今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2019年9月号 No.695

行事予定

陸軍VS海軍 美味いのはどっちだ!?
簡単料理教室&サハリン旅行事後交流会 9月22日(日)開催

 皆様、本当に間際になってのお知らせで申し訳ありません。

 三連休の中日、9/22(日)にサハリン旅行事後交流会を行いますが、その前に簡単料理教室を開催いたします。名付けて、「陸軍VS海軍」。そう、毎度おなじみの海軍マカロニと新たに陸軍マカロニを作ります。ともに、時間は15分程度です。

 陸軍マカロニとは、これこそ究極の簡単ロシア料理です。海軍と違って、前線では厨房がない陸軍の兵士が作った料理。背嚢や雑嚢からマカロニを出し、飯盒でゆでて、ゆであがったら肉の缶詰を入れるだけです。特に、冬場は熱いスープパスタとなり、体を温め、胃を満たしたのです。肉の缶詰は、第一次世界大戦中、各国の陸軍が開発しました。イギリスはコンビーフ、アメリカはスパム、ロシアはトゥションカ、そして、日本は牛肉大和煮缶です。残念ながら、トゥションカは日本では入手できません。そこで、コンビーフで代用します。

 さて、陸軍と海軍ではどちらが美味いのでしょうか? それは、当日食べてみて決めましょう。

 料理の後に、8月のサハリン旅行の事後交流会を開催します。こちらにもぜひ。旅行に参加していなくても、DVDでサハリンをめぐりましょう。また、来年の旅を希望している方は先取りでサハリンを見てみましょう。

(関戸)

日時:2019年9月22日(日)12時~
会場:横浜平和と労働会館5F
参加費:800円(材料費実費、その他黒パン・紅茶)
定員:10名
お問い合わせ・お申し込み:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax: 045-201-3714
E-mail: eurask2@hotmail.co.jp

緊急告知!「ノモンハン80年、『真実』を考える」学習会

 今年はノモンハン事件から80年。日本陸軍が体験した最初の近代戦であり、その洗礼を受けたのが関東軍でした。関東軍は自らを「世界最大最強の方面軍」と豪語していました。その関東軍が粉砕されたのが、ノモンハンです。

 ただし、調査や研究が進むにつれて、世評とは違うことが分かってきました。その点を、軍事評論家古是三春氏を講師に招き、学習会を開催します。古是氏は、この夏、激戦地となったフイ高地を含めて実地踏査をしてこられました。最新の情報をもとに、新たな視点でのノモンハンを考えてみましょう。

日時:2019年10月27日11月10日(日)13:00~15:00
※講師都合により11月10日に日程変更(2019.10.9追記)
会場:横浜平和と労働会館5階 当協会教室
参加費:(資料・軽食含む)800円
※なお、会場の都合上、定員30名とさせていただきます。

お問い合わせ・お申し込み:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax: 045-201-3714
E-mail: eurask2@hotmail.co.jp

(関戸)

活動報告

「8・15」を考えるDVD鑑賞会『死刑執行人もまた死す』

『死刑執行人もまた死す』  お盆休みの最終日、8/18(日)に4人が集まり、『死刑執行人もまた死す』を鑑賞しました。1942年6月のチェコ総督ハイドリヒ暗殺事件を下敷きにして作成された映画です。製作は翌年の1943年。いかにこの事件が大きな出来事であったかを示します。

 未見の方のために詳細は申しませんが、非常に印象に残ったのは、暗殺の容疑者または関係者が次々と処刑される際、仲間を裏切らなかったという場面です。死を恐れず抵抗の歌を歌い、処刑場へのトラックに載せられる仲間に対して、収容所の皆から別れと励ましの言葉が送られます。自らの命と引き換えにしても、生まれ育った故郷を軍靴で踏みにじるナチスに屈しなかったのです。ナチスはチェコの国土を占領しましたが、チェコ国民は心までは占領されなかったのです。勇気とは何か、改めて知ることができました。戦争と平和を考えるに相応しい鑑賞会でした。

(関戸)

サハリン旅行断簡(1)

1. 広島からの参加者

 関戸は昨年から岡山県の高校に勤務し、広島に住んでいます。その地元広島から3人の参加者がいました。支部長黒川さん、ロシア語サロンや行事でご一緒している上野原さん、その友人で愛媛県から来られた藤田さん。広島の旅行の取り組みは、神奈川よりも活発です。その中で、神奈川主催の旅行に参加してくれたことに感謝です。ご満足頂けたなら、うれしいです。この繋がりが来年も続いたら最高です。

2. 成田からの出発

 昨年は直行便がなく羽田集合・千歳前泊でしたが、今年は成田出発で全員が集合しました。全参加者は9人。そして、旧ソ連時代から60回以上、訪ソ・訪ロ経験のある石川さん。これには驚きです。初の訪ロの方から超ベテランまでが揃って、ユーラスツアーズの滝沢さんの見送りを受けて、元気よく出発しました。この中で、荷物の大きさに驚いたのは副団長の内藤さん。撮影のためのビデオやカメラを持ち、体よりも荷物の方が大きく見えました。

3. ガイドのミカさん

 ユジノサハリンスク(豊原)に着くと、ガイドのミカさんが待っていてくれました。ミカさんは日本人で、北海道北見出身とのこと。サハリンにはもう10年以上滞在していて、安心して頼めるガイドでした。今回の旅行では、全日程を担当してはいなくて、初日・二日目と最終日だけでしたが、本当にお世話になりました。

4. 欲張りすぎた日程

サハリン州立ユジノサハリンスク郷土史博物館  旅行二日目は、今回の旅行中、一番の強行軍でした。何しろ、午前中にユジノサハリンスク、午後はコルサコフ(大泊)と二つの都市を駆け足で廻ったのです。宿泊場所のホテル・メガパレスから、目の前のガガーリン公園を散策し、郷土史博物館へ。昨年同様、宮沢賢治も見たであろう、鉱物や資料を見学しました。次に、これまた徒歩でチェーホフ博物館へ。残念なことに、昨年書いたカードは倉庫に収蔵されて閲覧ができませんでした。でも、初参加の方は日本語表記のある展示に満足。そして、タクシー三台に分乗して、今回初めて見学するサハリン州歴史博物館へ。これは、最新の博物館で規模も大きいものでした。ミカさんも、「じっくり見ると三日必要です」とのこと。この博物館は、次回、時間を確保してしっかり見学したいものです。

山の空気展望台  教会の前を通り、徒歩でロープウェイへ。サハリンには極東一というのが三つある、とミカさんが言っていました。極東一のショッピングモール、レーニン像。最後がこのロープウェイで極東一のスピードなのです。かつては「旭山」と言われ、当時も今もスキー場が併設されています。その中腹に山の空気展望台があり、そのカフェでサハリン市街を一望しながらの昼食となりました。

朝鮮人望郷の丘碑  午後はユジノサハリンスク駅までタクシーで降りて、駅前の路線バスに乗ってコルサコフまで。コルサコフでは博物館の見学がありましたが、改装中で半分しかできませんでした。でも、おかげで無料でした。歩いて、バスターミナルでバスに乗り、展望台へ。かつて大泊と言われた港を一望しました。そして、その中に朝鮮人労働者の鎮魂碑がありました。マスコミで徴用工問題が取り上げられていますが、「樺太」にも悲劇があったのです。ミカさんからは、「できれば、コルサコフでも一泊して、日本軍上陸の地を見学するのもいいですよ」と、言われました。これも、来年の検討課題です。

 夕食は地ビールの店、「ペンギンバー」。帰りは、バスターミナルから路線バス。本当は駅前で下車し、徒歩でホテルまでという予定でしたが、強行軍でちょっと……。すると、運転手が関戸に向かって、「司令官(!?)、ホテルまで行きますよ」との神の声。それにしても、司令官とは大げさな。(笑) ホテルに帰り着いて、最年長の日塔さんの万歩計では一日で15000歩とのこと。いかに強行軍か。これは、あまりにも欲張りすぎた日程であったと反省しています。(泣)

5. 交通ルール

 これだけ歩いて、今年気づいたことがあります。それはマナーの良さです。道路を横切るときには、車が歩行者に必ず譲ってくれることです。時速80kmぐらいで走っている車が横断歩道に立つと止まるのです。そして、全員が渡るまで笑顔で待っていてくれます。このマナーの良さに気づきました。また、帰りのバスで混んできたときのことです。年配の方が乗車すると分かると、若者が年配者に席を譲るのです。日本のように優先席などはありません。今まで、スマホをいじっていた若者がバスの停車する前に、年配者がいるとドアが開く前に席を立っていました。全て、さりげなく、当たり前のように。これは、今回、市民の足である路線バスに乗って気づきました。これは日本も見習ってほしいものです。 

…次号に続く(文・関戸/写真・内藤)

教室案内

横浜ロシア語センターロシア語講座 第131期生徒募集!

 10月15日(火)、ロシア語講座の新学期が開講されます。月曜~土曜、入門~上級・会話・日本案内 各クラス開講予定。水曜と土曜に「入門」、水曜に「会話」、木曜に「文学鑑賞」、金曜に「会話で学ぶ日本案内」、土曜に「おもてなしのロシア語」クラスを新設予定です。

 9月7日(土)・21日(土)には新規クラスの体験講座が行われますので、入学をご検討の方はぜひご参加ください。

 詳しい内容は同封のチラシ、または教室ホームページをごらんください。見学は3クラス・各30分まで無料です。


第74回ロシア語能力検定試験 3級対策集中講座

 10月のロシア語能力検定3級試験に向けて、文法、和文露訳、露文和訳、朗読・聴取の演習を行います。全9コマ、総合的実力アップの大チャンス。

 試験に出る内容を定着させて活用できるようになるために、ロシア語通訳・翻訳者として活躍中の竪山洋子先生と一緒におさらいしましょう!

 詳細はリンク先のページをごらんください。

ロシア民族楽器 「バラライカ」「ドムラ」教室

 レッスン内容は奏法の基本から音楽理論や高度な内容まで。毎月土曜日に開講、実質個人レッスンとなります。初心者の方も、以前習っていて中断された方も歓迎します。

今後の予定:9月21日、10月5日、10月12日、11月2日、11月23日、12月7日、12月21日
※変更の場合がありますので、見学・受講ご希望の方は事前にお問い合わせください。
時間:14:30~18:15の間、各45分
講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
レッスン料(1回、税10%込):2019年9月まで一般10,800円、会員9,300円
2019年10月から 一般11,000円、会員9,500円
※10月より消費増税のため、受講料も上記の通り改定させていただきます。


みなとみらいマトリョミン教室 アンサンブル/グループレッスン

日程:毎月1回、土曜日開講
2019年度後期日程:10月19日、11月16日、12月21日、1月18日、2月15日、3月21日
内容:個人演奏・アンサンブル
レッスン時間:13時~15時の間。詳細はお問い合わせください。
2019年10月以降の受講料(税10%込):
アンサンブル Eクラス 3,667円×6回=22,000円
グループ・個人レッスン A/Bクラス 3,142円×6回=18,850円
※10月より消費増税のため、受講料も上記の通り改定させていただきます。

講師:檜垣 紀子
会場:横浜平和と労働会館2階 神奈川音楽センターホール


組織・財政

組織状況

(2019年8月31日現在)

 今年度年初会員219名、 入会者累計50名、退会者数44名。8月末現在会員数225名(7月末会員数 224名)。

 8月の夏休みに、高校生とその保護者の方がお見えになり、「ロシア近代史」をやりたいのでロシア語を学習したい旨のお話を伺いました。そして、さっそく入会していただきましたので、会員数が1人増えて225名になりました。9月、10月で新規ロシア語受講入会者を増やすよう頑張りましょう。

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2019/8/31
単位:円
摘 要本年度収入前年同期収入対前年同期増減
一般会計1,148,2571,208,406-60,149
教育事業6,761,6906,794,294-32,604
一般事業1,075,2291,327,483-252,254
合 計8,985,1769,330,183-345,007
前年同期(単位:円)2018/8/31
摘 要本年度支出前年度支出対前年同期増減
一般会計4,603,0594,318,397284,662
教育事業3,366,0103,143,858222,152
一般事業783,120820,659-37,539
支出合計8,752,1898,282,914469,275
当期剰余金232,9871,047,269-814,282
合 計8,985,1769,330,183-345,007

 8月は、ついに累計計算でも、昨年を下回ってしまいました。8月だけを見ても、会費収入(一般会計)が対前年比79%、ロシア語授業料(教育事業)が86%、物販・イベント(一般事業)が45%に落ち込みました。

 9月からは新規131期の講座募集が始まりますが、10月から消費税が8%→10%に増税されてしまいます。授業料は、そのまま全額消費税の対象となるので、18年度の消費税納入額は60万円を超えており、増税後はいくらになってしまうか不安です。また、消費税増税ばかりでなく、10月から最低賃金が神奈川は時給1,033円になります。事務局職員の時間給が上がるだけでなく、それに伴って、各講師の講師料も上げるため、人件費比率が高い教育事業は、授業料の値上げは消費税分のみのため、収益率は下がってしまいます。その分、生徒さんの数を増やす努力をしなければなりません。みなさまのお力添えをお願いいたします。

 浅見玲子様から夏期寄付金として、1万円のご送金がありました。感謝申し上げます。ご厚意を協会活動の活発化に活かせるよう努力いたします。ありがとうございます。

(会長・木佐森 雅道)

文化・芸能

芸 能

Русская Десятка ロシア・トップ10

ロシア・トップ10  長い休みでエネルギーをチャージしたロシアから、2019年8月第4週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中7曲が新曲でもう大変な騒ぎ!

 9位にエゴールの新曲≪Сердцеедка≫(男たらし)。8位にオペラアーティスト、バスコフのハートフルな新曲≪Сердце на сердце≫(心を重ねて)が入りました。7位にブーゾワの新曲≪Лайкер≫(ライカー)がランクイン。白目コンタクト装備でインパクト大、自称サヨナラボーイことエルジェイの新曲≪Sayonara детка≫(さよなら子供たち)が6位になりました。ドネツク出身のコメディアン、レッヴァが扮するピロシコフの新曲≪Алкоголичка≫(アルコール依存の女)が3位になりました。2位に、露のヴェルヴェットレーベルから注目アーティスト、ズヴォンキィの新曲≪Shine≫(シャイン)が入りました。

 露音楽界のトレンドなのでしょうか、最近80年~90年代を取り上げるミュージックシーンが多いです。露のスーパーアーティスト、ビラーンの新曲≪Про белые розы≫(白薔薇について)が首位になりました。80年代に人気を博したラースコヴィ・マイの永遠のヒット曲≪Белые розы≫へのオマージュ。メロディが大変懐かしいです。彼のFANだけでなくその時代を謳歌した世代からも大絶賛。おめでとうございまーす!:-)

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart、2019年8月19~25日/MOPA)

映 画

 毎年7~8月に、マニアックな作品が紹介される新宿・シネマカリテの「カリテ・シネマファンタスティックコレクション2019(通称カリコレ)」。今年は2本のロシア最新作が初公開された。今後どこかの映画館でロードショーされるかもしれないので、要チェック。

「フローズン・ブレイク」

(ティグラン・サハキャン監督作品、ロシア、2018年、原題:Отрыв

「フローズン・ブレイク」  雪山の頂上で年越しをしようとする2組の男女ペア+男1人。業務終了のロープウェーに袖の下を払ってむりやり乗り込んだが、地上から60mの山中でロープウェーは故障してしまう。彼らがロープウェーに乗ったことを知っているのは、カーチャと喧嘩してグループを離れたキリルだけ。氷点下10度以下のロープウェーに取り残された4人は、自力で脱出を試みるが失敗に終わる。彼らは互いに不信を深めていき、ついに誰が生き残るかのバトルロワイヤル状態に。

 極寒の密室という、地味な設定だが手に汗握るサバイバルスリラー。登場人物はチャラチャラした最近の若者たち風だが、生き残る手段のあの手この手を考え実行する力はさすがロシア人。次第に仲間割れしていく心理変化も、団結一本やりの冒険ものより迫真。


「リービング・アフガニスタン」

(パーヴェル・ルンギン監督作品、ロシア、2018、原題:Братство

 1989年、撤退が決まったアフガニスタン戦争。戦闘機が墜落し、ジャヒディンの捕虜となったパイロットは将軍の息子だった。パイロットを救出し、ソ連軍の撤退ルートを確保する任命を受けたKGB所属の男と、彼とともに奮闘する第108車両歩兵団の群像劇。ゲリラの頭目と駆け引きし、将軍の息子の解放まであと一歩というところで、思いもがけない事件が発生する。

 実話に基づく物語で、アフガン戦におけるソ連兵の日常が緻密に描かれる。サラン峠をめぐるテロの応酬、バザールで日本製ラジカセに狂喜する若いロシア兵、同じムスリムを相手に戦うことを余儀なくされたウズベキスタンからの兵士、銃を隠し持ち復讐をうかがうアフガンの少年。混迷続くアフガニスタンの現在と、今この映画が製作された意味を考えると、「戦争を始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しい」という言葉が沁みてくる。

(滝沢)

映画情報

「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」

(2018年/ロシア/アレクセイ・シドロフ監督作品)

「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」  『太陽に灼かれて』の監督ニキータ・ミハルコフが製作し、本国ではロシア映画史上最高のオープニング成績を記録。最終興行収入は40億円を超え、観客動員800万人という驚異的な数字を叩き出した2019年全“露”No.1メガヒット。第二次世界大戦下、たった4人のソ連兵捕虜が6発の砲弾と1両の戦車“T-34”を武器にナチスの軍勢に立ち向かう。登場するソ連軍の“T-34”はすべて本物の車両を使用し、役者自らが操縦する本格的な撮影を敢行。10月25日(金)より新宿バルト9ほか、神奈川県内では、横浜ブルク13、小田原コロナシネマワールド、109シネマズ港北でロードショー。


ソヴィエト・フィルム・クラシックス 逝去した監督・俳優編

2019年9月24日(火)-10月5日(土)
会場:アテネ・フランセ文化センター(御茶ノ水駅)

(滝沢)

舞 踊

エイフマンの「アンナ・カレーニナ」をみて

エイフマンの「アンナ・カレーニナ」  アンナ・カレーニナの日本公演は二十一年振りだと聞いているが、彼は数々の文学作品も手がけ人間の感情表現を、バレエを通してエネルギッシュで躍動感のある前衛的な動きを通して私に素晴らしい感動を与えてくれた。

 音楽も全てチャイコフスキー作曲の悲愴、ロミオとジュリエット他十数曲のアレンジで、時には激しく、時には幻想的に作品に吸い込まれて見事に物語とマッチさせたのには驚く。

 この物語は文豪トルストイの作品で、上流社会の高級官僚カレーニンとその妻アンナと息子との平穏ではあるが退屈な生活の中で、若い将校のヴロンスキー伯爵と出会い恋に落ちる。

 しかしその恋はヴロンスキーの気持ちの変化で、破滅的な結果となる事が駅で煙をはいた蒸気機関車の動きに暗示され、原作者トルストイが、夫が他の女性に結婚を申しこんだことに嫉妬して駅で飛びこみ自殺をした女性に着想を得てこの作品を執筆したのだが、これをエイフマンはみごとに場面を展開させた。

 アンナは夫と子供を捨て、ヴロンスキーの元に走り、田舎で暮らし始めるが、二人の生活は必ずしもうまくいかなくなってくる。この場面のヴロンスキーの心の変化が、感情が移り変わっていくのが見事にバレエに活かされているのだ。

 都会に戻ったアンナは社交界でも孤立し、恋人ヴロンスキーとも相入れられず、思い余ったアンナは人生の暗みに向っていく。

 ラストシーンでは黒ずくめの男達が演じる蒸気機関車の音(音楽)が、身を投げたアンナの姿が美しく幻想的に表現された。

 作品を通して私はエイフマンの究極の人間の躍動感の表現に、深く心を動かされた。尚、彼が私の前方の席に坐って音楽とダンサーの動きをじっとみて居り、最後に舞台に上って我々の声援に応えてくれた老紳士の胸の内は如何ばかりであったかと付加えておく。

(文・安根/写真・中垣内=パンフレットより)

ユーラシア通信

今年は空中ブランコが一押し!ボリショイサーカス横浜公演

ボリショイサーカス横浜公演  毎年夏になるとやって来る、ボリショイサーカスが今年も関内の横浜文化体育館にやってきました。7月27日から8月4日の9日間の短期間の公演です。今回は、7月29日午後2時からの開演を、酷暑の横浜文化体育館玄関前で、配られた団扇でぬるい風を送りながら、入場の順番を汗だくで待ちました。

 時間になると、突然会場が暗くなり、幼い娘と母親のデュオ・アクロバットが始まりました。

 その後は、引きも切らずに空中アクロバット、鉄棒、洋服早変わりのイリュージョン、そして空中ブランコと続き、動物が出てくる出し物では、おなじみの猫、犬、熊のサーカスもありました。

 最後の演目は、ロシアアルタイ共和国が誇る馬の競演ジギトです。

 今年の出し物で一番の秀演は、空中ブランコで、上下2段のブランコが織りなす、縦空間を縦横に使った演技に会場は圧倒されました。

 また、会場内は、いつも通りの、親子、家族連れでいっぱいで、1枚千円で馬や犬、ピエロとのツーショットポラロイド写真を撮ってくれるコーナーにも行列が出来ていました。

(木佐森)

羽村市・キルギス共和国友好親善コンサート

8月18日 於:羽村市生涯学習センターゆとろぎ

キルギス共和国友好親善コンサート  東京・羽村市が2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会でのキルギス共和国ホストタウンに登録されたことを受け、親善コンサートが開催された。

 出演者は、生まれながら盲目の歌手、グルム・カシィムバエヴァさん、日本でキルギスの音楽や楽器を紹介しているカリマン・ウメトバエヴァさん、キルギスとの友好親善ボランティア大使に就任した歌手・三田りょうさんら。

 2015年の初来日以来、三田りょうさんと親交の深いグルムさんは、今回も日本の歌謡曲をはじめ、キルギス民謡を披露。歌詞を点字に起こし、何度も原曲を聞いて覚えたという日本の歌は、彼女のハンディキャップを感じさせない堂々たる歌唱。そこへ特筆すべきは、当協会でもおなじみのグルムカンさん、アルテナイさん、その妹のトルゴナイさん、友人の4人がグルムさんのバックダンサーとして登場したことだろう。

 このほか、三味線の元祖と呼ばれる三弦楽器コムズの演奏では、カリマンさんの多彩な奏法と軽妙なトークで会場が大いに沸いた。

 合宿中のキルギス柔道チームも参加し、会場が一体となったコンサートだった。

 会場では、キルギスの移動式住居ユルタを再現した紹介コーナーも活況。羽村市におけるキルギス関連イベントは、10月6日のキルギス料理講習会、10月26日の文化講演などが予定され、市ぐるみの交流活動が予定されている。

(文・滝沢/写真・羽村市生涯学習センターゆとろぎ 提供)

書評
「こっちへこーい こっちへこーい ~イルティッシュ号の来た日~」

「こっちへこーい こっちへこーい ~イルティッシュ号の来た日~」 文/「イルティッシュ号乗組員救援史」を絵本にして語り継ぐ実行委員会・絵本製作部会
絵/みはし たかこ ※購入不可

 本書は、日露戦争の際に島根県江津市(ごうつし)和木町(わきまち)真島(ましま)沖にて沈没したバルチック艦隊の特務艦「イルティッシュ号」の乗組員を当時の和木町民が救助した史実を、現在の江津市民に啓蒙するために制作された絵本である。形式上は絵本であるが、絵本と侮ることなかれ。

 実に美しい日露交流の物語が描かれている。本書のあらすじは以下のとおりである。

 明治38年5月28日、日本海海戦で連合艦隊の攻撃を受けて沈没の危機にあったバルチック艦隊の特務艦・イルティッシュ号が島根県真島沖に姿を現す。突如として出現したロシア艦に和木町民達は驚き、戸惑う。町民達に混乱が広がる中、ロシア兵達は沈みゆくイルティッシュ号からの脱出を試み、短艇で荒れ狂う海に乗り出す。ロシア兵達が船を脱出してゆく様子に気付いた和木町民達は、自ら荒海に飛び込んでロシア兵達を救出する。救出されたロシア兵達は敵国での手厚い救援に感謝し、和木町民達との間には暖かい交流が生まれた。後に、この救出劇を記念した行事「ロシアまつり」が和木町で行われるようになり、それが今日まで続けられている。このような経緯が絵と文で分かり易く、且つそれなりに詳しく描かれている。この内容だけでも十分に一読の価値があるのだが、本書の価値はそれだけにとどまらない。なんと、多言語仕様になっているのだ。本書は22ページまでが本文となっているが、23~25ページはロシア語の縮刷版、26~28ページは英語の縮刷版が掲載されており、この1冊だけで3つの言語に対応した内容となっている。(筆者が知らないだけかも知れないが、)これは非常に珍しい構成の絵本ではあるまいかと思う。

 この度、神奈川県日本ユーラシア協会に本書を1冊寄付させていただいた。横浜平和と労働会館5階の本棚にあるので、もし、内容が気になった方は是非とも本書をお手に取っていただきたい。なぜなら、簡単に手にすることが出来ない本だからである。実は本書は一般の書店等で取扱のない本のため、購入することは出来ない。本書を発行している団体に直接問合せする以外に入手方法が無いのだ。このことから、本書は希少な本であると言える。その内容といい、本自体の希少性といい、世にも珍しい一冊である。

(坂本)

書評「美しいハンナ姫」

「美しいハンナ姫」 文)M・ケンジョジーナ 訳)足達和子
出版)岩波少年文庫 価格)720円+税

 第二次世界大戦中、ドイツのヒトラーの失地回復政策の成功は、1939年東欧政策にある転換点をもたらせた。ヨーロッパ中央に位置する農業と鉱業の盛んなポーランドの不認知論である。タンネンベルグ作戦の決行であり、ポーランド人絶滅計画ともいわれる。あらゆる学校は閉鎖され、本は焼かれ、知識人は殺戮内至は強制収容所へ送られた。教会も建造物も破壊され、司祭も殺された。まさに6人中1人が悲劇にあったのだ。ポーランドは、ヨーロッパの中でも古い歴史を持つカトリックの国であった。その繁栄が、わずか6年弱の独裁政権で瓦礫の山と化した。

 新生ポーランドは、負の歴史を抱えつつ、昔日の栄の文化を編み出すことで戦後の一歩を踏み出したのだった。本書は戦後すぐポーランドで書かれた子供向けのお話である。「若かったわたし」など民話風の話が、全6話、収められている。よくよく耳を澄ませば戦後の廃墟からの再生への祈りをそこから感じとれるはずである。作者が子供向けに書いたのは、童話作家であったことと、未来は子供が作るという信念からであろう。その不屈の「ポーランドのこころ」を感じていただければ、有難い限りである。

(中出)

投稿歓迎!

 「日本とユーラシア」神奈川県版は会員みんなで作る機関紙です。ユーラシア(旧ソ連地域)関連の投稿をお待ちしています。
 催し物の感想、旅行記、講評、写真、絵などさまざまなジャンルの投稿を歓迎します。
 ただし、作品は自分のオリジナルか著作権者の許可を得たものに限ります。
 デジタル画像はテキストファイルに貼りつけず、別ファイルでお送りください。
 また、ペンネームや注意事項があればお書き添えください。
 毎月末締切、翌月15日頃に発行される見込みです。

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 機関紙編集部
〒231-0062 横浜市中区桜木町3-9 横浜平和と労働会館1階
Fax 045‐201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp
(機関紙編集部)

歴史・社会