毎年恒例の新年会「ヨールカ(もみの木)祭」、2025年も前回同様、リアル会場とオンラインの併用で開催します。
民族舞踊や楽器の演奏、ロシア語での発表、海外からのご挨拶など、様々な出し物や懇親会がお楽しみいただけます。
詳細はチラシ画像をクリックしてPDFファイルをごらんの上、奮ってお申し込み・ご参加ください。
※予定は変更される場合がありますがご了承ください。
日時:2025年1月19日(日)14:00~17:00(日本時間)
会場:横浜平和と労働会館2・3・4階&Zoomミーティングルームにて
参加費:会場・一般2,000円、会員1,700 円(教室出演者1,200円)、オンライン無料
定員:会場50名、オンライン100名(先着順、要予約)
参加申込締切:2025年1月13日(月・祝)
12月22日(日)、横浜ロシア語センター講師会主催の講演会「ロシア演劇に魅せられて」が開かれた。総勢28名の参加者で平和と労働会館4階の開場はほぼ満席となった。
講演をして下さったのは当センターでロシア演劇講座を担当されている安達紀子先生。先生は早稲田大学大学院博士後期課程(露文科)を修了された文学修士。ソ連崩壊の前後にあたる6年間にモスクワに在住され、映画会社モスフィルムや朝日新聞モスクワ支局、さらにはモスクワ放送で翻訳、通訳、アナウンサーとして勤務され、今は早稲田大学、慶應義塾大学でロシア演劇、ロシア語の講師として活躍されている。
先生のお話は1917年のロシア革命でソビエト政権が樹立された時から現代に至るまでの歴史に基づき、演劇が社会主義政策の正しさを喧伝する手段とされ、国家によって厳しく管理・検閲された時代と、その雪解け時代を比較しつつ進められた。先生が用意された資料には多くの演劇人の名前や劇場、作品名と共にその時々の事件や世情も記されている。
「舞台で生きる」ことを主要な課題とするスタニスラフスキー・システムの創始者スタニスラフスキーは、実は記憶するのが得意でなくメモ魔で、そのお陰でメモが昂じて著作となりシステムが出来上がったとのこと。俳優になるためには演劇大学で学び国家試験に合格しなければならない由。また、ペレストロイカ時代に、先生は外国人の特権で買うことが出来たチケットを2枚買って一枚をロシア人に売り、一緒に見て感想を聞いて自分が分からなかったことを教わったというお話も興味深く、またその時に「自由な国で暮らしてきた貴女には、私たちロシア人の気持ちは分からないでしょうね」と言われたことなど、先生ならではのお話に惹き込まれた。
また見せて下さったいくつかの演劇映像では名場面の台詞を通訳され、「暗闇に浮かぶ裸の背中は無防備・同一化を象徴する」など様々な演出の意味も解説して下さり『ロシア演劇に魅せられて』というお題そのものの先生の情熱が伝わって、短い時間ではあったが、しばしロシア演劇に浸ることができ胸が熱くなった。参加した皆さんも思いは同じようであった。
詳細な資料を用意して下さり、2時間、本当に素晴らしい講演をしてくださった安達紀子先生に心からの感謝を申し上げたい。また是非、第二弾をお願いしたいと一ファンとしてお願い申し上げたい。
(文:織田/写真:滝沢)
12月22日(日)16:30。横浜ロシア語センター講師会主催の安達先生による「ロシア演劇に魅せられて」の終了後、5F教室で、「2024年を送り2025年を望む、望年会」が開催されました。出席者は、講師の先生方を含めて30名を超えてしまいました。5Fの1、2番教室を繋げて作った2つのテーブルを囲みます。イスは3、4番教室からも運びましたが、それでも足りず、1F事務所のも借用するありさまです。
参加費はбесплатно(無料)ですが、「何か一つ持ってくる」ことが条件です。みなさん、その約束を十二分に「発揮」して、2つのテーブルにはおいしそうな物が並びました。
各クラスの講師は、織田先生、ラリーサ先生、大山先生、タラルイキナ先生、竪山先生、ヴァレリヤ先生、安達先生、ピャタエワ先生、菅原先生、野口先生の10名の先生方がお集まりになり、それぞれ美味しいサラダや各種料理やケーキをご持参いただきました。先生がお作りになられたサラダや料理は、本格ロシア料理です。どの先生のが一番美味しいか?は、来年の望年会で味わってください。
生徒のみなさんもご自分で作ったケーキや、専門店で購入したケーキやチョコレートをご持参してくださいました。ワインも、グルジアワイン4本のほかポルトガル、スペインのワインなど9本が集まりました。ビールもウオットカもあります。結局、全部は飲みきれず、ワインの2本とビール缶3缶はヨールカ祭用に回すことになりました。
日頃、リモート授業で楽しい話ができないクラスのあり、「この時ばかり」の機会で、話が尽きません。テーブルの上の食べ物にも、ワインにも心を残しながら、流れ解散となりました。
(木佐森)
『戦場のアリア』DVD鑑賞会は12月22日(日)でしたが、参加者は2人と寂しいものでした。当日は安達先生の講演会と望年会、二つのイベントと重なり、集まりが悪かったです。
それでも映画の内容はたいせつなものでした。1914年クリスマスイブのフランス戦線です。クリスマスイブにそれぞれの塹壕からクリスマスの歌や故郷を思う歌などが歌われていました。ドイツ軍の陣地にはテノール歌手が招集され、一兵士として従軍していたのです。ペアを組んでいた女性のソプラノ歌手が会いたい一心で、この地獄の戦場に駆けつけてきました。そのテノール歌手の歌声に導かれ、イギリス軍もフランス軍も銃を手放し、塹壕から出てきたのです。ポケットから写真を出し「俺の妻だ」「俺の家族だ」とお互いに見せ合いました。このとき、イギリス軍の従軍牧師が聖書を開き、ミサを行いました。ソプラノ歌手は平和への願いを込めて、目に涙をためて戦場にいる全ての兵士のために歌いました。敵味方の交流はこれだけではありませんでした。ドイツ軍が英仏連合軍の陣地へ砲撃を行った際、ドイツ軍指揮官は英仏両軍の兵士をドイツ軍陣地に避難させたのです。反対に英仏連合軍がドイツ軍陣地を砲撃した時にはフランス軍指揮官はドイツ軍の兵士を連合軍側の陣地に避難させました。ドイツ軍指揮官とフランス軍指揮官は別れる際、「軍人」としての「敬礼」ではなく、「友人」としての「握手」を交わしたのです。
戦争は、愚劣な指導者が運営する「国家」が「国民」に強要するものだ、ということがこの映画でよく分かります。戦争さえなければ友達になれるのです。それなのに「鬼畜米英」だの「赤鬼ソ連」だのと敵愾心や憎悪をあおるようなことを国民に叩き込むのです。「アメリカもイギリスもソ連も悪い。それはアメリカであり、イギリスであり、ソ連だからだ」という無知や無理解が原因なのです。私たちユーラシア協会はこのような無知や無理解をなくし、ともに手を携えて生きていこうということを運動の理念にしています。そのために語学教室を開催し、毎年ロシアへの旅行を行っていたのです。ともに家庭に帰れば両親がいて、妻がいて、子供がいるのです。その家族たちにとって、愛するものを失ったらどれほど嘆き悲しむでしょうか。ともにこの地球に生まれた者同士、殺しあうようなことがあってはいけません。
2025年は戦後80年。改めて戦争を平和を考える鑑賞会となりました。
(関戸)
今期はロシア語入門~上級、会話、演劇、ウクライナ語初級クラスが開講中です。
見学は計3クラスまで無料。学期の途中からの編入も歓迎いたします。
Всех желающих изучать японский язык мы приглашаем на индивидуальные курсы японского языка при обществе ≪Япония-Евразия≫ префектуры Канагава.
Наши курсы ориентированы в первую очередь на русскоговорящих, проживающих в Японии, поэтому большинство наших преподавателей владеют русским языком на высоком уровне. Возможны аудиторные и онлайн-уроки. Мы внимательно выслушаем Ваши пожелания и подберём оптимальную учебную программу.
За справкой обращайтесь по электронному адресу eurask2@hotmail.co.jp или в офис общества ≪Япония-Евразия≫ префектуры Канагава (просьба заранее сообщить о своём визите по электронной почте).
当協会の日本語教室は、主にユーラシア(旧ソ連)諸国出身のロシア語を母語とする方を対象としています。
日本での生活に必要な日常会話や日本語能力検定試験対策など、それぞれの目的やレベルに合わせて個人レッスンで丁寧にお教えします。
ロシア語版ホームページもありますので、学習希望者にぜひご紹介ください。
毎月原則2回、横浜平和と労働会館6階会議室で第2・第4土曜日に開講中。
1月のレッスンは11日、18日の予定です。お問い合わせは神奈川県日本ユーラシア協会事務局まで。
時間:14:00~18:45の間、各45分
講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館6階会議室
2024年の退会会員数は、全数で19名となっています。内訳は、ロシア語教室非継続者が12名。12か月以上滞納による退会処置者が4名。本人高齢や家族の介護、「本部機関紙が面白くない」との理由などでの退会者3名となっています。そのため、2024年末の会員数は、200名を下回る194名になりました。
(木佐森)
NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 | 2024/12/31 | ||
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単位:円 | |||
摘 要 | 本年度当該月収入 | 前年度当該月収入 | 対前年度増減 |
一般会計 | 43,100 | 32,250 | 10,850 |
教育事業 | 203,900 | 257,150 | -53,250 |
一般事業 | 84,460 | 139,819 | -55,359 |
合 計 | 331,460 | 429,219 | -97,759 |
摘 要 | 本年度当該月支出 | 前年度当該月支出 | 対前年度増減 |
一般会計 | 702,658 | 763,170 | -60,512 |
教育事業 | 454,287 | 529,741 | -75,454 |
一般事業 | 87,928 | 124,875 | -36,947 |
支出合計 | 1,244,873 | 1,417,786 | -172,913 |
当該月収支 | -913,413 | -988,567 | 75,154 |
累計収支計 | 855,579 | 1,018,983 | -163,404 |
前年2023年の12月と同じような収支経過ですが、10月からの141期のクラス及び受講生の漸減により、教育事業収入とそれに対応する教育事業支出が少なくなっています。
しかし、心配された2024年度収支が赤字に転落することは防げたようです。最終決算は、会計事務所の会計ソフトの最終確認後となります。
みなさまのお力で2024年を無事終えることができましたことを感謝申し上げます。
(木佐森)
ロシア・ベリョフ市発祥の、荒く潰した酸味の強いロシア品種のりんごをベースにした伝統的なリンゴ菓子。
小麦粉を全く使わずにリンゴピューレ、卵白、砂糖だけで作られた、もっちりした甘酸っぱいリンゴ生地のスイーツです。
現在、ブラックカラント、チェリー、シナモンの3種類を販売中。また、ロールタイプ400g/1,580円も取り扱いがあります。売り切れの際はご容赦ください。
内容量:200g
原産国名:ロシア
保存方法:直射日光、高温多湿を避け、冷暗所に保存してください。
ロシア・ベリョフ市発祥の、ロシア品種のリンゴと天然原材料のみを使用した昔ながらのお菓子。
固めのグミキャンディのような食感で、よく噛むうちに果実の風味が広がります。固くて食べにくい場合は電子レンジでごく短時間加熱するとやわらかくなります。
協会事務所では現在、アップル&フルーツ味とベリー味の2種類を取扱中。
内容量:90g
原産国名:ロシア
保存方法:直射日光、高温多湿を避け、冷暗所に保存してください。
抗酸化作用、免疫力向上などの効果があると言われ、健康茶として愛飲されているヤナギランを用いたロシアの伝統的なハーブティー「イワン・チャイ」を紅茶やラズベリーの果実とブレンド。
手軽なティーバッグでお楽しみいただけます。
内容量:37.5g(1.5g×25枚)
保存方法:直射日光、高温多湿を避け、常温で密閉して保存してください。
原産国名:スリランカ・ロシア(ブレンド国:ロシア)
度重なる石油製造・軍事施設がドローンやミサイルで爆破され、数々の経済制裁を受け2025年は経済崩壊年になるところに、アゼルバイジャン機誤爆で承認・謝罪・賠償を迫られ、泣きっ面に蜂のロシアから、2024年12月第4-5週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中5曲が新曲でした。
露の伝統的正月歌番組≪Голубой огонёк≫は見ましたか?筆者は見てないけど、侵攻に反対したことで迫害され国外脱出した露の著名人たちが集った裏番組≪Мирные огонки≫で、超有名ロックグループБИ-2が出演しているのを見ました!
2010年代に超人気だったニューシャが再び席巻するか、≪Сильные девочки≫(強い女の子達)が10位にランクイン。 9位にモスクワ国立大学大学院経済学部卒のラッパー・モトと、ウリヤノフスク出身のメランコリックサウンド作品を輩出するレヴルのコラボ曲≪Снегопад≫(降雪)がランクイン。
7位に甘い顔のポップスター・クリードと1996年から音楽活動している古参ラッパー・バスタの新曲≪Завтра≫(明日)がランクイン。
5位にズィヴェルトの≪Эгоистка≫(エゴイスト女子)がランクイン。2024年は夏にリリースした≪Мутки≫(曖昧な気持ち)と当曲のみという大人しい活動でした。
巷では時節柄、クリスマスソングが溢れています。1位2位を占めたのは、やはり定番ソングでした。
2023年12月1日にリリースしたウスラノフの≪Зимняя≫(冬)が再び急上昇、2位を獲得しました。色とりどりの光で輝く大都会で、元気な子供たちがサンタクロースとの出会いを待ち望み、願いを叶えるおとぎ話のような雰囲気を醸し出す歌。作曲はウスラノフですが、作詞は有名作詞家ミハイル・グツェリエフ氏。そのグツェリエフ氏が手がけた≪Ночь счастливых надежд≫(幸せな希望の夜)が、今月首位を奪取しました。バスコフ、ドリーナ、ビラン。カラウロワら豪華キャストが、ささやかでハートフルな聖夜に共演しています。2021年12月8日にリリースされ、現在のYouTtube再生回数は830万回。おめでとうございまーす!:-)
(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2024年12月19日~25日/MOPA)
画像は https://vk.com より
※全文、チャート、PV視聴はユーラシア芸能ブログでどうぞ。
12月14日~27日 於:渋谷・シアターイメージフォーラム
例年、6月ごろに開催されていたEUフィルムデーズが今年は12月に開催。会場も国立映画アーカイヴから一般劇場のシアターイメージフォーラムに移り、新しいものに敏感な若い観客層が増えた感じだ。
ユーラシア関係国からは、リトアニアとエストニアから出品された。そのうち、エストニアの「ファイアバード」は2024年2月に横浜でも公開されたので、作品内容は割愛する。
リトアニアからの作品は、ロカルノ国際映画祭で金豹賞を受賞した「TOXIC」(サウレ・ブリュヴァイテ監督作品、リトアニア、2024年)。
さびれた地方工業都市に、祖母と暮らす脚の悪いマリヤと、愛人を連れ込む父との確執をもつクリスティナという13歳の2人の少女が主人公。
町にはミステリアスなモデル学校があり、ファッションイベントのモデル募集を謳っていた。何もない地方都市から抜け出すチャンスをつかもうと、町の少女たちはモデル学校に通う。マリヤもふとしたきっかけでクリスティナと知り合い、モデル学校に通うことになるが、そこには少女たちの熾烈な競争が待っていた。
マリヤとクリスティナに降りかかってきたのは、オーディションに受かるための多額のレッスン代、高額な”写真撮影代“という経済的搾取と減量。クリスティナはサナダムシの錠剤を怪しげなネット通販で入手し服用。マリヤも連れ戻しに来た母の無理解を拒絶してオーディションに臨む。そして、オーディション当日、クリスティナは原因不明の腹痛に倒れる。
ブリュヴァイテ監督は自身もモデルの経験がある。リトアニアのティーンエイジャーの心理を深く描いた本作は、デビュー作でありながらいきなりロカルノ映画祭での受賞作となり、EUフィルムデーズも上映回はすべて満席だった。
本編上演前のビデオメッセージで、「完璧を求めるのは国や社会を問わず、人間に共通して見られるものです」と語り、グローバル社会で見られる問題を鮮烈に切り取って見せた。
(文:滝沢 三佐子)
12月10日 於:新国立劇場
ミハイル・ブルガーコフの代表的戯曲「トゥルビン家の日々」(小説としての題名は「白衛軍」)がようやく日本の舞台に。1926年にモスクワ芸術座で上演され、あのスターリンも気に入っていたという作品だ。新国立劇場では、英国ナショナルシアターで演じられたアンドリュー・アプトンによるリライト版を元にして上演。コミカルな部分とシリアスな部分をバランスよく配し、舞台美術スケールの大きなエンターテインメントに仕上がった。
物語の舞台は、革命でロシア帝政崩壊後のキエフ。そこではソヴィエト政権樹立を画策する「ボリシェビキ」(赤軍)、革命勢力に対抗し皇帝(ツァーリ)に忠誠を誓う「白衛軍」、そしてウクライナ独立を宣言したウクライナ人民共和国軍の「ペトリューラ」の三つ巴の戦いが行われていた。
トゥルビン家の兄アレクセイは白衛軍大佐、弟のニコライは士官候補生として従軍。長女のエレーナは、参謀本部大佐タリベルクの妻として、トゥルビン家を切り盛りしている。彼らの住まいには白衛軍の軍人やウクライナ傀儡政権元首ゲトマンが率いるゲトマン軍の副官レオニードが集い、酒を飲み歌い、戦いについて議論する。また、アレクセイたちのいとこにあたる学生のラリオンが居候。夫が長期不在なのをいいことに、レオニードはエレーナに言い寄っている。
白衛軍は、ドイツ軍やドイツを後ろ盾とする、コサックにルーツを持つゲトマンらと共闘し、ボリシェビキやペトリューラに対峙していたが、次第に劣勢となりゲトマンやタリベルクはドイツへ逃亡、ドイツ軍も撤退する。こうして援軍に見捨てられた白衛軍は多勢に無勢のペトリューラとの戦いに敗れることになり、トゥルビン家のアレクセイは戦死、ニコライも重傷を負った後、重いPTSDとなる。
とにかくステージのセットが大がかりで圧倒される。筆者は2階席だったが、舞台全体が観客席にせり出してくる様子は圧巻で、場面での転換も回り舞台が大活躍。リアルな大道具はモスクワのマールィ劇場やモスクワ芸術座のようだが、モスクワの劇場でここまで大がかりな”動くセット“は見たことがない。また、戦闘シーンでの銃声や爆発音、火薬の火花など、こちらも劇場入口に”警告“が出されるほどの大音量で、これだけの演出は大劇場でしかできないだろう。
一方、演技に関しては大きなステージだからか、オーバーアクションな印象があり、とあるロシア人から「あの演技は日本人にとってどうでしょうか」と聞かれてしまった。戯曲がブルガーコフのロシア語版ではなく、イギリスのアプトン版を使用というところで、立ち振る舞いや人物造詣が”垢ぬけて“しまった感じもある。
しかし、日本ではなじみの薄い歴史事象を扱った物語のせいか、解説や人物相関図など観客への配慮が手厚く、事前に目を通したコラムは観劇のガイドとして大変役に立った。またゲトマンやペトリューラ軍のもつウクライナ人としてのアイデンティティが、ボリシェビキによって潰されていったことも、歴史背景として理解が深まる。ニコライが流す涙は“私たちのキエフ”が失われていく涙を代弁しているようで胸に迫った。
(文:滝沢 三佐子/撮影:宮川 舞子)
12月6日 於:中野スタジオあくとれ
紛争地域から生まれた演劇シリーズは、2009年から毎年数作品ずつ上演され、世界各地で起こっている様々な紛争に目を向けたプロジェクト。これまではパレスチナ、シリア、ナイジェリアなどが傾向として多数だったが、2023年以降はウクライナ作品も上演され始めた。
今回紹介された「亡霊の地」は、アンドリー・ボンダレンコによる『蝶』『結婚持参金』『罪と罰』という3本の短編劇で構成されたリーディング公演だ。いずれも、ロシアによるウクライナ侵攻開始後に書かれた作品で、戦場という悪夢に故郷が化していく中、そこに漂う亡霊たちと暴力の中に放り出されたウクライナの人々のうめきのような作品群である。
『蝶』は精神科医を訪れたユーラ。夜になると最前線でともに戦ったナジークとオレストの最期が幻影となって再現され、自身がカタツムリとなっていく。氷解しがたい深刻なトラウマが描かれる。
『結婚持参金』は、ドンバス地方に暮らす身重の娘ハーリャを略奪するために、新ロシア側についた青年ドディク。上官バナナとハーリャの家に乗り込んで持参金を両親にせびる。新ロシア兵の残虐性とドンバス地方の複雑な地勢が、いっそう解決しがたい状況となって立ち現れる。新ロシア派に侵攻された悪夢を「あんたのものは何もいらない」と拒絶するハーリャの叫びと、思いもよらないエンディングが圧巻。
『罪と罰』は、『蝶』の精神科医が再び登場。今度はロシア占領地域で拘留され、残酷な拷問を受け生還した女性ジャーナリストが患者である。彼女はヘンナージーという「拷問の名手」というべき男にスパイであるという供述を強要される。しかし彼女は拷問の末レイプされ殺害されると覚悟を決め、彼にドストエフスキーやトルストイ、タラス・シェフチェンコやスターリンの名句や名言を引き合いに出しながら、彼と対峙する。その丁々発止のやりとりが、ウクライナ文化のロシアにもたらした大きな影響であると彼に突きつけることになる。精神科医のトラウマ解消法の、ロシア兵人形にウクライナ語を話しかけて身もだえさせるという話には笑いが起こり、暴力をユーモアで対抗しようとする戯曲の力を感じた。
ちなみに国際演劇協会は、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」というユネスコ憲章に基づき1948年に設立された団体。今回の公演は、演出は林英樹氏、てがみ座、文学座、ナイロン100℃など様々な劇団の俳優たちによって上演され、読むことと演じることの力強い表現を体感することができた。
(文:滝沢 三佐子/撮影:石澤 知絵子)
2024年9月に機関紙「日本とユーラシア」神奈川県版について、会員の皆様にアンケートを実施しました。12月15日に締め切り、集計した結果をお知らせいたします。
会員194名中、34名の方々にご回答いただきました。お忙しい中ご協力ありがとうございます。
内訳は以下の通りです。
(1) インターネット環境
使用できる 32
使用できない 2
(2) 2025年以降の希望の形態
紙版のみ 3
電子版のみ 16
紙・電子併用 3
紙・電子不要、WEB版のみ 12
また、アンケートにコメントを添えてくださった方もいらっしゃいました。
2024年8月から11月までの非常事態に省力化で対処するため、9月の臨時理事会での討議の結果、神奈川県版の電子化を暫定的に実施させていただきましたが、皆様のご理解とお気遣いに深く感謝申し上げます。
(会員の方々からのコメント)
● 事務局の方に負担とならない方法でご対応いただけたら、と思います。
● 大変なご苦労の中でのお仕事ですので、省力化に賛成いたします。
● 電子版だけでよいので、いつまでも存続されるように願っております。紙媒体を希望される方のみ追加料金を取れば良いと考えます。
● 紙版は手に取って見やすいのが利点ですが、手間もかかることを鑑みると、ブログのような形式でWEBへ載せるのも、編集時間の削減につながるのでは?と感じます。
今後の方針については、2025年の定期総会で改めて決定される見込みです。
本年も神奈川県日本ユーラシア協会をどうぞよろしくお願い申し上げます。
ニューヨーク、マンハッタンから地下鉄黄色Q線で、40分、終点2つ手前のブライトンビーチ駅周辺地区は、ロシア系の人が多く住んでいる。ニューヨークに住んでいるロシア系の人は60万人を越えているそうだ。ロシア帝国時代のポグロムから避難したユダヤ系ロシア人に始まり、ロシア革命などの時代の変わり目に、ロシア系住民のコミュニティーが拡大していった。その故か、街を歩いていると、ユダヤ系と思われる黒い山高帽をかぶり、髭を伸ばした大人に引率された子どもたちを何組か見かけた。
ブライトンビーチは、南側に広い砂浜があり、黒海に面したオデッサに似ているとして、「リトルオデッサ」と呼ばれている。駅を降りると、小さなお店が続く商店街となっている。通りの角ごとに果物屋と花屋のお店がある。聴こえてくるのはロシア語で、商品表示もロシア語で書かれている。元気な声で呼び込みをしていたので、大きなピロシキを3ドルで買い、食べながら歩く。カフェがあったので、入ると、≪Доброе утро≫(おはようございます)と声をかけてきた。カフェラテMサイズを注文すると、出てきたのは、日本ではなかなかないラージサイズだ。3ドルだ、マンハッタンでは7ドル以上はする。ここは物価も安いし、温暖な気候、広い海岸もある、きっと住みやすいだろうと思われる。
住宅街の小さな公園や広場のベンチに、スカーフを被った高齢のご婦人が2人で座って話している。まるでロシアの街の裏通りだ。近くのスーパーで、クワスの500ミリ缶があったので、アジカ(調味料)と共に購入した。よく見るとクワスはウクライナ製、アジカはロシア製だ。これで良いのだと思った。
(木佐森)
「日本とユーラシア」神奈川県版は会員みんなで作る機関紙です。ユーラシア(旧ソ連地域)関連の投稿をお待ちしています。
催し物の感想、旅行記、講評、写真、絵などさまざまなジャンルの投稿を歓迎します。
作品は自分のオリジナルか著作権者の許可を得たものに限ります。
デジタル画像はテキストファイルに貼りつけず、別ファイルでお送りください。
また、ペンネームや注意事項があればお書き添えください。毎月末締切、翌月15日頃に発行見込み。
※投稿記事は誹謗中傷や公序良俗に反するもの以外ほぼ原文のまま掲載していますが、必ずしも協会としての見解を反映するものではありません。