今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2020年9月号 No.707

行事予定

ロシア語能力検定試験

試験日程:
● 4級 10月31日(土) 14:00~ 筆記、テクストの朗読
● 3級 11月1日(日)14:00~ 筆記、聴取、テクストの朗読
● 2級 10月31日(土) 10:00~ 筆記、聴取、会話
● 1級 11月1日(日)10:00~ 筆記、聴取、会話

横浜会場:横浜平和と労働会館4F
お申し込み期間:2020年8月15日(土)~9月15日(火)
お申し込み・お問い合わせ:
ロシア語能力検定委員会
http://www.tokyorus.ac.jp/kentei/
TEL:03-3425-4011

『イワンと仔馬』DVD鑑賞会 11月22日(日)開催

イワンと仔馬  かつてソ連はディズニーに勝るとも劣らないアニメ大国でした。それはソ連文化省が「アニメは児童の情操教育に有益である」として、国家的な取り組みでアニメを作成したからです。実写では表現できないファンタジーはアニメならでは、だからです。

 今回は『イワンと仔馬』です。皆から馬鹿にされているイワン少年と、不思議な仔馬の出会いと奇跡を描いたファンタジー作品です。実はこのアニメは、手塚治虫の『火の鳥』を始め、多くの日本のアニメーターに影響を与えたと言われる作品なのです。その内容は見てのお楽しみ。大人の皆さんも、この日ばかりは子どもに戻って、アニメを味わいましょう。

日時:2020年11月22日(日)13時~
会場:横浜平和と労働会館5階・当協会教室
参加費:500円
お申し込み・お問い合わせ:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
eurask2@hotmail.co.jp

※新型コロナウイルス感染拡大の影響により、行事予定は変更される場合があります。ご了承ください。

活動報告

現代ロシア映画鑑賞会 第2回納涼ロシアンホラー特集『黒人魚』

8月23日(日)

『黒人魚』  昨年に引き続き、第2回納涼ロシアンホラー特集として『黒人魚』(ポドゲイエフスキー監督作品、2016年)を鑑賞し、3人が参加しました。

 ストーリーはロシアの伝説「ルサールカ」(水の精)をベースにしたもので、はっきりいってB級ホラーでしたが、作品の作り方は凝っていて丁寧だという感想が聞かれました。

 次回は秋深まるころ、ラブストーリーもしくはSF作品を予定しています。

(滝沢)


戦争と平和を考えるDVD鑑賞会『ヒトラーへの285枚の葉書』

ヒトラーへの285枚の葉書  今年は、英独仏3ヶ国合同制作の映画を鑑賞しました。8/22(日)、暑い中、またコロナ過でも、6人が参加しました。

 1940年、イギリス以外のヨーロッパを席巻し、最盛期のナチスドイツ。フランス降伏の報で勝利に酔いしれるベルリン市民。その中で、一人息子の戦死公報を受け取る夫妻。勝利の歓喜などなく、悲しみに打ちひしがれます。夫妻は息子を失った悲しみの中で、反政府・反ヒトラーの怒りを込めて、葉書にメッセージを書きました。それをベルリン市街に置いて行ったのです。「総統は私の息子を奪った。あなたの息子も殺される」「自分を信じろ、ヒトラーを信じるな」「殺人マシーン」などの短い言葉です。しかし、その影響は無視できないものとなりました。

 夫は工場の職工長でした。興味深い言葉がありました。「機械に砂一粒が入っても、機械は回り続ける。だが、砂が大量に入れば機械は止まる」。職工長らしい言葉です。一人一人の力は小さくとも、皆がまとまれば大きな力になるということを示しています。また、涙が溢れそうな言葉もありました。工場で増産を叫ぶナチス幹部に向かって、「私は息子の命を捧げた。これ以上の募金があるか」。愛する家族を失った悲しみは、自分が生きている限り続きます。そして、興味深いこともありました。戦死した息子の身長の記録を柱に刻んでいたのです。日本の「子どもの日」の背比べと同じです。1930年という文字もありました。まだ、ホンの子ども時代なのでしょう。

 逮捕された後、夫妻は斬首刑となりました。

 戦争に勝利者はいないということ。戦勝国にも犠牲者がいて、残された家族は生涯消えることのない悲しみを背負います。だからこそ、二度と戦争などしてはいけません。そのことを強く感じる鑑賞会でした。

(関戸)

教室案内

初めてのオンラインセミナーと集中講座を開催
横浜ロシア語センター第132期 夏期集中講座

日本人ロシア語講師のための教授法セミナー

 8月2,3日に初めてのオンラインセミナーを開催しました。Zoomミーティングルームを使ったマリア・マクシモヴァ先生の「日本人ロシア語講師のための教授法セミナー」です。

 1日目の参加者は模擬授業に参加された4名と北海道からの参加者を含めて14名でした。マリア先生は1日目にソ連時代とその後の外国人に対するロシア語教授法の発展過程、日本における文法中心翻訳教授法とコミュニカティブ・アプローチ教授法の違い、またこの教授法に沿って作成されている「ロシアの道」の教え方について語られました。外国語の教授では、講師が講義するのではなく受講生が自ら習得して行く教え方をしなければならないと強調され、聴取力アップの模擬レッスンをして下さいました。

 2日目は8名の参加者がロシア語教授のさまざまな側面について積極的に質問をし、議論をし、30分以上も予定時間をオーバーしてしまいました。最後にこのようなセミナーをこれからも開催して欲しいとの希望が参加者から述べられました。この初めての経験で準備期間と広告拡散方法が今後の課題であることが分かると共に今後も続けられる可能性も実感しました。参加された織田先生と竪山先生が感想を寄せて下さいましたので、どうぞお読みください。

(野口 福美)

 マリア先生のお話で心に残ったことは、コミュニカティブ・メソッドで大事なのは何もロシア語だけを使って授業することではなく、生徒さんの進度に合わせてできるだけロシア語を使い、生徒さんがロシア語で反応できるようにすることで、これは今も実践し努力していることなので、安心しました。

 また、日本語であれ、ロシア語であれ、教科書に出てくる文法などを、初めから教師が説明するのではなく、何が書いてあるのか生徒さん自身にまず予想し考えてもらうようにすること。自分が考えたことが正しいということが分かると、それは喜びにもなるし、意欲や興味も湧いて来る…ということはなるほどと思いました。自分はちょっと説明しすぎているかも知れないと反省しました。

 日本人教師、ロシア人教師に関わらず、今回のように教師が学べる場があれば有難いと思いました。

(織田 桂子)

 マリア先生の長い講師経験に基づく教授法に関する講義を聴かせていただきました。通学頻度が高くない受講者たちがいかに効率よくロシア語を身につけるかを考えることは、私にとって課題です。

 先生は日本語を介さない、訳さない、文法を説明しない授業を提唱されました。すべてロシア語で行い、生徒がロシア語で考える90分をつくることで早期に頭の中にロシア語回路をつくるべきだということなのだと思います。

 授業のデモンストレーションも行われましたが、生徒の習熟度に合わせて平易なロシア語で、生徒に理解を促すマリア先生の講師としての腕は大変見事であると思いました。

 非母語話者である私には、この匙加減が難しいのではないかと思います。つまり、初心者には初心者がわかるロシア語で、中級者には中級者向けのロシア語で、上級者には手加減せずにといった「合わせる技術」を持つには、講師の熟練の技とたゆまぬ研究が必要であると思いました。

 日本人講師に習うべきは文法というステレオタイプや、また、非母語話者として、文法から語学に入った語学学習者として、文法にどうしても注力してしまうことが、コミュニカティブな授業を完全に実現できないネックになるということも気づきになりました。

 モチベーションがそれぞれ違う受講者が集まって学ぶ横浜ロシア語センターにとっては、フレキシブルな対処をする講師の腕こそが教科書だろうと思います。マリア先生の提唱からも取り入れることは取り入れ、自分自身が動く教科書になれるように精進しようと思います。多くの学びと刺激をくださったマリア先生、オーガナイズをしてくださった野口センター長に感謝します。

(竪山 洋子)

夏期集中講座

 春季にZoom講座を何回か実験的に行いましたが、夏季休暇中は講師の先生方に提案を募り、本格的なオンライン集中講座を実施することができました。8月8,9,10日の13:30から小林先生の「ロシアの絵本」(参加者5名)、19:30から大山先生の「旅のロシア語会話」(3名)、14,15日の14:00から野口の「ヴァーチャルモスクワ名所めぐりでロシア語力アップ」(6名)が行われました。参加者の有志の皆様が感想をお寄せ下さいましたので、どうぞお読みください。

●「ロシアの絵本」

 一見やさしそうな「絵本のことば」が、外国人学習者にはかえって難しいことがあります。たとえばもし日本の昔話『桃太郎』を日本語学習中の外国人が読んだら「きびだんご」はどんな食べ物?「鬼ヶ島」の「ヶ」って何?と「理詰めの疑問」が多く出ることでしょう。今回の夏期講座では『おおきなかぶРепка』『てぶくろРукавичка』『三びきのくまТри медведя』『おしゃべりハエ子Муха-Цокотуха』の四作品を読みました。受講対象は中級以上、活発な質問や意見が飛び交いました。テキストの単語にはほぼ100パーセント訳をつけてありましたので、単語を追っていくだけで、なんとなくお話の筋が予想できたと思います。さらに挿し絵の美しさ、ネイティブによる朗読の豊かな響きなど、ロシア絵本の楽しさを体感していただきました。

(講師・小林 淳子)

 長年接してきたロシア語は、仕事で必要なロシア語、特に石油・ガス業界関連のロシア語がほとんどでした。もっと異なるロシア語に接したい、知らないロシア語の世界に飛び込んでみたいと常々思っていたところで、この講座のことを知り、すぐに申し込みました。3日連続講義というのは、最初はちょっときついかなと躊躇しましたが、受講してみたら逆に良かったと思いました。頭の中にロシアの絵本のロシア語が残っている間に、続けて次の教材に接するのはテンポがよく、効率がよかったです。

 それはなにより、小林先生の致れり尽くせりのテキストと詳細な説明のお蔭です。受講生の数多くの非常に細かな質問にも丁寧に対応していただき、感謝しています。

 自分一人で読もうとしても、おそらく読んでいなかったであろうと思います。是非、続編を期待しています。

(加藤)

 テキストを理解するための単語は事前にメールでいただき、受講前の準備時間も少なくて済み助かりました。講師の小林先生も堅苦しくなく、明るくて講義の進行のテンポもよくて楽しかったですね。ロシアの絵本に引き込まれました。ハエのはえこの物語は講座中に追加になったのですが、とても印象的でした。Zoom だったので、移動時間も要らず、暑い日にはマッチしましたね。

 また、今回のような機会があれば、受講したいです。ありがとうございました。

(釜口)

1 今までに触れたことのない分野のロシア語を読んだので、予備知識に頼ることなく純粋に「読解」を楽しむことができました。

2 先生は、どんな質問にも極めて真摯に対応して下さいました。私は「質問を通して理解する」という性分なので、非常に助かりました。

3 他の受講生の方から出た質問や意見が、理解の一助となり、効果的に学習することができました。

(植竹)

 夏期集中講座「ロシアの絵本」に参加しました。先生が作ってくださった資料のおかげで目から耳からロシア童話の楽しさを満喫することができました。童話ならではの言い回しや表現なども多く、とても勉強になりました。

 今回の講座を通して一番感じたことは”ロシア語の響きの心地良さ”です。いつか自分もあんな風にスラスラと喋れたら、さぞ気持ちが良いだろうなと。

 これから自身の学習の一環として童話や民話などにも取り組み、より深く”ロシア”を学んでいきたいと思います!ありがとうございました。

(五十嵐)

●「旅のロシア語会話」

 通常のクラスが夏休みに入った8月前半に、今年は集中講座『旅のロシア語会話』を受け持たせていただきました。三日間毎晩一時間半の授業をZoomで行ったのですが、初めての試みということもあり、授業準備にかなりの時間を費やしました。

 『旅のロシア語会話』を受講してくれた生徒さんはどの方も積極的で、とても楽しい三日間となりました。

 「もしモスクワへ旅行したら」、どんな場面が待っているでしょう?日本から飛行機に乗ってモスクワへ、そこからホテル宿泊、町の散策、バスやメトロへの乗車、博物館訪問や観劇、レストランでの食事、お土産購入…それぞれのシーンで出くわす会話を学びながら、三日間、仮想のモスクワ旅行をしました。

 最後に受講生の方々の「今後もロシア語を学んでいきたい」という意欲をうかがうことができ、とても嬉しかったです。

 ぜひまた機会があれば、集中講座、チャレンジしてみたいです。

(講師・大山 麻稀子)

●「ヴァーチャルモスクワ名所巡り」

 桜木町での講座がコロナ禍により中断してほぼ半年、しばらくぶりでロシア語を耳にしました。

 予想していた通り、最初はさっぱり耳に残らず、8分間のビデオ中、聞いたことのある単語が三つ四つ聞こえただけでしたが、何度か聞いているうちにその数が増えていきました。まだ内容を理解するにはほど遠い状況ですが、これを続けていけばそのうちに、ある程度は聞きとれるようになるのかな、という感じがしました。後、YouTubeではスピードを変えたり、ロシア語あるいは日本語などの字幕もみることができることが分かり、楽しく、有意義に過ごすことができました。機会があればまた参加したいと思います。

(田畑)

10/10~10/19 ロシア語無料体験

 横浜ロシア語センターは2020年11月に第133期を迎えます。少人数クラスで先生やクラスメイトと一緒に楽しく学びましょう!

 新学期に先立ち、初学者から上級者までを対象に、新規開講する計13講座の無料体験を行います。ぜひご参加を!

 各講座の詳細はホームページをご参照ください。

※通常コースは原則として対面授業になりますが、新型コロナウイルスの流行状況によってはオンラインで開講する場合があります。ご了承ください。

ロシア民族楽器「バラライカ」「ドムラ」教室

 レッスン内容は奏法の基本から音楽理論や高度な内容まで。毎月土曜日に開講、実質個人レッスンとなります。初心者の方も、以前習っていて中断された方も歓迎します。

 コロナ禍により様子見が続いている音楽教室ですが、7月からは対面レッスンを行っています。9月は5日、19日の予定です。詳細はお問い合わせください。

時間:13:30~18:15の間、各45分
講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
レッスン料(1回、税10%込):一般11,000円、会員9,500円
※オンラインの場合は各1,000円引き


みなとみらいマトリョミン教室

 個人&グループレッスンクラスのみ、9月までオンラインで開講します。アンサンブルクラスは休講になります。
 10月以降は全クラスの開講を見送らせていただきます。
 個人クラスで今期継続されていない方、アンサンブルの方には3月21日分の受講料を返金しますので、口座番号をお知らせください。

レッスン予定日:9月19日(変更の場合あり)
内容:個人演奏クラス
レッスン時間:Aクラス13:00~14:00

受講料(税10%込):グループレッスン A/Bクラス(1回60分・オンライン)
3,142円(税込)×6回=18,850円
個人レッスン(1名・1回60分・オンライン)
4,800円(税込)

講師:檜垣 紀子
会場:横浜平和と労働会館2階 神奈川音楽センターホール


組織・財政

組織状況

(2020年8月31日現在)

 ロシア語教室は8月2日から16日まで夏休みで、23日(日)の戦争と平和を考えるDVD鑑賞会「ヒトラーへの285枚の葉書」及びロシアホラー特集「黒人魚」の参加者はそれぞれ6名、3名であり、新規入会者はなく、会員数は7月末と同じ226人です。

(木佐森)

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2020/8/31
単位:円
摘 要本年度当該月収入前年度当該月収入対前年度増減
一般会計52,30051,714586
教育事業177,672610,860-433,188
一般事業36,15128,9267,225
合 計266,123691,500-425,377
摘 要本年度当該月支出前年度当該月支出対前年度増減
一般会計522,995479,08043,915
教育事業255,840328,314-72,474
一般事業39,5759,76829,807
支出合計818,410817,1621,248
当該月収支-552,287-125,662-426,625
累計収支計1,402,782290,5871,112,195

 8月の収入で「教育事業収入」が、昨年と比べると43万円も少なくなっています。内訳を見ると、昨年8月には、すでに後期講座の早割授業料が入金されているのです。今年は、コロナ禍のため開講が遅れた影響がここにもでています。

 支出では、平労会館1階の事務所のエアコン(2010年製造)が故障してしまい、急遽エアコンを入れ替えたため、「一般会計支出」が昨年に比べ5万円多くなっています。

 どこもエアコンの故障が多いらしくて、業者がなかなか捕まらないので、室温34℃の日が続きました。熱中症にならず良かったですが…。

 当月収支は、昨年に比べると42万円あまり、赤字額が広がってしまいました。持続化給付金の恩恵で累計収支は昨年より、まだ多くなっていますが…。

(木佐森)

文化・芸能

芸 能

Русская Десятка ロシア・トップ10

ロシア・トップ10  新学期が始まったロシアから、2020年8月第3週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。今月は10曲中3曲が新曲。

 ‘16年に結成されたハマリ&ナヴァイの≪А если это любовь?≫(でももしこれが恋だったら?)が10位に。二人ともアゼルバイジャン人。ハマリはアゼルバイジャン・バクー市、ナヴァイはサマラ市出身。昨年はプレミアRU.TVで最優秀デビュー賞ノミネート、今年のノヴォエラジオアワードで最優秀グループ賞を受賞しました。

 6位にコメディアン・レッヴァ扮するピロシコフのディープハウス系新譜≪Перетанцуй меня≫(もう一度僕と踊って)がランクイン。いつもMVでは必ず滑稽なフラグメントを散りばめていますが、今回もっ!コロナ隔離生活から脱出し踊りだした住民達はどうなるのか、お楽しみに。

 ミーアとエゴールのデュエット新譜≪Пикачу≫(ピカチュウ)が3位になりました。ミーアは’97年生まれの23歳。有名アーティストT-killarに才能を見いだされ、彼に会ってからは外見も生活様式もガラリと変わり’19年にデビュー。一方エゴールは、だいぶあどけない顔立ちですが、02年生まれのブロガー18歳。’19年にデビューし、YOUTUBE等で月3000ドル稼いでいる、注目の的です。日本の有名キャラクター・ピカチュウをリスペクトした二人の新譜は7月末にリリースされ、8月末までの視聴回数3320万回を超えた快挙。

 クラーヴァ&ニレットが2位に後退、首位を獲得したのは先月5位だったダブロの≪Юность≫(青春時代)でした。おめでとうございまーす!:-)

※全文、チャート、PV視聴はユーラシア芸能ブログでどうぞ。更新再開しました!

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart、2020年8月14日~20日/MOPA)

映 画

「異端の鳥」

(ヴァーツラフ・マルホウル監督作品 チェコ・スロヴァキア・ウクライナ 2019年)

「異端の鳥」  第二次世界大戦下の東欧のどこかが舞台。ホロコーストを逃れて老婆の家に身を寄せる一人の少年は、「迎えに来て」と手紙を瓶に詰めて川に流す。ある日、老婆が突然死んだことに驚いた少年はランプを落として失火させ、住む家を失う。そこから少年は流浪の帰路につくことになる。

 行く先々で人々は、彼を見知らぬものとみなし迫害する。それは、少年を拾ったある鳥飼の行為によってシンボル化されている。ペンキを塗られた鳥は、群れに帰ろうとしても仲間の鳥たちが受け入れず、逆に攻撃して殺してしまうのだ。少年に関わった人々も、嫉妬や自殺、凄惨な集団暴行などによって次々と非業の死をとげていく。

「異端の鳥」  一方で、瀕死の状態にあった彼を救ってくれた人々もいた。「ユダヤ人」だとしてドイツ兵に突き出された際、少年の射殺を担当することになったある兵士は、空砲を撃って少年をひそかに逃す。また、コサックに蹂躙された村でソ連兵に保護されたときも、ある兵士は少年に護身用のピストルを与える。しかし、人びとの容赦ない仕打ちは生き延びようとする彼から言葉を奪い、自分の名前すら忘れさせ、ついには自分を貶める者に対して極限の手段を取るようになっていく。

 美しいモノクロームの世界に描かれているのは、戦争の残酷さよりも、人間に内在する残酷性。暴力の根源とでもいうべき「排除」の思想だ。私たちの秘めた内面に巣くう残酷な感情、これこそ原題である「(ペンキが)塗られた鳥」を象徴するものだ。ラストシーンの静かな転換も胸に迫る。

 この作品を制作するにあたり、舞台となる国や場所を特定されないように使用される言語は、人工言語「スラヴィック・エスペラント語」を採用したという。原作は、ポーランドの作家イェジー・コシンスキの「Pained Bird」。少年を演じたペトル・コトラールは映画初出演ながら、驚異の演技力を見せる。

 10月9日TOHOシネマズ・シャンテ、kino cinemaみなとみらい、などにて全国ロードショー

(文・滝沢 三佐子)

(C)2019 ALL RIGHTS RESERVED SILVER SCREEN CESKA TELEVIZE EDUARD & MILADA KUCERA DIRECTORY FILMS ROZHLAS A TELEVIZIA SLOVENSKA CERTICON GROUP INNOGY PUBRES RICHARD KAUCKY

連載「ロシア童話の世界」
ルスランとリュドミラ(冒頭部分) Руслан и Людмила

A. S. プーシキン А. С. Пушкин (1799-1837)

ルスランとリュドミラの「学者猫」  A. S. プーシキンの書いた『ルスランとリュドミラ』は、作曲家のグリンカが作曲した同名のオペラでも有名です。『ルスランとリュドミラ』は長い物語詩で、もともとは大人向きに書かれた作品ですが、今回は本文に入る前の短い冒頭部分をご紹介します。この冒頭部はやさしいロシア語で書かれていること、ロシア民話でおなじみのキャラクターがたくさん登場することから、子どもたちに良く知られています。

ルスランとリュドミラ

入り江に立つみどりの樫の木に/金のくさりがかかっていた/くさりにつながれた学者猫が昼に夕に歩き回る/右へゆけば歌をうたい/左にゆけばお伽噺を語る そこはふしぎの国、森の精レーシーがさまよい/水の精ルサルカが枝に腰かけるところ/みしらぬ道の上にはふしぎな獣たちが足あとを残し/窓も扉もない小屋がにわとり足の上にたっている/そこは夢にたゆとう森と谷/朝焼けとともに/さびしい砂の岸辺に波が打ちよせる/そ してあかるい波の中から/三十人の美しい騎士たちが/海の守り役をしたがえてたち現れる/そこは王子がふとしたはずみに/恐ろしい王を生け捕りにするところ/雲の中で人々の前で/森を越え海を越えて/魔法使いが勇士を運んでゆくところ/そこは囚われの嘆きの王女に/栗 毛のオオカミが忠義をつくすところ/バーバ・ヤガーの臼がひとりでに歩き/ゆったりと進むところ/コシチェイ王が金の山で苦悩するところ/ロシアのたましいがあるところ/ロシアのにおいのするところ!/私はそこへ行き、蜜酒を飲んだ/海辺でみどりの樫の木を見た/樫の木の下にすわると学者の猫が/私にお伽噺を語ってくれた/その物語をひとつ覚えている/その物語を私は伝えよう…

(冒頭部分終わり。以降、『ルスランとリュドミラ』本文)

 「バーバ・ヤガー」はロシア民話によく登場する老婆で、ふだんはニワトリ足の上にたつ家に住んでおり、出かける時は空とぶ石臼に乗って移動すると言われています。コシチェイ王は「不死のコシチェイ」とも呼ばれ、ロシア民話の恐ろしい悪役として登場します。学者猫もロシアで愛されています。日本人のもつ猫のイメージ「人間に媚びない、自由で独立している」に加えて、ロシア童話の世界では「かしこくて分別がある」キャラクターとしても描かれます。

(小林 淳子)

ユーラシア通信

オンライン日ウ対話「平和と共存を語る」を開催して

オンライン日ウ対話「平和と共存を語る」  8月9日、長崎原爆投下の日に、ウクライナの友人に声をかけて交流会を開催しました。

【きっかけ】

 長崎の原爆という動く絵本をロシア語に翻訳し、それを通訳仲間の皆さんにお見せしたところ、横浜通訳研究会の森田令子さんは、ガイドで訪れたことがあったそうで、長崎の心を伝えたいという言葉が返ってきました。

 なら、善は急げ!もう二度とこんなことが起こってほしくないという思いを一番理解してくれるのは、チェルノブイリ原発事故の後遺症に苦しんできたウクライナの人々だと思い、あるウクライナ人の日本語の先生に話すと、交流会のアイデアに大賛成だと応じてくださいました。

 私と、キエフ国立言語大学の日本語講師ナウモワ・ユーリアさんはそれぞれロシア語、日本語を教えています。言語学習の意味も込めて、お互いの生徒さんたちに参加を呼びかけました。

【産みの苦しみ】

 この交流を決めてから一か月間、それぞれがスピーチ内容を練り上げていきました。スピーチは日本側から、3名が登壇:スピーチをした森田令子さんは何度も原稿を書き直しました。

 ご本人の談です:「結局、最初にお話ししていたのと全く違うテーマになりました。長崎の観光ツアーで、地元出身のさださんの歌を何か紹介したいな~と思ったとき、やはり「防人の詩」だと考えました。

 悲しく重い歌詞ですが、じっくり読みこみ、聞きこむと、その絶望の奥に、全てに対する労わり、慈しみが見えてくるような気がし、希望を感じました。

 そこに、長崎人の(または日本人の)、寛容さの一端があるのかもと思います。

 自分の言葉で話せる、話したいことを掬い出して、そこにフォーカスして作っていこうと思います」

 そしてウクライナ側からはユーリアさんが共存をテーマにスピーチ。日本人がロシア語で話し、ウクライナ人が日本語で話すというパラドックスではありますが、出来上がった原稿を母語話者同士でチェックしあったこの一か月間は語学学習としても貴重な一か月でした。

 通訳は横浜ロシア語通訳研究会のメンバーを含む有志の方達にお願いしました。

【参加者の積極的交流】

 そして、短い時間ではありましたが、文科会に分かれて、直接言葉を交わしあい、楽しいひと時を過ごしました。キエフに留学したことがあるという日本側参加者は覚えているウクライナ語を話し、ウクライナメンバーは、まだ3年生という学習歴も浅い方たちですが、一生懸命に伝えようという熱意に日本側は心を打たれました。

【センターの教職員、生徒さんたちから 寄せられた感想です】

 75年前に長崎に原爆が投下された日である8月9日にこの交流会にお誘い頂き、4人の方の発表を日本語とロシア語で聴かせて頂き、本当に心に残る交流会となりました。

 「長崎の鐘」の発表は、永井隆博士の自らも被曝され命を削りながらも医学者として冷静に人々の病状を分析し、大変な状況の中で人々の治療に尽くされた永井博士の記録を読ませて頂くご縁を頂き、感謝しています。

 万葉集にある「防人の歌」をもとにしたさだまさし氏の歌をテーマに、生きとし生けるものに終わりがあるのなら山は死にますか?海は死にますか?…という問い。以前は「いえ、自然は死なない」と思っていたけれど、「自然も死ぬ。だからこそ一期一会のこの時を大事に生きなければいけない」との考えに至られた話者のお話は説得力がありました。

 誰もが一度は見たことがあるであろう「火垂るの墓」をテーマにされたお話は、戦争というものが如何に人を無慈悲にし、罪なき弱き人々を不幸にしていくか、心に強く訴えるものでした。

 最後にウクライナのユーリア先生のお話は、人工知能を持ったロボットがいずれは色々な仕事を人間に代わってするようになって行くだろうが、その時、ロボットに倫理、同情、助け合いといった人の道を人は教えられるだろうか…という現代社会の人間に差し迫った問題提起でした。

 どのお話も深くて、短い時間で終わってしまうのが勿体ない感じがしました。そして何よりも、ロシア語を日本語に、日本語をロシア語に通訳して下さった皆様方の力量の高さに感動しました。グループに分かれての交流会では、ウクライナの方が日本語、またロシア語でして下さるお話を面白く聴かせて頂きました。言葉を勉強することは他国の方と意志疎通できること…という根本的な楽しさを味わうことができました。(O)

***
 中西真悠子さんの感想:「まず竪山先生のロシア語が本当に流暢で、イントネーションや発音など、ロシア生まれのネイティブの方なのかと思ったくらい、驚きました。日本人でも、究めるとここまで話せるようになるんだな、と感嘆しました。発表者と通訳の方もわかりやすく、これくらい話せるようになれたらいいなと思いました。

 さて内容は、原爆を落とされてもなお、祈り続ける長崎の人々、キリスト教の精神について。さだまさしの「防人の詩」や、映画『火垂るの墓』についてなど、示唆に富んだ考察で、考えさせられました。

 コロナで世界的な分断が深まり、不安や対立が顕在化している昨今。異なる国、文化の人がいっしょに平和について話し合うことは、大切だと思います。

 戦争は大きな組織、国同士の政治や経済における問題や競争によって、人間個人、人道や人権や人間性が抑圧され侵害されることで引き起こされると思います。そうならないためには、国境を超えて市井の人々が、想像力や思いやりによって尊重し合う努力をし続けることが有効ではないかと考えました。

 また、日本人4人とウクライナの方1名でお話しできたのは貴重な機会で、嬉しかったです。自己紹介と、ロシア語/日本語を学んだきっかけや、外国語の難しさなどお話しできました。年代や居住地も異なる人々が、同じ言葉を学んでいるという共通点で繋がれるのは素晴らしいことだと思いました。

 Zoomを用いたオンライン国際交流会は、場所を超えて繋がれる、新しい画期的な試みだと思います。またの企画を楽しみにしております。次回は個別のお話しタイムをもう少し長めにとって頂けると、なお嬉しいです!」

***
 米沢佳奈さんの感想:「発表者の方それぞれの反戦への思い、戦争の記憶に対する向き合い方について興味深く聞くとともに、このように考える人が多数なのになぜ戦争が世界からなくならないのかとも考えさせられました。それに対するウクライナの生徒さんたちの考えや彼らの戦争観、平和観というのも聞いてみたかった気がしました。

 グループセッションでは、ウクライナの方が活き活きと日本のことを語られる様子が大変印象的で、嬉しく感じました。私はあまり積極的にセッションに参加できませんでしたが、ほかの日本側参加者たちのロシア語力の高さにもとても刺激を受けました。もっとロシア語を勉強せねば…。

 このような機会を設けてくださり、感謝です。次回があれば、是非また参加したいです。」

【初体験】

 司会をしてくれたのは、横浜ロシア語センターに学ぶ田中恵子さんです。

 ご本人の談です:「初めてのロシア語での司会、しかもオンラインでということで、たいへん緊張いたしました。司会原稿をいただいてから、力点や発音、言葉の言い回しなど調べ、練習したものを録音してチェックしました。無事終了し、ほっとしています。自分にとって、とても良い経験になりました。」

【思いの伝わる通訳を】

 通訳をしてくれた横浜ロシア語センター付属通訳研究会清水陽子さんは:

「ウクライナとのWEB交流は初めてで、楽しみにしながらも少し緊張していましたが、先生であるユーリアさんがとても優しい方ですぐに緊張が解けました。

 私は演者が映画「火垂るの墓」をもとに、戦争に関する思いを日本語でスピーチするのを逐次通訳しましたが、ウクライナの学生さんにも興味深い内容だったのではと思います。皆さんがしっかり聴いてくださっているように感じ、通訳としてだけでなく人として、国境を越えて戦争について共に考える貴重な経験となりました。他の方のスピーチと通訳を聴けることも貴重で、このような機会をいただいて感謝しています。」

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 岡田恵理さん「演者の強い思いがこもったスピーチだったので日本語ネイティブにも、日本語を学んでいるウクライナの人たちにも、心に響くような通訳をしたいと思って臨みました。日本語学習者のために特別に簡単な表現を選ぶということはせず、その代わり、語りかけるような言い回しを心がけました。

 通訳している時、チラッとウクライナの学生の皆さんが頷きながら真剣に耳を傾けている様子が見えてとても嬉しかったし、励みになりました。遠く離れた国からリアルタイムで反応が得られる素晴らしい体験でした。」

【海の向こうからのメッセージ】

 キエフ国立言語大学のユーリアさんはこんな感想を寄せてくださいました。

 「私たちは知り合うことで、文化や暮らしをお互いに紹介することができます。また、日本語とロシア語学習の支援にもなります。

 テーマは、「平和と共存」。容易ならぬテーマですが、日本側の発表に心を打たれました。ちょうど、その数日間、全世界が広島・長崎の原爆投下の悲惨さを振りかえっていました。75年前に起こったことについて現代を生きる日本人が、どう思うかを知ることは私にとって貴重でした。まだ傷は癒えていないのだということが心に響きました。とても意味深い内容を、完璧なロシア語で伝えていただきました。発表者のロシア語の高いレベルにとても驚きました。

 日本の方にロシア語を教えたことがあります。自分の経験から言うと、ロシア語を外国語として学習することは、本当に挑戦のようなことだと思います。どれだけの忍耐力と時間がかかるかをよく理解しています。ですから発表者と通訳さんたちをはじめとするロシア語学習者は本当に凄いと思います。私にとっては日本語へのモチベーションとなりました。また会いましょう!お互いのことをもっと知り合いましょう。友達になりましょう!

【これが終わりじゃない】

 秋にまた交流会を持とうと約束しあいました。コロナ禍でリアルに会うことができないのは、不自由かもしれません、ですが、不自由は工夫の母ということもあるかと思います。オンラインという、飛行機になることも、経費をかけることもなく、自由に交流するまたとないチャンスを手に入れたとも言えます。

 学んだロシア語で自分の気持ちを表現すること、通訳に挑戦すること、そして、自分が学ぶ言葉を母語としている人たちと直接語り合うこと、そういう無限の可能性がオンラインという世界には広がっています。

 さあ、次回は貴方がスピーチをする番です。貴方の司会で、貴方にとって楽しい交流会をしましょう!

(横浜ロシア語センター講師 竪山 洋子)

アイスクリームとバレエと紅茶

 今、「ロシア」…を思い浮かべた方がいらっしゃると思います。ロシア人はアイスクリームが大好き!そして、バレエの本場!また、ロシアでは、お茶の時間と言えば、紅茶が良く飲まれますよね。…ということで、その「ロシア」の話ではなく、「日本」の話です。ロシア人とお知り合いになった時に話題に加えていただければ幸いです。

 日本で、日本人により、初めてアイスクリームが販売されたのは1869年(明治2年)横浜の馬車道通りで、氷水店の町田房造が「あいすくりん」と称して、売り出しました。

 1929年(昭和4年)頃には、鎌倉の七里ガ浜に日本初の本格的なバレエ学校が開校しました。それは、ロシア人のエレーナ・パヴロヴァ(エリアナ・パブロバ)によってです。門下生には、後に日本のバレエ界を切り開く名ダンサーたちが数多くいました。(日本の有名バレエ学校、バレエ団の創始者たち)彼女らは、世界に名だたる名バレエダンサーを育て上げます。かの森下洋子さん(世界的名バレリーナ・「ヴァルナ国際コンクール」で日本人初の金賞受賞)は、エレーナの孫弟子にあたります。また、森下さんと言えば、かつてロシアのルドルフ・ヌレエフ(世界的名バレエダンサー・故人)と何度も共演して、各国で絶賛されました。

 さて、今度は紅茶についてです。都道府県ランキングで神奈川は紅茶の年間消費量が全国第3位!(過去のデータです)また、ジャムの年間消費量は、なんと全国第1位!そう、神奈川県民は、ロシア人と同じく、紅茶とジャムが好きな人が多いのです。

(とくなが なつみ)

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