今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2019年1月号 No.687

行事予定

新年会「ヨールカ祭2019」1月20日(日)横浜市従会館で開催

ヨールカ祭2019  毎年恒例のロシア風新年会&クリスマス会「ヨールカ祭」を1月20日に横浜市従会館で開催します。
 2019年で第58回目となります。
 子ども向けプログラムは昨年に引き続き、スラヴ民族舞踊団「スラヴャーニェ」が担当予定です。現代ロシアのヨールカ祭の雰囲気をたっぷりとお楽しみください!
 詳細はリンク先のPDFファイルをごらんください。

【ヨールカ祭とは?】
 ヨールカ(もみの木)祭にはジェッドマロース(厳寒爺)と孫のスネグーロチカ(雪娘)が登場し、子どもたちにプレゼントを配ります。 ソ連時代、宗教行事が禁じられていたため、新年にクリスマス(ロシア正教の暦では1月7日)の要素を取り入れて祝われ始めたのが由来です。 本来は年越しの行事ですが、当協会では少し遅めの時期に行っています。

ボランティアも募集中!

 例年100人以上が参加する盛大な行事になりますので、大勢のボランティアスタッフも必要です。
 ボルシチをはじめとする大量のロシア料理を前日から何品も作ったり、会場の準備・配膳・物販・後片付けなどをする裏方の力に支えられて初めて、開催が成り立ちます。
 こちらにもぜひご協力いただければ大変助かります。一部でも全部でも歓迎します。皆様のご参加をお待ちしています!
 ボランティアご希望の方は協会事務局まで、参加できる日と時間帯をご連絡ください。

ヨールカ祭ボランティアスケジュール(案)

◆1月19日(土)
午前 横浜平和と労働会館1階協会事務所に集合、食材等買い出し
昼 ロシア料理の調理、物品の準備など
※時間はお申し出の方に追ってお知らせします。

◆1月20日(日)
8:00 横浜平和と労働会館1階集合・荷物運搬
9:00 横浜市従会館4階ホールで会場設営・装飾・料理準備
13:00 開会・料理提供開始
16:30~17:00撤収・運搬
17:00~協会事務所・教室での片づけ

お申し込み・お問い合わせ:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp

2019年、最初のDVD鑑賞会は『ドクトル・ジバゴ』

 昨年11/25に予定していた「ドクトル・ジバゴ」の鑑賞会を2/24に開催します。

 世界最初の共産革命に揺れるロシアを舞台に、医師であり詩人でもあるジバゴの波乱の生涯をロマンチックに描いている映画です。革命の姿を描写した部分が反ソ的であるとして、ソ連時代には出版できず、イタリアで出版され世界に広められたという特異な原作を映画化したのです。そのため、製作もアメリカ・イタリア合作です。「戦争と革命の最中でも、人間は愛を失わない」という内容のすばらしさで、ノーベル文学賞を受賞しています。

 原作もさることながら、この映画のテーマ曲「ララのテーマ」は日本において、バラライカを一躍有名にしたことで知られています。神奈川のバラライカ・ドムラ教室講師の北川翔氏が『徹子の部屋』に出演した際、黒柳徹子氏から「映画音楽のベストスリーに入る名曲」と絶賛されたのです。映画のみならず、バラライカの名曲も深く味わいましょう。

日時:2019年2月24日(日)13時~
会場:横浜平和と労働会館5階 当協会教室
参加費:500円(黒パン・海軍マカロニ・紅茶代)

お申し込み・お問い合わせ:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp

活動報告

現代ロシア映画鑑賞会「バイキング~誇り高き戦士たち」

「バイキング~誇り高き戦士たち」  12月2日に2018年最後の原題ロシア映画鑑賞会を開催し、5人が参加しました。

 今回は、2016年公開のアンドレイ・クラフチュク監督作品、ロシア映画興行収入第1位の「バイキング~誇り高き戦士たち」を鑑賞。

 この作品は、10世紀後半、バイキングにより制圧されたキエフを根拠地としたルーシの支配をめぐって兄弟たちの戦いを描いた歴史映画。迫力満点の作品ながら血みどろの戦いのシーンが多く、歴史絵巻を期待していた参加者にはちょっと残念との声も。最近のヒット作品常連ともいえるダニーラ・コズロフスキーが、影あるヒーロー、末弟ウラジーミルを好演しました。

(滝沢)

山之内さんと熱くロシア歌謡を歌う、会館まつり

会館まつり 会館まつり

 12月9日(日)「横浜平和と労働会館建設31周年会館まつり」が開かれ、会館に入居している民主団体がそれぞれ趣向を凝らした演出で盛り上げました。

 ユーラシア協会5階で平和友好カフェを開き、2階のイベント会場では山之内重美さんの「ロシア歌謡を歌おう!」を主催しました。

 客席が一杯となり始まったコンサートは、ピアノ伴奏で山之内さんの歌を聴くだけではなく、客席の皆さんも一緒になって歌うことができるという趣向です。山之内さんの指導のもと、配られた歌集を見ながら最初は日本語で、次はロシア語で歌うという流れになり会場が一体となっていきました。

会館まつり  山之内さんの美しいロシア語の歌声に負けじと、大きな声で楽しそうに歌うお客さんを見るにつけ、来年もこのコンサートは続けたいな、と思いながら私も一緒に美声(?)を張り上げていました。

 「山之内重美とロシア歌謡を歌おう!」が30分と短かったため、午後3時から5階「平和友好カフェ」で「続きのロシア歌謡を歌おう!」をピアニストの佐野真澄さんの伴奏で続行。「カリンカ」「黒い瞳の」「モスクワ郊外の夕べ」など10曲を歌い合いました。

(文・金子/写真・木佐森)

教室案内

特別講座「冬の読書会」
ノーベル文学賞受賞者 イワン・ブーニンの«Последнее свидание»を読む

イワン・ブーニン  12月23日、24日の2日間にわたり、ロシア文学を原文で楽しむ読書会を開催しました。

 対象者をロシア語検定3級以上の方とし、予習用にオーディオ・ブックのURLと、本文サイトを提示し、予め声を出して、また、辞書を引くなどして読了してきていただきました。

 1日目は、ブーニンのロシア語で書かれた来歴を読み、和訳して、物語の背景を確認し、本文から抜粋した文章で、物語の全体像を把握するために、登場人物の人物像とあらすじを確認しました。

 その後、練習してきていただいた音読をしました。これには、通訳の訓練法であるシンクロリーディングを用い、ラジオ劇場の音声を聞きながら、本文を声に出して読んでいきました。皆さん、とても上手にできていました。

 そして、1章と2章前半をあらすじや人物像把握のために読んだ箇所をのぞき、抜粋箇所のみ、ロシア語で読み、日本語に口頭翻訳していきました。かなりハードだったと思いますが、皆さん、とても素敵な訳にしてくださいました。シンクロリーディングで集中力を使い果たしたとは思えない、素晴らしいパフォーマンスをしてくださいました。

 2日目は、2章後半から3,4章をやはり抜粋箇所を精読していきました。文法的に解析しないと読めない箇所、行間を読み取るのに重要な箇所などは立ち止まってディスカッションしながら進みました。3章は恋人たちのやりとりが詳細に描かれていますが、多くを読み取れる章ですので、丁寧に読んでいきました。

 最後の15分はディスカッションにあてました。読後感を語りあい、その後、ロシア人読者の感想も読んで、物語の意図を考察しました。

 終了後、書評や感想をそれぞれロシア語か日本語で書いていただきました。


◆ W・Kさんの書評

Писатель изобразил пейзаж, животных, героев и их одежду очень ярко и подробно. Поэтому читатель чувствует как будто он смотрит картины или фильм, и понимает сцены.

Читатель может узнать чувства героев из подобного изложения их действия и поведения. В этом произведении используются метафоры эффективно. Они помогают читателю понять содержание конкретно. Особенно, часть конца, о щеглах – это выражение будущего Стрешнева: изменение его жизненной пути.

(原文ママ)


◆ K・Gさんの感想

イワン・ブーニンという作家を今回はじめて知りました。講師や他の参加者の助けを借りながら原文を読み進めることで訳文では把握しがたいロシア語ならではの雰囲気を感じ取ることができました。特に、作中の風景や恋人同士のやり取りの描写はとても繊細で趣のあるものでした。


◆ O・Aさんの感想

非常に充実した授業でした。先生のお話を聞いて読み飛ばしていたところに深い意味があることに気づかされました。特に、最後の一節、一文に深い意味。作品全体が見直されました。さすがにブーニンの作品・短編は素晴らしいと思いました。


 他にも、「音声を事前によく聞いてきたけれど、とても美しい言葉だと思いました。」「とても興味深かったです。講座のための準備は非常に自分のためになりました。難しかったのですが、得難い時間を過ごしました」などのご感想を聞かせていただきました。

 そして、「次回は、チェーホフのかもめや短編が読みたい。トルストイの民話など。」「チェーホフが読みたい(ロシアの有名作家ならなんでも読んでみたい)。」「なんでもいいからまたお願いします。」というように、アンケートに書いてくださいました。

(竪山 洋子)


「最後の逢瀬」

イワン・ブーニン「最後の逢瀬」表紙  1912年8月12日 イタリア・カプリ島にて執筆

登場人物

 ストレーシュネフ・アンドレイ 鉤鼻、後ろにそらした小さな頭。やせ型、肩幅が広く、背が高い。風雪にさらされた顔。ごわつき縮れた白髪交じりの顎ひげを蓄え、筋張った首。また、長いブーツは古びており、上着の裾には、野うさぎの血が固まって黒いシミになってこびりついていた。

 ベーラ 薄い明るい色の上着をはおった小さな女性。胸に十字架、黄金の、祖母の形見だった。最後の財産だ。…小さな足は、軽くて、ヒールの高い、パンプスを履いていた。彼女自身がとてもお気に入りのものだった。

あらすじ

第1章:ストレーシュネフは使用人に命じて、馬に鞍をつけさせた。両親がどこに行くのか尋ねるが、「子供じゃないんだから」と答える。両親は「申し合わせた逢引きに駆け付ける若者よ!」と冷やかしているのか、心配しているのか。

第2章:白い息を吐いて、馬は、霜でガラス細工のようになった低木の中をやっと通り抜けていった。山の斜面には、刈り取り後の畑の中に粗末な田舎屋敷がたっていた。

第3章:夜明け前、寝台近くの床にろうそくが灯っていた。ストレーシュネフは、シャツをはだけて、頭の後ろに手をまわし、仰向けに長々と寝ていた。ベーラは、ひざにひじをついて、悲痛をかかえ、彼のそばに座っていた。

第4章:中庭で空近い太陽がぎらついていた。昇降口が雪で真っ白になっていた。4輪馬車がやってきた。ベーラは、高そうで軽いが、使い古して、流行おくれの毛皮のコートを着て、昇降口に出てきた。

ロシア語教授法研究会第7回ミニシンポジウム
「新しい効果的な教え方を求めて」

徳永晴美先生  日本人には難しいロシア語の発音をいかに効率的に教えるか、ロシア語を教えている人なら誰もがいつも考えていることでしょう。

 この度のミニシンポジウムでは、竪山洋子先生に、発音の矯正の難しさと学習初期における発音教授法の大切さを踏まえて具体的な問題提起をしていただき、 徳永晴美先生(写真)に、この私たち共通の悩みをどう解決できるか、蓄積された知見と経験をもとに講義していただきます。

 ロシア語を教えている方ならどなたでも参加できます。この貴重な機会をお見逃しなく!!

 詳細はホームページをごらんください。

日時:2019年1月26日(土)
第1部 問題提起と講義 16:30~17:30
第2部 質疑応答と懇親会 17:40~19:00
会場:横浜平和と労働会館3階会議室
受講料:一般3,000円、会員1,500円
対象者:ロシア語教授に携わっている方・教えたいと考えている方
定員:20名
お申し込み締切:1月24日(木)

横浜ロシア語センターロシア語講座 第129期生徒募集!

 入門~上級、会話、ビジネス、日本案内、個人レッスン生徒募集中。料金や時間割などの詳細は同封のチラシまたは教室ホームページをごらんください。見学も歓迎。受講お申し込み・お問い合わせは教室事務局まで。


ウクライナ語 生徒募集

 ウクライナへ渡航する方、言語や文化に関心のある方にお勧めです。

 今期から当教室に復帰された担当のピスクノーワ・オクサーナ先生はNHKのロシア語講座でもおなじみですが、ウクライナ語も教えられます!これまでにロシア語を学んだことのある方も、お互いの言語の似ているところや違うところを発見しながら、楽しく習うことができるでしょう。

 月・水・木・金曜日10:30~17:00の間、1コマ90分で個人・ペアレッスンのご相談に応じます。初心者から上級者まで、どなたでも歓迎します。

 詳細は教室ホームページをごらんください。受講お申し込み・お問い合わせは教室事務局まで。


ロシア民族楽器 「バラライカ」「ドムラ」教室

 レッスン内容は奏法の基本から音楽理論や高度な内容まで。毎月土曜日に開講しています。初心者の方も、以前習っていて中断された方も歓迎します。

 今後の日程:今後の日程:1月12日、1月26日、2月9日、2月23日、3月9日、3月23日
(変更の場合がありますので、見学・受講ご希望の方は事前にお問い合わせください。)

生徒募集クラス:
16:00~16:45ドムラ中級
17:00~17:45バラライカ初級

※12月から各1時間ずつ開始を繰り上げます。

講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
会員受講料(1回45分×6回分):3~5名クラス:24,000円、2名クラス:36,000円、1名クラス:54,000円


みなとみらいマトリョミン教室 アンサンブル/グループレッスン

日程:毎月1回、土曜日開講
2018年度後期日程:10月20日、11月17日、12月15日、1月19日、2月16日、3月16日

◆グループレッスン:Aクラス(現在休止中、受講生3名で開講可能)
◆アンサンブルクラス(90分)13:00~14:30

講師:檜垣 紀子
会場:横浜平和と労働会館2階
神奈川音楽センターホール
※11月17日のみ3階会議室


組織・財政

組織状況

 今月は都合により休載とさせていただきます。何卒ご了承ください。

お勧め商品

ロシアフィギュアスケート選手 ザギトワ、メドベージェワ
写真集2,500円(税込)・カレンダー2,400円 (税込)

ロシアのフィギュアスケート選手、アリーナ・ザギトワとエフゲニア・メドベージェワの写真で各々構成。
写真集:B5変形・80ページ。2019年カレンダー:A2・8ページ。
(C)PHOTO KISHIMOTO 発売元:(株)ハゴロモ
協会事務所にて取扱中。在庫は限定3部ずつのため、ご希望の方はお急ぎください!

▼アリーナ・ザギトワ (左)写真集 (右)カレンダー
ザギトワ写真集 ザギトワカレンダー

▼エフゲニア・メドベージェワ (左)写真集 (右)カレンダー
メドベージェワ写真集 メドベージェワカレンダー

ボロディンスキー・ライ麦パン 500円 (税込)

ボロディンスキー・ライ麦パン  旧ソ連など東ヨーロッパで最もポピュラーなライ麦パンの一つです。
 ライ麦モルトを使用し、じっくり長い時間をかけて発酵させる伝統のレシピで作られ、当地では毎日のように食べられています。
 おだやかな酸味と甘み、ライ麦に加えたコリアンダーの独自の爽やかな香りが特徴です。
 あらかじめ約14枚+2エンドにカットされ、二重の袋に密封されています。
 本場の味をぜひお楽しみください。
 ラトビア製、350g。
 賞味期限:2019年5月21日

文化・芸能

芸 能

Русская Десятка ロシア・トップ10

Russia Airplay Chart TOP10  プーチンサンタから年金&消費税引き上げなどの思いがけないプレゼントを貰い、国民の怒張の嵐が吹き荒れる(?)ロシアから、2018年12月第4週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中7曲と、こちらも新曲の嵐!!!

 先月は時代の象徴のユーチューバー達が上位を占めていましたが、今月は50位以内にも無く、全くの圏外に。でも新曲の嵐に耐えて堂々首位だったのは、カラウロワの新曲«Маячки»(小さな灯台)でした。2ヶ月連続の1位です。おめでとうございまーす!:-)

※記事全文はブログでごらんください。

【画像引用元】
Мари Краймбрери→http://www.woman.ru/
Юлианна Караулова, Николай Басков, Градусы, Макс Барских, Дима Билан, Loboda →http://www.peoples.ru/
Звонкий→http://soundcloud2mp3.space/

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2018年12月17~23日/MOPA)

映 画

『葡萄畑に帰ろう』

原題:The Chair、エルダル・シェンゲラヤ監督作品、2017年、ジョージア

葡萄畑に帰ろう  老いた母を故郷に残し、妻に先立たれて娘との関係もイマイチなジョージアの“国内避難民追い出し省”の大臣ギオルギ。彼のもとにあるブランド品の椅子が届いた。ボタン一つで全て操作できるこの椅子は、まるで彼の地位を象徴する玉座のよう。そのとき首相から突然のテレビ電話が入った。避難民を何とかして立ち退かせろとの厳命だ。ギオルギは重い腰を上げて避難民たちが住む場所へ行き、強制的に追い立てようとするが失敗。そのとき、難民の一人ドナラに一目ぼれしたゲオルギは、彼女を自宅へ招き入れる。娘と姉から総スカンを食うゲオルギ。その上、突然の解任がふりかかる。

葡萄畑に帰ろう  官僚主義を痛烈に笑い飛ばした『青い山 本当らしくない本当の話』などで知られるジョージア映画最長老シェンゲラヤの最新作は、権力の象徴「椅子」に振り回されるおかしな政治官僚たちを再び風刺しながら、ジョージア人の心のよりどころであるブドウ畑を深い愛情で描くヒューマンドラマ。

 岩波ホール他、横浜ジャック&ベティでも公開予定。
 ロシア・アカデミー賞最優秀外国映画賞受賞作。
 『葡萄畑に帰ろう』公式サイト

(滝沢 三佐子)

舞 踊

薄井憲二バレエ・コレクション特別展 記念講演会
エリアナ・パヴロバと日本初のバレエ学校

12月23日 於:そごう美術館

エリアナ・パヴロバと日本初のバレエ学校  講師は、早稲田大学演劇博物館招聘研究員で、日本バレエ史研究第一人者の川島京子氏。おもに、日本バレエの母と呼ばれるエリアナ・パヴロバの生涯とその後を中心とした講演が行われた。

 エリアナ・パヴロバ(1899-1941)は、1919年、白系ロシア人として母ナタリア・妹ナデジダとともに横浜に上陸、2019年は来日100年、誕生120年の記念すべき年となる。当初はアメリカ行のビザを待つための来日だったが、生活のためにさまざまな仕事に就く。主なものは社交ダンス講師、化粧品モデル、映画出演、そしてなんと歌手まで。今回、幸運にも残されていたレコードで彼女の日本語による歌声も聞くことができた。

 興味深いエピソードがいくつか紹介された。その一つは1922年アンナ・パヴロワが来日したときのこと。エリアナは横浜港へ出迎えに行った。その頃エリアナはアンナのレパートリーを日本で興行しており、マスコミからは「アンナ・パヴロワの遠縁」や「妹」などと書かれていた。そのことをアンナ・パヴロワは知っており、エリアナに会うや「私の名を襲名した不届き者」と非難。エリアナは小さくなっていたという。

エリアナ・パヴロバと日本初のバレエ学校  さらにエリアナが日本に帰化した理由についても、当時の情勢が影を落としている。

 1923年の関東大震災後、白系ロシア人のためのビザ取得が緩和された。そのときエリアナ一家はイタリアへ渡ったと報道されたが、実際は上海に滞在していた。

 その後、再来日、1927年鎌倉の七里ヶ浜でバレエ学校を開くことになった。しかし、第二次世界大戦が始まると、バレエ学校に投石などの嫌がらせを受けたり、特高がバレエ学校の地下に潜んで動静を監視されたりしたという。こうしたことも一家で帰化した理由ではないかと思われる。

エリアナ・パヴロバと日本初のバレエ学校  日本人、霧島エリ子としてロシア皇帝と日本の天皇への忠誠を誓ったエリアナは、1941年3月中国大陸へ慰問公演に出発、5月に南京で蜂窩織炎という感染症で死去した。

 彼女の死に関しては、諸説取りざたされたというが、川本氏は妹の手紙や電報などから、病死であろうと説明。彼女の遺品から発見された記録映像から、エリアナのバレエはロシアバレエの教授法をそのまま日本に伝達していたこと、彼女の夢であった「白鳥の湖」全幕公演は、第1幕のみの公演しか果たせなかったが、終戦すぐに彼女の弟子たちが全幕公演を成し遂げたことなどが後日談として話された。

 さらに、日本でのバレエ発祥について、川島氏は日本独特の文化背景も紹介。今なお、国によるバックアップのない日本のバレエ。実は西欧化政策の対象に舞踊は含まれておらず、絵画や音楽のように国策芸術として発展しなかった。このためバレエは民間による普及に頼らざるを得ず、上流階級子女のお稽古事として発展したという。日本のバレエ団やバレエ学校の系譜とたどると、いずれもエリアナが始祖となっているのだそうだ。

(文:滝沢 三佐子/講演写真提供:そごう美術館)

ユーラシア通信

資源大国カザフスタンが日本に熱い視線

カザフスタン投資プレゼンテーション  躍動する中央アジアの中でも、先頭を走っているカザフスタン共和国についての経済セミナーが、12月5日(水)と11日(火)と続けて開催されました。

 5日の「カザフスタンの石油・ガス産業と環境法制の現状~日本との協力の可能性~」と題して、カザフスタンのすべてのエネルギー関連企業をまとめている「カズエナジー協会」の活動内容の報告とカザフスタンにおける「環境法制」についての説明が行われました。カザフスタンでは、現在、カスピ海の海底油田のカシャガンで、大規模な油田開発が日本企業も参加して行われており、5年後の23年には産出量が9900万tになると予想されているそうです。また、石油掘削については、厳しい環境基準を設定し、環境保全に配慮しているとし、今後は、再生可能エネルギーとして、地熱発電の全国展開を計画しているとの報告がありました。

 11日は、「変動するユーラシアと対カザフスタン投資の可能性」と題して、具体的な企業との連携を求めました。経済特区の分野では、中国との国境にある鉄道積み替え基地“ホルゴス(東の門)”経済特区(一帯一路で中国からヨーロッパ向けての鉄道コンテナは軌道幅の違いからここで積み替える必要がある。上海からハンブルグまで14日間で到達)、もう一つ、首都アスタナの“アスタナ・テクノポリス”経済特区の現状と進出条件が報告されました。具体的企業としては、エネルギー分野では“カザインベスト社”、運輸分野は“KTE Express香港社”、石油化学分野は“ユナイテッドケミカル社”、グリーンエネルギーの分野では“インカズコンサルティング社”など。カザフの経済セミナーは、回を経るごとにテーマや各報告が少しづつ具体的な課題に移行しているように思われます。

 それに先立ち、イエルラン・バウダルベック・コジャタエフ駐日カザフスタン大使が日本語で挨拶しました。前大使も、「自分はカザフ一の日本語使い」と自称するほどの日本語話者で、同国の日本重視の姿勢が見受けられます。

(木佐)

年内最終のバラホルカ

バラホルカ東京軍装市場  12月15日(土)、今年最終の第7回バラホルカ東京軍装市場が秋葉原ハンドレッドスクエアで開催されました。

 初出品となる「陸軍マカロニ」とおなじみの「海軍マカロニ」の二つの料理とロシアンティー。特に、「陸軍マカロニ」はロシアの牛肉缶トゥションカを使い、おそらく日本初のものです。第一次世界大戦のころ、イギリス軍はコンビーフ、アメリカ軍はスパム(ポークランチョンミート)、日本軍は牛肉大和煮缶、ロシア軍はトゥションカと、どこの国の軍隊でも似たような携帯食料を考え出しました。今回は、中村靖さんが持っていたトゥションカを頂いて、作ることができました。ところが、スタッフは関戸一人という寂しさ。お客は次から次へとやってくるのに、対応が追い付きませんでした。夕方に滝沢三佐子さんが来てくれて大助かり。コンサートの前には完売ということになりました。

 コンサートでは、ヨールカ祭に出演するパリャーノチカのみならず、舞踊の佐藤ディララさんも優雅な踊りを披露。ヨールカ祭の前に、歌声と踊りを楽しむことができました。コンサートには、田中理事長も参加。ヨールカ祭の成功を思わせるようなバラホルカとなりました。

(文・関戸/写真・滝沢)

書評「よあけ」

ユリー・シュルヴィッツ 作・画
瀬田 貞二 訳
福音館書店 刊 1,200円+税

よあけ  もし、あなたが、静かな自然の移ろいを味わいたいならば、この本をお薦めしたい。

 作者のユリー・シュルヴィッツは、ポーランドのワルシャワに生まれ、幼い時から画業に親しみ、1959年にアメリカ合衆国に渡った。ブルックリンの絵画学校に学び「子供のための」本作りに傾注した。本書は絵画、文共に彼の作品である。わずかな言葉と単純な絵で、静かで平凡に生きることの美しさを、そっと描いている。濃いブルーから、明るい空色と木々が緑に変化していく様は、時の推移の美しさを、表わしてくれる。主人公は、おじいさんと孫2人。ポーランドの山々は、これ程、美しかったのであろうか。夜が、朝に変わっていく時間の、解放感がみずみずしく迫ってくる。夜明けの香りまでも感じられるロングセラーである。スタティックな世界の美しさを描ききった作品である。

 この本は、あなたを慰めるだろう。

(中出)

書評「プーチン 人間的考察」

プーチン 人間的考察 今回から3回シリーズで藤原書店から出版された「プーチン 人間的考察」「プーチン 内政的考察」「プーチン 外交的考察」の書評をお送りします。

 第1回目は「プーチン 人間的考察」です。この本は2015年4月30日初版第1刷発行で、まえがき、はじめに 体制、序章 方法、第1章 住宅、第2章 柔道、第3章 KGB、第4章 東独、第5章 市役所、第6章 盗作、第7章 上昇、第8章 人誑し、第9章 人脈、第10章 贅沢、第11章 家族、第12章 マッチョ、第13章 転換、おわりに、からなっています。本文は全部で556頁あります。

 「プーチノクラシー(プーチン統治)とは何か」この問いに本書は答えようとしています。プーチノクラシーとは一種の国家資本主義ではないか?という者もいる。エネルギー資源など、プーチンが「戦略機関産業」とみなす諸部門を再国有化して国家権力の管理下に置く。民間諸企業に対してすら許認可権の行使などを通じて上からの指導を行う。プーチン自身は「ロシア株式会社」の社長であり、メドベージェフ現首相はその番頭にほかならないと。

 またある人は「プーチノクラシー」=「余剰利益・分配体制」と定義する。主としてエネルギー資源を売却することによって得た莫大な「レント」を一部のエリートが独占するシステムでプーチンはそのような体制の総支配人にほかならないと。この見解に著者は共感を覚え、実際この見方に従って多くの論文を書いています。

 また著書はプーチノクラシーについて6つの特徴を挙げています。

1. プーチンがロシアの憲法や法律よりも、己が設定する「ゲームのルール」の方を尊重する。

2. 1と似ていて法律で定められた位階制度よりも現実の力関係がはるかに重要な事、つまり公式の地位やポストに比べ非公式な力やコネの方が大きな役割を演じること

3. プーチノクラシーはそれが非公式の内部集団に支えられ運営されている点

4. プーチノクラシーは所属チームに対する「帰属」意識、とりわけそのボスに対する忠誠を重んずる忠誠心重視

5. 政策決定の方法がユニークであること。現ロシアは大統領制を採用しているので法律上、プーチン大統領が最大かつ最終の政策決定者である

6. 「ゲームのルール」それ自体よりもそれを決める方がより重要な役割を演じる。プーチノクラシーのボスであるプーチンがその時々決める事が即ち「ゲームのルール」になる。

と著者は分析しています。更に具体的且つ様々な項目を設けロシア(ソ連)の地域研究の第1人者である木村汎氏は続けます。

 最後に著書の木村汎氏の経歴ですが、1936年生まれ。京都大学法学部卒業。米コロンビア大学Ph.D.取得。北海道大学スラブ研究センター教授を経て、現在北海道大学及び国際日本文化研究センター名誉教授、拓殖大学客員教授です。専攻はソ連/ロシア研究。

(中垣内)

投稿歓迎!

 「日本とユーラシア」神奈川県版は会員みんなで作る機関紙です。ユーラシア(旧ソ連地域)関連の投稿をお待ちしています。
 催し物の感想、旅行記、講評、写真、絵などさまざまなジャンルの投稿を歓迎します。
 ただし、作品は自分のオリジナルか著作権者の許可を得たものに限ります。
 デジタル画像はテキストファイルに貼りつけず、別ファイルでお送りください。
 また、ペンネームや注意事項があればお書き添えください。
 毎月末締切、翌月15日頃に発行される見込みです。

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 機関紙編集部
〒231-0062 横浜市中区桜木町3-9 横浜平和と労働会館1階
Fax 045‐201-3714
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(機関紙編集部)

歴史・社会