NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会

夏休みのお知らせ

2023年8月6日(日)~20日(日)は神奈川県日本ユーラシア協会の夏休みです。
この間、事務局、各種教室、物販等は休みになります。ご了承ください。

 

海軍マカロニと陸軍カーシャの簡単料理会

 10月最初の日曜日、簡単料理会を開催します。本格的な料理教室ではなく、誰でも簡単に作れるものを参加者でつくって食べようという気軽な集いです。

 今までにも何回か作った「海軍マカロニ」に加えて、今回はコンビーフを使った陸軍風の蕎麦の実「カーシャ」も。旧ソ連風ミリメシ(戦闘糧食)に興味のある方歓迎します。

 2品の料理で食欲の秋を満喫しましょう。

日時:2023年10月1日(日)12時~
会場:横浜平和と労働会館5階教室
参加費:一般1000円、会員800円(食材・資料代実費)
定員:10名
※食材準備のため、必ず前日までに予約をお願いいたします。

 

ロシアに行けないストレスをロシア語で言いましょう!
~ロシア語・日本語交流会 9月10日開催~

 今秋の「ロシア語日本語交流会」は9月10日(日)18:00からです。
 今回のテーマは「日本とロシアの旅行に行きたい街」です。
 これまでの、ウリヤノフスクとウラジオストクに加えて、北極圏のムルマンスクからも参加します。
 ムルマンスクでは、神奈川から移住した福島留美さんが日本語教室を開講しており、その生徒さんが参加予定です。
 日本側も、負けずに参加しましょう!
 ご連絡を事務局でお待ちしています。

 

『8・15』戦争と平和を考えるDVD鑑賞会 8月20日開催

 今年も『8・15』がやってきます。毎年、この時期には戦争と平和を考える作品を取り上げています。

 今回は『氷雪の門』を鑑賞します。「北のひめゆり」と言われた樺太(現サハリン)の真岡郵便局の悲劇を描写した作品です。1945年8月20日、昭和天皇の玉音放送により戦争が終結した後の戦闘で起きたことでした。降伏や投稿を認めない日本軍の影響で、逃げ場を失い、郵便局の女性交換手9名が自決したのです。これだけでなく、病院の看護婦の集団自決や逃げる一般市民への爆撃など、沖縄の地上戦と同じか、それ以上の悲惨な出来事が樺太の戦闘でした。

 神奈川県日本ユーラシア協会では、2018年・2019年とサハリンツアーを企画・実施しました。また、今年は4月に北方領土問題と日ロ関係・平和を考える旅を実施し、5月には「サハリン(旧:南樺太)残留日本人を知る会」学習会を開催しました。その流れに続く鑑賞会です。是非、ご参加を。

日時:2023年8月20日(日)14時~※奇しくも78年前のこの日に悲劇が起きました。
会場:横浜平和と労働会館5階 当協会教室
参加費:500円(黒パン・紅茶付)

PAGE TOP

今月は休載いたします。

PAGE TOP

夏休みのお知らせ

8月6日(日)~20日(日)は神奈川県日本ユーラシア協会の夏休みのため、各種教室および事務局も休業します。
休み中にいただいたお問い合わせ・お申し込み等への返信は、休み明けに順次行います。何卒ご了承ください。

 

ロシア語秋期集中講座「動詞と前置詞の支配」

 2023年春に続いての集中講座。今回は造格を中心に学びます。中級文法を既にある程度学んだ方が対象です。
 表現のニュアンスを理解し、動詞だけでなく動詞と前置詞や名詞の格変化を必ずセットにして覚えることで、ロシア語らしい自然な伝え方が出来るようになるでしょう。

日程:9月25日(月)、10月2日(月)時間:19:30~21:00 全2回
場所:横浜ロシア語センター教室/オンライン(Zoom)併用可
講師:須藤アレキサンドラ
受講料:一般7,700円、会員6,700円(全2回分、教材費込み)
お申し込み締め切り:9月19日(火)

※詳細は追ってホームページに掲載する予定です。

 

Курсы японского языка

Всех желающих изучать японский язык мы приглашаем на индивидуальные курсы японского языка при обществе ≪Япония-Евразия≫ префектуры Канагава.

Наши курсы ориентированы в первую очередь на русскоговорящих, проживающих в Японии, поэтому большинство наших преподавателей владеют русским языком на высоком уровне. Возможны аудиторные и онлайн-уроки. Мы внимательно выслушаем Ваши пожелания и подберём оптимальную учебную программу.

За справкой обращайтесь по электронному адресу eurask2@hotmail.co.jp или в офис общества ≪Япония-Евразия≫ префектуры Канагава (просьба заранее сообщить о своём визите по электронной почте).

日本語教室のご案内

 ロシア語を母語とする方を対象に、日常会話や日本語能力検定試験対策など、受講生の目的やレベルに合わせて個人レッスンで丁寧にお教えします。
 講師はロシア語を交えて、または日本語のみの直接法で授業を行います。
 詳しくはホームページ(日本語版・ロシア語版完備)をごらんください。

 

ロシア民族楽器 バラライカ&ドムラ教室

 ロシア民族楽器を本格的に習える当教室は原則毎月2回土曜日にレッスンを行っています。8月のレッスンは都合により26日の1回のみとなります。

 レッスンでは基本奏法、譜読みから音楽理論、デュオから基本的なアンサンブルまで学べます。日本ではまだまだ希少なロシアの民族楽器を奏でてみませんか?

時間:14:00~17:45の間、各45分
講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館6階会議室

PAGE TOP

組織・財政状況

今月は休載いたします。

PAGE TOP

今月は休載いたします。

PAGE TOP

ロシア・トップ10

【芸能】Русская Десятка ロシア・トップ10

 プリゴジンの乱後1米ドル=90ルーブル台をつけ、ルーブル安で低迷中のロシアから、2023年7月第3-4週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中5曲が新曲!

 モスクワ出身で2018年から音楽活動開始している現在21歳の若きラッパー、マカンの新曲≪Asphalt 8≫(アスファルト8)が初登場10位を獲得。

 ニレット、マイアミ、スヴィクという話題性がある3人がタッグを組んでリリースした≪Не вспоминай≫(思い出さないで)が7位にランクイン。

 先月アンナ・アスティの≪Верю в тебя≫(貴方を信じる)が3位ランクインでしたが、TOP10圏外に。その代わり今月は新曲≪Царица≫(女王)が5位にランクイン。

 モスクワ大出身のエリートラッパー・モトが、今旬のデュオ・アルティク・アスティとコラボレートした新曲≪За горизонт≫(地平線の向こうへ)が初登場4位にランクイン。

 若きロシア女性の憧れそしてファッションリーダー、クライムブレリの新曲≪Мне так повезло≫(私はとってもツイている)が初登場2位に。そして先月まで首位だった≪Иначе всё это зря≫(さもなくば全て無駄に)は6位で健闘しています。

 4ヶ月連続首位を守ったクライムブレリのヒット曲を6位に転落させ首位になったのは、フィラトフ&カラスの≪Мимо меня≫(私の傍に)。再奪取でした。現在ロシアは夏季休暇真っ最中。旅行先で弾けている人、世界情勢で思うように海外旅行がままならなく悶々としている人等々から圧倒的に支持されているようで、今ラジオ&TVでよく流れています。

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2023年7月14日~20日/MOPA)
画像は https://vk.com より

※全文、チャート、PV視聴はユーラシア芸能ブログでどうぞ。

 
田中正也氏(中央)と横浜ファンクラブ 田中正也氏(中央)と横浜ファンクラブ

【音楽】~ラフマニノフ生誕150年に寄せて~
田中正也&吉永哲道 ジョイントリサイタル

 晝間は、地球温暖化による異常気象で灼熱地獄の様相を呈している日差しも、夕方にはその暑さが少し和らぎ、過ごしやすくなった7月21日夕刻、一年ぶりとなる田中正也&吉永哲道のジョイントリサイタルを、ヤマハ銀座のコンサートサロンに聞きに出かけました。

 今回は、20世紀の大ピアニストで優れた作曲家でもあった、ラフマニノフの生誕150年を記念してのコンサートとなり、プログラムは、当然オール・ラフマニノフとなりました。演奏するのは、ロシア物を自家薬籠中の物としている2人ですから、期待しない方がおかしいといえます。さらには、音響効果の良くないホールを補うわけではないでしょうが、2台のピアノは同じCFX、前回は1台がセミコンであったので、音色が揃っていないこともあり不満を抱いての帰宅でしたが、今回はそれがないのでほっとしました。ホールの心遣いには感謝申し上げます。

 前半のプログラムは、二人の連弾で始まりました。低音部寄りに田中正也、高音部側に吉永哲道が座り、ラフマニノフが先輩であるチャイコフスキーのバレー音楽“眠れる森の美女”から“ワルツ“をピアノ連弾用に編曲した作品が一曲目です。ホールの音響効果がいま一つなので、少し気になる金属臭が感じられました。しかし、そこはロシア作品のスペシャリスト2人です、元の曲が素敵なうえにピアノを知り尽くしたラフマニノフの編曲とも相成って、楽しく聞くことが出来ました。今日は幸先が良い、などと気分よく聞き始めました。

 2曲目は吉永のソロで、ラフマニノフの初期の作品で、有名な“鐘”と同時期に書かれたもので、4つの小品(1.ロマンス、2.プレリュード、3.メロディー、4.ガヴォット)から成っています。

 前半のトリを取るのは、田中による“ピアノソナタ第2番”Op.36です。

 曲自体は私の好みとは異なりますが、ピアノはこれだけの音が出せるのだよ、音域はこんなに広いんだよ、音のゴージャスとはこういうもんなんだよ、遊びもあるよ…ピアニストがこの曲にふさわしいテクニックを持っていればこんな風に弾き、聞こえるんだよ、とラフマニノフが観客に訴えたい作品の様に私は受け取りました。

 休憩をはさみ、後半はラフマニノフ自身が作曲した歌曲をピアノ用に編曲した作品、“ひなぎく”と“リラ(ライラック)の花”です。

 吉永のピアノで“ひなぎく”Op.38-3が流れます。元の曲は残念ながら聞いていないのですが、音のアーチをピアノの音を紡いで包みこむような優しい調べが聞こえてきました。元の歌曲に思いを馳せながら楽しみました。田中の弾く“リラの花”は、イメージとは少し違っていました。元からピアノのために書かれたようなピアニスティックな作品と聞きました。ドイツを中心としたヨーロッパ人にとって、ライラックの花はとても大事で身近な花なのでしょう、色々な作曲家がこの名をつけた作品を書いていることからもうかがい知れます。

 ラストは、田中が第一ピアノ、吉永が第二ピアノを受け持ち、2台のピアノのための組曲第一番 Op.5「幻想的絵画」です。1.舟歌(レールモントフ)~ヴェネツィアの舟歌が呼び覚ます失われた愛の記憶~ 2.夜と愛と(バイロン)~燃え立つ愛の情熱がナイチンゲールの歌声によって叙情的かつ写実的に描写される~ 3.涙(チュッチェフ)~少年時代を過ごしたノブゴロドの聖ソフィア寺院の鐘の音が死の嘆きを表現する~ 4.復活祭(ホミャコフ)~壮大な鐘の響きを背景に正教聖歌「キリストは起てり」が死に対する生の勝利を讃える~

 標題?と実際に聞いた感じでは、1曲目と2曲目はかなり印象が違うように感じたが舟歌は、ピアノが会話しているように進められている、と聞こえた。若々しく、初々しいピアノが聞けた。2曲目はハーモニーが美しい。3曲目と4曲目は、ロシア正教の教会の鐘の音が主題の様に聞くことが出来、ローマンカトリックの教会の鐘とは違った、倍音が豊かな鐘の音がクレッシェンドしたりディミニエンドしたりと飽きる間も感じられない気分を満喫した。第4局は同じ鐘の音でも激しい表現となり、クレッシェンドしたものが、フォルテシモ(fffffぐらい)で鳴り響く想いで一杯でした。ラフマニノフらしくピアノの機能を120%発揮するものに仕上がったと思いました。

 アンコール一曲目は“鐘”。勿論2台のピアノが教会の倍音を伴った鐘を表現しているかのよう。芸術的な爆発の後に静寂が支配するような印象を受けた。そして田中正也の十八番、リストの“ラ・カンパネラ”いつ聞いても少しずつ曲の深みを増しているように聞こえる。ただ、残念なことにはホールに遠慮しているように弾いた、と聞こえたことです。

 吉永は幻想曲 Op.3から4番“道化師”をえらんで、ゴージャスなラフマニノフらしさいっぱいの演奏をしてくれた。2人に“ブラボー”。来年はどうなるかな?

(金子)

 
ピアノのパポヤンとチェロのステパノフ ピアノのパポヤンとチェロのステパノフ

【音楽】チャイコフスキーコンクール受賞者たちの演奏会となった
ロシア文化フェスティバルのオープニングコンサート

 ロシアの作曲家S. V.ラフマニノフと世界的に有名な歌手F. I.シャリアピンの生誕150周年を記念したコンサートが紀尾井ホール(JR「四ツ谷」駅近く)で、7月28日に開催されました。彼らは共に1873年生まれで素晴らしい友達でした。 そして、コンサートにはロシアと日本のミュージシャンや歌手が参加しました。 出演者たちは非常に若く(21世紀に生まれた)、信じられないほど才能のある人たちでした。

 一番目はピアニストの日高志野のS. V.ラフマニノフの作品「イタリアのポルカ」と「コレッリの主題による変奏曲」です。「イタリアのポルカ」は、1906年にイタリアでの休暇中に作曲されました。セルゲイ・ヴァシリエヴィッチが家族と一緒に住んでいたダーチャに、イタリア人女性が小さなオルガンを持っていたロバを連れて来ることがよくありました。女性がオルガンを始め、陽気なポルカが鳴りました。セルゲイ・ヴァシリエヴィッチはそれをとても気に入ったので、録音してからピアノで書き写しました。

 続いて、バリトンのヴィタリー・ユシュマノフが、 プーシキンの詩「ジプシー」に基づいてセルゲイ・ラフマニノフが19歳で書いたオペラ「アレコ」の「アレコのカヴァティーナ」を歌います。 カヴァティーナでは、このオペラの主人公であるアレコがかつての幸せを思い出し、最愛のゼンフィラが彼をだましたことに苦しんでいます。2番目の歌曲は、A. G.ルビンシテインのオペラ「悪魔」の「悪魔のアリア」です。 このオペラはミハイル・レールモントフによる同名の詩に基づいており、 コーカサスの山が舞台です。

 コンサートは続き、チェリストのヴァシリー・ステパノフ(チャイコフスキーコンクール6位)とピアニストのイリヤ・パポヤン(同3位)がステージに上がり、セルゲイ・ラフマニノフの作品「ヴォカリーズ」が鳴り響きました。 この曲には、さまざまな楽器のための多くの転写があり、そのうちの1つを聞けてうれしかったです。

 次に、バス歌手の岸本力とピアニストの村上源一郎が登壇。 彼は「ノミの歌」を歌いました。曲は作曲家M.ムソルグスキーによって書かれ、詩は「ファウスト」でドイツの詩人ゲーテによって書かれました。 岸本力が歌う2番目の曲品は、ムソルグスキーのオペラ「ボリス・ゴドゥノフ」からの抜粋でした。「彼の息子への別れとゴドゥノフの死」このオペラは、A. S.プーシキンによって書かれた悲劇とロシア国家の歴史に基づいています。舞台は1598-1605です。皇帝イワン・ザ・テリブルの息子、フョードルの死後、2人の候補者が王位を主張したが、ボリス・ゴドゥノフは、勝ち抜き7年間ロシアを統治しました。彼はロシアのために多くの有用なことをしましたが、多くの敵も持っていました。彼は53歳で亡くなり、すぐに息子も殺されました。

 コンサートの次のパフォーマーは、オーボエ奏者のフョードル・オスヴェル(同2位)と、ピアノのイリヤ・パポヤンでした。 彼らは非常に技術的に複雑で、高いスキルを必要とする「熊蜂の飛行」を演奏しました。この曲はピッチと音の範囲が急速に変化して実行されるため、妙技の古典的な指標となっています。

 ラフマニノフの作品「前奏曲 Op.32第5番 ト長調」と「絵画的練習曲 Op.39 第9番 ニ長調」を演奏したイリヤ・パポヤンのソロ演奏は、とても明るく印象的でした。 ラフマニノフはロシアから出発する直前にこの曲を書きました。 演奏にはピアニストの妙技を必要とし、非常に人気があります。 感情のイメージ、多様性、不安、カラフルさは、いわば、当時の差し迫った嵐の雰囲気を感じさせます。

 コンサートの最後は、木島麻由さん(ヴァイオリン)と坂野逸子さん(ピアノ)です。シェイクスピアの同名の悲劇に基づいたセルゲイ・プロコフィエフのバレエ「ロミオとジュリエット」です。 バレエは1934年に書かれ、初演は1938年にチェコスロバキア(ブルノ)でのみ行われました。 ほとんどのバレエダンサーは、演奏が難しく、劇場には適さないと考えて、当初この音楽を拒否しました。 このバレエはしばしば交響曲と呼ばれ、 とても複雑で美しいです。しかし、お二人はこの複雑な作品の革新的な解釈に見事に対処しました。

(コンドラシキナ)

 
「ボタン穴から見た戦争」
「ボタン穴から見た戦争」

【演劇】劇団俳優座 特別公演 戦争とは…Vol.29「ボタン穴から見た戦争」

7月14日 於:六本木・俳優座スタジオ

 シリーズ「戦争とは…」は、1995年から始まった俳優座の有志による朗読公演劇だったが、このたび劇団の正式演目として朗読から劇公演へと刷新された。第29回目となる本シリーズでは、ベラルーシのノーベル文学賞受賞作家、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの『ボタン穴から見た戦争』を舞台化。

 本作は独ソ戦時当時、ベラルーシで子ども時代を過ごした人々から、戦争の記憶を聞き書きしたもの。戦禍を生き延びた彼らの口は重く、大人の回想とは異なり断片的で時系列でないものや、ほかの記憶と混成したものも多い。だが確かに戦争を経験した子どもたちは存在したのである。アレクシエーヴィチは彼らに体験を伝え残すことの意義を根気強く説く。

 演じるのは戦争体験のある岩崎加根子、中村たつ、阿部百合子といった90代の女優陣から20代の若手俳優たちまで幅広い。基本的にモノローグだが、一部再現風にダイアローグも挟み、子どもたちの記憶を舞台上に再現することを試みた。今回は101の証言から13人の記憶がセレクトされている。

 親がドイツ兵にむごい殺され方をした子ども、家族と離れ離れになってしまい少年兵に志願した子ども、戦後に発症したPTSDの苦しみ…。聞き手役のアレクシエーヴィチは、子どもたちをやさしく見守るように、彼らの話を聞いている。舞台上で演奏されるキーボードと歌の調べが子どもたちの魂に寄り添う。アレクシエーヴィチの作品を舞台化する場合、どうしても収録物から選んで構成する手法を取らざるを得ないのだが、セレクトされるエピソードによって、この舞台は大きく変わる可能性を秘めている。

 また、この舞台では「子どもたちから子供時代を奪わないために」をアピールする手話と、ウクライナで抵抗のテーマとして歌われる「野原の赤いカリーナ」が使われている。今も昔も、戦争による最大の被害者は子どもたち。沈黙を強要される子どもたちのために、このような舞台が今後も続くことを願う。

(文・滝沢 三佐子/撮影・古元 道広)

 
「ある馬の物語」
「ある馬の物語」

【演劇】音楽劇「ある馬の物語」

6月21日 於:世田谷パブリックシアター

 トルストイの小説「ホルストメール」を原作とした舞台。世界初演は1975年、レニングラード・マールイ・ドラマ劇場(BDT)。1983年にBDTは来日公演を果たしており、そのさい「ある馬の物語」が上演されたそうだ。今回は、マルク・ロゾフスキーの脚本に基づき、世田谷パブリックシアター芸術監督の白井晃が台本・演出を担当したオールジャパン版。

 工事現場で一人の瀕死の男(成河)が周囲の若者にいたぶられる。やがて口を開き「ある年老いた馬の物語」、ホルストメールの生涯を語り始めた。

 ホルストメール(鞭+去勢の意味)は、「まだら模様」に生まれついたがために、価値のない馬と見なされて育てられた。彼は美しい雌馬、ヴァゾブリハ(音月桂)に恋をするが、血統が傷つくのを危惧した主人は、ホルストメールを去勢する。

 ある日、厩舎に凛々しい公爵(別所哲也)がやってきた。厩舎の主人は見た目の美しい馬をすすめたが、公爵は一目でホルストメールの素晴らしさを見抜き安価な値段で買い取った。公爵とホルストメールの生活は、所有者と所有物という関係だったが彼にとって唯一の輝かしい幸せな日々だった。ところが、公爵の気まぐれからホルストメールは競馬に出走することに。その競馬場で公爵の愛人マチエ(音月桂)は、若く美しい将校と出奔する。公爵は気が動転し、ホルストメールを橇に繋ぎ激しく鞭打ち走らせた。

 ボロボロになったホルストメールは捨てられて元の厩舎に戻り、年老いたヴァゾブリハに再会。そして没落した公爵も、厩舎を再び訪れるのだがホルストメールに気づかず、彼は殺処分へ。

 舞台上の俳優たちは、馬の皮のような衣装をまとい、馬のしぐさを絶えず行い、ケンタウルスが舞台上に集合しているかのようだ。別の瞬間、俳優たちは人間を演じる。その自在な変わり身は、生の舞台とは思えない。4本の大小サキソフォンが音楽を奏でる。馬のいななきを連想させるサックスの絡み合いは絶妙だ。俳優たちの歌も、ミュージカルとは違う音楽の絡ませ方で、セリフと音楽が地続きとなり心地よい。

 ホルストメールのセリフ「長生きしたのは俺の罪だ」には高齢化社会の現在において、深刻な印象をもった。本来なら祝福されるべき長寿なのに、人間によって生き様が左右されてきたホルストメールの生涯。ホルストメールは外見の悪さのため、ほかの馬より悲劇的な生涯を送ることになってしまった。彼は俊足という才能を「所有」していたにもかかわらず。人間の所有欲は底なしだ。ホルストメールを演じた成河は、馬としての怯え・とまどい・喜びを身体じゅうから発散させていた。

 トルストイが世に問うた所有と人の幸福は、それが平和の維持にどう影響するのかということに、今回の舞台で昇華されたと感じる。

(文・滝沢 三佐子/撮影・細野 晋司)

PAGE TOP

トカナ&ママリーガ トカナ&ママリーガ

サルマーレ サルマーレ

キングレバー キングレバー

ヌクショアレ ヌクショアレ

モルドバ料理店「NOROC」訪問記

 協会誌7月号掲載の岩下さんの記事を拝読し、NOROC(ノーロック)での楽しい時間を思い出しました。

 昨年、協会員有志から日本唯一のモルドバ料理店が有ることを教えていただき、亀有は横浜から距離がありますが遠足気分で訪問してきました。井村理事以下5名でお伺いです。

 私は料理の分布に詳しく無いのですが、ロシアやジョージア料理をモルドバ風にアレンジした感じです。東欧諸国の料理は互いに影響を与えあい、独自の発展を遂げているのかもしれません。

 このような当方の下らない分析よりも、まずは召し上がってみていただければと思います。

 最初にロビオっぽい豆と、具材がしっかりしたブリヌイ的お通しをいただきました。私たちはワインも大好きですので、ボトルで注文です。次はトカナ&ママリーガや立派な腸詰め、ミモザサラダをお願いしました。サーロやサルマーレ(долмаに似ています)も非常に美味しくて。

 この時点で私たちに福音が訪れます。関東ローカルのTV局スタッフさんが、取材に協力するなら人気メニューを数皿振舞ってくださるとのこと。顔出し可能な2名のお蔭で、私たちもご相伴に与ることが出来ました。

 特筆すべき事は、奢っていただいた数皿の中にレバーメインの一品がありました。こちらは好き嫌いが分かれる食材だと思いますが、本当にお勧めの料理です。レバーが苦手な参加者も喜んだ一品、「キングレバー」を、是非お試しください。デザートのヌクショアレ(орешкиに似ています)やチーズケーキも素敵でした。

 岩下さんご記載の料理教室にも非常に興味があります。そして、皆さまが葛飾に行かれることがありましたら、ご飯の立ち寄り先としても強力にお勧めする場所です。その際、参加者が多めの場合には事前予約をお入れしたほうがスムーズに着席できます。皆さまが楽しい時間をNOROCさんで過ごせますように。

#本紙7月号・岩下さんの記事

#NOROCさん公式ホームページ

(板垣)

 

プロ野球の球団名?

 日本人で、「8月15日は何の日?」と聞かれれば、「終戦記念日」と答えられる方が多いのではないでしょうか。今でも一般的には、そう言われることが多いですが、近年、マスコミでは「終戦記念日」という言葉は使わず、「終戦の日」という言葉を使っているそうです。その理由は、「敗戦は記念すべき日ではないから」…だとか。なるほど。

 さて、今回は、昔と今では言い方が変わった言葉を少々ご紹介します。日本ユーラシア協会の会員さんには「今さら」ですが、最近入会されたばかりの方や、まだご存知でない方の為に。旧ソ連の一部で、現在は4ヶ国にまたがる地域で、以前は「コーカサス」と呼ばれていた地方があります。それが、英語読みだった「コーカサス」から、現在は、現地語の発音に近い「カフカス」に。「カフカス」とは、「大きな山岳」という意味で、東西に大カフカス山脈が走っています。その「カフカス地方」の国のひとつで、かつてはロシア語の「グルジア」と呼ばれていた国は、2008年から、英語名「ジョージア」へ変更を各国に要請。日本は2015年になって「ジョージア」に正式呼称を変更しました。

 このように、英語読みからロシア語・現地語に変更したところもあれば、「ロシア語はイヤよ!」と、英語読みに変更したところもあり、ときの政治や歴史の流れによって、いろいろ変わるものなのですね。ちなみに、日本とロシアの表記を略すとき、昔は「日魯」。それが「日露」になり、現在では、ソ連崩壊後のロシアを「ロ」と略しているそうです。ただ、ロシア革命前の帝政ロシアは「露」で表す為、「日露戦争」では「露」を使うとか。

 今後、「日ロ」書いてあるのを見られても、プロ野球パリーグの、あの球団とあの球団の略ではないな…と、注意してみてくださいね。

(とくなが なつみ)

 

モスクワ便り (6) モスクワで思ったこと

モスクワの道路 モスクワの道路

メトロのエスカレーター メトロのエスカレーター

トラムの入り口の自転車マーク トラムの入り口の自転車マーク

メトロにも自転車で メトロにも自転車で

建設中のビル 建設中のビル

歩道の散水車 歩道の散水車

 6月に入ると梅雨が無いので唐突に夏となりました。21時でもまだ明るく、夕食を一体何時に食べているのかわからなくなることもありますが暑い日でも湿気は無く日陰に入ればとても過し易い気候です。

 モスクワに来てから数か月経ちました。長く日本(神奈川)で暮らしてきた私としてはびっくりしたり新たな発見をしたり、便利だったり不思議だったりすることが多く、日常で思った小さな事を紹介したいと思います。

 居住経験のある方は是非住み始めたばかりのことを懐かしいなと思い出しながら読んでいただければと思います。


◇ 道が広い、たくさん歩かなければならない。

 モスクワの最初の感想がこれでした。大通りとなると反対側の歩道が遠く私には遥か彼方の地に見えます。住宅地も車線は少ないものの歩道が広いです。歩くのが大変です。代わりに人が並んで歩いてもキックボードが通っても余裕があります。


◇ メトロの改札はICカードの反応がゆっくり。でも出るときはICカード不要

 日本に比べるとタッチしてからゲートがあくまで若干の間がある気がします。また、革財布の中のICカードが反応しないことが多く、毎回財布からカードを出してタッチしています。

 しかし料金は一律なので出るときはタッチ不要です。ICカードは出さずに済みます。
※2023年6月現在、一乗車50ルーブルです。


◇ エスカレーターのベルトがやや速い。

 メトロのエスカレーターはとても長いです。そんなエスカレーターに乗ってベルトに手をのせているといつの間にか手が前のほうへ進んでしまっています。


◇ メトロの駅のホームが静か。

 日本のようにホームの案内アナウンスや発車合図の音が無いので静かです。どうやって閉まるタイミングを確認しているのか最初は不思議でしたが、ドア付近のランプが赤になるともう閉まりますよ、という合図らしいです(代わりに車内では案内があります)。


◇ トラムに自転車ごと乗ることができる。

 トラムの入り口に自転車マークのある扉があります。そこから入ると広めのスペースがあり、そこに自転車を置くことができます。追加料金はありません。


◇ 地上の電車にも自転車ごと乗ることができる。

 メトロの一種で地上を走るМЦК(Московское центральное кольцо)も自転車と一緒に乗ることができます。追加料金はありません。駅のホームに自転車マークがありますのでそこで待機します。そこから乗車すると自転車ラックがありますので自転車を置いて目的地まで向かいます。


◇ スーパーマーケットや駅に駐輪場が無い。

 駐輪場がないので日々の買い物に自転車を使うことができません。また、駅にも駐輪場がないので出勤時に駅まで自転車で、という光景もありません。


◇ 建設中のビルが丸見えである。

 最初は廃墟か解体中の建物かと思ってしまいました。建設中の建物に張るメッシュシートが使われていなかったので建設現場が丸見えなだけでした。中心地から少し離れたところは建物が密集していません。だから防塵の必要はないのだろか?などと想像をしています。ちなみに中心部で古い建物の改修工事をしているときはちゃんとメッシュシートが張られています。


◇ 散水車が道路で水まきをしている(歩道にもいる)。

 乾燥している土地だからだと思いますが散水車が水を撒きながら走っています。車道だけでなく、歩道でも散水車が走っているのに最初はびっくりしました。しかも思ったよりも早いので写真を撮るといつも後ろ姿になってしまいます。散水車が通った後は少し涼しいです。


◇ 道を尋ねる人が多い。

 公園や街を歩いていると突然話しかけられることがあります。大抵道を尋ねる人です。何故に私(外国人)に聞くのか不思議でならなかったのですがおそらく目線の先にたまたま私がいただけなのだろうと思います。わからないことは人を選ばず近くの人に尋ねるというのは日本ではなかなか無いことなのでどぎまぎしてしまいます。


◇ スーパーマーケットが多い

 自宅から徒歩7~8分圏内だけで7件くらいあります。コンビニエンスストアはありませんがこれだけスーパーマーケットがあれば困ることは無いです。


 日本と同じなようで若干違うことはたくさんあり、これがモスクワか!とびっくりしつつ、なるほどと思いつつ生活をしています。日本もモスクワもどちらもいいところも困ったところもあり、なるほどこれが違う文化、違う習慣ということなのだな、と実感しました。

(H. H)

 

『戦時下のウクライナを歩く』(岡野直 著/光文社新書)刊行に寄せて

『戦時下のウクライナを歩く』より

ロシアのミサイル攻撃で崩壊したウクライナの小学校。教室だった焼け焦げた部屋の中で、机を固定するパイプだけが突き出していた。
(光文社新書『戦時下のウクライナを歩く』より)

***

 2023年7月の『戦時下のウクライナを歩く』刊行に寄せて、会員の神門さんとその友人である著者の岡野さんからのメッセージをご紹介します。

***

 講談で時々お邪魔しております神門です。2021年通訳案内士試験会場で出会って以来講談会にいらして頂いたりしている友人の岡野直さん、試験から2年後に彼がこのような本を出すとは夢にも思いませんでした。岡野さんが直接聞き取ったウクライナの人たちの「声」を是非感じていただければと思います。

(神門 久子)

***

 ミサイルが撃ち込まれ、瓦礫になった幼稚園や学校、住宅街。ウクライナで私が見た光景だ。この戦時下を、ウクライナ市民はどんな気持ちですごしているのだろう。そんな疑問を持った私は、ウクライナに入国。市民数百人から証言を聞き、それをもとに、『戦時下のウクライナを歩く』(光文社新書)を書いた。

 胸が痛んだのはウクライナの子供たちの「声なき声」だった。ウクライナ北東部のハルキウ市で、崩れ落ちた幼稚園の跡に、園児らの絵が散らばっているのを目撃した。ある絵にはクレヨンで描かれた青い海。その上をゆく船が煙をはいている。空には黄色い太陽。別の絵では、女の子が下半身だけに海水につかり、笑っている。海に園児たちが遊びにいった時を描いた絵なのだろう、「こんな、楽しかったよ」という声が聞こえてきそうだった。これを描いた子らが生きているのか、あるいは死んでしまったのかも分からない。分かっているのは、ロシアがミサイルや砲弾を毎日のように撃ち込んでいること、そのため、今もウクライナの人口の半分近い、約1800万人が故郷の自宅を離れ、国内外に避難を余儀なくされていることだ。

 それでも、「ロシアと和平を結び、停戦したい」というウクライナ人に、私は出会わなかった。ウクライナで行われた世論調査では、96%の人が「勝利を確信している」と答えている。

 それは、ロシアによる破壊がひどすぎ、「許せない」という感情が高まっているためもある。例えば、南東部の町、マリウポリ市(50万人)では建物の9割が空爆や戦車の砲撃で壊れた。市の象徴、マリウポリ劇場も空爆で倒壊した。私は、劇場内にいたが運よく生き残った人々を探し当て、インタビューした。劇場前の空き地には、劇団員が大きな文字で「ДЕТИ(ジェーチー=子供)」と描き、中に子供が避難していることをアピールしていた。しかし、ロシア空軍機のパイロットは無視した。なぜだろうか。私が、生き残ったマリウポリの女性にそう尋ねると、彼女は「ロシア人の考えていることは全く分かりません」と答えた。不条理な戦争だ。子供らの多くの犠牲を出しながらも、この戦争に、ウクライナ人の多くが「降参だけはしなくない」と考え、立ち向かっている。

(岡野 直)

PAGE TOP

 

投稿歓迎!

 「日本とユーラシア」神奈川県版は会員みんなで作る機関紙です。ユーラシア(旧ソ連地域)関連の投稿をお待ちしています。
 催し物の感想、旅行記、講評、写真、絵などさまざまなジャンルの投稿を歓迎します。
 作品は自分のオリジナルか著作権者の許可を得たものに限ります。
 デジタル画像はテキストファイルに貼りつけず、別ファイルでお送りください。
 また、ペンネームや注意事項があればお書き添えください。毎月末締切、翌月15日頃に発行見込み。

※投稿記事は誹謗中傷や公序良俗に反するもの以外ほぼ原文のまま掲載していますが、必ずしも協会としての見解を反映するものではありません。

PAGE TOP

中世ロシア興亡史講義 ~歴代君主の素顔とその真実~ 862-1598
第206回 イヴァン三世、タタールのくびきを引きちぎる

協会サイト内 中世ロシア興亡史のページ をごらん下さい。

PAGE TOP