今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2019年7月号 No.693

行事予定

現代ロシア映画観賞会 納涼ロシアンホラー特集「シャッター 写ると最期」

シャッター  写ると最期  7人の若者たちは、合コンパーティ―を楽しむため、ドライブで森の別荘に向かっていた。
 ところがその途中、道路を横断する大きなシカに衝突してしまい、深い森の中に壊れた車ごと取り残されてしまう。
 携帯が通じず、救助の期待ができない彼らは、凍死を避けるため、森をさまよい、ある山小屋にたどりつく。
 そして、その不気味な山小屋で、彼らは珍しいアンティーク・ポラロイドカメラを発見する。
 それはレンズを向けられた人の、最期の姿を映し出すという、いわくつきのカメラだった。
 やがて若者たちは写真に映し出された自分たちの最期の姿が、現実となることに気づき、極限の恐怖へと追い詰められていく…。
(「未体験ゾーンの映画たち2019」公式サイトより)
 2018年ロシア、アントン・ゼンコヴィッチ監督作品、80分。

日時:2019年7月28日(日)
会場:横浜平和と労働会5階 当協会教室
資料代:500円
お問い合わせ・お申し込み:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax: 045-201-3714
E-mail: eurask2@hotmail.co.jp

北辺の旧「日本」樺太 サハリンへの旅

サハリン旅行  昨年、初めて企画したサハリン旅行。今年も最少催行人数に達しましたので催行が決定しました。今年も「戦争と平和」、「宮沢賢治の足跡」の二つが大きなテーマです。今年は現地の人たちとの交流もしたいと考えています。詳細は同封の案内をご覧ください。参加人数はまだゆとりがあります。興味や関心をもたれたら、是非お問い合わせください。

期間:2019年8月9日(金)~8月13日(火)
料金:会員185,000円、一般200,000円
主な来訪都市:ユジノサハリンスク(札幌を模した州都)、ブズモーリエ・ドリンスク(宮沢賢治の足跡が残る地)、ホルムスク(『北のひめゆり』と言われる真岡郵便局女子職員自決の地)
お申し込み締め切り:7月16日(火)

お申し込み・お問い合わせ先:
第2回 北辺の旧「日本」樺太・サハリンへの旅実行委員会
(神奈川県日本ユーラシア協会内)
Tel/Fax: 045-201-3714
E-mail: eurask2@hotmail.co.jp

我が身か、平和か―『死刑執行人もまた死す』DVD鑑賞会

『死刑執行人もまた死す』  今年も「8/15」が巡ってきます。毎年、戦争と平和を考えるDVD鑑賞会を開催しています。

 今回は、アメリカ映画『死刑執行人もまた死す』(1943年)です。戦争の最中に制作された映画です。これは、実話を下敷きにした作品です。1942年、チェコ副総督ラインハルト・ハイドリヒ暗殺事件です。その報復のため、リデツェ村が村民全員皆殺しの上、村そのものを消滅させられたことは有名です。

 映画は、その事件を取り上げています。ナチスの侵略に命を懸けて抵抗するレジスタンス。その中で、我が身の安全のため、あるいは金のため仲間を密告する裏切り者。その結末はどうなるか。その犠牲はいかなるものか。息詰まるような緊迫感は、ぜひ映画を鑑賞なさってみてください。

 自分の身に置き換えて、自分は命を懸けて仲間を守れるのか。平和を守れるのか。この映画は、観る人に問いかけてきます。

日時:2019年8月18日(日)13:00~
会場:横浜平和と労働会5階 当協会教室
参加費:500円(黒パン・紅茶付き)
お問い合わせ・お申し込み:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax: 045-201-3714
E-mail: eurask2@hotmail.co.jp

(関戸)

活動報告

新会員・新受講生歓迎親睦会報告

 6月23日に行われた初夏の新会員・新受講生歓迎親睦会のテーマは「料理と歌で感じてみよう、ロシアの魅力!」でした。

 午前中のロシア料理教室の参加者数は17人、午後の親睦会は23人と多くの参加を得て、美味しくそして楽しくたくさんのロシアの歌を歌いながらロシアを知ることができました。

 皆様がお寄せ下さった感想文は親睦会の雰囲気が良く伝わるものですので、ぜひお読みいただければと思います。(※以下敬称略)

(野口)

親睦会  17名の参加で料理教室を行いました。今回作ったのは、サリャンカ、ビーツのサラダ、ビーツの葉のガルブツィ(ロールキャベツのビーツの葉版)、海軍マカロニです。

 まず簡単に手順を説明し、すべての材料の下ごしらえを手分けして行いました。引き続き、2~3のグループに適宜分かれて調理を行いました。ビーツの葉で肉の餡を巻くところは、全員に行ってもらいました。海軍マカロニは、関戸真哉さんの指導で調理を行いました。いずれの料理も割と簡単に作ることができ、2時間足らずですべてを完成させました。

 野口先生差し入れのお手製ピロシキも加わって、豪勢な歓迎会の食卓ができあがりました。

(滝沢/料理教室講師)

 今年4月にロシア語入門クラスに入ったばかりの者です。

 まだロシア語の短い単語や文章を覚えるのが精いっぱいの毎日です。

 今回、ロシアをもっと知りたい!(そして美味しいロシア料理を食べたい!)という気持ちから親睦会に参加しました。第1部ではビーツの葉を使ったロールキャベツならぬロールビーツに挑戦。ビーツの葉が柔らかいので巻き巻きするのが大変でしたが、一緒に参加した人たちとあれこれ工夫しながら作るのはとても楽しかったです。海軍マカロニやピロシキも美味しく頂戴しました。

 第2部ではロシアの歌をたくさん皆で歌いました。私が将来、絶対に持ち歌にするぞ!と考えている「百万本のバラ」はまだ全然ロシア語で歌えませんでした。しかし、上のクラスの方たちが上手に歌うのを聞いてメラメラと私も頑張るぞ!という気持ちになりました。この素敵な会を企画してくださった協会の方々に大感謝です。来年も(もう少しロシア語が上手になって)また参加したいです。

(中網)

 私はロシア料理、ロシア歌謡両方に興味があったので迷わず申し込みました。

 料理教室、ロシア歌謡を歌う会どちらにおいても、参加者の皆様と交流でき、楽しい時間を過ごすことができました。個人的には、ウォッカを召し上がる方が数人いらっしゃって嬉しかったです(笑)

 普段のロシア語講座では他のクラスの方と交流できる機会が限られています。イベントには積極的に参加したいと感じました。参加を迷っておられた方も次回はぜひご一緒しましょう!

(川北)

 料理教室のみの参加となりましたが、たいへん楽しい時間とおいしい料理を楽しませていただきました。特にビーツの葉はなかなか食べる機会がないので、とても貴重な体験でもあると思いました。協会のみなさまの優しさとロシアへの愛を感じました。本当にありがとうございました。

(佐々木)

親睦会  普段教室外で他のロシア語学習者と知り合う機会がほとんどないのですが、先日の歓迎会では様々な世代、性別の方とお会いすることができました。またそれぞれに異なった学習動機で参加されていることを知り、情報交換などもしまして、とても有意義な時間を過ごすことができました。

 初めて口にする料理もとてもおいしく、また大好きなピロシキを食べることもできて、とても幸せな時間でした。自宅でサリャンカと海軍パスタを家族に振る舞ったところ大変好評でした!

 歌謡曲の時間ではいくつか覚えのあるメロディがあり、これもロシアの歌謡曲なのかと、知らない間にロシア文化に触れていた経験のあることに驚かされました。

 歓迎会の実行に携わってくださった先生方に深く感謝しております。本当にありがとうございました。

(松下)

 いつもこの教室のイベントに参加すると、様々なロシア歴のある方々と知り合いになれるのでとても楽しいです。それぞれの経験や知識を共有できる有意義な場でもあります。

 第一部はビーツを余すことなく使った料理教室。講師滝沢さんのテキパキとした指導のもと、美味しいビーツ料理を作ることが出来ました。

 ビーツの葉のガルプツィは初体験でしたが、とてもサッパリしていて美味しかったです。

 第二部は野口先生の解説付きで、歌詞の意味などを学びながら歌うことが出来たので良かったです。

(五十嵐)

 6月23日の日曜日、神奈川県日本ユーラシア協会ロシア語センターで行われた会員・受講生の皆様の親睦会に招かれ、参加しました。この親睦会は、2千万人以上の同胞が犠牲となった1941-45年の大祖国戦争の開始日、今は「記憶と哀悼の日」と呼ばれている6月22日にも捧げられました。

 参加者たちには、受講者と講師の皆さんが作ったロシア料理がふるまわれました。ビーツとディルのサラダ、素晴らしい野菜スープ、ビーツの葉に包まれたひき肉、海軍マカロニ、黒パン、キャベツ入りなどのピローグ、そして美味しい赤ワインや伝統的なロシアウオッカも供されました。

 豪華な昼食の後で、別の教室に移り、居合わせた全員が参加した自主コンサートが始まり、最初に大祖国戦争の歌のビデオが流されました。親睦会は善意にあふれた和やかな雰囲気の中で行われたことを特記したいです。参加者全員が楽譜とロシア語と日本語で書かれた歌詞のコピーを受け取り、ビデオや電子ピアノの伴奏でのコンサートとなりました。

親睦会  戦時中の懐かしい歌が響きました。「モスクワ防衛隊の歌」で始まり、次が有名な「カチューシャ」、そして「タチャンカ」、「ともしび」、「心騒ぐ青春の歌」と続きました。そのあと、「黒い瞳の」、「カリンカ」、「モスクワ郊外の夕べ」、「ウラルのグミの木」などのリリカルな民謡に移りました。また、現代の歌「百万本のバラ」、鰐のゲーナとチェブラーシカの歌「残念ながら誕生日は年に一度きり」の童謡なども歌われました。

 また、わが国で有名な歌手のシャリャーピンやハリトーノフのレパートリーであり、多くのロシア人たちが好んで歌う「黒い瞳」が歌われ、ゲーテの「ファウスト」からの歌詞に1879年にムソルグスキーが曲をつけた「蚤の歌」が流されました。親睦会の参加者に披露されたハリトーノフが歌うこの賄賂についておどけた歌は今も極めて現実味があるものです。

 親睦会は2時間以上も続きました。私は、この忘れることのできない「心のお祭り」の親睦会を準備した方たち、積極的に参加した方たちに心から感謝いたします。

(コンドラシキナ)

お申し込み・お問い合わせ先:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax: 045-201-3714
E-mail: eurask2@hotmail.co.jp

サハリン旅行説明会報告

 雨の降る6月22日(土)、2回目のサハリン旅行の説明会が桜木町で行われました。今回は、貸会場でマンションの一室で行いました。

 スタッフのほか、参加者は3人。祖父がドリンスク(落合)の王子製紙で働いておられたという、KさんYさんの姉妹と、飛び込みで来られた男性でした。昨年の旅行のDVDを観ながら、関戸が説明を行いました。旅行の雰囲気を味わって頂けたと思います。参加者からは旅行のリクエストもありました。Kさん姉妹は「ドリンスクの王子製紙工場跡はぜひ、中に入ってみたい」との希望。前回、サハリンを旅行されたときには、車内から見るだけだったとのこと。もちろん、今年も工場内を見て回ります。

 また、説明会の後には、『氷雪の門』のダイジェスト鑑賞会。旅行でも訪れるホルムスク(真岡)の悲劇の映像です。

 後日、Kさん姉妹は旅行の申し込みをしてくれました。旅行参加者を増やすことのできた大変有意義な説明会となりました。

(関戸)

教室案内

横浜ロシア語センターロシア語講座 第130期生徒募集!

 月曜~土曜、入門~上級・会話・日本案内 各クラス開講中。見学や学期途中からの入学者も歓迎しますので、お気軽にお申し込みください。中途入学者の受講料は残りの授業回数分のみです。

 料金や時間割などの詳細は教室ホームページをごらんください。見学は3クラス・各30分まで無料です。受講お申し込み・お問い合わせは教室事務局まで。


ロシア民族楽器 「バラライカ」「ドムラ」教室

 レッスン内容は奏法の基本から音楽理論や高度な内容まで。毎月土曜日に開講、実質個人レッスンとなります。初心者の方も、以前習っていて中断された方も歓迎します。

今期の予定:7月20日、8月3日、8月24日、9月7日、9月21日
(変更の場合がありますので、見学・受講ご希望の方は事前にお問い合わせください。)

生徒募集クラス:
16時~バラライカ、17時~ドムラ(変更の場合あり。見学・入学の際はお問い合わせください)

講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
会員受講料(1回45分×6回分):3~5名クラス:24,000円、2名クラス:36,000円、1名クラス:54,000円


みなとみらいマトリョミン教室 アンサンブル/グループレッスン

日程:毎月1回、土曜日開講
2019年度前期日程:4月20日、5月18日、6月15日、7月20日、8月17日、9月21日

内容:個人演奏・アンサンブル
レッスン時間:13時~15時。詳細はお問い合わせください。

講師:檜垣 紀子
会場:横浜平和と労働会館2階 神奈川音楽センターホール


組織・財政

組織状況

今月は都合により休載とさせていただきます。

お勧め商品

歌うチェブラーシカのぬいぐるみ 3,300円(税込)

歌うチェブラーシカのぬいぐるみ  人気のロシア人形アニメの主人公「チェブラーシカ」のぬいぐるみ。
 お腹の音符マークを押すと愛嬌のある声で「チェブラーシカの歌」を歌います。
 高さ25cm、幅30cm。中国製、ロシア品質保証付き。

喋るチェブラーシカのぬいぐるみ 2,160円(税込)

喋るチェブラーシカのぬいぐるみ  人気のロシア人形アニメの主人公「チェブラーシカ」のぬいぐるみ。物語にちなんでオレンジを持っています。
 お腹の音符マークを押すとロシア語で色々な台詞を喋ります。どんな台詞が出てくるかはお楽しみ。
 高さ15cm、幅20cm。中国製、ロシア品質保証付き。

マトリョーシカ5個組(青) 2,900円(税込)

マトリョーシカ5個組(青)  青い大きな花に白い小花、落ち着いた雰囲気の5個組マトリョーシカ。
 開け閉めしやすく丁寧に作られていますので、この品質なら大変お買い得です。
 高さ3cm~10.5cm、最大直径5cm。ロシア製。

文化・芸能

演 劇

サハリン州文化・公文書省 第38回劇場シーズン
愛に盲しいて『ピカソの女たち オリガ』

6月5日 於:両国・シアターΧ(カイ)

『ピカソの女たち オリガ』  サハリン州立人形劇場による異色の舞台である。当劇場芸術監督であり、ロシア共和国連邦文化功労者でもあるアントニーナ・ドブロリューロワが主演。人形劇団を名乗るが実際はひとが演じ、幾人かの団員が黒子的役割を果たす。舞台に集中してほしいということで字幕はなく、観劇対象は「16歳以上」。光と影が交差し、めくるめく絵画を観ていくような印象だ。

 演目は、英国のブライアン・マキャベラによる、画家パブロ・ピカソをめぐる女性たちの独白劇である。この作品は、ピカソの正妻オリガの部分を取り出したもので、東京演劇集団風がイヨネスコ劇場(モルドバ)のブトカラウ氏の演出で2005年に初演したもの。今回も同演出版を用いており、ロシアで2009年10月に初演している。

 物語は、ディアギレフ率いる「バレエ・リュス」のバレエダンサーだったオリガ・ホフロワ(一部コクロヴァと表記される)が、ピカソを罵るシーンから始まる。オリガは、バレエ「パレード」で美術を担当していたピカソと知り合い、自分のキャリアを棄てて結婚。17年間ともに生活し、ピカソの「ネオ・クラシック」と呼ばれる時代のミューズとなる。しかし、息子が生まれると夫婦関係は崩壊しだす。17歳のフランス人女性がピカソの子どもを身ごもったと聞かされ、オリガは息子を連れて彼のもとを去る。離婚訴訟を起こすも、ピカソから均等な資産分与を拒否された。そのため、彼女は生涯ピカソの妻の座を捨てなかった。

『ピカソの女たち オリガ』  物語の大半は、彼女のピカソに対する恨みや悔恨なのだが、それだけではない彼女の炎のような愛情も表現する。常にゴシップと中傷の的とされながら、オリガはアルコールに依存し寂しく病死。舞台では、乞食のような姿のオリガもさることながら、片方だけはいた靴、芸術家の写真がべたべたと貼られた木のトランク、酒瓶とろうそくなど、オリガの苦痛を象徴する小道具が数多く登場し独白を超える存在感を示した。

 舞台上にしつらえてある砂丘のようなものと、天井から砂が降り注ぐシーンも印象的だった。終演後、近くで見て見たらそれは砂ではなく米。ピカソへの愛を捨てきれなかった彼女は、死してなお愛憎にさいなまれる。賽の河原で米を積むような、なんとも救いのない情景だった。

(文・写真下:滝沢 三佐子/舞台写真:劇団提供)

映 画

★ジョージア(グルジア)映画祭in横浜

 サイレント時代の伝説的作品から、70年間にわたるソヴィエト時代の名作、1991年独立後の混迷を経て蘇った現代ジョージア映画。昨年の岩波ホール上映作品の中から短・中編を含む、選りすぐりの17作品を一挙上映。
とき:7月13日(土)~8月2日(金)
ところ:横浜シネマリン

★カリテ・ファンタスティック・シネマコレクション2019

 「フローズン・ブレイク」(2018、ロシア)、「リービング・アフガニスタン」(2018、ロシア)などを日替わりで上映。
とき:7月13日(土)~8月9日(金)
ところ:新宿・シネマカリテ 

(滝沢)

音 楽

第3回アルメニア音楽祭 「コミタス生誕150年に捧ぐ」

アルメニア音楽祭  さる6月26日、市ヶ谷のルーテル教会の音楽ホールで第3回アルメニア音楽祭が開かれ参加したので報告します。

 今回は、アルメニアの音楽の父として尊敬を集めている作曲家『コミタス(本名ソゴモン・ソゴモニヤン)』。の生誕150年に当たることで、コミタスを中心にアルメニアの作曲家のピアノと声楽曲の作品でまとめたコンサートとなりました。

 コミタスは、偉大な作曲家であるだけではなく、教育者であり、音楽研究者であるだけではなく、敬虔な修道士でもありました。

 しかし、彼の脂の乗り切ったころ第一次世界大戦が勃発、オスマントルコは民族根絶を目論見、コミタスを含む文化人を逮捕し、虐待の限りを尽くしたのです。助け出されはしたのですが精神を病み、1916年から亡くなる1935年の間はほとんどをパリ郊外のサナトリウムで過ごさざるを得ませんでした。ドビュッシー、フォーレ、サンサーンスらと交流し作品を称賛されたコミタスは、大国のエゴの犠牲になったのです。

 閑話休題、当夜のプログラムは、前半がティグラニャン、コミタス、ババジャニャン、サラジャン、ゾラビアンのピアノ作品(日本初演もあり!)と、日本初演のマンスリャンの歌曲集「ナイリの地」でした。

 アルメニア音楽の造詣が深く、優れたピアニストである秋場敬浩のピアノから紡がれるアルメニアの音楽は、作曲者の個性が発揮された作品ばかりで、エキゾチックな曲・激しいアップテンポな曲・アジア的な曲・前衛的な曲と私たちを十分満足させてくれました。

アルメニア音楽祭  「ナイリの地」は、モヴセシャンというソプラノ歌手の演奏が素晴らしく、この作品が好きになりました。小柄で細身でありながら、豊かな声量を誇ると同時に日本の歌手が苦手とする自然な演技で詩の内容を訴えかけてくれる、見事なステージでした。

 休憩を挟み第2部は「コミタス名歌の花束」全14曲です。

 モヴセシャンに加えて同じソプラノの松原愛実、テノールの大野利貴の共演です、伴奏の秋場の名サポートもあり聴きごたえのある演奏でした。コミタスの才能を満喫しました。

 コミタスの晩年の悲劇がなかったら、彼はどんな素晴らしい作品を私たちに残してくれたことでしょうか。音楽を楽しめるのも平和だからこそです、私たちはこれからも平和な世界を作り上げなければなりません!

(文・金子/写真・木佐森)

美 術

吉祥寺に現代ロシア写実主義絵画美術館オープン

現代ロシア写実主義絵画美術館  吉祥寺駅公園口バス停(小田急バスの複数路線可)から7~8停留所先の新川で降りて少し歩くと石井ロシア絵画美術館(ストーンウエルアートギャラリー)があります。6月1日(土)に、三鷹市長を来賓に迎えてオープンセレモニーが開催されました。

 当美術館は、館長でコレクターの石井徳男氏が1989年から4年間、モスクワに国際物流会社の現地駐在員として滞在したおり、ひょんなきっかけから現代ロシア写実主義絵画の魅力に魅せられてしまい、日本ではロシア写実主義絵画が少しも注目されていないのは、美術館等で常時鑑賞できる環境がないからだとして、自宅敷地の一角に美術館を建設したもので、モスクワ駐在中にロシア芸術家同盟傘下の画廊で蒐集した236点から、そのときどきのテーマに合わせて展示していくとのこと。

現代ロシア写実主義絵画美術館  6月5日~12月25日まで「第1回現代ロシア絵画展(初夏から晩秋まで)」が開催されます。因みに開館日は水・土・日の週3日で、入場料は800円(学生600円)です。

 展示絵画例:F. V. シャパーエフ「故郷・コージマ河の夕べ」(1991年)、V. A. サフォーノフ「夏」(1980年)、I. P. ルビンスキー「夏の夕べ」(1991年)ほか。

(木佐森)

ユーラシア通信

ウクライナのそろばん学習システム“E-SOROBAN”日本初上陸

E-SOROBAN  ウクライナ、ロシア、ベラルーシなど7か国で「そろばん塾ネットワーク」を造り上げ、2万人以上の生徒さんにそろばんを教えてきたウクライナ人のユーリー・ノウォセロフ氏が、そろばん学習効率をより高める新システム「E-SOROBAN」を創り上げ、日本に乗り込んできました。

 6月19日~21日、東京ビッグサイト青海展示棟で展示、実演ブースを開店しました。

 「E-SOROBAN」の教師側メリットは(1)生徒が課題を進めていく上で、どこまでできているのか、何を間違えたかが表示されること。(2)教師用モニター画面で全生徒の計算プロセスと計算結果が同時に確認できること、など。

E-SOROBAN  生徒側のメリットは(1)正しくできたら、珠が緑色に光ること。(2)間違えた時はヒントを与え正しい計算方法が表示されること、などです。

 今回の出展に当たって、日本側のコーディネーターを務めるのは、横浜ロシア語センターでロシア語を教えたことがある、小野ダリヤさんです。19日の開店初日に訪れ、ウクライナABKのチョコレートをもらってきました。

(木佐森)

広がるロシアとユーラシア ~電子ビザ導入とユーラシア航空網~

 ロシアの通信社、スプートニク等が「ロシア全土の電子ビザ化にプーチン大統領が署名した」と伝えた。それによると、2021年1月1日からモスクワやサンクトペテルブルクなどの空港から順次電子ビザ化を始めるということだ。現在、極東ロシアのウラジオストクをはじめとした一部の空港・港湾・鉄道が電子ビザに対応しているが、これがロシア全土に広がる形である。今のところ例えば沿海地方(ウラジオストクなど)とハバロフスク地方の間を電子ビザで同時に観光することは地域がまたがるため不可能だが、これが実現すれば地域をまたがった観光も可能になるとみられている。6月1日にすでにウラン・ウデとチタの両空港に電子ビザが拡大されており、7月1日にはロシアの飛び地であるカリーニングラードにも電子ビザが導入される。

ロシア&ユーラシア航空網の最近の変化

イースター航空への搭乗風景  最近のロシア・CIS諸国の航空網で特筆すべきは、東京(成田)~ヌルスルタン(旧称、アスタナ:カザフスタン)の定期チャーターの就航が挙げられる。週1便の就航から始まるが、8月には週2便に増やす意向だ。

 近年はウラジオストクの発展が著しく、ウラル航空の札幌/新千歳~ウラジオストクや韓国のLCCがソウル、釜山などの空港からウラジオストク便を飛ばしている。また、オーロラ航空も東京~ウラジオストク、ユジノサハリンスク線の運賃の値下げに踏み切り、増便も行われている。その一方でうれしいニュースばかりではない。アシアナ航空はソウル~ユジノサハリンスク、ハバロフスク線の運休に踏み切った。これには採算悪化が関連しており、サハリン州側からも慰留の声があがったが、7月9日をもって運休することを固めた。同路線が撤退した後も同区間のオーロラ航空便は残るが、減便は同地域の住民にとっては痛手となりそうだ。

(内藤)

今回も完売!第9回バラホルカ 東京軍装市場

6月29日 於:秋葉原ハンドレッドスクエア倶楽部

第9回バラホルカ  6月29日(土)、空模様はイマイチでしたが、そんな鬱陶しい天気を吹き飛ばすような楽しいバラホルカ。9回目の参加です。

 今回は、滝沢さんの労作、「ソバの実カーシャ」が当協会初登場。定番の黒パンとチーズ・イワシのブテルブロードと紅茶のセットで、今回も完売。

 コンサートではパリャーノチカの歌声とトカレフさんのトランペット、ディララさんのダンスが参加者を魅了しました。

 回を重ねるごとに参加人数も増え、今回は200人近く。サハリン旅行のチラシも折り込みました。

 売り物も、日本では入手困難なものばかり。買わなくても、見るだけでも楽しいバラホルカ、次回は9月21日(土)。三連休の初日です。興味がありましたらぜひ。

(文・関戸/写真・滝沢)

書評 こいぬとこねこのおかしな話

こいぬとこねこのおかしな話 ヨゼフ・チャペック作/木村有子訳
岩波少年文庫/640円+税

 本書は、10の愉快な話から構成された、チェコ児童文学の古典である。

 作者は、ヨゼフ・チャペック。画家であり文学にも優れた創作者である。新聞記者で評論家、ノーベル賞候補にさえなったカレル・チャペックは、彼の弟である。

 本をひらこう。そこには、床のそうじを仲良くしたり、2匹でケーキを焼いてみたり、犬と猫という種の違いを乗り越え、微笑ましい生活を、送る様が描かれる。可愛い、少しとぼけた挿絵は、ヨゼフの得意とするところである。シンプルな線を通して2匹の楽しさが、伝わってくるのだ。1887年に生まれたヨゼフは、1939年ナチスに逮捕される。そして1945年4月、ベルゲン・ベルゼン強制収容所にて、チフスで死亡する。解放直前であった。兄と行動を共にした弟のカレルは、ナチスが館に踏みこんだ時は、もはや天空の人になっていた。雨に濡れてのバラの手入れで肺炎を起こしたのだ。ナチスは非常にこの事実に悔しがったという。

 あなたも、今ひとたびここで、種を越えて踊る人のいいこねこと優しいこいぬの物語を読み、人が共有できることを考えよう。

 それだけでも、この本は充分に意味を持つからだ。

(中出)

投稿歓迎!

 「日本とユーラシア」神奈川県版は会員みんなで作る機関紙です。ユーラシア(旧ソ連地域)関連の投稿をお待ちしています。
 催し物の感想、旅行記、講評、写真、絵などさまざまなジャンルの投稿を歓迎します。
 ただし、作品は自分のオリジナルか著作権者の許可を得たものに限ります。
 デジタル画像はテキストファイルに貼りつけず、別ファイルでお送りください。
 また、ペンネームや注意事項があればお書き添えください。
 毎月末締切、翌月15日頃に発行される見込みです。

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 機関紙編集部
〒231-0062 横浜市中区桜木町3-9 横浜平和と労働会館1階
Fax 045‐201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp
(機関紙編集部)

歴史・社会