今年のゴールデンウィークの最終日にソビエト連邦時代に流行ったアニメの「チェブラーシカ」を鑑賞しました。5日の鑑賞会は1983年に作られた未公開の第4話が入ったDVDを見ました。6人が参加しました。
第1話から第3話迄は古い作品で、参加した方の中には今回未公開の第4話が是非見たいと言う方もいらっしゃいました。この日は子どもの日と言う事でソ連のアニメになりました。
第1話から第3話迄は普通のアニメでした。子ども向けですが我々大人も童心に帰り見入っていました。子どもであるチェブラーシカと親切な大人と意地悪な大人が駆け引きをしていました。鑑賞中「意地悪婆さん」の声が上がりました。親切な大人はワニの格好の男で意地悪な大人は普通の人間の格好をした女でした。
ヨーロッパ白人にもいろんな人がいるものでロシアのアニメは人懐っこい大人が多いです。
第4話は10分位の短いもので空港が出て来てチェブラーシカが戻ってくるシーンからでした。前の第1話~第3話に比べてバージョンアップした印象がありました。
5日のDVD鑑賞会は1時間ちょっとの短いものでした。ソ連のアニメと言う日本人にとって非日常的な活動が楽しかったです。
(中垣内)
◆ 番外編 (1)「黒パンはどうしたの?」
これは関戸のポカです。今まで、鑑賞会は日曜日に開催していました。ところが、今回は5/5で祝日の水曜日。本牧館では、土曜日にしか焼かないのです。そのため、今回は黒パンが出せませんでした。すると、非会員で初参加の方から、「黒パンはどうしたの?」との声。「案内に黒パンって書いてあったから楽しみにしていたのに~」と残念がっておられました。今回は黒パンではなく、ロシアチョコレートを出しました。それには満足しておられましたが、やはり鑑賞会には黒パンですね。次回からは、必ず用意します。
◆ 番外編 (2)「毎月、やらないの?」
これも同じ方からの声です。今まで、年4回(2月・5月・8月・11月)開催してきましたが、その方は毎月開催されると思っておられました。「こんな楽しいことなら、毎月やればいいのに」との嬉しい要望。参加者からの声には、是非、答えていきたいと思います。参加者の数は少なくても、楽しみにしておられる方がいるということは何よりも励みになります。今後とも、希望に応えられる鑑賞会にしたいです。
◆ 番外編 (3) 11月鑑賞会は「私のちいさなお葬式」に決定
別の参加者からは、早くも11月の希望が出されました。それが「私のちいさなお葬式」です。以前、事務所の前のポスターを見て、「面白そう。観てみたい」と思っておられたとのことです。8月よりも先に、11月の作品が決定しました。11/28(日)午後1時からです。お楽しみに。
(関戸)
5月30日(日)第77回ロシア語能力検定試験4級及び3級が、札幌、仙台、東京、横浜、新潟、名古屋、京都、大阪、広島、福岡の11ヶ所で実施されました。受験者は、全国合計で4級は414名、3級は330名の延べ744名でした。一番受験者が多い会場は東京ロシア語学院で、4級は全体の49%、3級は48%となり、全体の半分を占めています。
横浜会場は、4級を31名が申し込みましたが、5名が欠席、3級は28名申込で8名が欠席。欠席率は4級が16%、3級は29%でした。受験会場は、コロナ禍のため、横浜平労会館3階、4階、5階の3会場に分かれての試験となりました。4級試験では、4階に20名、3階に7名、5階に4名となり、試験監督は5人で担いました。
試験実施状況は、ロシア語朗読の録音の為に必要なICレコーダーが4級全員の31台配置されたので、かつてのように2サイクル3サイクルにしなくてもよくなったので、試験監督者は楽になりました。受験者にお願いしたアンケート結果は次号に掲載します。
(木佐森)
芸 能
学生たちが長い長い夏休みに突入したロシアから、2021年5月第4-5週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。今月も10曲中2曲が新曲!
9位に下品なお騒がせラッパー、モルゲンシュテルンの≪Show≫(ショー)がランクイン。昨年はフォーブス誌露版で「40歳未満で成功したスター」第21位に選ばれたり、GQやMTVなどで最優秀賞をノミネートまたは獲得するなど大活躍。またモスクワに仲間らと共に会社「カイフ」を設立、レストラン経営を始めるなど、実業家の側面も見せていました。今年はアルファバンク銀行で青年事業部門のリーダーに任命されたり、麻薬喧伝に繋るとして行政訴訟が提起されたり…相変わらずはちゃめちゃです。MVでは、道化師に扮したモルゲンシュテルンが放送禁止用語を乱発し、サーカス場でいろいろ繰り広げます。
3ヶ月続いてトップだったハビブから首位を奪取したのは、今年5月のユーロヴィジョンに露代表で出場したマニジャの≪Russian Woman≫ (ロシアの女)でした。タジク出自の女性アーティストで社会活動家。「家庭内暴力との戦い」の活動家、慈善基金「命をあげて」のアンバサダー、国連の難民部門での露代表親善大使も兼任しているすごい人。この曲も何らかの事情で父親不在の家庭で息子娘を養う強い露女性を描いていて、これが露女性たちが共感・支持して首位GETしたのでしょう。おめでとうございまーす!:-)
画像は https://vk.com より
※全文、チャート、PV視聴はユーラシア芸能ブログでどうぞ。
(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2021年5月21日~27日/MOPA)
ユーロヴィジョン2021結果発表
2021年5月18・20・22日にオランダ・ロッテルダムでユーロヴィジョン2021が開催された。
ユーラシア勢はロシア、モルドヴァ、リトアニア、ウクライナ、アゼルバイジャン、グルジア、エストニア、ラトビアの8組がセミファイナル戦に登場し、決勝戦にはロシア、モルドヴァ、リトアニア、ウクライナ、アゼルバイジャンの5組が残った。
優勝したのはイタリアのロックバンド・マネシュキンで、524点もの高得点を獲得。
一方ユーラシア勢は、ウクライナがトップで5位(364点)を獲得。以下、リトアニア8位(220点)、ロシア9位(204点)、モルドヴァ13位(115点)、最下位はアゼルバイジャンで20位(65点)という結果となった。
順位 | 国名 | アーティスト名 ※カッコ内は出場年 | 曲名 | スコア |
1 | イタリア | マネシュキン (21) | Zitti e buoni | 524 |
5 | ウクライナ | ゴ・ア (20,21) | Shum | 364 |
8 | リトアニア | ザ・ループ (18,20,21) | Discoteque | 220 |
9 | ロシア | マニジャ (21) | Russian Woman | 204 |
13 | モルドヴァ | ゴルディエンコ・ ナターリア (06,20,21) | Sugar | 115 |
20 | アゼルバイジャン | エフェンディ (20,21) | Mata Hari | 65 |
(MOPA)
映 画
「犬は歌わない」
(エルザ・クレムザー&レヴィン・ペーター監督作品、
オーストリア・ドイツ、2019年)
ロシアを旅行した人なら、街角や地下鉄に大きめな野良犬がうろついている光景を目にしたことがあるだろう。かつて、地球の生物体として初めて宇宙空間に出た犬・ライカはそうした野良犬の一匹だった。
宇宙開発競争のさなか、アメリカがチンパンジーを宇宙船に乗せようとして失敗したのに対し、当時のソ連は犬を実験台に選んだ。物言わぬ犬たちの命を賭けた飛行が、ガガーリンによる有人飛行を、アメリカに先んじて成功させたと言える。しかし、そうした栄光の陰で多くの犬たちが犠牲となったのである。
ライカは宇宙船と共に燃え尽き、生還できたのはわずかな犬たちだけ。燃え尽きたライカの魂は地球に戻り、今も街をさまよっているという都市伝説が広まった。
今もライカと同じように路上で生きる犬たちは、相変わらず人間のエゴがもたらす過酷な日々を送っている。
ソ連の宇宙開発「スペース・ドッグ計画」のアーカイブ映像を軸に、現代モスクワに棲息する野良犬の目線で描いた特異なドキュメンタリー。宇宙空間を漂うような音楽が印象的だ。聴き取りやすいロシア語の語りは、「裁かれるは善人のみ」に出演したアレクセイ・セレブリャコフ。
6月12日より、渋谷 シアター・イメージフォーラムにて公開、神奈川県はジャック&ベティで公開予定・日程未定
(滝沢 三佐子)
アニメ版「クー!キン・ザ・ザ」感想文
ロシアで2013年に制作された長編アニメ映画「クー!キン・ザ・ザ」が、2021年5月14日から日本で公開となりました。物語は、雪に覆われたモスクワの大通りを著名なチェリストのチジョフが歩いていると、甥と名乗る若者トリクが一晩泊めて下さいと声をかけてくる。そこに裸足の怪しげな人物が現れて、自分の星に帰るための番号がわからなくなったと言って、この惑星の番号は何かとたずねてきた。若者トリクがその異星人の持っていた機械を手に取りボタンに触れた途端、2人は一面の砂漠の世界へと一気にワープしてしまう、というところから始まります。すると、どこからともなく突然、釣鐘型の飛行船が飛んできて、中から小型のロボットとと2人の男が降りて来るが、言葉が全く通じない。ここには「クー」と「キュー」の2つの言葉しか無いらしいと気付く。しばらくするとその2人はロシア語で話し出した。彼らは頭の中で考えていることを読み取るテレパシー能力があり、チジョフとトリクは少しずつ状況がわかってくる。ここはキン・ザ・ザ星雲のプリュク星であること。この星には先住民で身分の高いチャトル人と、パッツ人がいて、識別機の色で区別する。身分の低いパッツ人は、ツァークと呼ばれる鈴を鼻に付け、チャトル人の前では自分の頬を叩き膝を曲げて「クー」と言わなければならない。社会的地位はズボンの色で、赤はエリート、黄色は偉い人、緑は下級者となっている。エツィロップ(policeを逆さに読んだもの)という、権力を持った警察官もいる。もう一つ、この星ではカツェと呼ばれるマッチが大変な貴重品で、1本でもとても役に立つ。このように地球とは全く違う価値観のプリュク星で、チジョフとトリクの2人は戸惑いながらも、なんとか地球に帰るために奮闘する。という内容です。
実は、この映画の本作は、同じゲオルギー・ダネリア監督の1986年実写版「不思議惑星キン・ザ・ザ」で、カルト映画の傑作として世界映画史に大きな足跡を残した作品です。実写版は社会主義体制下のソ連政治を、そしてこのアニメ版で大きな変革の波によって生じた現代のロシアを戯画化して、風刺しています。今回本作の「不思議惑星キン・ザ・ザ」も同時上映中、実写版ならではの不思議でシュールな魅力満載で、この世界に浸りたい方には是非お勧めしたい作品です。残念ながら2019年に監督は88歳で逝去され、この「クー!キン・ザ・ザ」が遺作となりました。
今回2つの映画を同時に観て特に印象的だったのは、アニメ版のプリュク星の景色と、チジョフのチェロの音を聞いて「チキタチキタ…チャー」とパフォーマンスする愛らしい生き物の表情とささやき、実写版ではとてつもない唐突感と、地球に帰ってきた直後にサイレンの音に即座に反応する2人の「クー」とすっかり様になったポーズで、今でも頭から離れない…。
それぞれの時代の生きにくさや、不条理さ、滑稽さを風刺しているにもかかわらずそこではなく、ストーリーの展開に引っ張られて、なんとも後味の小気味よい作品となっていることが素晴らしいと思いました。
(佐野)
タルコフスキーを観る
札幌在住のDさんから電話があった。タルコフスキーの映画が日替わりで上映され、毎晩観に行っているのだが素晴らしい、と言うのだ。まもなく神奈川県日本ユーラシア協会報が届き、関内のシネマリンでも上映されていると知った。コロナ禍の中を出かける気になったのは、Dさんの熱が伝染したからである。
3月21日、日曜日だったがひどい吹き降りで、これなら人出も少なかろうと出かけた。観客は思いのほか多く、没後40年近いタルコフスキーの人気の根強さを感じた。
『ローラーとバイオリン』は映画大学の卒業制作。主人公の男の子のふっくらした顔が愛らしい。子供の心になりきって、道路工事をする青年労働者への憧れや、二人の年齢を超えた友情に同化してしまった。60年の制作だが、いかにもその時代のソ連らしさがカラーの画面に溢れていて、ノスタルジックな気分になる。映画館では「チャパーエフ」がかかっていて、二人で観に行く約束をするのだが…。結末はほろ苦い。上映時間46分という短さを感じさせない重みがあった。国際学生映画コンクール一位というのもうなずける。
続く『僕の村は戦場だった』が日本で封切られた時、秋田の山村の中学生だった私は、2冊の洋画雑誌を友人と毎月交互に買っていて、この映画の批評が載ったのを憶えている。原題が『イワンの子供時代』だったと、モノクロの画面に心が騒ぐ。氷雨降り注ぐ前線の陣地にたどり着く痩せ細った少年。出だしからなんとも暗い映画である。全身刃物のような少年イワンを取り囲む軍人たちが優しい。子供ならではの彼の偵察活動に助けられながら、「子供はこんなことしてちゃだめだ」「学校へ入れよう」。司令官は養子にしようとさえ考える。大人たちの優しさが沁みるが、イワンはそれを受け付けない。敵への憎しみだけが彼を支えているのだ。一方で塹壕のつかの間の日常が丁寧に描かれるのも興味深く、旧日本軍との違いを思った。イワンの夢に繰り返し現れる村の井戸。「井戸の底には昼間でも星が見えるのよ」という母。井戸の底に降りて「ほんとだ!」と叫んだのがイワンの最後に幸福だった記憶だ。そして笑顔で砂浜を駆け回るイワンと妹。こうした脈絡なく繰り返される映像が、タルコフスキーはわかりくいと言われる所以か。水はとても重要なのだ、と後に他の作品を見て気が付いた。最後の偵察行も、延々と続く雨の沼地だ。ドイツ軍の砲が鳴る。イワンを愛する二人の軍人も、途中までしか同行できない。戦争が終わって生き延びた一人が見たものは…。
映画館を出ると雨は小止みになっていた。駅はどっち?方向感覚が無くなっていた。イワンの面影や声が付きまとって離れなかった。
次の日は『アンドレイ・ルブリョフ』、3時間を超える大作で、「聖三位一体」で知られるロシア最大のイコン画家が主人公だ。モノクロとカラー交互のオムニバス形式で、中世ロシアの混沌とその中に生きた修道士ルブリョフが描かれる。彼の生涯ははっきりしないが、モスクワのアンドロニコフ修道院にいたらしい。1998年、私は夫とともにそこのイコン博物館を訪れていた。
映画の終章で、私を驚喜させることがあった。疫病で多くの死者を出した村に、暗い眼をした少年がいる。もしかして?やはりそうだ。前日のスクリーンで死んだはずのイワンだ!イワンを演じた俳優が、少し成長してそこにいた、というだけのこと、何だ馬鹿馬鹿しい、と言われようと、嬉しくてしかたがない。映像と現実が混じり合うのは、それだけ観客の心をつかんだという証拠ではないか?
領主の命令で大鐘の鋳造が始まる。死んだ父から秘伝を教わっていると、少年が強引に棟梁となる。鐘はついに完成した。鳴り響くその音に聞き入る群衆を離れて、少年は泣いている。「嘘だったんだ、おやじは何も教えちゃくれなかったんだ」年老いた修道士が彼を抱き起す。ある事件をきっかけに絵筆を折り。沈黙の行を続けていたルブリョフである。「お前は鐘を造れ、私はイコンを描く」。再生の時が来た。イコン画家としての復活をもたらしたのが、少年の狂気とすれすれの「作る」ことへの情熱だった。「作る」ことこそが本当の癒しなのだと、夕方の裏通りをたどる私の気持ちも高揚した。
三日目は『惑星ソラリス』。日本の首都高が撮影に使われて話題になった。しかし、これもまた分かりやすいとは言えない作品だ。かつての映画好きとしては、ヒロインがセルゲイ・ボンダルチュクの娘なのが嬉しい。冒頭も結末も、髪の毛を思わせる水草が長々とうねる小川の水が、これでもかと映される。宇宙ステーションで次々と起こる不思議な出来事は省略する。地球に帰還した主人公が、父の家を訪ねるラストシーン。玄関に迎えた父の足元に跪く主人公、父は息子の肩に両手を置く。静止したその画面に声をあげる(むろん心の中で)。レンブラントの「放蕩息子の帰宅」そのものではないか。正教会では、復活祭前の大斎に入る準備期間に「蕩児の帰宅」のくだりが読まれる。父は神の、蕩児は悔い改めて神に還る私たちの寓意である。やがて画面がぐるぐる回り出し、ソラリスの海がふたりを囲む。すべてが、知能と意志を持つというソラリスの海が見せた幻影、とも取れて映画が終わった。そして父の両手は、何日もいや何週間も私を慰めた。
タルコフスキーは、子供の時、詩人だった父に捨てられたという。次の日に観た『鏡』には、そうした少年時代の出来事も描かれる。木曜には『ノスタルジア』。一作ごとに難解の度は加わったが、どれも優しさが滲み出ている気がした。
(鈴村)
【書 評】「あの場所の意外な起源」
日経インターナショナル・ジオグラフィック/2,640円
どんな場所にも、語りつがれている遠い起源がある。本書は、土地にまつわる予想だにしなかった土地起源論と時間空間論的文化史を、45篇程展開し編み出している。
共産主義の理想郷として造られた都市、断崖絶壁の寺院、世界最小の居住島等、わたし達の想像を超えて、打ち立てられた概念が、地球のそこかしこに存在するわけだ。
本書を編集にあたった、ナショナルジオグラフィック協会(当社)は、1888年に創立される。雑誌としては規模が大きく、文化、歴史、地理学、環境、自然と網羅するところは多岐に及ぶ。米国から始まり、36か国で発行され、約850万人が講読に踏みきる高級誌の一角を100年以上占めているのだ。
高級誌は、大衆誌の対義語で、社会の指導的立場の人々に発信されており、学歴と本の購入の年収(SA度)が、高いという特徴を持っているのだ。
山本五十六もハーバード大学に語学研修を受けた折、ジオグラフィック誌を愛読し、協会員となった。国を超えた「知」の文化の在りようである。
しっかりとしたエッセイ、精確な地図、ハードなフォルムの写真が満載で、そのぶれのなさに、報道写真賞や、エッセイ部門では最高賞をいくたびか受賞している。
ダーウィンは進化論の中でこう述べた。
この世に生き残るものは、変化に対応できるものだけだ。この言葉を念頭において、本書を味わっていただくと有難い。
文は、トラビス・エルボラフの企画、イラスト関係は、オーストラリアのマーティン・ブラウンという珠玉が織りなす一冊である。共有しあうことに、この本の意義はある。
(中出)
【書 評】『コーカサスの紛争 ゆれ動く国家と民族』
富樫耕介 著
昨今は、「シュクメルリ」などジョージア料理が注目を集め、ソチ冬季オリンピック終了後、なんとなく平穏に時が過ぎた感じのコーカサス地域。冷や水を浴びせられたのが、昨年勃発したナゴルノ・カラバフをめぐってのアルメニアとアゼルバイジャンの紛争だった。この地域はまだまだ「帰属変更や分離独立など、領域をめぐる」火種が残っている。そんな中、上梓された本書は、絶版となったユーラシアブックレット「コーカサス 戦争と平和の狭間にある地域」をベースに、コーカサスで発生した主な紛争の主因と経過、およびその比較、そして平和的解決に向けての可能性を立体的に網羅した「教科書」である(決して一部の人向けの「専門書」ではない)。
字面だけでは理解しにくい部分を補完すべく、図表や年表、紛争地域の詳細図などがふんだんに使われ、著者独自の分析も豊富で説得力がある。
特に白眉だったのは、「紛争による避難民は、それ自体が国民統合とナショナリズムの動員となりうる存在である」という指摘。つまり避難民が帰還してしまうと、「不法に占拠された領土を奪還する」という理由づけがなくなるため、「避難民である状態の長期化」が意図的になされているというものだ。
ほかにも「北コーカサスにおけるイスラーム主義運動」の章では、シリアやISとの関係が北コーカサスにおけるイスラーム主義の終焉を導く結果となったなど、世界のテロリストというイメージが強いチェチェン人の動向をわかりやすく解説してあり参考になる。
補論として、2020年のナゴルノ・カラバフ紛争の経緯と分析が付けられているが、大衆世論がともすれば当局のイデオロギー指導を凌ぐ場面も提起され、今後のなりゆきは本当に目が離せないものとなっている。
最後に、研究者である著者の立場から、本論は極めて客観的で冷静な筆致である。しかし、ところどころに挿入されたコラムでは、現地の人びとの想いに触れた著者の気持ちが垣間見られ、コーカサスに対する「愛情」を感じる。チェチェンとの縁が切れそうになっている私には待望の書、そしてコーカサスに興味がある人には必読の書である。
(東洋書店新社、2021年 本体3,200円+税)
(滝沢)
ロシア人は「招き猫」も好き!!
「招き猫」は、訪日観光客に人気のおみやげ。猫大好き!!なロシア人も、やはり、喜んで買って帰るそうです。
ところで、「招き猫」の多くは白猫ですよね!?三毛やキジトラではなくて。実は、それには理由があるのです。「招き猫」の由来には諸説ありますが、その中のひとつに東京の豪徳寺の伝説があります。江戸時代、彦根藩主の井伊直孝が鷹狩りの帰りに通りかかった寺の門前の猫に導かれるように中へ入ると、外は急に雷雨に。思いがけず難を逃れることができた直孝はたいそう喜び、貧しかったその寺に多額の寄進をし、井伊家の菩提寺としました。そう、直孝を寺に招き入れた猫が白猫だったのです。
さて、招き猫が右手(向かって左)を上げているのはお金を。左手を上げているのは人(お客様)を呼び込むということは、皆さんもよくご存じですね。しかし、欧米人には、少し説明する必要があります。実は、日本人と欧米人とでは「人を呼ぶ仕草」が違うのです。日本人は手の甲が上で、手前に向かって、掻くように手を動かし(上から下へ)「こっち、こっち」と人を呼びますが、欧米人は、手のひらを自分に向けるように、すくうような感じで手を動かします。ですから、その違いを説明しないといけないのです。
最後に、ロシアでは引っ越しした時に、新居に一番先に猫を入れると、その家で快適に暮らせるという言い伝えがあるそうです。「猫は快適な暮らしの象徴」なのだとか…。日本の「招き猫」は、店に置いてある「招福の象徴」ですね。ちなみに、店先には「信楽焼の狸」もよく見かけますが、あれは、元々は、泥棒除けなのです。泥棒が店に入ろうとすると「狸がいる!?」、泥棒は「もしや、お金は葉っぱなのでは?」と思い、盗みを考え直して去って行くというわけでして…。狸の持ち物にも意味がありますが、それは別の機会に。私はロシア人がいろいろと日本文化に興味を示してくれると嬉しいです。私も猫大好き!なので、ロシア文化を勉強したいです。
(とくなが なつみ)
ソ連プロパガンダ風 COVID-19対策啓発ポスター
(左)予防接種したピオネールは皆に手本を示す。
(右)みんな、接種は僅かなことだ。だから怖がらずに勇気を出して受けよう!
(左)私は感染を恐れない、コロナウイルスと戦ってる!
(右)自分でコロナウイルスワクチンを作ろうとしないで下さい!
(日本語訳:MOPA/ロシア・ムルマンスク在住)
投稿歓迎!
「日本とユーラシア」神奈川県版は会員みんなで作る機関紙です。ユーラシア(旧ソ連地域)関連の投稿をお待ちしています。
催し物の感想、旅行記、講評、写真、絵などさまざまなジャンルの投稿を歓迎します。
作品は自分のオリジナルか著作権者の許可を得たものに限ります。
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また、ペンネームや注意事項があればお書き添えください。毎月末締切、翌月15日頃に発行見込み。
(機関紙編集部)