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ロシア文化


中世ロシア興亡史講義 ~歴代君主の素顔とその真実~ 862-1598
Лекции по истории средневековой Руси

第128回 大公ユーリーとトヴェーリの借金の行方

 大公ユーリーがトヴェーリに進軍してきたことを知ったトヴェーリの諸公は、汗国への借金、銀2000ルーブリをユーリーへ引き渡した。その上、汗国で非業の最期を遂げた前大公ミハイル二世の息子、ドミートリ―は、ユーリー公に対して大公位を決して要求しないことを約束した。

 その頃、トヴェーリの借金を受領するために、汗国から特使タヤンチャルが派遣された。大公ユーリーには、この特使タヤンチャルを通して汗国にトヴェーリの銀を届けるのではなく、自分自身で直接汗国に届ける権利があったが、間の悪いことに、彼は緊急の事態でノヴゴロドの人々に呼び招かれていた。ノヴゴロドの地にスウェーデン人が進軍してきていたのである。その結果、さらに別の理由もあったのかもしれないが、ユーリーはトヴェーリの銀をタヤンチャルに引き渡そうともせず、自分でそれを汗国へ運ぼうともせず、1321年から1322年の冬にかけて、ノヴゴロドへ赴いてしまった。

 おそらく大公ユーリーは、汗国にとって2000ルーブリは、即座に指定通りそれらの送付にとりかからねばならないほど大きな額ではないと考え、ノヴゴロドの問題の方が彼にはより重要に思えたのだろう。ユーリーはその1322年に、ノヴゴロドの人々と共にヴィボルクへ遠征したが、あまり成功しなかった。

 このユーリーの不在をすぐさま利用したのは、トヴェーリのドミートリーであった。彼は汗国へ出立し、ユーリーがトヴェーリの銀を横領したことを告げた。これを受けて汗国は、ユーリーを捕らえるために“力強い”アフムィラをすぐに送り出し、不服従の場合に備えて軍隊をも伴わせた。さらに、ユーリーの兄弟イヴァンをも彼らに同行させた(イヴァンは汗の前でユーリーの身の潔白を証明できなかった)。こうしてアフムィラは、ルーシの地へ着くとユーリーのもとへ急使を送り、自分はヤロスラヴリとその周辺地域で恒例の略奪に取りかかった。

 大公ユーリーはこれらの事態を受け、ノヴゴロドで携わっていたことを投げ打って、トヴェーリの銀と、もしかするとさらに幾ばくかのノヴゴロドのお金を持参して、汗国へ向かった。

 時を同じくして、この頃水面下では、前大公ミハイル二世の息子たちがユーリーを失脚させる詳細な計画を練っていたと思われる。ミハイル二世の息子アレクサンドルは、ウルドム川でユーリーの部隊を撃破し、すべての金銭を奪い取っていった。ユーリーは少数の従者を引き連れてプスコフへ逃げのびたが、その後、彼は再びノヴゴロドへ呼ばれ、そこへ舞い戻ってしまった。

 ウズベク汗は1322年の秋、ユーリーも銀の到着も待たずに、大公国統治の勅書をトヴェーリのドミートリー公へ授けた。

 次回は「ドミートリー公の復讐」。乞うご期待!!

 写真:ancientresource.com/lots/coins_medievalより

(文:大山・川西)

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