NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会
柴田順吉顧問 お別れの会

柴田順吉顧問 お別れの会 2月19日開催

 2022年10月31日、柴田順吉当協会顧問が逝去されました。89歳でした。

 1962年に創立された前身の日ソ協会神奈川県連合会初代事務局長であり、1971年から1997年まで理事長・副会長を交互に3度ずつ務めた後、1997年から理事長、2010年から会長、2017年から顧問を歴任されました。4度目の理事長時代には全国一の会員増加を果たしました。また、2003年には協会をNPO法人に改組し、協会の基礎を固められました。

 2023年2月19日(日)14時より、柴田さんのご家族も一緒に思い出を語るお別れの会を開催いたします。

 当日は三女の比嘉いづみさんが沖縄から来られます。主宰する三線教室が横浜平和と労働会館で同日に開講されるので、生徒さんと共に2曲追悼演奏なさるとのことです。

 いつも笑顔で明るく楽しい雰囲気を作ってくれた柴田さん。皆様と一緒に在りし日のお姿を偲び、ご冥福を祈りたいと思います。

 当日、柴田さんの写真や記録、思い出の品をお持ちの方は是非ご持参ください。また、飲食物なども持ち寄り、手作りの会としましょう。

※オンライン(Zoom)での中継も検討中です。オンライン参加をご希望の方はお申し込み時にお書き添えください。
※予定は状況に応じて変更される場合があります。何卒ご了承ください。

日時:2023年2月19日(日)14時~
会場:横浜平和と労働会館(詳細未定)
参加費:対面 500円 オンライン 無料
定員:合計40名(要予約)
第一次お申し込み締め切り:1月31日(火)

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望年会

どっちのブリンチキが美味しい?!
2022年神奈川県日本ユーラシア協会・横浜ロシア語センター望年会

 12月18日(日)午後2時から5階教室にて、参加者18人で2022年望年会が開かれました。日頃、リモート授業で、担当の先生や受講生同士が、直接、対面で話をする機会が無いので、学期中に1回から2回は会ってお話をして欲しいということで企画されました。

 そのため、料理はなし、会費もなし、各自の持ち寄りサモワール茶話会です。用意されているのは、白いテーブルクロスと金と銀のサモワールのみですが、参加者のみなさまは、それぞれ自分で食べたいもの、飲みたいものを持参してくれました。ブリンチキは、タラルイキナ先生と田中さんがご自宅で作ったものを持ってきてくれました。タラルイキナ先生はブリンチキに載せるリンゴジャムも。田中さんのブリンチキには、バターがよく染み込んでいました。関戸さんは、お得意の「海軍マカロニ」です。今回のマカロニは、ひき肉や玉ねぎがよく炒められており、これまでで一番おいしかったです。1月15日のヨールカ祭には、ヴァレリヤ先生の「海軍マカロニ」が出されるので、どんなマカロニになるのか、楽しみです。

 お菓子をいくつも持ってきてくれた人、ワインやシャンパン、ビールを持ってきてくれた人など、テーブルの上は並びきれない、食べきれない、飲みきれない状況になってしまいました。

 話も盛り上がり、ロシアでの仕事の話、今研究しているテーマの話、ウクライナ語とロシア語の近くて遠い話など盛りだくさんです。

 5時ごろ終宴して、2次会は関内のロシアレストラン・バー「アムール」でした。

(木佐森)

 
水団会

柴田さんを思いながらの水団会・プロレタリア文学に見られるソ連・ロシア学習会

 12月11日(日)午後、水団会を開催しました。会員外の方も含めて5人。人数は少なかったですが、それぞれの方が柴田順吉顧問を思いながらの参加でした。

 最初に水団づくり。参加者の黒澤さんは柴田さんより三歳年下。戦中・戦後の窮乏生活は柴田さんと同じだったそうです。「水団は思い出深いです。ご飯が食べられなかったので、毎日のように水団ばかりでした」。御飯を詰めてのお弁当は梅干し一個という「日の丸弁当」だったとのこと。その「日の丸弁当」は弁当箱がアルミニウムだったので、梅干しが直接触れるとすぐに腐ってしまうので、ご飯の中に梅干しをくるんで詰めたといいます。本当に体験者ならではのお話でした。

 小麦粉をゆるく溶いて、沸騰したお湯へ。味付けは醤油だけ。これで出来上がり。味の方は「意外と美味しい」という声も。でも、毎日これではどうでしょうか。それさえも、「おなか一杯食べることはできなかった」と言っていた柴田さん。黒澤さんも同様に仰っていました。

 その貧困について、二つの作品を読みながら理解しました。一つは本庄睦男『お菜のない弁当』。読んで字のごとく、御飯だけ詰め込んで、梅干し一つ入っていない弁当を持って工場に行く労働者の姿。その労働者が「ロシアの不景気知らず」を「ソヴェートに出稼ぎして、この眼で見て来た」と語るのです。もう一つは小林多喜二『級長の願い』です。貧しい家の生徒。それが級長なのですが、教師に手紙を出しました。その中に「先生はふだんから、貧乏な人は助けてやらなければならないし、人とけんかしてはいけないと云っていましたね。それだのに、どうして戦争はしてもいいんですか」とあったのです。さらに、「戦争が長くなればなるほどかゞりも多くなるし、みんながモットモットたべられなくなって、日本もきっとロシヤみたいになる」と綴りました。現在の不景気な社会と重なります。参加者は「初めて読んだ」と言っておられました。

 水団を食べながら柴田さんを思い、柴田さんが語った戦中戦後の貧困を文学で理解した集いとなりました。

(関戸)

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横浜ロシア語センター第137期 生徒募集中!

 第137期開講中。入門~上級、会話、演劇、文学、ウクライナ語入門など、様々な学習レベルに合わせた内容の講座を用意しています。学期途中からの編入も可能です。無料での見学は30分×3クラスまで。詳しくは当センターホームページをごらんの上、ぜひお気軽にお問い合わせ・お申し込みください。

 

横浜ロシア語センター通信 令和5年冬号(第3号)発行

 年2回発行のセンター通信・最新号が出来上がりました。編集は大山麻稀子先生。
 内容は大学で外国人向けロシア語教授法を学んだウラジオストク出身のタラルイキナ・オリガ先生の紹介。普段はなかなか知ることのできない一面がわかります。
 続いてロシアでの新年の祝い方についてのお話。
 そして半年間の入門クラスを終えたばかりでロシア語能力検定試験4級に見事合格した大地杏奈さんに聞く勉強法です。
 本紙に同封されていますので、ぜひご一読ください!

 

ロシア民族楽器 バラライカ&ドムラ教室

 ロシア民族楽器を本格的に習える当教室は毎月2回土曜日にレッスンを行っています。
 1月のレッスンは14日・28日になります。今年は原則として第2・第4土曜に開講する予定です。

時間:14:00~17:45の間、各45分
講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館6階会議室

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今月は休載いたします。

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ロシア語医療用語ハンドブック

【ウクライナ避難民支援】ロシア語医療用語ハンドブック

 ウクライナ避難民の医療現場通訳支援のため、ロシア語通訳協会の協力により、同協会発行の「ロシア語医療用語ハンドブック」を半額以下の特別価格にて提供いたします。全17冊セットはおかげさまで完売しましたが、ばら売りの書籍は引き続き取扱中です。お早めにお求めください!

 診療科ごとに解剖図・主な疾患と症状・検査・治療など、医療の必須単語・表現や解説を日本語・ロシア語で掲載しています。

 ロシア語話者も多いウクライナからの避難民の方々などの医療現場通訳支援や、ご自身の学習にお役立てください。

 内容:1. 総合(1,430円)2. 病院(1,230 円)3. 健診(1,230円)4. 循環器科(1,430円)5. 消化器科(1,230円)6. 血液科(980円)7. 婦人科(850円)8. 皮膚科(980円)9. 眼科(980円)10. 呼吸器科(1,430円)11. 整形外科(1,630円)13. 歯科(850円)14. 脳神経外科(1,630円)15. 放射線治療科(980円)16. 泌尿器科(980円)17. 耳鼻咽喉科(850円) 2016年発行、A4版。

 
「宇宙飛行学の日」記念切手・消印付き封筒

「宇宙飛行学の日」記念切手・消印付き封筒 2種165円(税込)

 ソ連が人類史上初めての有人宇宙飛行に成功したのは1961年4月12日。この日が「宇宙飛行学の日」に制定されました。

 1988年・1989年4月12日当日の記念消印・15カペイカ切手付き封筒のデッドストックを値下げ放出いたします!

※古い品の為、封部分の糊が貼りつき、開けることができなくなっていますがご了承ください。

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ロシア・トップ10

【芸能】Русская Десятка ロシア・トップ10

 イルミネーションが眩い新年。その年明けに新たに150万人の動員が考えられているお先真っ暗なロシアから、2022年12月第2-3週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中2曲が新曲、1曲が返り咲き!

 露のウクライナ侵攻開始早期から既に文化省ブラックリストに挙がっていた先鋭ラッパー・オキシミロンのシングル≪The Story Of Alisher (Morgenshtern Rip)≫(アリシェルの物語・モルゲンシュテルンよ安らかに眠れ)が7位にランクイン。≪Я убил Марка≫(俺がマークを殺った)ディスったモルゲンシュテルンに対しディスる内容のアンサーソングです。

 ロシアでは年の瀬が近くなると、新年向けに制作されたコラボソングが上位に登場します。今年末も上がってきました。ズィヴェルトとDJ Smash&ニヴェスタを退けて首位奪取したのは、やはり新年向けコラボソング≪Ночь счастливых надежд≫(幸せな希望の夜)でした。テノール歌手のバスコフ、国民的歌手のドリーナ、ユーロヴィジョン2018優勝のビラーン、コケティシュな歌声を持つカラウロワという豪華なアーティストを迎え、著名音楽家クルトイのアカデミー合唱団の美しいコーラスと共に昨年末にリリースされました。そして今年末2度目の首位を獲得。YouTube再生回数は現在760万回超えています。「神の祝福あれ、戦争がありませんように…」おめでとうございまーす!:-)

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2022年12月9日~15日/MOPA)
画像は https://vk.com より

※全文、チャート、PV視聴はユーラシア芸能ブログでどうぞ。

 
「ウクライナの宇宙」 セルゲイ 「ウクライナの宇宙」 レビュー 「ウクライナの宇宙」 裏セルゲイと裏ミハイル

【演劇】東京ミルクホール 第26回本公演『ウクライナの宇宙(そら)』

12月23日 於:下北沢ザ・スズナリ

 初見の劇団である。プロフィールによると「女人禁制」とあり男性だけの劇団だ。チラシはソフィア・ローレンの「ひまわり」、のようなもの、しかしストーリーはソ連ロケット技術の父、セルゲイ・コロリョフ(パンフレットにはコリョリョフと表記されている)が題材となった社会派コメディと書かれ、中身はまったく予想不能。ところが! かなり史実をうまく使った爆笑社会派反戦エンターテインメントだった。

 ウクライナのオデッサ出身のコロリョフと彼の幼なじみミハイル・コーガン(役名はドーガン)は共に宇宙(そら)に想いを馳せる少年。スターリンによるユダヤ人迫害が激しくなったころ、コロリョフはモスクワへ勉学に、コーガンは母妹と満州へ逃避する。二人の通信は途絶えるが、コーガンの持つ中国の壺とコロリョフの持つペンが互いの想いを知らせるテレパスの役目をもつ。

 スターリン粛清が始まると、同僚の裏切りでコロリョフは極東の強制収容所へ。その頃、コーガンは満州にユダヤ人自治区を造ろうと奔走する日本人・安江仙弘に感銘を受け、ユダヤ人協会の活動に熱を入れる。そこで中国人を偽装する歌手・李香蘭と知り合う。

 月日は流れ、釈放されたコロリョフはロケット開発に従事し、スプートニク打ち上げの成功で積年の夢を叶える。一方、コーガンは日本で貿易会社(のちのタイトー)を起こし日本で初のウォッカ輸入、コンピューターゲーム「スペースインベーダー」で一世を風靡した。別の形で宇宙への夢を実現したのだった。

 とにかく飽きさせない。宝塚歌劇団ばりの豪華なレビューダンス、李香蘭に扮する佐野バビ市の圧倒的歌唱、競走馬や禿げオヤジを演じる客演女優陣の怪演、コーガンの妹ミラ(銀ケンタ)のカンフーアクション、ホントに女の子にしか見えない亡命者ナターシャの可憐さ(山本脩平)、UFO型衣装で度肝を抜くスターリンの腹心ジーミル(哀原友則)などなど。昭和ネタは若い世代にはイマイチだったようだが、アドリブやハプニングも存分に楽しめ、休憩なし2時間半があっという間だ。

 特に印象に残ったのは、強がるコロリョフとコーガンの本心を語る「裏セルゲイ」「裏ミハイル」(いずれも女優が演じている)の葛藤。さらに独裁者ジーミルにはなんと「裏ジーミル」というのが存在し、これがのちのプーチンを想起させるという仕掛けで、辛口風刺に拍手喝采である。

 3人目のウクライナ人(語りのユーリイ)が宇宙理論の隠れた先駆者として紹介され、ラストシーンはホロリとさせられた。

 もちろんコロリョフとコーガンが幼なじみだったという史実はないが、本題はウクライナ人の持つ不屈の精神である。喜怒哀楽てんこ盛りの本作は、ロシアの侵攻を受けるウクライナを強く応援するメッセージとなったと思う。

(文:滝沢 三佐子/撮影:辺見 真也)

 
『戦争は女の顔をしていない』を読む 『戦争は女の顔をしていない』を読む

【演劇】『戦争は女の顔をしていない』を読む

12月16日 於:劇団銅鑼アトリエ(上板橋)

 劇団銅鑼の女優陣による「戦争は女の顔をしていない」を読む会の主催。スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ作品「戦争は女の顔をしていない」のリーディング公演である。

 数年前、ロシア語劇団コンツェルトによる同作の舞台化を観たときは、原作をうまく表現しきれない消化不良の印象を持った。たしかに500人以上に及ぶエピソード・証言が多重的に収録されたあの作品の舞台化は、群像劇であってもエピソードのつまみ食いのような感じになってしまう。その点、「リーディング」は、あたかもアレクシエーヴィチが取材を行っている現場のように、原作の持ち味を保ったまま舞台化する唯一の表現形式といえる。ただし、同作すべてを読む時間はないため、どの証言をセレクトするかがこのリーディング公演のキモとなるが、戦闘員から非戦闘員まで、作品の中で特に印象深いものが選りすぐられていたと思う。

 舞台は二部構成。前半は戦闘に参加した女性たちの証言がメインだ。肉親をドイツ兵に殺され復讐のために入隊した者、女性への扱いにとまどいながら懸命に任務を遂行する者、二等兵、狙撃兵、軍医に至るまで、女性の目から見た戦いの現場が語られる。それは「凄惨」というにはあまりにも陳腐な現場である。男性による戦争体験では語られない特有の事象、もしくは男性的な戦うだけの戦争ではない、多面的な戦争の在り方が語られ、こんな戦争があったんだと気づかされる。

 後半は地下活動家やパルチザンを中心とした生々しい別の側面が語られている。飢えたドイツ人捕虜がパンを受け取ってくれたことに喜ぶ者、うっかり救助した兵士がドイツ人だったが見捨てきれなかった衛生兵には、戦争のさなかにあっても命をいつくしむ感情に心動かされる。ドイツの捕虜となったが生還した夫のために、「人民の敵」の妻として社会から排除されてきた女性のスターリン糾弾には憤りを共感する。

 戦争体験ほど人間としての本音が赤裸々に語られるものはないだろう。女優たちは「証言者」に成り替わり、聴衆は「証言者」の話で戦争を感じ取る。アレクシエーヴィチの世界が多元的に立ち上がった2時間だった。

(文:滝沢 三佐子/撮影:佐藤 智)

 
スパイを愛した女たち

【映画】スパイを愛した女たち

(原題:ЗОРГЕ、制作・監督:セルゲイ・ギンズブルグ、ロシア=ウクライナ=中国、2017~19年)

 ウクライナ出身のセルゲイ・ギンズブルグにより2年もの撮影期間と7億円を投じられて作られたテレビドラマシリーズ。ロシアの第1チャンネルで放送されて高視聴率を獲得した。全12話の作品がついに日本の劇場で2話ずつ公開となる。

 伝説の諜報員リヒャルト・ゾルゲを題材にした映画はこれまでいくつか作られたが、本作は日本のドイツ大使館でジャーナリストとして働いていた時期をメインに描く。「ラムゼイ」というソ連情報部員のコードネームで最高機密にアクセスしていた彼は、日本人女性・花子と同棲しながら、駐日ドイツ大使館の妻にも魅かれていた。「ソローキンの見た桜」に出演したA・ドモガロフをはじめ、山本修夢、木下順介、中丸シオンらが熱演。

 2月より新宿・Ksシネマで公開。

(文:滝沢 三佐子/スチール写真:(C)平成プロジェクト 2023年)

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徳永晴美先生追悼

 ロシア語通訳者・教育者として活躍されていた当協会会員の徳永晴美先生が、2022年8月1日に逝去されていたことが分かりました。

 野口福美・横浜ロシア語センター長より12月19日夜「8月頃から連絡が取れなくなり、このままでは年を越せぬとロシア語通訳協会の清水さんと相談して今日自宅に架電したところ、8月1日に亡くなられたと聞いた」との報告を受けて判明したものです。

 徳永先生はNHK・TVロシア語講座講師、ロシア語通訳協会会長、通訳ガイド国家試験ロシア語試験委員会主任、朝日新聞モスクワ特派員、上智大学外国語学部ロシア語学科教授、外務省研修所講師、朝日新聞客員等を歴任。

 上智大学教授を退官後、2012年神奈川県日本ユーラシア協会に入会。翌年より講演会・学習会の講師を務め、2015年の第123期には本格的ロシア語ゼミを開講。ここ7年ほど闘病されていましたが、教材の監修や講師・職員への助言などでも随時ご協力いただき、講師陣の精神的支柱となっておられました。

 心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 
徳永晴美先生

徳永晴美先生

 「Рождение человека - случайность, а смерть - закон. 人の誕生は偶然、死は定め」とはA. I. クプリンの言葉でしたでしょうか。そんなこと分かっていても、先生にロシア語センターのことでもう何も相談できないのかと思うと私は深い喪失感に襲われます。

 「横浜に住む元通訳仲間4人で飲もうよ」と言っておられたのは一年半位前だったでしょうか。半年位たって私が催促したら、「もう、飲み会には行けないよ」と言われ、「今度、徳永先生を囲む会をさせてよ」とお願いした時も「もう無理だ」と言われたので心配はしておりました。でも、あなたが執筆を続けているのを知っていたので、それほど深刻な病状とは私には思えなかった。だってあなたは2022年の7月まで何度も原稿を差し替えていたのだから、まだまだ大丈夫、あなたはまだまだ頑張れると思っていた。

 ロシア語通訳協会創設者のあなたが活躍した場はテレビ、新聞社、そして大学など多方面にわたるけど、私たちにとってのあなたはやはり常に通訳者のリーダーとしての徳永さんでした。あなたに教えて貰い、励まされ、叱咤されながら強い仲間意識で結ばれ、助け合いながら通訳現場を乗り切ってきた私達でした。そしてあなたがロシア語通訳界に培ったこの土壌はこれからも若い優秀な通訳者を育て上げるに違いありません。

 でも、それ以上のあなたの功績は、ロシア語学習者のあこがれとなり、ロシア語の普及に尽力されたことでしょう。私はこの10年間、横浜ロシア語センターであなたの助言を得ながら多くを試みることができて幸せでした。この間に100人近くの受講者数に達したロシア語学び舎に育てることができたのは、あなたが支えてくれていたからと深く感謝しています。

 今ロシア語界は苦境にあります。忘れもしない2022年2月24日にプーチン政権のウクライナ侵攻が始まり、衝撃を受けた私たちは露・和文の「平和を願うメッセージ」を発表しましたね。推敲の最後にあなたは訴える力が強いロシア語文言を提案してくれました。私はあなたと共にウクライナ戦争の結末を見届けたかった。戦争の行方はいまだ知れず、日本のロシア語界もこれからどう変遷して行くのか見通せない状況です。今のロシア語界は、これまで経験してきた浮き沈みの中でも最大の難局に瀕しているのかもしれません。だから、あなたにはもっと長生きして共に闘って貰いたかった!

 無理強いを言ってごめんなさい。私はもう少し長生きして、今の信じられない悪夢のような戦争が終わり、平和な時が到来するのを見届けますね。

 今あなたの言葉を思い出しています。「民族友好大学で教わった諸先生方へのお礼の気持ちを込めて教科書を書いている」と言ったあなたの言葉を。病魔と闘いながら、死と向き合いながら、あなたは文字通り最期までロシア語のために全力を尽くしたのですね。あなたの遺稿が一日も早く世に出ることを願っています。

 あなたは、「皆さんに時々思い出して貰えれば、それでよい」と言い残されたそうですね。あなたは間違いなく、きっと多くの方たちに時々思い出してもらえますよ。多くのロシア語愛好家の胸中に棲みついているのだから。横浜ロシア語センターのSNSに投稿した訃報はすでに1万回以上閲覧されました。

 あなたの業績を称えながら衷心よりご冥福を祈っています。

(横浜ロシア語センター長 野口 福美)

 
徳永晴美先生

神様のいたずら…ですよね

 「神様、野口先生にいたずらをされたのですよね。私が野口先生からお聞きしたお言葉は、きっと野口先生の空耳。それは神様のいたずらですよね。」

 私は信じません。信じたくない。信じられない。絶対に信じたくないです。

 徳永先生は何事にもプラス思考で、太陽の光のような力強く、明るい存在。そのお人柄はとてもお優しく、温かい。お若い頃からご自分のことよりも他人のことを気づかわれるご性格。私自身が感じました。気配り、気づかいの徳永先生…でいらっしゃると。

 ユーモアを交えた徳永先生のロシア語の授業はとても楽しく、わかりやすかったそうです。豪快な笑い声で周りを明るくされ、そして勇気づけられる徳永先生。でも、私は存じています。徳永先生は実はとても繊細な方でいらっしゃると。(過去形は使いたくありません)

 今、徳永先生はきっとどこか遠くでこっそり療養されているのですよ。皆さんに心配をかけたくないから。ご自身のご病気の姿を見られたくないから。きっとそうですよね。

 徳永先生、今、私の耳に徳永先生のお声が聞こえてきます。あのときのお電話の声が今でもはっきりと。「ぼくはね、頑張って下さい…の言葉が嫌いなんですよ。頑張ると途中で辛くなっちゃうから。頑張らなくていいんです。それより楽しんで下さい。語学の勉強は楽しまなきゃあ。ガハハハハッ!」

 徳永先生、本当は徳永先生はとても頑張って癌と闘ってこられたのですよね。何年も長い間。もう病魔と闘わなくて良いのです。どうぞ、ゆっくりなさって下さい。そして、徳永先生…お願いです。いつか、きっと私たちの前に…。先生…。先生…。

(とくなが なつみ)

 

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 「日本とユーラシア」神奈川県版は会員みんなで作る機関紙です。ユーラシア(旧ソ連地域)関連の投稿をお待ちしています。
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中世ロシア興亡史講義 ~歴代君主の素顔とその真実~ 862-1598
第199回 イヴァン三世の二度目の結婚

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