NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会

夏休みのお知らせ

2023年8月6日(日)~20日(日)は神奈川県日本ユーラシア協会の夏休みです。
この間、事務局、各種教室、物販等は休みになります。ご了承ください。

 

『8・15』戦争と平和を考えるDVD鑑賞会 8月20日開催

 今年も『8・15』がやってきます。毎年、この時期には戦争と平和を考える作品を取り上げています。

 今回は『氷雪の門』を鑑賞します。「北のひめゆり」と言われた樺太(現サハリン)の真岡郵便局の悲劇を描写した作品です。1945年8月20日、昭和天皇の玉音放送により戦争が終結した後の戦闘で起きたことでした。降伏や投稿を認めない日本軍の影響で、逃げ場を失い、郵便局の女性交換手9名が自決したのです。これだけでなく、病院の看護婦の集団自決や逃げる一般市民への爆撃など、沖縄の地上戦と同じか、それ以上の悲惨な出来事が樺太の戦闘でした。

 神奈川県日本ユーラシア協会では、2018年・2019年とサハリンツアーを企画・実施しました。また、今年は4月に北方領土問題と日ロ関係・平和を考える旅を実施し、5月には「サハリン(旧:南樺太)残留日本人を知る会」学習会を開催しました。その流れに続く鑑賞会です。是非、ご参加を。

日時:2023年8月20日(日)14時~※奇しくも78年前のこの日に悲劇が起きました。
会場:横浜平和と労働会館5階 当協会教室
参加費:500円(黒パン・紅茶付)

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「ククーシュカ~ラップランドの妖精」

現代ロシア映画鑑賞会「ククーシュカ~ラップランドの妖精」

6月25日(日)

 久しぶりの現代ロシア映画観賞会は、第24回モスクワ映画祭をはじめ、世界のさまざまな映画祭で好評を博した「ククーシュカ」(アレクサンドル・ロゴシュキン監督作品、2002年、ロシア)を鑑賞、4人が参加しました。

 1941年の継続戦争のさなか。フィンランド北部に住む先住民族サーミ人のアンニによって命を救われたのは、敵対する二人の男、フィンランド兵のヴィエッコとソ連兵のイヴァン。サーミ語、フィンランド語、ロシア語を話す三人は、お互いの話が理解できない。けれども愛すべき齟齬によって不思議な共同生活を送ることに。ある日、上空のソ連偵察機から停戦協定が結ばれたとのビラが撒かれた…。

 鑑賞後、物語の背景となったソ連とフィンランドとの戦争や、現在のウクライナ戦争に至るまでのソ連とその周辺国の問題や、少数民族についての社会的地位にいたるまで、参加者からさまざまな感想や意見が述べられました。

 時期は未定ですが、次回はロシアの介護問題を扱った「エレナの惑い」を予定しています。

(滝沢)

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Курсы японского языка

Всех желающих изучать японский язык мы приглашаем на индивидуальные курсы японского языка при обществе ≪Япония-Евразия≫ префектуры Канагава.

Наши курсы ориентированы в первую очередь на русскоговорящих, проживающих в Японии, поэтому большинство наших преподавателей владеют русским языком на высоком уровне. Возможны аудиторные и онлайн-уроки. Мы внимательно выслушаем Ваши пожелания и подберём оптимальную учебную программу.

За справкой обращайтесь по электронному адресу eurask2@hotmail.co.jp или в офис общества ≪Япония-Евразия≫ префектуры Канагава (просьба заранее сообщить о своём визите по электронной почте).

日本語教室のご案内

 ロシア語を母語とする方を対象に、日常会話や日本語能力検定試験対策など、受講生の目的やレベルに合わせて個人レッスンで丁寧にお教えします。
 講師はロシア語を交えて、または日本語のみの直接法で授業を行います。
 詳しくはホームページ(日本語版・ロシア語版完備)をごらんください。

 

ロシア民族楽器 バラライカ&ドムラ教室

 ロシア民族楽器を本格的に習える当教室は毎月2回土曜日にレッスンを行っています。7月のレッスンは8日、22日の予定です。

 レッスンでは基本奏法、譜読みから音楽理論、デュオから基本的なアンサンブルまで学べます。日本ではまだまだ希少なロシアの民族楽器を奏でてみませんか?

時間:14:00~17:45の間、各45分
講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館6階会議室

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組織状況

(2023年6月30日現在)

 6月末現在での会費請求処理において、12か月以上滞納されている理由が明らかでない会員について、「退会処理」としたため、会員数は5月より2名減少し、211人となってしまいました。

(木佐森)

 

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2023/6/30
単位:円
摘 要本年度当該月収入前年度当該月収入対前年度増減
一般会計35,95042,950-7,000
教育事業447,429331,725115,704
一般事業61,655139,560-77,905
合 計545,034514,23530,799
摘 要本年度当該月支出前年度当該月支出対前年度増減
一般会計489,639513,175-23,536
教育事業721,654643,58378,071
一般事業96,58872,19324,395
支出合計1,307,8811,228,95178,930
当該月収支-762,847-714,716-48,131
累計収支計446,185614,249-168,064

 今年23年6月の財政状況も、昨年22年6月と同じような経過をたどっています。収入は、少しずつの減少ですが、経費は変わらないか増加傾向にあるので、収支状況が悪くなる傾向にあります。個人レッスンなどのロシア語講座での収入増が期待されています。

(木佐森)

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イワン・チャイ各種

イワン・チャイ各種 370円(税込)

ティーバッグ25袋入。写真左上から時計回りに
● 紅茶・ヤナギラン・ミント・タイム
● 紅茶・ヤナギラン・ラズベリー
● 緑茶・ヤナギラン・ワイルドストロベリー

タイム&ミント紅茶

タイム&ミント紅茶 540円(税込)

タイムとミントはロシアならではの定番フレーバー。
夏向きのすっきりした味わいで、ミント入りの飲食物がお好きな方にお勧めです。
裏面に「エフゲニー・オネーギン」の一場面をあしらった金色のパッケージも豪華。
個包装25袋入り。

「ロマノーソフ磁器工場」ティーセット各種 「ロマノーソフ磁器工場」ティーセット各種

【委託品】「ロマノーソフ磁器工場」ティーセット各種

旧ロシア帝室磁器工房の茶器で優雅なティータイムを!
5階教室の小廊下に展示中。購入ご希望の方は協会事務局まで。
時期によって商品入れ替え有。

ウズベキスタンの綿花柄茶器

【委託品】ウズベキスタンの綿花柄茶器
ティーポット8,800円(税込)/ティーカップ1,980円(税込)

ウズベキスタン食器・雑貨の「kinuya」さんからの委託品。
5階教室の小廊下に展示しています。
他の商品にもご興味があれば、オンライン通販や横浜中華街・関帝廟前の実店舗でどうぞ。

 上記商品は協会事務所で取扱中。通販サイト「うにべるま~ぐ」で販売している商品もありますので、ぜひごらんください。

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ロシア・トップ10

【芸能】Русская Десятка ロシア・トップ10

 プリゴジンの乱が超速で沈静し、期待外れが感じられたロシアから、2023年6月第3-4週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中3曲が新曲&1曲がカムバック!

 8位にエヌエルオーの≪Танцы≫(ダンス)がランクイン。NLOとはロシア語のUFOのことではなく、≪Not Like Others≫(他の奴等とは違う)の略で、作詞担当のステパン、作曲担当のエフゲニー、カティアの3人組。

 7位にクラウツ&ギオ・ピカの≪Где прошла ты≫(どこで君は通り過ぎたのか)が入りました。レプスを髣髴とさせるハスキーボイスのギオ・ピカは、グルジア・トビリシ市出身で国籍はオセチア人。幼少の頃から日常的に近くにあった戦争や紛争が彼の音楽世界に大きく影響。独特な世界観・価値観を持つギオは、同曲ではサビ部分を担当しています。一方クラウツは露トゥーラ出身のラッパー。同曲ではA・Bメロ部分を担当しています。

 3位にアンナ・アスティの≪Верю в тебя≫(貴方を信じる)ランクインしました。2ヶ月前にリリースされ、現在YouTube再生回数は1836万回、出る曲出る曲驚異的スピードで視聴されています。

 今若きロシア女性の憧れそしてファッションリーダー、クライムブレリの新曲≪Иначе всё это зря≫(さもなくば全て無駄に)が4ヶ月連続首位でした。20歳でデビューし、最初はシンガーソングライターとして大変な時期もありましたが、いまや毎年様々な音楽祭典で大賞を受賞したりノミネートされたりする売れっ子のアーティストに。おめでとうございまーす!:-)

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2023年6月16日~22日/MOPA)
画像は https://vk.com より

※全文、チャート、PV視聴はユーラシア芸能ブログでどうぞ。

 
藤間紫恵乃さん 藤間紫恵乃さん

川西宏明さん 川西宏明さん

【音楽】イーゴリ・ロマネンコさんを追悼 朝日ホール追悼コンサート

 昨年2022年6月に亡くなられたロ日協会元会長イーゴリ・ロマネンコさんの「追悼コンサート」が、6月10日(土)浜離宮朝日ホール小ホールで開催されました。

 開会はアレクセイ・トカレフさんのトランペット・ヴァランタリーで始まり、栗原小巻さんがロマネンコ元会長への追悼の辞を述べました。

 かつて、ロシア国内各地で開催された「日本週間」で、ロマネンコ元会長に「お世話になった」と、当時の思い出話を交えながら、当時の出演者みなさんが出演しました。藤間紫恵乃さんは、ロシア国内でも舞った「モスクワ郊外の夕べ」の曲での日本舞踊。小山みつなさんと山本謙竹さんは、歌と三味線による「新相馬節」「津軽あいや節」。尺八の大由鬼山さんは「荒城の月」と追悼の演奏・演技が続きました。

 東京バラライカアンサンブルもロシア民謡「街にざわめきも聞こえず」で追悼。タマーラさんは「黒い瞳」、ヴァイオリンの谷本さんはグラズノフ作曲「瞑想曲」、ピアノの木曾真奈美さんはラフマニノフ「鐘」でロマネンコさんを追悼です。最後は、神奈川県協会会員の川西宏明さんによる「おお、ライ麦よ」と演奏曲「ロシア」で終演となりました。

(木佐森)

 
西野肇さん 西野肇さん

石橋幸さん 石橋幸さん

【音楽】講演「謎の“ろっ骨レコード”」とロシア語の歌 石橋幸コンサート

6月24日、於:ロシア家庭料理「ノスタルジー」(中目黒)

 モスクワ放送80周年イベントで大いに語っていただいた西野肇さんが、今度はろっ骨レコード研究家として健啖を聞かせてくれた。ろっ骨レコードとは、ソ連と西側諸国の冷戦時代、禁止されていた西側の音楽をひそかにレントゲンフィルムに録音した音盤のこと。ディスク面に各部分の骨や内臓が映っていることから、日本では「ろっ骨レコード」と呼ばれている。当時、このレコードを作成・売買・保持することは法律違反、逮捕され強制労働という厳しい処置が待っていた。それでも「好きな音楽を聴きたい」という情熱に駆られた人々は、幾度とない逮捕や没収にもめげずにレコードを作成し、人々の要望に応えていた。雪解けからペレストロイカに向かう中でカセットテープが登場し、人々は自由に音楽を聴くことができるようになり、人々の抗いがたい希望をかなえてきたろっ骨レコードは役目を終えた。

 西野さんはろっ骨レコードの謎に迫るため、NHK特番「地球に好奇心」で、ジャズプレーヤーの坂田明さんをレポーターに起用、ソ連崩壊後のモスクワとペテルブルグでろっ骨レコードの関係者を追う番組を制作。その時の撮影秘話や番組断片を見ながら、知られざるろっ骨レコードの魅力を余すところなく語った。

 最後に自身のコレクションを持参の78回転プレーヤーで再生。ロシア革命で亡命し、試聴が禁止されていたピョートル・レシチェンコの歌やトリオ・ロスパンチョスの「ベサメムーチョ」を鑑賞。「聴いてはいけない音楽」を聴くスリルを体感した。

 第2部は、ロシアのアウトカーストの歌を主に唄う石橋幸さんと、アコーディオン演奏の後藤ミホコさんによるコンサート。石橋さんは、新宿ゴールデン街「ガルガンチュア」のママ。毎週ワンマンコンサートを開催しているとはいえ、80歳近いとは思えない石橋さんの力強い歌と声量に聴衆はびっくり。レシチェンコの歌やジプシー、娼婦の歌など、哀しい境遇ながらも生命力あふれる歌をロシア語で熱唱した。

※NHKでは、視聴者からの再放送リクエストを受け付け、ある程度の希望が集まると再放送に応じてくれるそうです(BS放送)。「地球に好奇心~追跡 幻の”ろっ骨レコード”~ロシア・冷戦下の青春~」再放送希望と書いてNHKにお送りください。

(滝沢)

 
タマーラさん タマーラさん

【音楽】「タマーラ、ロシアを歌う@銀座&歌声」

4月30日、銀座ライブハウス 月夜の仔猫

 Russian songs live タマーラ、ロシアを歌う@銀座&歌声と言うイベントに中垣内は行って来ました。

 場所は銀座ライブハウス 月夜の仔猫です。タマーラさんはロシアの歌の歌手で有名な方で中垣内は去年お知り合いになりました。

 ライブは全12曲でした。その内印象に残った曲は先ず「ステンカ・ラージン」この曲は昔、タマーラさんが日本の音楽の教科書に載っていたと仰っていましたがその事を知らない方も僅かにいらっしゃいました。ロシアの民謡の中ではポピュラーな曲で中垣内も好きです。

 また「ねえ、あなた」この曲は知りませんでしたが歌詞が面白かったです。

 さらに「かけおち」この曲はロシア歌謡ではないですがタマーラさんがロシア歌謡好きに合うと思って入れたと仰っていましたが女性が男性をまつ心を歌っていました。

 次は大御所ですが「百万本のバラ」です。この曲は多分1番有名だと思いますがタマーラさんが独自の訳詞でとても良かったです。

 更に「遠い道を」この曲は普通は「長い道を」ですがタマーラさんスタッフの方でロシア歌謡の訳詞に詳しい方がいらっしゃってその方の発案で「遠い道を」としたと言うお話でした。

 そして定番なのか最後にタマーラさんは「黒い瞳」をお歌いになりました。この曲も有名で中垣内が1番最初に気に行った曲です。中垣内が1989年にテレビロシア語講座で知りました。

 このご時世でロシア歌謡を聴くのは勇気のいる事かも知れませんが凄く良かったです。

 初めてのタマーラさんのロシア歌謡でしたが、最後に何故タマーラさんがこの「月夜の仔猫」で今回のライブを初めてなさったかタマーラさんに尋ねたところ「月夜の子猫」のオーナーから長年歌の指導を受けたゴンベさん(ロシア歌謡愛好家)と言う方が主催していた「ロシアを歌う会」を引き継いだそうです。そのゴンベさんは100歳まで歌うと仰っていたのに1年以上前にお亡くなりになったそうです。それでゴンベさんの代わり「月夜の子猫」のオーナーの方から依頼を受けたタマーラさんが「ロシアを歌う@銀座」を今年から主催することになったと言う事でした。

 タマーラさんありがとうございました。

(中垣内)

 
「破壊の自然史」 「破壊の自然史」
(C) Atoms & Void

「キエフ裁判」 「キエフ裁判」
(C) Atoms & Void

【映画】「セルゲイ・ロズニツァ<戦争と正義>2選」

 「ドンバス」(2018)「バビヤール」(2019)など、フィクションとアーカイヴ映像を駆使したドキュメンタリー作品を発表してきたウクライナのセルゲイ・ロズニツァ監督が、新たなドキュメンタリー作品を2本ひっさげて帰ってきた。

 今回公開されるのは「セルゲイ・ロズニツァ<戦争と正義>2選」と銘打たれた「破壊の自然史」(ドイツ=オランダ=リトアニア、2022年)「キエフ裁判」(オランダ=ウクライナ、2022年)。

 前者は第二次世界大戦中、連合国軍がドイツに行った「絨毯爆撃」の様子をアーカイヴ像で構成したもの。イギリス空軍だけで40万の爆撃機がドイツの131都市に100万トンの爆弾を投下し、60万近くの一般市民が犠牲となったといわれる。連合国軍がどのようにして爆撃機や爆弾を製造し、どの都市を標的とするかの作戦段階から爆撃後の悲惨な映像が、冷酷な視点でとらえられ、大量破壊の実態に迫る。敗戦国ドイツは長らく公の場で議論されなかった戦争の一面が描かれ、同じく空襲で大きな犠牲を出した敗戦国日本の対比も考察されよう(ちなみに、無差別爆撃の端緒は日本軍による重慶爆撃といわれている)。

 「キエフ裁判」は、独ソ戦において戦犯としてとらえられたドイツ人首謀者とナチスの協力者を断罪した国際軍事裁判のアーカイヴドキュメンタリー。

 戦犯たちは自らの戦争犯罪をある者は認め、ある者は否定する。そして残虐極まりない証言者たちの生々しい証言を聞かされてもなお、自分たちの行為は抗えなかったものと主張し続けた。かくして彼らは全員絞首刑となるが、その公開処刑場に集まったおびただしい群衆と、弁護人もなく断罪された彼らとの奇妙なアンバランスさに、残虐行為以上の戦慄を感じる作品。

 最後にロズニツァ監督よるコメントを抜粋する。

「他の人間を殺すことが、政治的あるいは経済的目標を達成するための普遍的な手段であり続けているのはなぜなのか。私の映画は戦争の本質を描いていると信じています」

 8月12日より渋谷・シアター・イメージフォーラムで2本同時公開。横浜ではジャック&ベティにて(時期未定)。

(文・滝沢 三佐子)

 
シャフナザーロフ映画祭チラシ

【映画】シャフナザーロフ監督作品『失われた帝国』を堪能する!

2012年度版別名『ソ連の愛』

 舞台は1973年のモスクワ、ブレジネフとベトナム戦争の時代。主人公の大学生セルゲイのリューダとのロマンス、友人ステパンとの三角関係、裏切りと失恋、幼馴染コスチャとの友情、母親の死、家族の絆、成熟した人々の愛をテーマにしています。

 70年代に英米で流行したディープ・パープルなどロックミュージックが使用され、若者特有の苛立ち、無鉄砲さ、自由への要求が表現されています。そして彼らが後悔しているレストランのシーンでは歌手アレクサンドル・ピャトコフがソ連歌謡を歌い、ラストでは叙情的な音楽で締めくくり心地良い余韻が残ります。

 母親のセルゲイへのクールな接し方に対して、祖父の孫への寛大で温かい言葉使いや眼差しはソ連の良き時代を代弁しているのでしょうか。誠実ですが間抜けな主人公セルゲイをアレクサンダー・リャピンが好演し、祖父役のアルメン・ジガルカニャンがしっとりとした演技で脇を固めています。

 「失われた帝国」とは考古学者の祖父がかつて学術調査した「風の都」古代ホレズム王国(ウズベキスタン)のことです。失意のセルゲイは「風の都」に行き、新しい自分を発見します。

 かつての広大なソ連は古代ホレズム王国のように滅びたけれど、我々には希望ある未来が待っているということなのでしょうか?

 セルゲイとリューダがデートで見る映画はガイダイ監督の「イヴァーン・ヴァシーリエヴィッチ、転職する」です。この映画の中でイワン雷帝が70年代のモスクワの街をベランダから眺めて、「なんと素晴らしい、美しい!」と感嘆するシーンがあります。これと同じ様なシーンが「失われた帝国」にもあります。窓からモスクワのビル群を眺めながらリューダがセルゲイに話します。「美しい景色だわ。私は夕方窓辺に立ちビル群を眺めるのが好きよ」と。このシーンについてはシャフナザーロフ監督のガイダイ監督作品へのオマージュだと思います。

 秀作「失われた帝国」は人々の交差した感情が淡々と表現され、見終わると安堵し、前向きに気持ちが明るくなります。興味のある方はどうぞYouTubeでご覧ください。

Киноконцерн Мосфильм (Любовь в СССР 2012) (Исчезнувшая империя 2007 30年後のシーン有り)

(中西)

 
シャフナザーロフ映画祭チラシ

【映画】シャフナザーロフ映画祭2023「満月の日」

6月23日~24日 於:浜離宮朝日ホール

(原題:День полнолуния、1998年、ロシア)

 映画撮影所に向かった男。次の作品のオファーを願い出たところ、監督やプロデューサーはテレビのサッカー観戦に夢中。自分の出自を尋ねられたところ、監督は食指を動かす…。

 モスクワのレストランで食事をする若い貴族と判事夫妻。ところが判事の妻はグラスを床に落とし出て行ってしまう。

 中央アジアを旅するプーシキン、マフィアの抗争、昔の女に言い寄る成金ビジネスマンなどなど、ロシア国内の様々な場所の様々な人々が織りなす群像劇。ラストシーンに満月が浮かび、それぞれの時代の満月の一日であったことが暗示される。

 作品は1998年公開だが、撮影は1997年。「モスクワ850周年」のトロリーバスが映り、オストジェンカ横丁やモスフィルムに通じるモスクワ川河川敷の通りなど、当時モスクワに滞在していた筆者には懐かしい風景の数々が現れ、タイムスリップの気分だった。

(滝沢)

 
「オレグ」 「オレグ」

「埋葬」 「埋葬」

「埋葬」 「埋葬」プロデューサートーク

【映画】EUフィルムデーズ2023

6月2日~30日、於:国立映画アーカイヴ

 EU加盟国の在日大使館・文化機関が提供する映像作品を一堂に会し、上映するEUフィルムデーズ。今年で開催20周年を迎えた。さまざまなジャンルの作品をテーマ別に網羅し、上映する本映画祭は日本初公開作品も多く一見に値する。今年は加盟国候補となったウクライナの作品が2本特別上映され好評を得た。なお、この特集上映は京都・広島・福岡を巡回する。今年上映されたユーラシア諸国の作品は以下のとおり。

★「ルクセンブルク、ルクセンブルク」

(原題:Luxemburg, Luxemburg、アントニオ・ルキッチ監督、20022年、ウクライナ)

 幼いころ父親が家を出てしまった双子の兄弟コーリャとヴァーシャ。背が低くがっちりした体格で、裏稼業で要領のいいコーリャと妻子持ちでまじめな警察官ヴァーシャは、お互い助け合いながら生きている。ある日、二人のもとに、父親がルクセンブルグで入院したとの知らせが。父に会いに行きたいというコーリャ。ヴァーシャは反対したが、結局追う警察官の職務を捨てて父の残した古い車で父を訪ねて旅に出ることに。ときにドタバタ、ときに切ない二人の旅路。最近のウクライナ映画は、戦争やソ連時代の負の遺産に関連した作品が多かっただけに、久々のエンターテイメントに満ち溢れた作品だった。

★「ヴァディムの旅」

(原題:My Thoughts are Silent, アントニオ・ルキッチ監督、2019年、ウクライナ)【参考上映】 

 ヴァディムは周囲の音を生録音をしてクライアントの要望の「音」を作るサウンドエンジニア。彼は身長2メートルを超えるヒョロヒョロの体形で、前述「ルクセンブルク、ルクセンブルク」の双子兄弟とは正反対の体格をしている。ある日、彼は外国からウクライナに生息しているある生物の出す音を受注する。その音を録音するために帰省した彼は、ひょんなことから反目しているタクシー運転手の母と田舎を旅することになる。そして、「音」を求めてすぎた彼は、うっかり国境線を越えてモルドヴァ領に入り込んでしまった。こちらもユーモアとペーソスにあふれており、「ルクセンブルク、ルクセンブルク」とともに、家族の在り方を考えさせられる作品だ。

★「グラット」

(原題:Kratt、ラスムス・メリヴォー監督、2021年、エストニア)

 夏休み、田舎のおばあちゃんちに預けられた姉ミアと弟ケヴィン。そこはスマホもネットもない生活。退屈しきった毎日だったが、田舎で知り合ったある人物から、なんでもいうことを聞いてくれる精霊グラットのことを聞かされ、夢中になってしまう。そのためには政令を悪魔の契約をしなければならないのだが…。今年は大人も手に汗握る子どもが主人公の作品。

★「オレグ」

(原題:Oleg、ユリス・クルスィエティス監督、2019年、ラトビア)

 EUフィルムデーズ2021で紹介された作品。青年オレグはラトビアからベルギーへ出稼ぎに出て食肉工場で働き始める。しかし不法滞在の彼の立場は弱く、同僚に裏切られて失職。

 起死回生をめざすが地元のマフィアの餌食にされていく。移民と難民、および外国人労働者はEU共通のテーマだけに、この作品の持つ意味は重い。

★「埋葬」

(原題:Kapinynas/Burial、エミリヤ・シュカルヌリーテ監督、2022年、リトアニア=ノルウェー、2022年)

 チェルノブイリ発電所と同型のイグナリナ原子力発電所。そこはすでに廃炉となっており、廃墟と化している。制御室にニシキヘビがとぐろを巻き、放射線を怪しく放つ炉心や地下貯蔵施設の通路が背筋を凍らせる。エルトリアの遺跡に眠る埋没都市を絡めて、人工物の無言の埋葬が、無機質な電子音楽のみ、語りなしで描かれる。ドキュメンタリーではあるがアーティスティックな作品。

 上映後、プロデューサーのダグネ・ヴィルジュナイテ氏のトークが開催され、美術畑での監督作品をプロデュースするやりがいや苦労、登場するヘビのイメージについて話をされた。(文・滝沢 三佐子)

(文・滝沢 三佐子)

 
「世界のはしっこ、小さな教室」 (C) Winds - France 2 Cinema - Daisy G. Nichols Productions LLC - Chapka - Vendome Production

【映画】「世界のはしっこ、小さな教室」

 「世界の果ての通学路:(2012)の制作チームが、今度は世界の果ての先生に注目したドキュメンタリー。

 登場するのはブルキナファソの辺鄙な村、シベリア・エヴェンキ族の遊牧キャンプ地、そしてバングラデシュの農村に赴任した3人の先生たち。

 どんなに生活が困難な地域でも、3人の先生たちは「子どもたちには明るい未来がある」と信じる道を歩み続ける。

 7月21日、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開。

(文・滝沢 三佐子)

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駐日モルドバ大使ご子息 駐日モルドバ大使と料理学校生徒 駐日モルドバ大使ご一家を囲んで

駐日モルドバ大使ご一家との料理教室

 6月11日に東京都葛飾区亀有にあるモルドバ料理店「NOROC」にて料理教室が開催された。

 今回のテーマは和食ということで若手寿司職人の育成に取り組んでおられる椎名秀龍(しいなしゅうろん)氏が講師として招かれ、特別ゲストとしてドゥミトル・ソコラン駐日モルドバ共和国大使ご家族が参加された。

 当日は津本式という血抜き技法を学ばれたと同時に津本式血抜きの公認技師でもあるさくまりょうすけ氏が市場で仕入れてくださった新鮮な魚を捌くことから始まり、現在椎名氏から寿司作りを学んでいる料理学校の生徒2名も指導に加わり各テーブルで参加者が握り寿司や巻き寿司を調理し、ご厚意で振る舞われたモルドバワインや日本酒を参加者全員で堪能しながら進行するという和やかな雰囲気に包まれた料理教室となった。

 駐日モルドバ大使ご夫妻のご子息は日頃からご自身で料理をなさるとお話しされていた通り包丁の扱いにとても慣れているご様子で、サーモンを調理する際に講師から筋に対して平行に包丁を当てて切るようにとの指導にも容易に対応し楽しんでおられた。

 今回のように貴重な交流の場を積極的に設けてくださり日頃から日本モルドバ間の友好関係を築くことに尽力しておられるNOROCオーナーの倉田ご夫妻へ感謝の意を表したい。

 同店では今後も不定期で料理教室が開催されるとのことなので、興味がある方は是非ともお店へ足を運び食事をされてお話を伺ってみるといいだろう。

 もし運良く駐日モルドバ大使ご家族が参加される料理教室でご家族にお目にかかることがあればそのお人柄に魅了されることは間違いない。

★店舗情報
「NOROC(ノーロック)」東欧モルドバ料理のお店
東京都葛飾区亀有5丁目19-2 2階
電話番号:03-5856-2454
営業時間:水曜日~日曜日 17時~23時
定休日:月曜日、火曜日

(岩下)

 

ロシアの「ひまわり」

 ロシア語の「ミール」は、「世界」という意味と、「平和」という意味があるとは、何とも皮肉だなぁ…と私は思います。

 また、日本語の「魅入る」は、多く、「魅入られる」という形で使われ、それは、「とりつかれる」「魂が奪われる」という意味があります。辞書に用例として、「悪魔に魅入られる」と載っています。私は、何だか、どこかの大統領を思わせるようで意味深だと感じました。

 それから、原産地は北アメリカなのですが、ロシアの花「ひまわり」。その「ひまわり」は、太陽に向かって向きを変えること…が、よく知られていますが、実はそれは、つぼみのときだけで、開花すると、その後はずっと東を向いたまま動かなくなるそうです。

 また、花が咲き終わった後は下を向いてしまい、もう二度と上を向かなくなりますね。私は、それを見ると「力尽きて、ぐったりしている」のだと思いましたが、あれは、種の重みでうなだれている…そうなのです。あれだけ多くの種をつければねぇ。そりゃあ、重いでしょう。

 さて、現在のロシアは、太陽の光を求めて自らの向きを変えている、「つぼみのひまわり」でしょうか。それとも、東をむいたまま、もう動こうとしない「開花したひまわり」なのでしょうか。あるいは、「種をつけたひまわり」のように、自らの重みに耐えきれず下を向いたまま…なのでしょうか。私は、「つぼみのひまわり」であってほしい…と思います。

 大自然も人類も、「太陽の光」によって生かされ、育まれてきました。「天の恵み」が、「平和の光」が、どうか世界中に降り注ぎますように。私はそう願って、ロシア語の勉強をします。

(とくなが なつみ)

 

★ お譲りします ★

 本紙6月号にて、横浜ロシア語センター講師で元ロシア語通訳者の野口福美先生が昔仕事で使われた技術辞書類などをお譲りする旨掲載したところ、多くの方から反響をいただき、2点を残して全て譲渡済みとなりました。

 下記の辞典と用語集は引き続き譲渡先募集中です。

Англо-русский словарь по химии и переработке нефти / Москва ≪Русский язык≫ 1979 г. 英露化学・製油辞典 譲渡済(2023.7.15)

Русско-английский словарь нефтяных и газовых терминов / Price Waterhouse 露英石油ガス用語集 譲渡済(2023.7.15)

 神奈川県日本ユーラシア協会事務所へ取りに来られる方、または横浜市中区からの送料を着払いで負担してくださる方に、お申し込み先着順にお譲りします。

 ご希望の方は、氏名と品名、送付希望の場合は宛先の住所と電話番号も当協会事務局までメールでお知らせください。
 E-Mail: eurask2@hotmail.co.jp

 
ハルキウの刺繍キット
ハルキウの刺繍キット
ヴィシヴァンカの刺繍
ソ連のアニメに出てくる子マンモス

 写真1枚目と2枚目はハルキウの刺繍キットを使ったものでウクライナ雑貨のオンライン店舗VINOKさんで購入しました。

 それ以降はネットでウクライナ語の≪вишивка схема≫やロシア語の≪вышивка схема≫などで検索すると有料無料いろんな刺繍サイトが出てくるので、そこから図案をダウンロードして使っています。写真3枚目はヴィシヴァンカの刺繍をコースター用に抜き出したもので、4枚目は以前協会で貸していただいたソ連のアニメに出てくる子マンモスです。

 ロシアやウクライナに関連した刺繍を作り人にプレゼントしたりSNSに載せたりしています。これを見た友人達がいつもよりニュースなどに目を止めるきっかけになればいいなと思っています。

(長山)

 

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中世ロシア興亡史講義 ~歴代君主の素顔とその真実~ 862-1598
第205回 アフマト汗、ルーシ遠征を試みる

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