストと日本の優れたピアニスト秋場敬浩に加えてロン・ティボー国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で日本人として初めて優勝の栄冠を勝ち取った小林美恵が腕を競ってくれた。

 プログラムを見ると、何れもアルメニアの作曲家の様で、なじみがあるのはハチャトウリアンだけだった。

アルメニア音楽祭  1曲目は、先ずハイク・アルセニアンのピアノで、H・アルセニアン作曲の「アップルーテッド第2番」。最初は、何かを語りかけているように始まった、曲が進むにつれて祈りの様にも聞こえてくる。そして新型ベーゼンドルファーのブリリアントな音色がホールを満たす。次第にフォルテシシモに向かい、そして静かに終わった。   

 2曲目は、「ポエム」。ピアノが詩を語ってくれた。

 次は、A・ホヴァネスの「ピアノ組曲作品96」から1.悲しげに2.ジャーラの呪文 3.神秘的な寺院。シューベルトを想わせるような作品と聴いた。

アルメニア音楽祭  ここでピアニストが替わる。アナヒト・ネルセシアン。アルメニアを代表する女性ピアニストだ。

 コミタス=G・サラジャン作曲から「鶴」「ハブルバン」。もともと歌曲として作曲されたものである。

 鶴 現代音楽風の出だしで始まる。最後はゆっくりとした(レントぐらい)テンポで終わる。

 ハブルバン 楽し気なステップを踏みながら子供が歩くイメージ。軽快なリズムを刻み、最後まで楽しい気持ちで聴くことができた。ピアニストの力量が「半端ではない」。

 次が コミタス=R・アンドリアシアンが作曲した「春」。冬の寒さが和らぎ、次第に暖かさを感じるようになり、生き物も活発に活動するようになる。というイメージが心に浮かんだ。

 ネルセシアン女史のソロでの最後の演奏は、おなじみのハチャトゥリアンの作曲した「トッカータ」。バッハを思い浮かべると見事に裏切られる、彼の面目躍如といえる激しい曲であったが、思わずリズムを取っている自分がいた。最後までアップテンポで楽しませてくれた。それにしても見事な演奏だった。

 E・ミルゾヤン作曲「レズギンカ」。連弾用に編曲されたもので、ネルセシアン女史に加え秋場敬浩がピアノに向かう。レズギンカといえばハチャトウリアンの「剣の舞」が有名ですが、この激しい舞曲をピアノでミルゾヤンという作曲家はうまく表現することに成功したな、と感じた。

アルメニア音楽祭  プログラムの最後を飾るのは、A・ババジャニアンという作曲家の「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 変ロ短調」。ヴァイオリンは小林美恵、ピアノが秋場敬浩。日本人のデュオである。

 ババジャニアンがどんな作曲家は不明だが、ちょっと私の大好きなバルトークに通じるものがあるように感じられた。

 ストラディバリ(最晩年の傑作の一つ)を弾く小林美恵の演奏は、力強さの中にも美しい響きが同居し、聴くものをなんとも幸せな気分にしてくれるものだった。

 また、ピアノの秋場敬浩も小林と互角に立ち回り、見事なサポートをしていたことを述べて、感想の締めくくりとする。

(金子)

ロシア大使館でのピアノコンサート

6月14日 於:在日ロシア連邦大使館

ロシア大使館でのピアノコンサート  「ロシア大使館でのピアノのコンサートに行きませんか?」

 こんなお誘いに、まず頭に浮かんだのは、「演奏者は?」や「曲目は?」ということより、「あの旧ソ連大使館で」といった思いでした。当日、「皆で入れば怖くない」と入館し、シャンデリアの灯る明るいホールで開演を待つ間も、かすかな不安を覚えていました。

 しかし、スクリャービンピアノソナタ5番の冒頭の調べが奏でられ、低音のトリルが上へと一気に駆け上がった瞬間、そこはもう、若干25歳のニコラエフ氏の指先が紡ぎ出すロシアロマンの世界でした。夢幻、神秘的な和音の響きの中、次々に浮かび上がる愛、悲哀、かすかな希望、それらを絶望、荒々しい怒りのマグマが呑み込み、そしてまた再生へ向かう。次のラフマニノフの作品とともにロシア音楽の魅力を惜しみなく披露し、伝統の奥深さ、土壌の豊かさを具現したかのようなニコラエフ氏の演奏は、あたかも壮大な叙事詩を歌い上げているかのようでした。

 コンサート後の大使館主催のパーティでの歓談も当夜に色を加え、帰途に就く時、大使館建物周囲の堀が思ったより低いと感じられたのも不思議なことかもしれません。

 このような素晴らしい一夜にお招きいただいたことを、紙面をお借りして、ロシア大使館、神奈川県日本ユーラシア協会の方々にお礼申し上げます。

 写真はニコラエフ氏と

(ピアノ講師 大山 紀久)

川西さんが冒頭にピアノ演奏!ロシア文化フェスティバルオープニング

ロシア文化フェスティバルオープニング  2018年は「日本におけるロシア年」「ロシアにおける日本年」が相互に展開されていますが、「2018ロシア年」のオープニングパーティーがサントリーホール隣のANAインターコンチホテルで6月12日(火)に催されました。

 サントリーホールでのチャイコフスキー作曲の歌劇「イオランタ」の終演後のスタートだったので、スタートが午後9時30分と遅くなってしまいました。

ロシア文化フェスティバルオープニング  同祝宴の冒頭、当神奈川協会の会員である川西宏明さんが独自アレンジのロシア歌曲を5曲ピアノソロで演奏し、最後はロシア国歌でまとめ上げました。その後のロシア側代表ロシア大統領文化特別代理のシュヴィトコイ氏があいさつの中で、川西氏の演奏を絶賛しました。また、横浜ロシア語教室のオリガ先生は、ガルージン駐日大使とツーショトで写真を撮ることができました。神奈川県協会からは3名が出席しました。

 オープニングに歌劇「イオランタ」を選んだ理由について、共催のジャパン・アーツ社長は「イオランタは日本ではあまり上演されていないのだが、ぜひ聞いてもらいたいと思い、今年のオープニングでやらせてもらった」と語りました。歌劇イオランタは盲目の姫(イオランタ)が、貴公子の騎士に恋をして、その姿を見たいと強く願い、視力を取り戻すという物語ですが、「暗黒の中にいても、光を切望しないと、光は見えて来ない」という、トルストイに通じるものがあり、当時のロシアの社会状況を現しているようで、明るい未来は、能動的に強く望まなければやって来ないことを暗示しているのでしょう。一幕物なので、コンサート会場でも十分楽しめました。

(木佐森)

ユーラシア通信

豊富な観光資源と先端航空技術が魅力
ブリヤート共和国投資プレゼンテーション

ブリヤート共和国投資プレゼンテーション  6月15日(金)に赤坂見附のホテルニューオータニで開催された「ブリヤート共和国投資プレゼンテーション」に木佐森会長と参加いたしました。

 ブリヤート共和国はモンゴルと国境を接し、バイカル湖に代表される豊かな自然とチベット仏教やロシア正教等複数の宗教や民族が共存する魅力的な場所でした。

 また、ソ連時代から航空機産業で名高く、潤沢な天然資源を活かした林業や元素周期表がカバーできるほどの豊富な鉱物資源から展開する石油化学業にも強みを持つそうです。

 寡聞にして知らずにいた事項が多く、この日は2時間のプログラムが非常に短く感じられました。特徴的だったのは、当日の進行が時間厳守且つスムーズだったことです。

 事前に配布された日本語資料をもとに、観光省や参加企業の皆さんが割当時間の中で各自のアピールポイントを訴求し、今後の目標を話されていました。

ブリヤート共和国投資プレゼンテーション  更に、散会後にデータ化された各プレゼン資料と製本された観光ガイド等が配布されたことが印象に残っています。

 夏期限定ですが、アンガラ航空が日本からハバロフスク経由ウラン・ウデ行きのチャーター便を運航します。

 シベリア抑留の記憶の地であり、近年は日本人のルーツの1つとして知られているブリヤート共和国へ旅してみたくなった1日でした。

 追記:ご出席者の方々には、私たちと全く見分けが付かないようなブリヤートの方もいらっしゃいました。

 話す言語は違えども親近感が高まったことは事実です。

(板垣)

今回も完売!売り子は炊事軍曹にピオネールと『若者』?第5回バラホルカ

バラホルカ  6月24日(日)、五回目となるバラホルカ(ロシア語で『ノミの市』)に今回は有志3人で参加しました。

 出店は飲食物で、前回同様黒パンのサンドイッチ(ハム・チーズ)と黒パンのブテルブロード(イワシ缶とピクルス=ロシア漬け)にサモワールのロシアンティーセットと、滝沢さんお手製の豆スープと一種類のサンドイッチのセット。

 売り子は、前回よりも一人増えて3人に。今回はそれぞれ、衣装(コスプレ?)を考えました。関戸は軍曹の階級の軍服。滝沢さんは旧ソ連時代のピオネールの制服。内藤さんはシャプカにルパシカ。11時の開店と同時に、「おいしそう」との声でお客さんが集まりました。販売の合間に他店も見て回りました。なかなか入手困難な品物もあり、見るだけでも楽しいバラホルカです。販売時間は18時でしたが、その前に完売。ユーラシア協会の宣伝や旅行の案内もできて、充実したものとなりました。

 残念ながら、関戸は岡山へ帰るので、夜のコンサートは参加できませんでした。けれども、夜のコンサートには田中理事長も参加。ユーラシア協会の存在を大いに示しました。次回は9/8(土)。土曜日なので、関戸も終了まで参加できるので今から楽しみです。皆様も興味がありましたら是非ご参加を。

(関戸)

写真左・旧ソ連時代のピオネール姿の滝沢さん/中・炊事軍曹姿の関戸さん/右・シベリヤの若者姿の内藤さん

栃ノ心の強さはジョージアワインにあり?

 大相撲で栃ノ心が大関に昇進した記念に、6月23日(土)、本部で「栃ノ心大関昇進記念 ジョージアワインまつり」が行われました。関戸にとっては、まだジョージアという語感がなじめずに、つい「グルジア」という名前が出てしまうことがあるのですが……。

 それはさておき、肝心のワインまつり。コクのある赤ワインを片手に乾杯。持ち寄りのおつまみは辛味のあるものだったので、赤ワインの味が引き立ちました。また、ジョージアとの交流を深めているNPO団体の代表の方、ジョージアに何度も訪れているモデルの女性、赤旗新聞の国際交流部門の方など話は大変興味深いものでした。そのうち、いくつかをあげると……。

 (1)栃ノ心の足腰の強さは、幼児期からのワイン造りがあったこと。現在でもジョージアでは、ワイン造りは葡萄を足で踏みつぶし、柔道着のような厚い布を手で絞り、機械を使わずに手作りであること。そのため、小さいころからその作業をしていた栃ノ心は知らず知らずのうちに、粘り強い足腰となっていたこと。

 (2)ジョージア国民は親日的であること。

 (3)世界43ヶ国を訪問したが、その中で最も治安が良かったのはジョージアであったこと。(女性モデルの発言)
など、初めて知ったこともありました。

 ワイングラスを片手に、楽しい歓談が弾み、交流の輪がまた広がったことを実感した催しでした。

(関戸)

プーチン政権 2019年から年金受給資格年齢引き上げ実施

年金受給資格年齢引き上げを風刺した画  現在、ロシアでサッカーワールドカップ大会が開催され、ロシア全国民は熱中して観戦している。しかしそんな陰で、6月14日にプーチン大統領がロシア全国民を揺るがす提案をした。それは、2019年から年金受給資格年齢引き上げることだ。

※挿絵は年金受給資格年齢引き上げを風刺した画。

 ロシアの受給資格年齢を見てみよう(カッコ内は平均寿命)。特にロシア男性は、余生も楽しむこともままならないようだ。
 男性 60→65(64.7)
 女性 55→63(76.3)

 念のため、日本の年金制度と比較すると、日本の受給資格年齢(カッコ内は平均寿命)は、
 男性 65(80.98)
 女性 65(80.98)

 露各メディアは報道規制しているのか 、ワールドカップ関連を放送してばかりだが、インターネットではワールドカップに平行して、この話題が盛んだ。 署名活動サイトが立ち上がり、国内彼方此方で、反対デモを開催している。

 私が住む地でも、奇妙なことに、州議会において賛成多数で可決された。しかし、6月29日に行われた反対デモに多くの賛同者が駆けつけた。露共産党や政党「ヤブロコ」らは、国民投票を促すイニシアティブを執ることを決めたようだ。

 プーチン政権はどうやら、国際的だけでなく国内的にも「おそロシア」のようだ。

プーチン大統領の言葉  2005年9月27日にオンエアで国民に伝えたプーチン大統領の言葉。
«Я против увеличения сроков пенсионного возраста. И пока я президент, такого решения принято не будет.»
(私は年金受給資格引き上げに反対だ。そして大統領任期中は、私はそのような決定をしない。)

(MOPA/ロシア・ムルマンスク市在住)

書評「樺太(サハリン)が宝の島と呼ばれていたころ」

「樺太(サハリン)が宝の島と呼ばれていたころ」 野添憲治著 社会評論社
2015年11月 第1刷印刷

 この本は「日本とユーラシア」(全国版)に書評が載っていたので中垣内が購入して読みました。著者は1935年、秋田県藤琴村(現・藤里町)に生まれ、新制中学を卒業後、山林や土方の出稼ぎ国有林の作業員を経て秋田総合職業訓練所を終了。木材業界紙記者、秋田放送ラジオキャスター、秋田経済法科大学講師(非常勤)などを経て著述業。中国人・朝鮮人強制連行に関する多数の著作がある方です。

 構成は「はじめに」と「宝の島樺太(サハリン)の歴史」という文章の後は聞書き1樺太の林業、聞書き2樺太の漁業、聞書き3樺太に育ち引き揚げての3部構成になっています。海を渡った出稼ぎ日本人の体験談を著者が集めて文章にしています。聞書き1が8人聞書き2が7人、聞書き3が3人の計18人の文章を掲載しています。

 1905年から1945年迄の40年間は樺太(サハリン)の北緯50度以南が日本領でした。その間東北地方や北海道地方から出稼ぎに北へ北へと進み南樺太にやってきた日本人、当時植民地支配していた朝鮮人が連行され樺太で働いていました。日本からは秋田県出身の人が多かったようです。本が出たのは2015年ですが著者が引き揚げ者から話しを聞いたのは1970代中頃のようなので今はもう亡くなられた方が多いと思います。

 聞書き1、樺太に渡った理由は様々ですがある方は樺太で1920年頃1日働けば2円か3円になった内地では1日の賃金が80銭と言う風に樺太の賃金が高ったから入植した人が多かったと言う事です。また賃金の不払いもなかった。樺太は仕事に溢れていた。樺太は林業が盛んだった。また朝鮮人はイジメられていた。

 聞書き2は樺太は漁業も盛んだった。樺太の近海は世界の3大漁場の1つと言われる程昔から魚介海藻などの水産物が非常に豊富だった。1875年に樺太全島がロシア領になってから民間の出稼ぎ者の漁場となった。樺太では日本人の漁業権を認めると言う樺太千島交換条約が結ばれた。1905年からは漁業は樺太の基幹産業となり本格的に始まった。ニシン、イワシ、マグロなどは沢山漁っていた。やはり漁業も東北特に秋田県から多くの人が樺太に出稼ぎに来ていた。

 聞書き3では看護師として働く人、1歳で両親と樺太へ来た人、樺太で生まれた人の3人が文章を書いています。また横綱大鵬の出身地、現在敷香(ポロナイスク)には2013年に亡くなった大鵬の銅像があります。

 内容はこんな感じでした。ここからが本当の感想ですがいつも先ず思う事は樺太に渡った方は苦労していると思いますがある意味この人達の代わりになりたかったと言う事です。樺太が日本あだった時に日本人として生まれてみたかったです。終戦時の1945年には鉄道もありました。中垣内は日本領南樺太が見たかったしその場をたの日本人と共に樺太の色んな所に行きたかったです!中垣内は雪が好きなのでそれも樺太に行きたかった理由の1つです。

 今年は神奈川県日本ユーラシア協会でサハリン旅行のコースがあります!おいでになる方は是非楽しんできて下さい!

(中垣内)

書評「コルチャック先生」

藤康子著 岩波ジュニア新書
定価820円+税

 本名ヘンリク・ゴールドシュミット。又の名を「コルチャック先生」は、1878年、ユダヤ系ポーランド人として生まれた。当時のポーランドでは最も裕福な家庭であった。ワルシャワ大のあと海外留学もパリ、ロンドン、ベルリンと多岐に渡り、その経験が後、施設を作るに役立った。一流の教育者、作家で医師であった彼は子供たちの施設を作る道を歩んだ。彼の作った施設は最新のヒーターがはいり衛生上の配慮が成された。又、子供の権利の概念構築に尽力し①子供の生存権、②子供の死への権利、③子供の基本的人権を提唱し、それらを順守するには国際協力が必要と唱和した。そして大人と子供、2つの共存を子供も権利主体であることを力説し、2つの施設、「ドム・シェロット」(ユダヤ人)「ナッシュ・ドム」(ポーランド人用)の院長となった。1935年、ドイツは悪名高いニュルンベルク法が公布され、ユダヤ系は公民権を剥奪された。これがやがて迫害の前触れとなり、慈善活動の禁止、14才~60才までの男子強制労働、学校閉鎖、預金凍結、企業没収等に続いた。1940年、ワルシャワ・ゲットーを作り、コルチャック達も移った。しかし、ゲットーでの孤児院でも文化活動欠かすことなく、コルチャックは日がな食料調達に走り回った。1942年8月、孤児192人と職員10人とコルチャックは、トレブリンカ絶滅収容所に、貨物列車で送られた。命乞い文書が何度も出されたが、コルチャックが断り、先頭に立った。「私は彼らの父である」

 コルチャックの墓は、今トレブリンカの至宝であり、ユニセフ思想の大憲章の父は、空に消えた。

(中出)

投稿歓迎!

 「日本とユーラシア」神奈川県版は会員みんなで作る機関紙です。もっと面白くしたい方、新しい企画を思いついた方、協会や機関紙について感想や意見のある方は、読むだけでなくぜひ投稿してください。

 ユーラシア(旧ソ連地域)関連ネタなら文章でも写真でも絵でも、ジャンルを問わず何でもOK。

 ただし全てボランティアで、自分のオリジナル、または権利者の許可を得たもの、著作権法に触れないものをお願いします。ペンネームや注意事項があればそれも忘れずに。

 文章は1記事800字以内が目安で、長ければ編集・分割して掲載する場合もあります。

 原稿はメールやFAXや郵便で下記へ送ってください。締切は毎月末で、翌月15日頃に発行されます。投稿をお待ちしています!

(機関紙編集部)

歴史・社会