特定非営利活動法人 神奈川県日本ユーラシア協会

協会行事


タタールスタン舞踊アンサンブル「サイダシュ」横浜公演
Татарский народный театр танца "Сайдаш"

 横浜美術館レクチャーホールで行われた横浜公演の観客は約140名。
 うち半数は開場の1時間も前から待っていた横浜市フォークダンス協会をはじめとする民族舞踊関係者で埋まりました。
 華麗な歌と舞踊が交互に披露され、実態は「歌舞団」。観客の評判は概ね良好でした。
 しかし、その舞台裏では…?
 時間、お金、人手、経験、情報…全てが不足する中、二日間にわたって団員に随行し、公演成功の為に尽力したスタッフのレポートをお読み下さい。


バックステージ・レポート 「サイダシュ随行記」

 5月12日(土)

 新横浜駅で出迎え。荷物の多さに仰天。米俵ほどの重さの衣装袋を一人ひとつ持っている。スーツケースは、あまりの重さに引き手が壊れており、普通に転がすことができない。 JRで桜木町まで行き、宿舎へはタクシー5台に分乗。

 宿舎到着後、彼らは昼食を要求。しかも「洋食が食べたい」というのでパスタ屋へ。お冷がでると、歌手二人は「氷はいらない!」と抗議。残るメンバーも「ビールが飲みたい」「私はジュース」と大合唱。

真剣なまなざしでおみやげを選ぶチムール団長

 食事が終わると、「買い物したい」「両替したい」「CD屋に行きたい」「海に行きたい」など各自希望を口にする。むろんすべての要求にこたえることはできない。

 日本側の交流希望者と待ち合わせて、ランドマークタワーの展望台へ。横浜の眺望を見て、彼らも感激していた。

 その後、中華街へ移動。船を見て驚き、赤レンガ倉庫前の学生イベントに飛び入りしようとしたり、「赤い靴の女の子」の銅像と記念写真を撮り、酒屋の酒樽に驚いたり、こちらも観察していて楽しかった。

 歓迎夕食会は中華街の「海王」で。イスラム教を意識して豚肉抜きの特別メニュー。皆、箸の使い方がとてもうまかった。一番好評だったのは「鳥のから揚げ」と「杏仁豆腐」。酒量も多くなく、交流会は和やかに終了した。なぜか店の布袋像が大人気。腹を「3百回撫でたら金持ちになる」と言って、女性陣は布袋さんの周りを離れようとしない。

 食後、女性陣はチャイナドレス屋へ。お土産を物色する。その後、宿舎へ戻って部屋割りを発表。大浴場があると告げると全員目の色が変わる。公演の打合せもそこそこに彼らは大浴場へ。浴衣も見事に着こなしていた。

 入浴後、自販機でビールを買い酒盛りが始まった。一人当たり4−5本の缶ビール(500ml)を買い込んでいる。案の定、宿直から「23時になったら酒盛りをやめさせろ」といわれ、部屋に連れ戻す。しかし、彼らは夜更けになってもベランダで酒盛りをやっていた。

 酒盛りの横で、私は団長と再度、打合せの詰め。途中、彼が私の携帯でタタルスタンに電話したいという。仕方なく応じる。すると、彼の「ママ」とやらが出てきて私もなぜか激励された。

 「サイダシュ」現在は売出し中の若いグループ。団長は、私に「テレビ局を呼べ」「横浜市長を表敬訪問したい」とか無理難題をぶつけてくる。参った。

 内部事情を打ち明けると、演目プログラムがこちらに届いたのは来日直前。しかも音源を聞いたのはその夜が初めて。受け入れ側はすべて素人だし照明も音響もぶっつけだ。名古屋での舞台進行表がファクスで届けられたが、はたして横浜もこの通りでいいのか。どうなる本番?! 売り出しに熱心な団長と酒盛りではじけるメンバーを尻目に、不安の夜は刻々と過ぎていった。


 5月13日(日)

 各部屋にモーニングコール。時差ぼけのメンバーはいなかった。さすが若い連中である。 7:30から朝食。バターロールが柔らかいとびっくりした様子。男性ダンサーが一人来ない。夕べ騒ぎすぎて疲れたらしい。団長は宿舎の浴衣がえらく気に入り、これを買い取りたいと粘るが断られる。

 10時チェックアウト。例の大荷物を自家用車に詰め込み、メンバーたちは歩いて協会事務所へ。プログラムとアナウンスの最終打合せだが、終わるやいなやメンバー達が散歩に行きたいと騒ぎ始めた。楽屋入りまであと2時間近く。仕方がないので12時に集合と言い一時解散。 しかし戻ってきたのは12時半過ぎ。何とか13時に楽屋入りする。

素晴らしい歌にも、舞台と客席の音量調節が効かず…

 きれいな楽屋だと感激していた彼ら。しかし一目ステージと客席を見るなり「狭い!小さい!」を連発。 団長が突然、舞台にタタルスタン・ロシア・日本の国旗を友好のしるしとして飾りたいと言い出す。日本国旗を持ち合わせていないため却下となる。

 女性陣はメーク開始。男性陣はストレッチ、歌手は発声練習を始めた。音あわせが難航を極める。モニターと場内音量のバランスがうまくいかず、何度も団長からNGが出る。歌手二人も難色を示し、曲目変更を言い出す。

 14時半開場。 観客が入場し始める。まだ出演者は着替え中。

 15時開演。 何人かの女性ダンサーはカーテンの陰でしきりに十字を切っている。やはり本番は緊張するらしい。 しかしいったん音が入ると体が自動的に反応し、ステージに出てパフォーマンスする。しかも、次の出番までに確実に衣装換えをこなす。彼らの熟練度は並ではない。

男女4人ずつで一杯になった小さな舞台

 問題は歌手の方。ステージで自分の声が聞こえないという。しかし観客席はすでに音量が大きすぎるとのクレームが。思い余った男性歌手は、マイクなし伴奏なしで歌うと言い出した。

 45分経過後、休憩。昼食のハンバーガーにぱくつくメンバーら。女性ダンサーは「私、ビッグマックがよかったわ」とつぶやく。

 第二部は創作ダンスから。舞踏用でない床は滑る。今回はシール式滑り止めで対応しているが、各自1セットしかない。団長と歌手から「ここは狭くて危険すぎる」「滑る。最悪!」と言われ少々カチンと来る。 しかし最終曲までこぎつけ、アンコール。花束贈呈はちょっと失敗したが、時間内に終わり一安心。

 閉演後、団員たちを急かして衣装の片付け、荷物の搬出を行う。開演前はのんびり準備していた彼らだが、あっという間に自分の大荷物を片付けた。午後6時、すべての作業を終え解散。サイダシュメンバーは、次の公演地である東京からの出迎え人に連れられ、踊るようにホールを去っていった。

(滝沢)


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